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 文教科学委員会  国立大学法人法案について〜

2003年05月29日 


○鈴木 寛
 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 私は、民主党の大学改革プロジェクトチームの事務局長をいたしてまいっております。実を申しますと、私、特に民主党の中でも国立大学法人化という政策については正直推進をしてきた者の一人であります。文部省が国立大学の独立行政化ではなくて国立大学法人化なんだということをきちっと表明されたことを機に、党内でも様々な議論がございましたけれども、その方向についての意見調整といいますか、意見醸成に努めてきたわけでございますが、正直、今回の法律を、正に法文を見せていただきまして、そうした私といたしましては大変に裏切られた思いを持っているということを冒頭に率直にお伝えをしたいというふうに思います。
 正に文部科学大臣は、今までの様々な意見表明の中で、更に申し上げますと国会の中でのこの提案理由説明の中でも、要するに、法人化によって自律的な環境の下で国立大学をより活性化し、優れた教育や特色ある研究に積極的に取り組む、より個性豊かな魅力ある国立大学を実現することをねらいとするというふうにおっしゃっておられますが、この法案、一言で申し上げますと、私は羊頭狗肉、換骨奪胎法案だというふうに申し上げたいというふうに思います。私は、そのことを見逃したのか、知っていたけれどもしようがないと思ったのか分かりませんが、我が尊敬する有馬先生もいらっしゃる与党がこの欺瞞を見逃されたことに対しては大変に率直に残念に思いますし、正に良心の府である参議院でもってこの欺瞞性をきちっと明らかにしていきたいと思っております。
 民主党は衆議院におきまして、正に、羊頭狗肉ではなくて、正に大学の、先ほども文部科学大臣から御答弁がございましたけれども、国立大学が国の枠組みから外れて自主自律の国立大学にしていくんだということを文字どおり実現するための修正案を衆議院において出させていただきました。この修正案について文部科学省並びに与党はもう少し真剣に御検討いただけるものと期待をいたしておりましたけれども、我々の修正案に対するこの一顧だにされない態度ということについても私は大変に問題だということを申し上げたいというふうに思っております。
 それでは、幾つかこの問題に入ります前提としてお伺いをしていきたいと思っておりますけれども、いろいろな抽象的な理念は既にいろいろなところで答弁されたり語られたりしておりますけれども、元々、この国立大学法人法を立法する、その立法が必要だと判断をされましたいわゆる客観的な立法事実についてお述べをいただきたいと思います。

○国務大臣(遠山敦子君)
 私は、この国立大学の法人化といいますものは日本の大学制度の大転換点になる大変重要なものでございまして、本法案の内容について衆議院で民主党の賛成が得られなかったということは大変残念に思っております。
 そのときに出されました修正案といいますものが、中期目標、中期計画とともに国立大学法人が作成をして文部科学大臣への届出にするというような、つまり、これはもう国立ではなくなるわけでございますね。それでは高等教育全体の在り方あるいは財政上の観点を踏まえた国の責任ある対応という観点からは疑問であったというふうに言わざるを得ないわけでございまして、しかし、有馬先生との応答、あるいは私が心を尽くして答弁しております中で是非とも私どもの真意をお酌み取りいただきまして、参議院の独自性をもって民主党も参議院で賛成に回っていただきたいと思うわけでございます。
 お尋ねの件でございますけれども、現在の国立大学は、大学としての特性を踏まえて様々な特例措置を講じておりますけれども、基本的には行政組織の一部として位置付けられているわけでございまして、予算、組織、人事などの面で様々な規制を受けて教育研究の柔軟な展開に制約があるというのは、これはだれも納得しているところではないかと思います。
 こうした国の組織であることに伴う諸規制を緩和をして、国立大学がより大きな自主性、自律性と自己責任の下でこれまで以上に創意工夫を重ねながら、教育研究の高度化あるいは個性豊かな大学作りに取り組むということを可能にするために法人化する必要があったわけでございます。
 私は、是非、先生の貴重なお時間をもらって恐縮でございますが、今回の国立大学の法人化というのは忽然として出てきたものではございません。そのことについて若干時間を取らせていただいて説明をさせていただきたいと思います。
 日本の国立大学の設置形態につきましては、国の行政組織としての位置付けに由来する制度的な限界を踏まえまして、昭和三十年代の末ごろから各方面で多種多様な法人化論が提起されるようになったわけでございます。
 例えば、中央教育審議会の昭和四十六年の答申、ここでは法人化を国立大学改革の選択肢の一つとして位置付けました。また、昭和六十二年に飛びますけれども、この臨時教育審議会答申第三次におきましては、国立大学の改革手法の一つとして国立大学の法人化を検討した上で、将来に向けての検討課題としたのは多くの方が想起していただけると思います。
 臨教審以降、国立大学の改革は、新たに設置された大学審議会、私、たまたまこれは高等教育企画課長として立案をし、そして最初の滑り出しまで担当したわけでございますけれども、その審議会の議論などを踏まえて、現行設置形態の下での自主自律体制の確立と教育研究の特質に応じた柔軟、活発な運営の実現を目指して諸規制の緩和、弾力化が進められたわけでございます。その改革は大学の個性化、高度化、活性化という高い理念の下に進められておりまして、国公私を通じて今強力な大学改革が進んでいるところでございます。
 その後、平成八年に発足しました行政改革会議では国立大学の民営化が取り上げられたわけでございます。しかし、平成九年五月の中間整理におきまして民営化を不適切と整理をされまして、続いて独立行政法人化が検討されたわけでございますが、平成九年十二月の最終報告において、大学改革方策の一つの選択肢であるとしながら、長期的な視野に立った検討を行うべき課題であると結論をされたわけでございます。
 その後、国による財政措置を前提とした独立行政法人制度の詳細が明らかになったことを機に、平成十一年四月には、政府として、国立大学の独立行政法人化の問題を、単なる行革の観点ではなく、大学の自主性、自律性を尊重しながら大学改革の一環として検討するとの方針が確認された、これは閣議決定でございます。
 これを踏まえて、平成十二年の七月に、多くの国立大学関係者も参画する形で専門の調査検討会議を発足させまして、法人格の国立大学の具体像の検討をその後一年八か月にわたって重ねました。ここには国公私立の大学関係者その他の有識者がお集まりになって、本当に熱心な御議論の上この報告書が出たわけでございます。昨年三月にそれが取りまとめられたわけでございますが、今回の法案は、その最終報告に基づいて法制化を図ったものでございます。
 その基本的な方針としては、国立大学については、独立行政法人制度の基本的枠組みを活用しながらも、国立大学の自主性、自律性の尊重、それから大学の教育研究の特性への配慮の観点から、独立行政法人とは異なる仕組みが必要ということで、通則法ではなく、国立大学法人として法人化するものでございます。
 政府の長い議論の中で、民営化か独立行政法人かという二者選択を迫られたときに多くの、中曽根委員もそうでございますし、有馬委員もそうでございますし、さきの町村先生もそうでございますが、多くの方の努力によって、それは独立行政法人ではなくて、しかし民営化ということもなじまないということで、国立大学法人という形で今日提案をしているわけでございまして、いかにして、そこのところの独立行政法人の大きな枠組みを活用しながらも民営化ということをむしろ避けるために、いかにして国の責任において大学を維持していくかということにおいて、すべての法案はやってまいっているわけでございます。
 そういう経緯自体、あるいは私どもの取り組んでいるこの意欲というものについて、十分に御参酌の上、これからの御論議をいただきたいと存じます。

