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  文教科学委員会 

2002年07月18日 

○鈴木 寛
 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 先ほども有馬先生から大学の質に関する御質疑がございまして、大変に私も勉強させていただきました。
 大学の質という問題でございますが、それの私は非常に重要なポイントは、やっぱり入学者選抜の公正の確保ということだというふうに思います。この入口のところがきちっと行われなければ、いかにその後、私も、有馬先生始め大変に大学でお世話になりましたけれども、先生方に心のこもった、真心のこもった教育を本当にやっていただいていると思いますし、私も私立大学で教鞭を執らせていただいておりましたが、そうしたことが無駄になるといいますか、かいがないといいますか、というふうなことを本当に痛感をいたします。
 そういう意味で私は、今日いただきましたお時間を、日本の国の入学者選抜の公正確保という観点から大臣始め皆様方に質問をさせていただきたいと思います。
 この入学者選抜の公正確保という問題は、単に大学の質のみならず、私は日本の二十一世紀の社会の質を規定をするんじゃないかというふうに思います。今、恐らく日本にとって一番重要なことは、努力と能力がきちっと報われる社会をもう一回作り直すということだというふうに思いますし、戦後、日本は一生懸命頑張って、一生懸命勉強して、そのことがきちっと認められる社会でかなりあったと思います。
 でありますからこれだけの活力に満ちた国だったんだと思いますが、この十年間そうしたことが損なわれていくとともに、この国の活力というものも損なわれ始めているんではないかという意味で、最近マスコミあるいは国会等で大変に話題、重大な問題として取り上げられております帝京大学の、しかも医学部でございますから、医学部は、先ほどの活力という問題に加えまして、今、日本の国民の皆様方が感じておられるいろんな不安、特に生命の不安ということがまた多くの大学関連病院でも起こっておりますけれども、そうした我々の一番大事な命を預かるお医者さんを正に育て、そして社会に送り出していくその本、根っこになる医学部の入学者選抜のことでございますから、いろんな意味でこれはこの国にとって極めて重要な問題だというふうに私は思っているわけでございまして、そうした観点から今日の質疑を始めさせていただきたいと思います。
 まず冒頭に、先日の参議院の厚生労働委員会で明らかになりましたけれども、宮路厚生労働副大臣、前副大臣のいわゆる帝京大学医学部に対する口利きについて私は御質問をさせていただきたいと思います。
 国会の質疑によりますと、宮路副大臣の政策秘書が今年一月三十一日に帝京大学の総長秘書室に電話をされて、後援者の御親族の方の受験番号を至急御連絡くださいとの指示を受け、ナンバー照会の上回答をすると。そして、その受験生の方は、この一月三十一日にそうしたやり取りがあって、二月四日、五日に行われた同大学の医学部の入試を受験し合格をされたというふうなことが国会の質疑の中で明らかになっておりますが、まず、大臣にお伺いをしたいのでございますけれども、こうした、まず、宮路副大臣の行動についてどうした御所見を持っておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

○国務大臣(遠山敦子君)
 入学試験の実施による入学者選抜につきましては、公正かつ妥当な方法で実施することが原則でございまして、その原則は貫かれなければいけないと思います。
 宮路議員がどのような形でかかわられましたかは、これは私のコメントするところでございませんし、その意味で、そのことについての更に深いコメントということはなすべきでないと思いますが、先ほど申したような、大学行政を預かる者としまして、その公正さが保たれるように、これは国民すべての者がそういう精神で大学とのかかわりについて厳正でありたいというふうに思っているところでございます。

