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 文教科学委員会  義務教育費国庫負担法の改正案に関して

2004年03月30日 



○鈴木 寛

 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。本日は、加戸参考人、若月参考人、本当に貴重な御意見をありがとうございました。
 まず若月参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
 実は私、東京の地元の事務所が原宿にございまして、神宮前小学校で、若月先生、当時の大変ならつ腕に大変敬意を払っておりますし、品川に移られてからのいろいろな挑戦は、私が教育改革の道に入る上で大変参考にさせていただいておりますし、私が今日ここの席にいるのも若月先生の影響を大変受けているということで、今日は大変に有り難く存じております。それで、今日、若月参考人は大変に重要なお話を御陳述いただいたというふうに思っております。
 私は民主党の教育基本問題調査会の事務局長をさせていただいておりますが、私ないし我が党の基本的な考え方は、正に現場主権あるいは現場の尊重というものを徹底的にやるということであります。正に、財源そして権限、人間、ごろ合わせみたいなものですが、この三つのゲンをいかに現場に国というものは管理ではなくて支援という態度で提供をしていくのか、供給をしていくのかということが私たちはこの義務教育段階における教育改革の基本であるという考え方を持っておりましたので、そういう意味で、若月参考人のお話というのはそうした考え方にも非常に一致をしているということで、我々意を強くした次第でございます。
 それで、恐らくこの文教科学委員会の与野党を問わず、小泉内閣が推進をしているいわゆる三位一体論については、自民党、公明党の委員の皆様方からも心情的には大変な疑義と懸念が表明されておりまして、国が憲法上の要請あるいは教育基本法上の要請からきちっと教育費について財源を確保するということについては、少なくともこの委員会ではコンセンサスがあるというふうに思っております。
 ただ、若月参考人がおっしゃったことを少し確認をさせていただきたいと思っておりますが、私たちは、義務教育の財源、義務教育費国庫負担制度というものを非常にリジッドにといいますか、狭義に解釈をいたしております。どちらかというと、自民党の先生方は割とこう、何といいますかラフにといいますか、そして私たちは義務教育費国庫負担制度を進化させたいと思っているんですね。そして、若月参考人は進化させたいと思っているのか、堅持したいと思っているのかと。冒頭では堅持とおっしゃって、後半のお話を聞くと進化というふうに聞こえるので、それはどちらなのかということをお伺いしたい。
 すなわち、私たちは進化の方向性として、正に若月参考人が後半におっしゃった、任命権とそして財源の負担というものが県と基礎自治体とでばらばらになっていると。それを正に基礎自治体の教育委員会と学校現場の基本ユニットに、先ほど申し上げましたように、権限も財源も人事権も基本的には集約をしようと。それで、もちろんそのベースの部分は国がきちっと負担をすると、こういう考え方なものですから進化論のように私は聞こえたわけでありますけれども、いわゆる県が二分の一、そして国が二分の一、そして県の人事権は今までどおりという堅持なのか、それとも、私たち、あるいは後半おっしゃったような進化論なのかということについてもう一度確認をさせていただきたいんですが、いずれでございますか。

○参考人(若月秀夫君)
 どういうふうにお答えしたらいいんでしょうか。
 現在の時点では、そして今、様々な課題が投げ掛けられているこの状況においては、義務教育費国庫負担制度は堅持であると。何としても堅持である、こういうまずスタンスであります。しかし、これを堅持する、そうすると議論の一方において、例えば、いや一般財源化すれば何も、自由に使えるんだし、自由度が高まるじゃないかという論もあるやに伺います。そのときに、自由度ともし言うんであるならば、一般財源化されて自由度が増すとは言えないんだ。それはなぜかというと、本当に自由度を増すには任命権がセットになったものでなければ自由度が増さないんですよと。したがって、一般財源化すれば自由度が増すというある意味では安易な発想、これに対して歯止めを掛けたいわけです。
 じゃ、一体、一般財源化して自由度が高まらないということは具体的に何が欲しいんだ。それは任命権が欲しいんです。行く行くは、国が国の責任として半分、残りの四分の一を都道府県、残りの四分の一が基礎的自治体、基礎的自治体もそれなりの責任を持つ。しかし、そこに任命権をセットにして下ろしてください。これは行く行くということでありまして、これは進化なのかどうなのか分かりませんが、それが現在の認識でございます。