○鈴木 寛
 今みたいな経緯は我々も十分承知をしております。しかし、今おっしゃったことが、一条から見ていくと必ずしもそのようになっていないんではないかと。要するに、国の枠組みから外れて、例えば今規制緩和とか制約を取り除くとかいろんなキーワードがございました。本当にこの条文を一つ一つ見ていったときに、そういうふうになっているかどうかという、具体的な条文のところに至りますと、そうではない。
 大臣がそこまでおっしゃるのならば、私はこれはだまし討ちと申し上げてもいいと思うんです。私はもうちょっと冷静に議論をさせていただこうと思いましたが、そこまでしゃあしゃあとおっしゃると、ちょっと私もかりかりはしてまいりましたけれども。
 要するに、我々民主党も、まず立場をきちっと明らかにしておきたいと思いますが、まず国立大学の法人化をする、正に言った国立大学法人化ですよ、独立行政法人ではなくて国立大学法人化をするということについては、これは一つの取り得べき方向として賛成をしております。
 しかし、その目的は、大学の自律ということがきちっと文部省から確保されているということと、と同時に、大学の独善になってはいけませんから、それが内外の大学の関係者あるいは社会全般からきちっと評価を受けて、あるいはそうした方々の創意工夫とか努力とかというものが結集されて、我々はこれをユニバーシティーガバナンスの向上という言い方をしておりますけれども、正に大学の自己統治能力というのが向上して、さらに文部省の息の掛かった評価機関のみならず、正に第三者の評価機関から様々な観点からの評価がなされて、何といいますか、自己革新というものが不断に行われていくということが私は望ましいというふうに思っているわけでございまして、その民主党の基本的な考え方と、じゃ文部科学大臣の御意見はどこが違うのか、一緒なのか、そこをまず一回きちっとさせていただきたいと思います。

○国務大臣(遠山敦子君)
 私は、決してだまし討ちでもないわけでございまして、真摯な検討の後に今日法案を提出しているわけでございます。
 今お挙げになりました点で評価のことがございました。私は、評価というのは、国が国の意思において設置する大学に対して責任を持って国費を投入するわけでございまして、国費を投入する以上は、これはしっかりした評価がなされて、そしてその国費が目的に沿ってきちんと使われたかどうかということを検証した上で、次の期における国費の投入に反映させていく、これは当然のプラン・ドゥー・シーでございまして、恐らく委員もそのような行き方ということで法人化に賛成していただいていると思います。
 評価につきまして、確かにおっしゃるように第三者機関で様々な形でなされるのも本当にいいと思うわけでございますけれども、今の日本では第三者機関による大学評価をやっているところはどこもないわけです。アメリカでは、本当に何十といういろんな評価機関が自主的に開発されてきて、いろんな角度からの評価機関があるわけでございますけれども、日本では百年河清を待ってもなかなかそういう状況になってこないわけで、これは社会のいろんな状況ないし国民性にもよるのかもしれませんけれども。今日ありますのは、大学学位授与評価機構でございますが、今回の私どもの評価も、一番大切な教育研究に係る評価につきましては大学学位授与機構の評価を当てると、もって当てるということになっております。したがいまして、おっしゃるところの第三者機関で評価をするわけでございます。
 ただ、業務とかあるいは予算上の問題ですね、そういった業務にかかわる事柄につきましては教育研究とは違いますので、そこのことにつきましては、これはほかに評価機関がないわけでございますので、文部科学省における国立大学評価委員会でしたかね、においてやると。しかし、それも官僚がやるというわけでは全くございませんで、それこそまた英知ある方々のお集まりの上で委員会を構成してやっていこうということでございまして、法文上は一見そのように骨を書くわけでございますから、国が文部科学省の中における委員会において評価というふうに読めるかもしれませんけれども、私どもの真意は、ここに正に書かれておりますように、評価のやり方についてはそのとおりやろうというふうにしているわけでございまして、決してそれがおっしゃるような、また、何かやるというようなたぐいではございませんよね。

○鈴木 寛
 大臣、非常に答弁巧みなんですよ。
 申し上げます。業務と予算上のことについては文部省が、あるいは国がきちっと対応すると。ここについての私は合理性は認めておりますし、そのことについて評価委員会がそれを担っていくということについては、私もその合理性を一定程度認めるものであります。
 しかし、例えば中期目標の中には、三十条でありますけれども、教育研究の質の向上に関する事項というのが入っているわけですね。私はいろんな真意は分かるつもりなんです、今までは非常に好意的に解してきましたから。その報告書が出たときも党内でいろんな議論がありました、あるいは世の中でいろんなことを言う方がいました。その中では、真意はこういうことだと、で進められているということを信じていました。ですけれども、真意がそこにあるんであれば、それから御答弁を聞いていると、恐らく真意がそこにおありになるということもうかがい知れるんですけれども、であれば、法律を作るということはやっぱりいろんな懸念があるわけですよね。その懸念をやっぱりきちっと払拭しておくと。特にやっぱり成文法をきちっと作るというときには、やっぱり想定される心配事というのは全部、全部最小化して、そしてそういう真意が真意として反映されるような私は法律作りをすべきだと思うんです。
 例えば、いろいろな経緯がある。例えば、国立大学協会が十三年六月に設置形態検討特別委員会報告というのを出しております。その中で、中期目標・計画は大学側が決める形、それが望ましいという御意見があります。それも今、大臣がおっしゃったいろんな経緯の中で重要な指摘だというふうに思います。であれば、大学側が中期目標、中期計画を作るというふうに条文で書くべきだと思うんです。そして、先ほどから、例えば副大臣、大臣が御答弁の中で、国は、あるいは役所は財政面の支援とか業務上のものだと。だったらそのように私はきちっと書いて、三十条を修正をされたらいかがですかと。そして、この名前は分かりませんけれども、例えば中期経営計画とか中期財務目標とか、そういうふうに書けばこんな議論をするつもりはない。我々も国立大学をより良くしたいと思って提案をさせていただいているわけでありますし、修正案もそういう気持ちで作らさせていただいているわけであります。
 でありますから、私は、羊頭狗肉と申し上げているのは、御答弁を聞いていると、微妙に文部省と国立大学法人との関係のところは余りお触れにならないで、それ以外のところの真意、それ以外の真意はよく分かりました。であれば、その真意をきちっと法文に書きましょうと、正に法律を作るというのは私はそういう作業だと思うんです。で、いろんなことが懸念される。そのことを申し上げているということで、例えば、であれば、先ほど申し上げました十三年六月の中期目標、中期計画は大学で決める形がいいというのが国大協の考え方でありました。しかし、条文ではなっていません。平成十四年の長尾国大協会長は、そういうことを言っていたけれども、まあ何となく盛り込まれたから良しとするという非常に苦し紛れの国大協見解を出しておられますけれども、そうではなくて国大協がそういうふうにおっしゃっているんだったらやっぱりきちっとオリジナルな条文にされたらいかがですかというふうに思いますが、どうでしょうか。