○鈴木 寛
 これは、宮路副大臣、国会での御質疑の中での御発言でございますから、大学行政を預かられる最高責任者として、文部科学大臣には、やはりこうした一連の行動について、コメントを差し控えるということではなくて、やはりきちっとした御答弁をいただきたいと思います。
 さらに、宮路副大臣はこの質疑の中で、入試をめぐって、事前に受験番号を教えてください、じゃ連絡しましょうというようなことは、しょっちゅうというわけではないが往々にしてあるというような、これも国会での御質疑がございます。こうした宮路副大臣の御認識について、文部大臣は共有されるのか、それともそうでないのかということについて併せお伺いをしたいと思うわけでありますが。
 もう一つ、七月十五日に帝京大学側からいろいろな調査報告書をお受けになったというふうに聞いております。それも先ほどの副大臣の御答弁、有馬先生への御答弁の中でありましたが、その席でこの宮路副大臣のいわゆる口利きの問題についてはお尋ねになったのか、お調べになったのか、そして、その御回答はどういうことだったのかということについても併せお答えをいただければと思います。

○政府参考人(工藤智規君)
 先般の七月十五日のヒアリング、大臣立ち会っていらっしゃいませんので私の方から御答弁させていただきますが、調査報告をいただいたんでございますが、その際、今のようなお話が新聞紙上等でありましたものですから私どももお尋ね申し上げました。そうしたところ、先方の方からは、宮路副大臣又はその秘書の方から、医学部の入学に関しまして、総長のみならずその秘書あるいはその他の幹部の方々を含めて、電話を直接お受けしたり、あるいは総長側から電話をお掛けしたことはありませんということでございました。
 前段の先生のお尋ねでございますが、一番大事なことは、確かに冒頭、先生がおっしゃいましたように、それぞれの大学の見識の問題ではありますが、入試の公正確保が図られるということであろうかと思います。
 私自身、子を持つ親としまして、受験生を持つ親御さんがわらにもすがる思いで親類縁者あるいは友人、知人を頼っていろんな可能性を探るというのは推測に難くはないのでございますけれども、一番大事なのは、それを受け止めるといいますか、それぞれの大学が毅然として、合格に至る、せっかく受験生が長い時間掛けて勉強しながら受けられたわけでございますので、その受験生の気持ちを受け止めて、公明正大な、しかも厳格な入試判定の下にしっかりした入試選抜をするということが大事なことであろうかと思うわけでございまして、一々のどなたからどういう話があったかというのは、なかなか私ども役所の立場で関与したりどうこうしたりというのはちょっと申し上げにくいところがあろうかと思うわけでございます。

○鈴木 寛
 先ほども申し上げましたけれども、この入試の公正の確保というのは、本当にこの国の信頼を取り戻すという意味で極めて重要な問題だと私は思っております。恐らく与野党を問わず、特にこの文教科学委員会に所属しておられる委員の皆様方、同じ思いだと思いますが、その中で、さらに、副大臣という要職におありになる方が、まずはこの公正さについて十分な御認識がないと私は言わざるを得ないと思います。
 こうしたことはしょっちゅうあることだと平然と国会の席で御答弁をされるというのは、もうこれは本当、言語道断という言葉がありますが、正に言語道断だと私は思うわけでございまして、私は、先ほどの遠山文部大臣あるいは工藤局長から、工藤局長のお立場でそれ以上申し上げられないというのは多少は御同情は申し上げますけれども、少なくともその最高責任者である大臣からその発言について何らのコメントがなされないということは私はやっぱり問題ではないかというふうに思いますので、再度、こうしたことは往々にしてあるというこの認識について遠山文部大臣はどう思っておられるのかということについて、そこだけはきちっと御答弁をいただきたいと思います。

○国務大臣(遠山敦子君)
 私は直接宮路議員から伺ったわけではございませんので、軽々にそのことについて言えないという意味でコメントを差し控えているところでありますけれども、先ほど申しましたような信念を持っておりまして、大学入試というものは公正さというのが一番大事でございますので、その意味において私は、国会議員、特に要職にある者は良識を持ってこういう事案については対処すべきだと考えておりまして、宮路議員がおっしゃったようなことは大変残念だと思います。