○鈴木 寛
 ありがとうございました。
 我々も、民主党が政権を取った暁にはということで、行く行くはというところが暁にはというふうに読み替えれば、先生方の御意見とかなり近いなということを確認させていただきました。
 それで、加戸参考人にお伺いをしたいわけでありますが、私たちは正に基礎自治体と学校現場、この教育ユニットに対して、人事権も、基本的には人事権、そして学校の管理あるいは運営についての基本的な権限を集中をするといいますか移譲をするということを考えているわけでありますが、亀井委員の御質疑の中で、基本的には加戸委員もその方向には御賛成というふうに聞こえました。ただ、我々も認識をしているんですけれども、例えば練馬区の生徒数と高知県の生徒数って同じぐらいなんですね、大体。そうすると、今までは地方教育行政体系を議論するときに、県教委はとか区教委はという、県教委は県の段階でありまして、区教委は基礎自治体だ、こういう議論の設定の仕方自体がもう現実離れしていると。
 したがって、我々民主党はさらに教育行政を語る適正なサイズというのはどれぐらいなんだろうかと。東京でいえば大体区ぐらいなんだろうなというふうに我々は認識を、それは区とか市とかという意味じゃなくて、大体三十万人とか、人口にして大体五十万人とか、あるいはそれはもっと言えば生徒数で切った方がいいと思いますけれども、生徒数にして何万人という単位で、あるいは教員数にして何万人という単位で、もう一回行政の基礎単位、教育行政の基礎単位というもののサイズと在り方というものを一から議論し直そうということを今勉強している最中なんですが、そうしますと、実は若月参考人が所掌をされている品川区の生徒数と愛媛県の教育委員会が大体管轄をされている生徒数って、大体けた数において一致するわけですね。
 そういうところはきちっと調整なり修正なり進化をさせるという前提において、いわゆる国と基礎自治体の間にある県の権限というものが、将来しかるべき、愛媛県の場合はそれは県のサイズとかなり似ている、あるいは愛媛県の場合はそれは二つぐらいできるのかもしれませんけれども、県から基礎自治体あるいは基礎ユニットに対して財源も人事権も更に大幅に移譲するといいますか、そこに集中させるという若月委員の基本的な考え方について加戸委員はどういうふうな見解を持っておられるか、お聞かせいただきたいと思います。

○参考人(加戸守行君)
 基本的に、義務教育に関して言えば、小中学校は市町村が設置をし管理運営するという原点があるわけでございますので、それに立脚して言えば、若月委員の言う目指される方向はよく理解できます。
 一点、私が引っ掛かる点を申し上げさせていただきますと、愛媛県の場合、へき地もあります、離島もあります。現在は七十市町村があります。今合併の方向で旗振っていまして、約二十に収れんしますが、それも松山市という人口の三分の一を除外しますと、十八区で百万の程度の話でございます。問題は、教員の採用はどうするんですか、市町村ごとでやれば、へき地、離島へ志願者はないでしょう、あるいは配置された人の異動はどうするんですかということになると、やっぱりそういった圏域間でバランスが取れて、大きな都市であっても小さな村であっても小さな島であっても、教員の資質はほとんど変わりませんよという教育の水準の平等化というのは必要になる。その辺をどう担保するのか。それが現在、県費負担教職員制度といって、任命権、人事権を県教育委員会が持っている理由でもあります。
 そこの兼ね合いが、今の二人三脚では区市町村の意見が反映されない、おっしゃるとおりだと思います。そのジレンマはどう解決するか。その基本問題のみを解決すれば基礎的な自治体として義務教育は市町村が財源も持ち、責任を持ってやれることになるのが私は理想であろうと思いますが、そこへ行く道のりは様々なバーをクリアしなきゃならない。特に均一な教職員の確保、どんな小さなところでも立派な先生が来てもらえますよというシステムをその中でどう確立していくのかが、現在のシステム、それに代わるべき方法をまた大きく検討することには私も賛成でございます。