○国務大臣(遠山敦子君)
 今のことは先ほどの経緯をじっくりお聞きいただければ十分回答になっているわけでございますけれども、大きな国の方針の中で、民営化か独立行政法人化かという中で、独立行政法人の大きな傘の下で国立大学法人という独自性を持った法人を作ろうということでできているわけでございまして、国立大学が、国の意思で設置をし国費を投入するというところから、一番その骨格となる部分の決定者は、決定者自体は文部科学大臣となっておりますが、三十条の中に、正にお触れになりました三十条の中に、それは中期目標を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、国立大学法人の意見を聴き、当該意見に配慮するとともに評価委員会の意見を聴かなければならない。評価委員会につきましては先ほど言いましたように実質、そうですね、行政組織としての公務員がやるということではないわけですし、それから、国立大学法人の意見を聴き、あるいは尊重しということでございますから、実際的には私は大学が定める、あるいは大学の原案というものをベースにして決めていくわけでございまして、大学ないし大学法人の意図というものが生かされていくわけでございます。
 私の今言っております実際的にはというところを是非とも将来にわたって記録に残しておいていただきたいと思うわけでございます。
 しかも、この法人法の、国立大学法人法の第三条におきまして、これは他の法律にはないわけで、独法には、他の独立行政法人関連の法律には絶対ない条文でございますが、国は、この法律の適用に当たっては、国立大学及び大学共同利用機関における教育研究の特性に常に配慮しなければならないという大前提の下、三条でございます、書いてあるわけでございまして、私は今御懸念の点は当たらないというふうに思います。

○鈴木 寛
 実際的にとおっしゃるんだったらそのとおり書けばいいということを私は申し上げているんですよ。法律を作るというのはそういうことですよね。要するに、これ未来永劫この条文をその時々の当事者が参照をして、よりその法文に忠実に大学行政をやっていこう、あるいは国立大学を運営をやっていこうと。そのときに一番立ち返るところが法文でありますから、そうすると法文をきちっと直せばいいわけでありまして、法文が残るんですから。それを答弁でどうのこうのと言う、おっしゃるんだったら、真意がそこにあるんだったらそのとおり書いたらいいんじゃないですかということを私は申し上げているわけでございます。
 ちょっと確認をしたいんですけれども、これ、独法というのは元々国が中期目標を作って、そしてその独法が中期計画を作って認可すると、こういうスキームになっていますね。一点確認したいんですが、独法がそうだから国立大学法人をそうしたのではないですよね。要するに、国立大学法人というものの、独法がどうであれ、そのこととは全く切り離して今回の国立大学法人法の策定に当たって国が目標を作り、そして計画を認可するというフレームワークがやっぱり正しいと、これは独法の議論に引っ張られたものではないということだけちょっと確認させてください。

○政府参考人(遠藤純一郎君)
 先ほど来から大臣が御答弁申し上げておりますように、大学改革の一環として検討され、こういう国立大学法人の制度ができたと。委員も御指摘のように、大学を法人化し、自由な裁量に基づきまして自主性、そして教育研究を大いに伸ばしていきたいと、こういうことでございまして、その際に独法、これは御案内のように国が必要な事務事業を、効率化という観点も入りますけれども、きちんと財政措置をしながら法人化をすると、こういうスキームでございますので、そのスキームを活用しながら、これも御答弁何度も申し上げておりますように、大学という特性、この特性に配慮してその特性が生かされるようにということでございまして、したがいまして、法人化をし、国が財政措置をする、しかしやはり財政措置をする以上国が責任は持たなくちゃならない。
 その接点をどうするかという際に、目標、計画という、やっぱりそのスキームというのは目標、計画があり、それで事後的な評価と。そのスキームというのは、基本的にはよろしいけれども、ただそのままではやはり大学にとってふさわしくないと、こういうことで目標について条文に書いてございますように大学から出していただいて、それを配慮するという形、そしてこれを実現するためには財政措置、したがいまして、その計画、中期計画に沿ってこれを実現するわけでございますから、そういう意味でやはりそれを認可という形にさせていただいたと、こういうことでございまして、そして全般的に大学に配慮、特性に配慮しなければいけないという三条を設けさせていただいたと、こんなような形になると思います。

○鈴木 寛
 これは、大学固有の問題であるということは今の御答弁で確認できました。先ほどから大臣のお話、そして局長のお話の中で、私も財政上国が責任を持って、そしてその前提として中期目標、中期計画を定めていくということについて何ら、同じ考え方です。
 であれば、第三十条の二項の第一号に教育研究の質の向上に関する事項というのがございます。この条項を削除していただいて、中期目標、中期計画の名称を、例えば中期財政目標とか中期業務目標とか、中期業務計画というふうに変更していただくという修正案を提起した場合には、それは御検討していただけますか。

○政府参考人(遠藤純一郎君)
 やはり大学の使命は何であるかということを考えますと、やはり教育研究と、そしてそれを向上するというのがやはり大学の第一の使命でございますから、大学が自らの姿勢として目標にそれを掲げるのは当然だろうというふうに思っております。