○鈴木 寛
 私が申し上げているのは、国会の席での正式な議事録にきちっとある話でございますので、その認識を是非共有をさせていただきたいと思います。
 先ほど工藤局長からの御答弁で明らかになりましたように、宮路副大臣がこの国会の席でおっしゃっている事実と、それから工藤局長が十五日、帝京大学側から御聴取をされた事実とが、これ食い違っているわけですね、今の御答弁からいたしますと。行政ではこれ以上踏み込んで立ち入ることは難しいと、こういう御発言がございました。
 であれば、ちょっと委員長にお願いをしたいわけでございますが、行政が難しいんであれば、国権の最高機関であります我々国会が、正にこの事実関係をきちっと調査をさせていただいて、明らかにさせていただいて、まず国民の皆様方に明らかにする。そして、こうした問題をどのように厳正に対応していくのかということを議論をする。そして、再発を防止をするということが私は筋だと思います。
 その第一段階、大前提段階として、帝京大学のこの入試の公正さにかかわる、いわゆる寄附金からの影響があるのか、あるいは政治家からの影響があるのかといったことについて、冲永荘一氏を始めといたします帝京大学の関係者、そして正にこの口利きの当事者であります宮路前厚生労働副大臣を参考人としてこの委員会で、この委員会で、正に我が国の入学試験制度の公正の回復という観点から、招致をされて、我々が調査をさせていただくことを御検討いただくことをお願いを申し上げたいと思います。

○委員長(橋本聖子君)
 ただいま鈴木委員からの御発言に対しまして、その取扱いにつきましては、また後刻理事会で協議させていただきたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。

○鈴木 寛
 それでは、そのようにお願いをしたいと思います。
 では、七月十五日の帝京大学から報告された報告の概要について、先ほども有馬先生からのお話でございましたけれども、お時間の関係上、十分な、要するに中身についてもう少し詳しく、入試の公正が確保されたのかどうかという観点から内容を御紹介をいただけたら有り難いと思います。よろしくお願いします。

○政府参考人(工藤智規君)
 十五日の夕刻、帝京大学側から、これまでの調査結果のまとめで報告書をいただきました。それと、入試の公正確保という観点からはこれまでもたびたび事情聴取してございますので、それも併せて今の入試の部分について加えながら申し上げますと、一つには、入学者選抜の実施というのは公平公正に行われておりましたと、それはちゃんと教授会で合否判定をして、点数の高い順にここまで合格にしましょうという合意形成がなされてやっておりますということでございます。しかも、その後の、合格者名簿といいましょうか、その後のプロセスも通じまして情報についても機密防止が図られていたというのが大学側の御主張でございます。
 それから、残念なことに、国税の調査などもありまして、それを経て明らかになったのでございますけれども、大学側も医学部の入学手続の終了前に寄附金の授受が一部あったと。それは入学者総数の約一割で、過去五年の総数でございますけれども、過去五年間の一割に及ぶぐらいの不適切な寄附金の授受があったということ、それは事務局長の責任と判断で行われていたということでございました。
 これまで、調査委員会等として、医学部の入学者、私どもかねがね要請したわけなんでございますが、大学学内だけではなくて、寄附をしたとされるその父母の方々にも是非調査をお願いしたいとしていたわけでございますが、医学部入学者の父母の方々への聞き取り調査の結果、父母の方々からは、大学から事前に寄附の申込みというそういう要請はなかったという御回答。ただ、いつごろ寄附したかということについては若干御回答された方によって違うとか、あるいは入学に関する紹介者がいたかいなかったかということについては、いなかったという方と、ノーコメントを貫かれた方とがいらっしゃるということなどがございました。
 それから、今回また脱税で問題になっております総長の御親族である方については、これまでずっと連絡は取れないということだったのでございますが、やっと七月初めに連絡取れて、電話でのやり取りだったそうでございますけれども、事情を聴こうとしたところ、帝京大学から離れた身でもあるので今更何も話したくないという旨で、それ以上のことが明らかにならなかったということなどでございました。
 さらに、今回のこういうこともありまして、大学側としては、今後、三点ほどの改善方策を検討しておると。一つには、寄附金の受入れについて私どもの通知等を厳重に遵守して適切を期していきたいということ。二つは、医学部の入試で合格決定日から合格発表日の間、約一週間ぐらい空いているのでございますが、この期間をできるだけ短くして疑惑のないようにするということ。三つ目には、自己点検を更に強化し、また外部の方の評価も受けて、公正で透明性のある学校運営に努めてまいりたいということでございました。