○鈴木 寛
 お二人に伺いたいと思います。同じ質問でございます。
 今、正に義務教育の在り方を議論する中で、教育委員会というものをどうするかと。一方には、正に知事なり区長なり、正に首長直轄に、教育行政の指揮命令の下にもう一回戻すべきだという考え方と、それから元々の正に教育委員会が作られた趣旨でもありますけれども、そうした、やや政治から距離を置いてレーマンコントロールによって一定の中立性を確保するんだと、そもそもの教育委員会制度の存続意義ですね。
 この点について、今日は首長と教育委員会の両方のお立場それぞれから参考人に来ていただいているわけでありますが、教育委員会ではなくて、もう少し首長直結で教育についての行政権限を移すべきだという考え方について、それぞれの御意見、御見解をお聞かせいただければと思います。

○参考人(加戸守行君)
 現在の教育委員会制度は、首長は直接公選で選ばれます。かなり政治的な色彩も持っております。そのことが教育の世界には直結しないように、教育委員会という間接クッションで政治的な中立を確保するというのが第一点ございます。
 したがって、また政治的中立を確保するためには、首長が教育委員を議会の同意を得て任命しますけれども、五人総入替え、六人総入替えということができないように、四年に一回一人ずつ交代をしていくということによって安定性、継続性というのが保障されている。そういう意味では、極めて優れた制度であると私は思っておりますが、現実に制度の趣旨に即して教育委員会が自主的に判断をし、実質的な権能を持って動いているかというと、どうしても予算を持っている首長によって左右されがちである、その実態との乖離をどう縮めていくのかが問題だと思いますので、私は、教育委員会制度は必要である。それは、先ほど申し上げた趣旨からも、現実に機能していないならば機能するようなシステムへどう持っていくかが大切なんではないのかというのが私の意見でございます。

○参考人(若月秀夫君)
 結論から申し上げますと、教育委員会制度の中身の運用の仕方、これは様々な課題がありますが、教育委員会制度といったようなものに私は一定の意義もあるし、今後もこの制度といったようなものはやはり継続していく必要があるんじゃないだろうか、こう思います。
 なぜ首長の部局に持っていくことに余り賛成ができないか。これはよく言われることでありますけれども、やはり教育といったようなものは継続性があり中立性が必要になるわけであります。極端な場合、首長さんが替わるたびに教育行政の根幹が右に左に、縦に横に、前に後ろに、これは必ずしも好ましいことではない。したがいまして、やはり教育委員会の制度といったようなものは、これはやはりある一定の役割があるだろうと、こう思います。
 それから、よく首長さん方は教育委員会といったようなものは、これは要するに首長部局から離れた行政委員会なんだからということで遠慮をされているわけでありますけれども、私はこれは違うだろうと思うんです。私もうちの首長に任命をされ、議会の任命同意をいただいたわけでありますので、当然その時点において首長は教育行政に当然責任が発生していると、私はそう思います。
 したがいまして、首長が今の教育委員会制度というものがあるので余り言えないというのは私はむしろおかしいことでありまして、ここは積極的に物を言っていただいて私は構わないだろうと。それに対して教育委員会が一つの自らの立場を認識し、対応をすればいいんであって、区長部局と連携の取れるものはバランスを取りながら連携をしていけばいいのであって、どっちかにこの権限を任せるとか、こういったようなものではないだろう。
 そう考えますと、今の教育委員会制度といったようなもの、実は教育委員さんをどうするかというのは若干の問題は私はあると思いますけれども、制度そのものにそんな大きな責任はないんじゃないか、こんな見解を持っております。