○鈴木 寛
 私も、大学当局が、大学がそれぞれにその使命として教育研究の質の向上を自ら作成し、そしてそのことを世の中に公表することは大変にいいことだと、あるべきことだというふうに思っております。しかし、この問題の本質は、正に教育研究の質の向上に関する事項というものを明確に含む中期目標を文部科学省が策定をするというところにあります。そのことは御理解をいただけていると思いますし、今正にこの法案をめぐって極めて重要なポイントの一つだというふうに思っております。
 それで、私は、この法律の問題点というのは、正にその教育とか研究とかといったものについての基本的な認識といいますか、それが少し違うのかなということが一つございます。
 それから二つ目は、正に大学行政といいますか、大学政策というのは極めて戦後大変な歴史の積み重ねがある。そして、憲法上の要請の下に、そうした先人たちの積み重ねの結果、様々なことが慣習法として確立をしているわけですね。そこで、慣習法として確立をされた憲法を実現をするための極めて重要なルール、学問の自治とか、大学の自治の保障ということが今回の成文法によって、正に変えられてしまうと、ここが私は決定的に問題だと思っております。
 今までは我々は、文部省の蚊帳の外から、あるいは官僚統制から独立をするんだ、離れていくんだと、そういう前提で、そしてそういうことについては非常にいい方向じゃないかと思って、遠山文部大臣のそうした試みといいますか、御活躍に対して一定のというか、一定以上の御協力をさせていただいたつもりでございますが、しかし、そうした正に、一見、国立大学法人が文部省の傘から出ていくというふうなことを標榜しながら、その実見てみますと、教育研究の質の向上、教育研究の内容については今までは文部科学省は介入できませんでした、してきませんでした。そのことは当然のことだと思います。
 しかし、今回の法律でもって、中期目標の中で、しかも法律に書いてまでその研究、教育の質の向上に関する事項に対して、文部省の目標制定権を定めているというところが私は問題だというふうに思いますし、それから、独法化でないと、そう表明されて我々もそれでよかったと思っていたにもかかわらず、国立大学法人と独法との議論がまだ未整理だということであります。
 事前に、五月二十七日の朝日新聞に、「私の視点」というところに京都大学の佐和隆光先生の投稿を読んでおいてくださいということはお願いを申し上げました。佐和先生は衆議院の参考人質疑でも参考人として来ていただいて、大変に見識のある大変大事な御意見をいただいたわけでありますが、まず、要するに研究を計画できるのかどうかということについて少し議論をさせていただきたいと思います。
 佐和先生のおっしゃることは、計画と統制というものは研究とか教育というものになじまないんだということをおっしゃっております。私も全くそうだと思います。それから、ほかの参考人で、あるいは有馬先生もおっしゃいましたけれども、ノーベル賞を取られた今までの、参考人の赤池さんは、田中耕一さんとか白川さんとか福井さんの例を挙げて、研究というものがなかなか計画したどおり、インプットこれぐらいしたらアウトプットがこう出てくるというものではない、非常に複雑なあるいは不確実なものだということをお話しになりました。
 それから、私は先日、野依先生とお話をする機会がございました。基礎研究、とりわけ基礎研究を語る上でセレンディピティーという言葉があるのは御存じだというふうに思いますが、御存じでしょうか。

○政府参考人(遠藤純一郎君)
 質問をいただいて勉強しまして、セレンディピティーと、これは思わないものを偶然に発見する能力、偶然と幸運による発明といったようなことが辞書に書いてあります。

○鈴木 寛
 そうなんです。思わないものを幸運に発見する能力。例えば、田中耕一さんのお話を聞いても、正にセレンディピティーによってノーベル賞を受賞する発見に結び付いているわけですね。
 私は、野依先生の研究のお話を聞きましたが、野依先生がセレンディピティーなるものに直面するのに十年掛かっておられるんですよ。そうすると、中期計画は六年なんですね。そうすると、六年の間にセレンディピティーが来るかどうかというのは分からないわけです。そういう意味で、非常に研究というのは難しい。そのことは有馬先生も同じお気持ちでお話をされたんだと思います。
 佐和先生も、正に参考人質疑の中で、学術研究を計画することは不可能なばかりか有害だとおっしゃっています。そして、研究には多大な不確実性がつきまとう、研究の成果のいかんを事前に予測することは神ならざる人間にとって不可能な仕業なのです、したがって、研究は経済以上に中央集権的な計画になじまないというふうにおっしゃっておられますけれども、この佐和先生の御発言といいますか、見解について何か御意見がありますか。

○政府参考人(遠藤純一郎君)
 御指摘のように、個々の研究につきましては、短期的なもの、長期的なもの、いろんなものあると思います。今ここで、この法人法で言っております中期計画ということでございますけれども、個々の教員の研究計画を中期計画として出していただくというような趣旨では全くないわけでございまして、あくまでも大学全体、大学という組織全体として研究の体制その他そういう教育研究等の計画を記載していただくということでございます。

○鈴木 寛
 本当に参考人質疑というのは非常に参考になるなというふうに思っておりますんですけれども、これも衆議院の参考人質疑の中で、統制の愚ということを前鹿児島大学の学長の田中参考人が非常にクリアに言っておられます。
 正に、国立大学の法人化の中心目的は自主性と自律性の拡大にある、ところが、本法案は予算、組織、人事に関する運営上の裁量は拡大するが、大学の本来の任務である教育研究の自主自律は逆に大きく損なわれるとおっしゃっています。なぜなら、独法通則法を基本とする本制度においては、大学が一体となって持っていた企画、立案、実施の機能は分割をされ、企画、立案は文部科学省に権限が移されて、大学は実施の機能しか割り当てられない。正にこういうふうに、中期目標を文部省が作って、そして計画を大学がやって、そして文部省の認可が要ってと、こういう制度になっています。しかも、文部科学省は、その業務の成績評価、予算配分、大学の改廃まで決定する権限が与えられている、したがって、この制度は政府や官僚が強力な権限を持ち、国立大学を直接統制することができる仕組みを内包していると言うことができるのでありますと。
 このことを多くの方が懸念されているわけです。御答弁では、いや、そんなことはございません、ございませんとおっしゃいます。であれば、法文でもってきちっと懸念は晴らしましょうということをずっと申し上げているわけでありますけれども、再度、この田中参考人の説に対する反論を聞いてもまた同じことだと思いますので。
 さらに、田中参考人は、大学に対するこのような国の縛りは我が国において存在したことがなく、もちろん現行制度にもありませんと。従来、文部科学省はその権限の行使に当たって法律に別段の定めがある場合を除いては行政上及び運営上の監督は行わないものとする、これ文部科学省設置法第六条の第二項でありますけれども、とされてきたのでありますと。したがって、この制度は大学に対する規制強化を意味しておりまして、構造改革の旗印である規制緩和と明らかに矛盾するものでありますとおっしゃっています。私も全くこの意見に賛成をいたします。
 でありますから、先ほど、この国立大学法人法に乗じて規制強化しているというところを問題を指摘をさせていただいたわけでありますが、この点について文部省の反論をお聞かせをいただきたいと思います。

○政府参考人(遠藤純一郎君) 今、文部省設置法六条二項というお話がございましたけれども、これは文部省がその権限の行使に当たって法律に別段の定めがある場合を除いては行政上及び運営上の監督を行わないと、こういう規定でございますけれども、今までは、国立大学につきましては国の組織の一部ということで、内部組織ということで位置付けられていたわけでございまして、そのため、その内部組織であるという必要から予算あるいは組織面等々、日常的に言わば大学と相談をし、助言をし、指導するという関係にあったわけでございますが、これはあくまでも内部組織でございますから、言わば文部省設置法六条二項の規定の対象ということではなかったというふうに思っておるわけでございます。
 今回、法人化に当たりまして、これはもう内部組織から独立をして法人化にされるということでございまして、その関与につきましては、中期目標、中期計画、評価といったような点、それも一定の配慮をしながらのそういう関与に限定をして各大学の裁量を大幅に拡大すると、こういう仕組みにしているところでございます。