○鈴木 寛
 そうした報告書の内容あるいは報告の中身について、先ほど岸田副大臣は不十分である、あるいは信頼に欠くという一般的な評価はいただきましたが、文部省としてどういった点が報告、要するに文部省が期待されたことに比べて不十分であるかということと、その今不十分な報告に対して文部省は更にどういったアクションを取るおつもりであるかということについてお話をいただければと思います。

○政府参考人(工藤智規君)
 先ほどのような、ごく概要でかいつまんで申し上げて恐縮でございましたが、先ほどお聞き及びいただきましたのでもお分かりのように、私ども、もっと詳細な報告書を期待しておりました。
 残念ながら、例えば幾つか申し上げますと、入試について合格決定後の情報管理体制、本当に十分だったのかどうか。情報機密はなかったと言っているわけでございますが、他方で新聞等で報じられていますように親族の方があっせんに当たって寄附金を私して脱税問題で挙げられているということもあるわけでございますので、本当に情報を徹底したかということがあります。
 それから、寄附金の受入れにつきまして、新聞等では七年間で約百五十億の寄附金があったと報じられているわけでございますが、私どもにお話がありましたのは五年間で入学者総数の約一割ということでございまして、年度ごとの件数あるいは金額についてはお話がございませんでした。
 さらに、医学部だけについての調査報告書でございまして、他の学部も含めた大学全体として本当にあとは大丈夫なのかということについても疑念が残るなどを含めまして、裏付けとなる資料も不十分でございますし、私ども、到底このままでは、はい分かりましたと言える状況ではないわけでございまして、このため大臣も閣議後の会見で求められましてお話ししていますように、できるだけ早い機会に現地調査を含めて、専門家の方の御協力を仰いで、現地調査を含めて更に精緻な実態解明に努めてまいりたいと思っております。

○鈴木 寛
 できるだけ早くといいますか、かつ詳細な、立入調査も含めた徹底したまず実態の把握と原因の解明に努めていただきたいというふうに思います。
 それで、文部科学省は正に昭和五十六年の通知をお出しになっているわけでありますが、これに照らしてどういう疑義があるというふうに整理をされているのか。もちろんそのことが今まだグレーなわけでありますけれども、しかし今度立入調査をしていく、実地調査をしていくという中で、どこの点を見ていくのかということなわけでありますけれども、私、是非お答えをいただきたいのは、昭和五十六年に通知が出ているわけですね。この通知自体は重要な通知で、これがすべての大学できちっと守らなければいけないということでありますが、今前半に御質問したように、この通知違反がある蓋然性が極めて高いと、こういうことであります。しかも、七年間にわたってこの通知が違反状態にあったわけですね、あったことが相当蓋然性が高いわけですね。どうして七年もの間その通知違反の状態が放置をされてしまったのか、残念ながら。それはどのように認識をしておられるのか、お答えをいただきたいと思います。

○政府参考人(工藤智規君)
 大変残念なことでございます。
 五十六年、約二十年ほど前の通知でございますが、これは昭和四十年代、大変このように入試、特に医学部、歯学部の入試に絡みまして寄附金収受の事例が社会的な問題にもなりまして、私ども、度重なる通知で各大学を指導してきたのでございます。この五十六年を最後にして、その後落ち着いてきたかなと思っていたわけなのでございますが、今回このように思いも寄らぬといいますか、学校法人に直接ではなくて別の財団法人を経由して、かつ、私ども、経理面で事細かな寄附者の一件一件の事実まで確認するようなことを今までしていなかったわけでございますが、そういう盲点を突きながら実はこういうことがあったというのは、愕然としながら大変残念に思っているところでございます。
 どうしてこうなったか、私どもの、おまえらの努力が足りないんではないかとおしかりを受けるのかもしれませんが、私どもなりに、例えば私学助成を交付している法人につきましては会計検査院の検査対象でもありますし、補助金を交付しております私学振興・共済事業団の方からも立入調査などをしているわけなのでございますが、なかなか盲点になってここまでの事実が明らかにならなかったのは大変申し訳なく残念であったと思っております。