○鈴木 寛
 ありがとうございました。 終わります。


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■反対討論

 私は、民主党・新緑風会を代表して、義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論を行います。
 反対の第一の理由は、本法案が国と地方の権限や財源の在り方を明らかにせず、さらには負担金と補助金との違いをも無視して、国の財源負担軽減のためにやみくもに地方に負担を押し付けるという、何ら理念なき場当たり的なやり方を昨年と同様に繰り返していることであります。
 この法案は、昨年の共済費長期給付と公務災害補償基金負担に要する経費に引き続き、義務教育教職員の退職手当と児童手当に係る部分を国庫負担の対象から外し、一般財源化するものであります。今回の法案改正が義務教育の改革にどれだけ資するのかといった教育上の観点からの検証、検討が全くないままに一般財源化のみが進展することに大いなる懸念を抱くものであります。
 反対の第二の理由は、一般の立法事例からも極めて異例な附則第二条の存在であります。政府がこの条項をあえて盛り込んだことは、近い将来、義務教育国庫負担費の一般財源化を強行するための布石としか言いようがなく、そうした政府の意図を断じて容認するわけにはまいりません。
 反対の第三の理由は、本法案が昨年の義務教育費国庫負担法等改正案採決の際に行われた参議院文教科学委員会附帯決議に違反しているからであります。
 すなわち、昨年、本委員会は、「義務教育は、憲法の要請により、国民として必要な基礎的資質を培うものであり、今後とも、国の責任において、その水準の維持向上を図るとともに、教育の機会均等を損なうことのないようにすること。」と決議をいたしましたが、本改正案はその意向に全く逆行しています。また、義務教育については、国はその責任を適切に果たすため、地方の財政運営に支障を生じることのないように適切な措置を講ずることや、財源措置は次年度以降も地方財政を圧迫しないように適切な措置を講ずることなどを決議をいたしましたが、本改正案は、将来急激な負担増が予想される退職金などを地方に一方的に押し付けるものであることなど、明らかに附帯決議違反となっています。我々文教科学委員会としては、国会の威信に懸けても附帯決議違反の本法案を可決するわけにはまいりません。
 我々民主党は、義務教育の重要性にかんがみ、教育の分野については国が最低基準を責任を持って保障した上で、地域主権、現場尊重の教育改革、とりわけ現場のニーズを的確に反映した教育の多様化などを進めていくことが必要と考えております。
 そうした観点から、我々は、政府に対して、義務教育政策の立案推進に当たって次の点について十分な配慮を求めます。
 第一に、義務教育は憲法の要請により国民として必要な基礎的資質を培うものであり、今後とも国の責任においてその水準の維持向上を図るとともに、教育の機会均等を損なうことのないよう、義務教育費を国が責任を持って確保するとの基本方針を堅持すること。
 第二に、義務教育については、国はその責任を適切に果たすため、地方の自主性の拡大という視点に配慮しつつ、地方の財政運営に支障を生じることのないよう適切な措置を講ずること。
 第三に、本法律案に係る地方への財源措置は税源移譲までの暫定措置となっているが、将来にわたり地方財政に支障が生じることのないよう適切な措置を講ずること。
 第四に、学校栄養職員、事務職員は学校における基幹職員であり、その果たす役割の重要性にかんがみ、今後ともこれらの職員に係る経費を国が責任を持って確保するとの基本方針を堅持すること。
 第五に、義務教育諸学校の教職員の給与については、学校教育の水準の維持向上のため、義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法を今後とも堅持し、同法の趣旨が損なわれることがないよう十分配慮することの五点であります。
 真に子供たちの未来に資する義務教育を実現するためには、国が責任を持って全国津々浦々の教育現場が必要とする財源を確保し続けることが極めて重要であります。
 その観点から、本法案の成立は我が国の教育政策史上重大な禍根を残すものであることを強く指摘して、私の反対討論を終わります。
 以上でございます。



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