○鈴木 寛
 それを役人答弁と言うんだと思うんです、私は。
 なぜこういうふうな設置法第六条第二項が設けておられるのかと。これは正に憲法の二十三条の要請であり、戦後の大学行政をめぐる、大学政策をめぐる我々の先人たちの積み重ねの結果、やっぱりこういうものがその設置法の条文として反映をされていると思うんですね。
 正に、さらに田中先生は、大学本来の学問的使命に対する以上のような歪曲は、世界に例を見ないものでありますと、これはまた、憲法二十三条の学問の自由の保障や教育基本法第十条の教育の不当な支配の排除に反するというふうに述べられております。
 こうしたことの観点から、いろいろな法律を作るに当たって、我々の先人たちはいろんな配慮をしてき、そしてそれに基づいて適切ないろいろな行政が行われてきたんだと。その根っこのところが、今、先ほどから何回も繰り返しておりますけれども、三十条の二項で教育研究の質という文言が堂々と書いてあって、そこを目標設定権限が文部科学省にこれは追加的に付与されているということが私は大事、大変に問題だと思っております。
 私は、この学問の自由というのは、正に民主主義の原点だというふうに思っております。表現、言論の自由が大事だということはよく言われますが、表現をする中身、正に真実というものが何であるかということを探求するのが学問でありますから、よって、私は表現、言論の自由と同等の憲法上の重要性を学問の自由は有するというふうに思っておりますし、言論人、言論をする人材というものを育てるというのが大学教育の最大の使命でありますから、そういう意味で、言論人を本当にきちっと、先ほどの民主主義の担い手としての言論人を養成する、その大学の自治が確保されているかどうかということは極めて重要な問題でありまして、したがって、そのところに文部省が明示的に権限、根拠を追加をするということは問題であるということを申し上げているわけであります。その点について反論を求めます。

○政府参考人(遠藤純一郎君)
 いわゆる学問の自由、憲法二十三条につきましては、この規定に由来するものといたしまして、大学に対しまして教育研究に関する大学の自主性を尊重する制度と慣行である大学の自治というものが慣行上認められてきておるということでございまして、その内容を国立大学について見ますと、一つは人事でございまして、大学の教育研究に携わる人の人事は大学の自主的な決定にゆだねるということ、それからもう一つは、教育研究につきましては大学が自主的に決定した方針に従って行われるべきであるということが、この二点が主要な点として認められてきたということになろうかと思います。
 この点につきまして、国立大学法人法案におきましては、まず人事の面につきましては、文部科学大臣による学長の任命、これについては学長選考会議の選考による国立大学法人の申出に基づき行うということにしておりますし、教員の任命は学長が行うと、こういうことになっておるわけでございます。
 それから、教育研究について自主的に決定する云々の問題でございますけれども、これも中期目標の策定に当たりましてあらかじめ国立大学法人の意見を出していただくと、そしてそれに配慮をするということにしておるわけでございまして、またその法人の内部におきましても、教育研究に関する重要事項は教員の代表者で構成される教育研究評議会が審議をするという規定を置いておるところでございます。
 私どもとしては、こういったようなことで学問の自由という点について十分配慮をしているというふうに考えておる次第でございます。

○国務大臣(遠山敦子君)
 局長の答弁のとおりでございますが、ちょっと私の感想も言わせていただきたいと思いますけれども、やっぱり委員会の議論というのは次々に積み重ねていって中身のある議論にしていった方が、していくことが望ましいと私は思います。
 私と有馬委員との間で展開いたしました、それらは学問の自由を守り、これまでの研究者の持ってきた自由というのは更に確保されるんだということも明確になり、かつ憲法の引用も私からいたしたところでございます。そうした積み重ねの上で議論はなされていくのが望ましいと思いますし、さらに、先ほど引用されました参考人、確かにそういうふうなことをおっしゃったようでございますけれども、他の参考人も二人おられまして、これらは現役の国立大学の学長たちであったと思います。その方々の参考人意見といいますものは、中期目標、中期計画についての今の法案の行き方というのは当然であるということを明確に述べられているわけでございます。
 田中参考人は、前の鹿児島大学の学長であったわけでございますが、国立大学協会の中でも明確に参考人意見として述べられたような立場でおられたようには思います。しかし、それは国立大学協会のすべての学長たち、総長たちを代表する意見ではございません。私は、本当に今、大学の学長なり総長たちが自らの大学をこれからの世紀に合う知の拠点として活性化していくという角度から正に取り組み始めておられるときであるというふうに考えております。
 そして、論点は中期目標、それから中期計画の立て方に絞られているわけでございますけれども、そのことにつきましては再三御説明しているとおりでございまして、繰り返すことはいたしませんけれども、大学の自主性、自律性を守りながら国費を投入し、またそのことについての責任を持つということの表れの法文であるわけでございまして、そのことについて十分な御理解をいただきたいと存じます。

○鈴木 寛
 今の大臣のお話に非常に端的に表れていると思うんですね。前国立大学長の、鹿児島大学の学長をやっておられた田中さんは、やっぱり自分が御経験されてきたこと、そして自分の信念を御自由に吐露していただいたんだと思います。そして、現職にあられる大学長は、文部省の御意向というものを横目で見ながらそうした答弁をせざるを得なかったと。正にこの問題というのの核心が今の大臣の御答弁の中に入っていると思うんです、私は。
 なぜ、ここまでにこの中期目標あるいは中期計画についての文部省についての関与についての懸念が世論の中で沸き上がっているかというと、結局、戦後五十年の文部科学省が、旧文部省が大学当局にいろんな意味で有形無形の、正に生殺与奪の権限を持つ文部科学省が有形無形の圧力を掛けてきたと、その正にトラウマがこれだけの議論を呼んでいるわけであります。
 そうしたことを私は、例えば、今おっしゃいましたけれども、石さん、一橋大学の学長、現学長でありますが、賛成の立場からの参考人だったと思います。しかし、石さんですら、各大学の努力あるいは自覚、才覚の問題で、大学自らがビジョンを立て、大学全体となって努力すればある方向で報いられると、制度設計が大事だと。ここは配慮するというふうにおっしゃっていますが、配慮するぐらいだったら作っていただいたらいいんじゃないかということを再三申し上げておるわけでありますが。
 さらに、その石参考人の発言ですが、「大学の裁量の幅をでき得る限り広げる、つまり逆のことを言えば、無用なコントロール、無用な介入はやめていただきたいということが恐らく大学人の共通の要望だ」と。役所も変わってもらわなきゃ困るということを石さんがおっしゃっているわけですね。
 そして、そういう懸念を払拭するためには、もちろん役所がこれからきちっとそういう変わったということを実践をされるということも大事でありますが、それと同時に、法律上もそうした懸念は全くないんだよということをおっしゃった方が、これはもう本当に多くの、多数、国民多数の賛意と、そしてこれから、今までのことはいろいろあったけれども、二十一世紀にもなったし、大学は本当大事だし、法律にも書いてあるし、文部省も改心すると、改心するかどうかはちょっと今お伺いしますが、というふうに、何というか、お互いに気持ちよくスタートできると思うんですが。
 まず、役所は変わる気があるかどうかというこの石発言に対する御答弁をいただきたいと思います。

○政府参考人(遠藤純一郎君)
 今回の法案によりまして国立大学と文部科学省との関係も必要最小限の関与ということで変わってくるわけでございますので、私ども、これまで日常的にいろいろ相談にあずかったり助言をしたりというようなことをしてきたわけでございますけれども、やはりこれまで以上に大学の自主性、自律性をより尊重をするということで、職員の意識もやはり変わっていくことが必要だろうと、こういうふうに思っておるわけでございます。