○鈴木 寛
 帝京大学は、平成十三年に理工学部の航空宇宙学科の新設をされていると思います。こうした大学の学科新設に当たっては、学校法人運営調査などを最大限活用しながら、大学の財務状況、経理状況、業務の執行状況などについてかなり詳細にチェックをされて、きちっと新設認可をされているというふうに聞いているわけでありますが、平成十三年に恐らく文部科学省はそれを行われた上できちっと新設をされていると思うんですけれども、そのときの調査などでもこのことは見抜けなかったのでしょうか。そして、それはなぜなんでしょうか。

○政府参考人(工藤智規君)
 大学等の設置に係る学校法人の寄附行為変更の認可申請という行為があるわけでございますが、これに当たりましていろいろな会計書類を御提出いただきます。その書類としまして、公認会計士が監査した財産目録でございますとか、申請の前年度までの、前年度の収支決算書でございますとかいろいろあるのでございますけれども、申請時に提出される前年度の収支決算書等でその年度の寄附金収入などの項目があるわけでございますが、それは総額は確認できるのでございますが、個々具体にどなたからどういう形でいつ入金したかということまではなかなか調べる処理になっていないのでございます。
 私ども、当該収支決算書について公認会計士が会計監査をしていることもあるわけでございまして、その結果不適切な事例が指摘されていないということから、わざわざ個々具体のことまではなかなか立ち入りにくい。しかも、事務的にもそれぞれの大学、大変に膨大な数の多い申請があるわけでございますが、個々の寄附者の個別の件数までとなりますと、書類自体も大変でございますし、それを審査する私どもの体制もなかなか追い付かないというか、そこまで忙殺するいとまもないぐらい忙しいものですから、現実にはなかなか困難な状況でございまして、今後どういうむしろ改善策が取れるか、今回の事実解明を待ちまして、いろいろな検討をしてまいりたいと思っております。

○鈴木 寛
 今日は会計検査院にもお越しをいただいております。御苦労さまでございます。
 文部科学省によるそうした厳正な実態把握ということ、重要なわけでありますけれども、そのことが残念ながら今回の事件を発見することができなかったということなわけでありますけれども、我々は会計検査院に大変に国の税金の正しい執行の在り方、その確保という意味で期待をしているわけでありますけれども、帝京大学には多額な補助金、私立大学等経常費補助金など、年間、グループ全体を足しますと五十億にも上る税金が交付をされております。
 その補助金の私立大学等経常費補助金取扱要領によりますと、第三条の(5)というところに「入学に関する寄附金の収受等により入学者選抜の公正が害されたと認められるもの」、これは補助の対象から外すと、こういうことになっておりまして、正に会計検査院はこうした取扱要領に基づいて、裏を返しますと、その入学者選抜の公正がきちっと確保されているということを検査され、確認をされるという任務を負っておられると思いますが、まず、会計検査院がこの帝京大学に対して、いつ、どのような検査を行ったのか。そして、にもかかわらず、今申し上げた入学者選抜の公正が害されている可能性が非常に濃厚なわけでありますが、そのことについて発見をすることがどうしてできなかったのかについて御答弁をいただきたいと思います。

○説明員(重松博之君)
 お答えいたします。
 検査院は、院法に基づきまして、私立大学等経常費補助金を対象といたしましてその経理について検査をしているわけでございますが、その一環として、直近では、平成元年、十年、十一年に学校法人帝京大学を検査しております。そして、元年の検査におきまして、補助金の対象とはならない専任教員等が含まれていたということで指摘をしているところでございます。
 そして、どうして見抜けなかったかということでございますが、今問題となっております寄附金収入それ自体は、学校法人会計基準上では補助金の算定要素でございます授業料収入等の学生納付金収入には含まれないということになっておりまして、別の科目で整理されているということが一つございます。
 それから、ただいまお話しございました入試に関する寄附金の授受等が公正であったかどうかということでございますが、これについては、私どもといたしましては、まず当局において大学の公正な管理運営の観点から判断されるべきものであろうかというふうに思っております。
 現在、文部科学省においてその点において厳しく調査されるというふうに伺っておりますので、本院としても当面これを重大な関心を持って見守っているというところでございます。
 その上で、今後、この補助金に関しまして検査の必要がございますれば、学校法人帝京大学を実地に検査するということもあり得るものというふうに考えているところでございます。

○鈴木 寛
 今、必要に応じ更にきちっと検査をしていただけるという御答弁がありましたので安心をしたわけでありますが、若干、昨日の会計検査院からのお話だと、今年の検査計画はもう決まっているんでなかなか臨機応変にやれないんだということがあったんで、そのことをちょっと心配しておったわけでありますが、この問題は国民に大変に重大な、日本にとって重大な問題でありますから、文部省と連携して実態の究明、検査の適正化ということに是非努めていただきたいと思います。
 それで、もう一度文部科学省にお伺いをいたしますけれども、先ほども検査院のお話の中にも少しありましたが、このいわゆる寄附金が帝京大学自体じゃなくて、帝京育英財団ですかね、に実態上行っていたということなので、文部科学省もあるいは会計検査院もその分については把握できなかった、把握しづらかったと、こういうことだと思います。特に会計検査院はそこまで見る権限がないと、こういうことだと思います。法理論上は、検査院の御答弁については致し方ないかなとも思うわけでありますが。
 もう一度この五十六年通達に戻りますと、その一番最後に、入学者又はその父母等関係者からの大学の教育研究に直接、要するに充てるための寄附金及び学校債を募集する場合には、後援会等によらず、すべての学校法人が直接処理することという通達がありますね。ということは、今回、帝京大学がいわゆる迂回ルートでこの帝京育英財団をそうした寄附に使っていたということになると、明白にこの通知の一番最後の条項に違反すると思うんですが、そのことについてはそれでいいのかどうかということですね。
 それと、であれば、やっぱり通知がきちっと実行されるかどうかについて、ちょっと言葉は悪いですけれども出しっ放しと、要するにこの通知のフォローアップはどうしていたんですかということをやっぱりお伺いをせざるを得ないわけでありますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(工藤智規君)
 通知の趣旨からして、一つには入学手続以前に寄附金を収受していたという点、それから今お話がありましたように直接でない形での収受であった点、これは通知で私ども申し上げたことに明らかに違反することであろうと思ってございます。
 今まで放置していたのかというのは大変心外ではございますが、私ども毎年国公私の大学すべてに通知を発しておりまして、入試の公正な確保というのはもう口を酸っぱくして言っているところなんでございます。一片の通知だけではなくて、いろんな会議でも言っているわけでございますし、大変残念なことだったと思ってございます。
 先般、学校法人運営調査委員の方々の会議で意見を伺ったのでございますが、やはりもう一歩踏み込んだ指導が場合によっては必要かもしれないなと。例えば、各大学が、自分のところはそういう変なことをしていませんよというのであれば、募集要項の中に、もしだれかからそういう話があれば言ってくれと、そうするとうちじゃない話なんで、もう公明正大にうちでは入試手続終了前にはそういうことしていませんというのを明示してもらうとか、幾つかの改善策などの御示唆もいただいてございますので、今回の全貌が明らかになった段階で、更に大臣、副大臣等とも御相談しながら、指導の徹底に努めてまいりたいと思っております。