○鈴木 寛
 少し具体例を挙げてお話をさせていただきたいと思うんですが、私も是非変わっていただきたいというふうに思いますけれども、今回の法律の原案は文部科学省が作っておられると思うんですけれども、相変わらずやっぱりはしの上げ下ろしといいますか、非常に細かいことも規定されているんですよね。
 これは民主党の修正案の中にも入っていますけれども、例えば、今回大学の理事ということを決めることになっています。民主党の修正案は、十人以内ということだけ決めておいて、各大学の自主性でその理事の数は判断したらいいというふうに考えているんですが、文部省の出されている案では、なぜか九州大学、神戸大学、筑波大学が理事の数が八人で、東京大学、京都大学、名古屋大学は七人なんです。こんなことまで法定する必要があるんでしょうか。そういうことをいまだに法定してきちっと決めていこうというような姿勢がまだ見え隠れするので、こういった御発言なりこういった社会的な認識というものがいまだに続いているんだと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(遠藤純一郎君)
 法人化後の国立大学におきましては、学内のコンセンサスに留意しながら、学長と理事が中心となって責任ある大学運営を実現するということが強く求められているわけでございます。また一方で、通常の独立行政法人におきましても、円滑な法人運営を確保するという観点とともに、法人の役員数の膨脹を防ぐという観点から、各法人ごとに職員数に応じまして必要最小限の役員数の上限を法律で定めると、こういう考え方が取られておるわけでございます。
 国立大学の法人の理事数につきましても、原則といたしまして、通常の独立行政法人における理事の数の基本的な考え方に倣いまして、各それぞれの大学の規模をベースにしながら、国立大学法人の制度設計あるいはその再編・統合等の状況といったようなことを勘案しまして、人数を算出をしまして法定をしているというところでございます。

○鈴木 寛
 私の質問は、要するに、神戸大学は八人だとか東京大学が七人だとか、そういう一つの大学ごとにそう事細かに、しかも法律で決めなきゃいけないんですかと。
 例をほかに挙げましょう。例えば、経営協議会というのができます。学外委員というものを入れると、これは私は方向として悪いことではないと思っております。しかし、それもまた必ず半数以上じゃなければいけないということが法律で書いてあります。
 例えば、一橋大学みたいなところは八割だっていいかもしれない。しかし、例えば京都大学のような純粋なところを、きちっと突き詰めていくというところでですよ、学外からの人が例えば一〇%になるという御判断もあってもいいかもしれない。それは文部省が決めることではなくて、正に世の中に公開をされて、なるほどこの大学は学外からこういう人を、しかもその人数の比率だけではなくて、私たちが掲げています民主党の案では、どういう人が経営協議会のメンバーであるかという固有名詞を掲げたらいいんではないか、それでもってそれぞれの大学の個性、正にその経営協議会の人事にもその大学の運営方針というものが出るわけでありますから、それでもっていろんな観点から評価を受ければいいと、そういうふうに思っているわけでありますが、こうしたことも法定をするというフレームワークになっております。
 でありますから、やはりまだ文部省というのは事細かにそういうことを決めていきたいんだなということが条文でにじみ出ている。それをもうちょっと、本当に自主自律とおっしゃるんだったら、何も法律で七名とか八名とか書く必要ないではないですかということを申し上げているんです。いかがでしょうか。

○政府参考人(遠藤純一郎君)
 先ほども申し上げましたように、独立行政法人の、通常の独立行政法人におきまして法人の役員数の膨脹を防ぐ、こういう観点から各法人ごとに上限、役員数の上限を法律で定めているわけでございまして、個々の国立大学法人につきましても一定のルールの下に各大学の理事の数、上限を決めて法定をさせていただいているということでございます。

○鈴木 寛
 今のことを我々は否定していません。したがって民主党修正案では上限十人以内と決めているわけです。もちろん、大きな大学、小さな大学と分ける必要があれば十人以内と五人以内と分けても、それはそういう修正協議の中で詰めていけばいい議論でありますけれども、今のお答えは全く答弁になっていないというふうに思います。
 更に申し上げると、この中期目標、先ほどからくどいですけれども、教育研究の質の向上に関する事項を含む中期目標、あるいはその実施について詳細に決めている中期計画、これが財務省協議の対象になっているんです。これは余りにもおかしいんではないかというふうに思っております。もちろん、財務省は予算上の観点という御答弁をされるんだと思います。本会議でもそういう御答弁をされました。その答弁はもう結構です。
 であれば、中期目標の財務内容の改善に関する事項とか、そういうことに限定をするような法文の書きぶりにするとか、それから、私は元々中期目標というものを大学が決める部分と、それから役所が関与する部分と分けるべきだというふうに思います。その御提案について、この提案が受け入れられるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。

○政府参考人(遠藤純一郎君)
 中期目標の定め、変更しようとするときに、中期計画もそうでございますけれども、財務省の協議と、こう書いてございます。
 今、一部に限定したらということでございますけれども、これ全体として、業務運営にしても財務内容にしても教育研究の質にしましても、全体として財政ということにかかわってくるということがございますので、やはりこれは全体としての協議ということになろうかと、そういうことで理解をしているわけでございます。

○鈴木 寛
 あのですね、私は元々全く財務省協議は必要ないというふうに思っています。なぜならば、財務省というのは予算編成権の最終査定権限を持っているわけです。毎年年の予算でこの大学に幾らの交付金を出そうかということは最終的に財務省は決めれるんですよね。ですから、その一回でいいんだと。結局、中期目標、中期計画のところで当然財務省の査定、値切りが入りますから、すると値切りを一回受けるよりは、二回値切りたいから財務省はそういう条項にしているんだと思いますが、これは私つらつらいろいろ考えてみて、私は遠山文部大臣のこと大変に好きなものですから、何でこういうことになってしまったんだろうということを考えてみました。
 聞くところによりますと、財務省が、この中期目標を文部大臣が決め、そして財務省協議にすべきであるということを強硬に主張し、文部省がそれに屈してしまったということなのかなという推理も成り立つんですが、そこはいかがでしょうか。

○政府参考人(遠藤純一郎君)
 これは、独立行政法人全般についてそういうことでございまして、そのスキームにのっとってやっておるということでございまして、そういう形で財務省協議を、形式的にはそういうことでございます。