○鈴木 寛
 是非、どういったまず実態解明をするのか、そのことは国会に是非きちっと報告を継続をしていただきたいと思いますし、それから正にこうしたチェック体制、公正の確保というものをどのように国会全体として作り上げていくか、政府全体として作り上げていくかについては、我々も引き続き議論をさせていただきたいと思います。
 世の中に、私立大学は適当に建学の精神に基づいて入学者選考をやったらいいじゃないかという風潮があること、これに対しては、私はもちろん建学の精神に従って個性あるいろいろな入学者を入れるということはこれは当然だと思います。しかし、事我々の貴重な税金であります私立大学経常費補助金が入っている瞬間に、これはやはり何でもかんでも自由に入学者を入れたらいいということには全くならないということと、それからもう一つは、例えば医師免許とかあるいは教員免許というのは、大学でのそうした学士を取っている、あるいは修士を取っているということが非常に職業の自由の制限を解除するという極めて重要な免許制度の根幹に大学制度があって、そしてその大学制度の一翼を私立大学が担っているわけでありますから、そういう観点からどう考えてもやっぱり公器だと思うんです。
 そうした公器にどういう人材を入れるかどうかということは、これは本当に社会のいろんな制度の根幹にある話でありますから、是非そうした観点から確実に実効のある入学者選抜の公正確保ということについて引き続き検討をしていただきたいと思いますし、ただもう一つ併せてお願いをしたいのは、こうしたいわゆる社会的な問題が起こりますと、お役所といいますのは焼け太る傾向がございまして、決して焼け太る方向での規制強化につながらないようにしていただきたいということも併せお願いを申し上げたいと思います。
 その際に私が御提案を申し上げたいのは、パブリックプレッシャー、要するに社会全体がこの社会にとって極めて重要な、特に二十一世紀の本当に重要な社会主体になるであろう、なるべきである大学について、文部省ももちろんその一員ではあると思いますけれども、文部省のみならず、本当に世の中全体でこうした公正が確保されるように、そういうシステム作りといいますか制度作りということを十分に念頭に置いて新しい公正確保策というのも講じていただきたいと。決して私学の健全な精神の、自由濶達な私学運営ということが焼け太りによってそがれることもないように工夫をしていただきたいと思います。
 最後に、こうした一連の入学者選抜の公正確保について今後文部省としてどのような具体的な制度的な改革をされていく御予定か、先ほどのパブリックプレッシャーも利用した、あるいは第三者機関の活用などもそういったメニューの中に入ってくるんだと思いますけれども、その中身とスケジュールについての方針をお答えをいただきたいと思います。

○副大臣(岸田文雄君)
 御指摘のように、大学の入学者選抜に当たってその本人の資質とか能力以外の要素で結果が左右されるということ、これは大学の信頼性あるいは公正性を疑わしめるものとして厳にあってはならないものだと認識しております。
 そのために、この入学選抜の方法、スケジュールあるいはその判定方法等の仕組み等についてもいろいろ検討していかなければいけないと考えますし、あるいは大学の財務状況を始め、情報の公開、透明性を高めるというようなことも考えなければいけない。こういった点を今回、帝京大学に対してこれから厳しくまた調査を進めていきたいと思っておりますが、その中で問題点をしっかりと把握をして、どういった具体的なポイントがあるのかしっかりと整理をしていきたいというふうに思っております。その上でその調査結果を生かしていくということがまず重要だと考えております。
 そして、さらに今回一部の外部からの圧力とか、そういったことによって公正さが損なわれたのではないかという疑いが出ております。この部分に関しましては、最後は私立大学、大学当局者の認識とか対応がこれは大変重要になってくると思っております。これに対しては、やはり今、先生が御指摘になられたように、こうしたことにかかわることがいかに社会的評価においてマイナスになるのか、この辺の認識が重要だというふうに思っておりますので、まずは今回の件で文部科学省としてもしっかりと厳正に対処する、そのことをまずしっかりと周知することが大切だというふうに思っておりますし、そのことが社会においてこういった事件に対する共通の認識を得ることになるのでありましょうし、そしてその認識の下に関係者がしっかりとした体制を内部にも作っていくということが肝要だというふうに思っております。
 いずれにしましても、外部の制度、内部の認識等も含めまして、社会全体でこの問題に取り組んでいくということ、大変重要な指摘だというふうに認識しております。

○鈴木 寛
 終わります。


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