○鈴木 寛
 その答弁が出てくると、もう一回一からやり直しなんですよ。だから一番最初に御確認したんです。これは独法化なんですか、もう一回大臣に聞きます。

○国務大臣(遠山敦子君)
 これは、再三お答えいたしておりますように、閣議決定におきまして、独立行政法人そのものではなくて独立大学法人というものをやるということでございますが、しかし、大きな傘の中で、本質にかかわらない部分といいますか、それについては独自性をということでございます。
 運営交付金が今後も国立大学に対して措置をされるわけでございまして、これは国民の血税を投入するということでございまして、これは財政状況も勘案しながら毎年度ごとに予算措置されるものでございますけれども、その際には、あらかじめ認可された六年間の中期計画の枠組み、あるいはそれに盛り込まれた内容が前提となるものでございまして、各大学の事務事業の必要性を年度ごとに一から詳細に検討、査定するという形で国が関与するものではないということでございまして、先ほどの局長答弁の意味はそういうことを指しているわけでございます。
 これまでのように、極めて、例えば一つの学科を作るあるいは講座を新たにする、さらには小さな研究施設、それらも細々と毎年文部科学省も一緒に考え、そして財務省にもお願いをしという形でやってまいりましたけれども、これからは大きなくくりの中でやっていくということでございまして、私は、その意味で裁量権は極めて大きくなる。ただ、国費を投入するという以上、これは、私は財務という角度からの関与というのは当然あるべきだと思っております。

○鈴木 寛
 今の文部科大臣の御発言は少し問題だと思います。
 と申しますのは、予算案というのは最終的に国会で審議されるんですね。ここは与党の委員の先生方もよく聞いておいていただきたいんですけれども、予算は、それがいいのかどうか、我々は審議できるんです、予算委員会、そして本会議を通じて。しかし、中期目標あるいは中期計画、これは国会は関与できません。ですから、国会の関与ができないところでキャップといいますか大体の大枠が決められてしまって、そして、その枠の中で細々したことが予算化されて我々の国会に出てくると。これは、予算を国会で議論をしていく、正に国民の皆さんからお預かりをした税金の使い道を国会で決めていくということに対して大変な問題のある条文になっているということは、是非この委員会のすべての委員の方に御理解をいただきたいというふうに思います。
 その上で、やはりなお財務省が中期目標、中期計画の段階で、私たちの民主党の法案も、修正案も、例えば長期借入金の問題とか積立金の問題とかあるいは債券の発行とか、こうした極めて財政的に関係のあることについての財務省協議についてはそれでいいと言っているんです。それは修正案をごらんいただいたらお分かりだと思います。
 しかし、正にその目標と計画の部分についてまで財務省に協議をしなければいけないのかと。しかも、国会が関与できない中期目標、中期計画について財務省に協議をし、そして文部科学省と財務省で専権的に決めていいのかということを問題提起をしているわけでありますが、この点についての、財務省からも少し御意見を聞きたいと思います。

○政府参考人(杉本和行君)
 先ほどから御議論になっていますように、その中期目標、中期計画につきましては、国の財政にも関連すること、しかも国の財政資源というのは有限でございますので、財務大臣との協議規定が設けられるところでございます。
 そもそも、この国立学校の法人化に伴いましては、国の予算上の関与も、現在の国立大学に比べまして、先ほど文部科学大臣から御説明がありましたように、かなり柔軟化した対応が可能ということになっておりますので、そういった点にも配慮していただきたいと思っております。
 国の予算、政府部内での話でございますが、国の全体の予算とも絡む話でございますので、中期計画におきまして期間内の予算額の算定のための大きな枠組みを作りまして、それを毎年度の予算に具体的な適用を図っていくということになっております。その毎年の予算はもちろん国会に御審議いただくわけでございますから、そういった形で国会の御審議も経ることは可能だと思っております。

○鈴木 寛
 この問題は、実は、いい大学を作っていくという観点からも問題だと思っています。
 と申しますのは、中期目標あるいは中期計画で、私は、まず大学がきちっと自主的にお作りになって、そして世の中にまず公表すべきだと思っているんです。今後の国立大学というのは、もちろん運営交付金は非常に貴重な財源の一つでありますけれども、それ以外にも、授業料とかあるいは公開講座をやるとか、それから研究開発の委託費あるいは共同研究費をもらうとか、歳入も多角化していくわけですね。
 そうすると、この大学としてはこういう目標を掲げて、こういう計画で、こういうことをやりたいということをまず世の中に明らかにした方がいいと思っているんです。その上で、この部分は予算で面倒を見ましょう、そして足らない部分があります、したがって債券を発行しますから買ってくださいとか、この部分はまだ足らない、よって民間の資金をどんどん導入してくださいと、こういう議論も、むしろ大学が目標を定め、計画を定め、そしてオープンにする、これが民主党案の基本的な考え方ですけれども、ということの方がより良い大学作りに資すると思う。そのために民主党はああいう修正案を出させていただいているわけです。
 もちろん、これは善意に解すれば、何とか予算を付けなきゃいけない、しかし、ないそでは振れないということなんですが、結果として、結局二回査定が入ることによって、そうした目標あるいは大学の経営というものがシュリンクしてしまうという実質的なマイナス面もあるということを是非指摘をさせていただきたいというふうに思いますし、そういう意味で、少しちょっと観点を変えてお伺いをしたいと思うんですが、これからは、これはもう十分承知していると、御存じのことだと思いますが、やっぱり官僚機構あるいは官僚機構のやる仕事というのは得手な部分と不得手な部分とあるんですよね。私は、削ることというのは非常に得手なことの一つだと思いますけれども、何かあることをエンカレッジして、そこにどんどんどんどん増査定していくと、こういうふうなダイナミズムとか、いろんな意味で、いろんな関係者がやっぱり入って、そしてまずは、一番最初のオリジナルな案を世の中にオープンにしていくことによって関係者の議論を深めていくと、こういう制度論にしたらいいというふうに思っているわけですけれども、これは、中期目標についての意見というのは、全く文部省が事前チェック、事前コントロールをしないで作られて、そしてその後に目標を定めるわけでありますが、その以前に公表されるんですか。どうなんですか、そこは。

○政府参考人(遠藤純一郎君)
 大学が正式に持ってきたものについて、やはりこういう意見を出すということについてはやはりオープンにすべきだと、こういうふうに思っております。

○鈴木 寛
 そうすると、事前に大学の考え方というのは世の中にオープンにされて、それに対して文部省がどういうふうな変更を加えたかと、これは新旧を対照すれば分かるということになるというふうに理解してよろしいですか。

○政府参考人(遠藤純一郎君)
 大学から出てきました原案につきまして評価委員会に、国立大学法人評価委員会で審議をしていただくわけでございますけれども、そういう場で会議を公開にするといったような形もございますし、そういったようなことで透明性を確保しながら進めていくということだろうと思います。

○鈴木 寛
 それから、文部省から、そして財務省協議のところで変更になったこともこれは後で、我々、後でというか、要するにそのプロセスがトランスペアレントになるというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。

○政府参考人(遠藤純一郎君)
 正式な原案についてこういう意見があったということについては公開していくということになると思います。

○鈴木 寛
 これからやっぱり我々目指すべきというのは、だれがその案を責任を持って考えて、そしてだれがそれに対して意見を言って修正を加えてという、正にそれぞれの主体の自己責任ということが透明になって、そしてその政策形成過程が我々手に取るように分かるということはとっても大事だというふうに思っていますので、その点は是非更なる審議の中でも詰めさせていただきたいというふうに思っておりますが、御指摘をさせていただきたいというふうに思います。
 それから、第三者評価委員会の件で、冒頭に大臣からお話がございました。私は、繰り返しになりますけれども、別に国立大学法人評価委員会の存在を否定しているわけでは全くございません。恐らく適正な予算の執行の観点から必要な評価をするということを否定しているわけではありません。しかし、それ以外も多角的にあった方がいいんじゃないですかという提案をしていて、今ないことは我々共有しています。
 さっきも申し上げましたけれども、どうしてもこれは国立大学法人評価委員会、事務局は恐らく官僚の方がおやりになるんだと思います。メンバーの構成は非常に多角化されると言っておられますが、そこももう世の中の方々は、結局は事務局が相当な力を持ってやっておられるという実態について百も承知だからこういう懸念が出てくるわけですね。もちろん、その懸念をなるべくミニマイズしていただくという努力はしていただきたいということは当然なんですが、やはりそこには限界がある。よって、ネガティブチェックじゃなくて、もっと、評価というのはあらを探すというかネガティブチェックだけじゃなくて、ポジティブにいいところはいいということをどんどん正に評価し、褒めてそれをエンカレッジするという意味で、こういう仕事は私はお役人とちょっと遠いところの人がやった方が私はうまくいくんではないかということで、第三者評価機関の設立をもうちょっと社会全体として政策論として推進をすべきではないかというふうに思っておりますが、その点はいかがでしょうか。

○副大臣(河村建夫君)
 他の内閣委員会に出ておりまして、中座して失礼いたしました。お許しをいただきたいと思いますが。
 今の鈴木委員の御指摘は、私は非常に大学評価、大事でありますし、そういう観点をこれから高めていかなきゃいかぬと、こう思っております。
 現在、大学基準協会あるいは短期大学基準協会等の評価機関が大学の質の向上を図る観点から評価活動を展開をいたしておるところでございます。また、多くの私立大学が加盟しております日本私立大学協会を中心に新たな評価機関を設立したいというような動きもございまして、私はこれらの機関が早く立ち上げて活動をしてもらいたいと、こう思っておるわけでございます。
 残念ながら、日本においてはまだこうした第三者評価機関というものの成熟度が高まっておりません。平成十五年度予算でも第三者評価に関する調査研究費を措置をいたしておりまして、認証評価機関としての認証を受けて、第三者評価を実施しようと準備を進めている機関に対しては、その体制整備を進めるための経費を委託するということにいたしておるわけでございます。認証を受けた評価機関に対してこれから国の支援をどうするかということについても今検討をいたしておるところでございます。
 おっしゃるように、国の機関でもない、ただ身内の自己評価というのがございますが、それの外の段階で評価を受ける、非常に公正な評価機関というものが是非私は必要だと考えておりますので、文科省としてもそうした多元的な評価を行えるような機関の設置といいますか、それについては積極的に支援をしてまいりたいと、このように考えております。

○鈴木 寛
 今の点は是非その方向で頑張っていただきたいというふうに思います。
 それから、この法案の構造的な問題、要するに慣習法上いろいろ積み上げられてきたルールが、条文だけ読むとそれがむしろ規制強化といいますか、我々の今まで大事にしてきたことと逆方向になっているという懸念がいろんなあるということをずっと指摘をさせていただいたわけでありますが、その中の一つに学長の選考の問題がございます。
 私が承知しておりますところによりますと、政策科学大学院を除き、国立大学における学長選考というのは基本的には選挙によって、正に民主的手続によって行われているというふうに理解をしております。正にそのことが重要な慣習法として定着をしているというふうに思っておりますけれども、今回の条文だけ見ますと、学長選考会議というものが学長を決めていく、民主的手続が引き続き確保されるのかそうでないのかということについてグレーなんですけれども、この点についてはいかがでございますか。

○政府参考人(遠藤純一郎君)
 現在の国立大学の学長の選考でございますけれども、これも教育公務員特例法におきまして、学部長等によって構成されております評議会、ここで選ぶと、これだけ書いておるということでございます。
 今回の法人化後でございますけれども、これについては、学内者のみで学長選考を行ってきたという方式を改めまして、学内の教育研究評議会の代表者だけではなくて、それと同人数の経営協議会の学外委員の代表者で構成されます学長選考会議が学長選考を行うと、ルールも決めるという方式を導入するということでございます。
 いわゆる学長選挙でございますけれども、先ほども申しましたように、評議会で学長を決める際の言わば参考という形で、法令上に位置付けられた手続ではなくて、各大学の学内規定等におきまして学長選挙といったようなことが行われてきたわけでございます。法人後につきましては、どういうやり方で学長を選ぶかということについてもその学長選考会議が定めるということでございまして、各大学の御判断ではありますけれども、例えば学長選考会議の選考のプロセスにおきまして何らかの形で学内者の意向聴取ということも行うということも考えられるわけでございますけれども、その場合でありましても、例えば学長選考会議が広く学内者から候補者を調査をし絞った上で学内の意向聴取を行って、その結果を参考にしながら最終的に責任を持って選ぶといったようなことが重要だというふうに考えておる次第でございます。

○鈴木 寛
 こういう民主的手続を確保するというようなことで、やっぱり私は法律で書くべきだと思うんです。こういうことこそちゃんと制度で担保するということが必要だというふうに思うわけであります。
 最後に是非申し上げたいわけでありますが、この法案については、趣旨において私たち別に反対するわけではございません。そして、そうしたことがどんどん進むように我々も本当に真摯に検討し、修正案の提案ということを衆議院で行わせていただきました。今日の御議論で、やはり少しでも懸念があることは、真意に邪心がないということは分かりましたから、であればそのことを法律上きれいに書いて、そしていろんなところからなされている懸念というのは全くない形で、私はこれ、正に多くの関係者が、多くの会派が賛成をした形で、正に五十年ぶりの大学改革政策の大転換期でありますから、そうした船出を私はした方がいいのではないかというふうに思います。
 そのためには、是非この審議なども踏まえながら、条文の修正ということについても真摯に御検討をいただきたいというふうに思いますが、その点についての文部科学大臣の御答弁を求めます。

○国務大臣(遠山敦子君)
 今日、鈴木委員が本当に真剣に大学の将来考えていただいて、ポイントとなる御質問をいただきました。私どもも誠実にその御質問にお答えしてまいったつもりでございます。
 冒頭にもお答えいたしましたように、私どももできるだけ多くの党の御賛同を得ながら、この非常に大事な法案の門出を見たいと思っていたわけでございますが、御党の方からの御提出案が余りにも国の責任という角度から見て取り上げにくいということで衆議院において否決されたわけでございます。
 ただ、答弁を通じ、あるいは討議を通じまして、私どもといたしまして、大学の自主性の尊重という点を十分に踏まえて、国としての責任ある対応を今後ともしていくということで明確な態度を表明したところでございます。
 その意味におきまして、今回の法案の理念あるいは目的とすることも私どもとしては明確にしたつもりでございまして、私といたしましては、このままの内容で多くの会派の方の御賛同をいただきたいというふうに考えております。

○鈴木 寛
 終わります。


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