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 文教科学委員会  日本学術会議法の改正案に関して

2004年04月06日 


○鈴木 寛
 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 午前中は有馬先生、そして西岡先生に本当に良識の府参議院にふさわしい御議論をしていただいて、そしてそれを我々勉強させていただきまして、本当にありがとうございました。
 私も午前中の両先生の御意見、御主張に深く賛同を覚えるわけでありますし、そして私の今までいろいろなことをやってきた立場からも、両先生の御経歴に比べますと私はまだまだ何もしてきていないわけでありますけれども、しかし私は九五年からこのアカデミズムの端くれで今仕事をさせていただいております。実は、この週末からも大学の新入生、一年生にゼミをまた始めるわけでありまして、大学受験を終えて、そして入学式が今行われているところでありますが、正にこの四月から学問の府に入ってくる若者たちにこの金曜日からまたその前に立つわけでありますけれども、そうした立場から、今日行われてきております学問の在り方、学術の在り方、あるいはその在り方に大変大きな影響を与える学術会議あるいは学士院も含めたこの国の学問の権威というものをどういうふうにこれから我々国会としても作っていくかという議論を聞かしていただいたわけであります。
 今日その意を更に強くしたわけでありますが、私は昔から、以前からこの学術会議あるいは学士院も含めたこの学問の権威というものは、二十一世紀、知の時代あるいは知性国家ということが、学術会議が平成十一年にお出しになっておられる自己改革についての声明の中でも知性国家という言葉が出ているわけですね。知性国家というものを作っていく上で本当にこの知の在り方というのは社会の在り方そのものを規定するんだろうというふうに思っております。
 私の認識をまず結論から申し上げますと、この日本学術会議、あるいはさらには午前中来提言をされている独立の、しかも権威のあるこうした学識の見解というものを表明をしていく組織といいますか機関、これは私は、日本国憲法で定める裁判所に匹敵する機能というものを、知性国家の社会統治、社会創造においてそれぐらいの役割を担うべき存在だというふうに思っておりました。
 先ほど前文が付いている法律だということについての西岡先生の御議論もありましたが、正に学術会議法を作った当初の意気込みというのも、やはり前文が付く法律というのはそうそうございませんから、正に戦後復興の中で科学というものが新しい社会を作っていく上で極めて重要な存在なんであるということの当時の立法制定者の意思の表明がこの前文に表れていると思いますし、そういう観点からしたときに、今回の学術会議法の改正案を見させていただきました。
 もちろん、現場の皆様方は大変に御苦労をされて、様々な諸課題についての調整を行われこの法律が出てきているということについては、私も十分にその御苦労、御努力については理解をしておりますし、また敬意を表したいと思いますけれども、今私が申し上げた、あるいは午前中に有馬、西岡両先生から御議論をされた、この歴史的、哲学的、思想的学術会議法審議の意味合いといいますか、あるいは学問のこの中立的で権威を持った機関を我々がもう一回二十一世紀のこの初頭に当たって作り直していくんだ、あるいは更に言うと進化させていくんだと。
 そういう意味では、総務大臣から内閣府に所掌が変わったということは半歩前進ということで評価はしたいと思いますが、本来これは、例えば国会に所属する機関であっていいと思いますし、さらには憲法上、私は参議院の憲法調査会の幹事もさせていただいておりますけれども、憲法上位置付けられてしかるべきぐらいの議論があって私はいいのではないかなというふうに思っております。
 そういう意味で、最初の質問に入りたいと思いますが、結局やはり多数決でもって決せられない話というのは一杯あるわけでありまして、かつ重要な話というのは一杯あるわけでありまして、特に知の時代、知性国家ということになりますと、真理というものが極めて重要な意味を持つ、より重要な意味を持つ。真理というのは必ずしも多数によって支持されるわけでないのが真理の特質、特性でありまして、そのことについて裁判所は正に法の支配を貫徹する観点から、法律上のあるいは法の支配における真理とは何であるかということを確定をさせる。その意味において、科学というものがこの社会の統治において欠かすことのできない今日、何が科学的真理であるかということをやはりその権威ある機関が判断あるいは見解をきちっと示していくということがやはり重要なんだということだと思います。
 午前中の議論を聞いていてやや違和感がありましたのは、提言というお言葉をお使いになる、これは私ちょっと違和感がございます。もちろん、いろんな提言はしていただきたいと思います。しかし、提言で済む話なのかと、とどまる話なのかと。
 審議会というのがあります、政府の審議会。これは正に諮問に対してそして政策提言をする、そして提言を採択をして政策につなげるかどうか、これは最終的に政府機関が判断をするわけでありますが、学術会議というのは政策提言機関にとどまっていただきたくないというのが私の主張でございます。正に先ほど申し上げましたように、知性国家によって欠かすことができない科学的なその真理というものに対して権威を持って判断をしていく、あるいはきちっと社会にその科学的な真理というものを伝えていく、表明をしていく、ジャッジをしていくという私は機能という観点からしたときに、提言を超えたお仕事というものをやっぱりしていただかなければいけないというふうに思っております。
 その観点から、私は、この五十年間の学術会議のお仕事を、もちろん大変なボリュームでありますから全部はフォローすることはできませんが、かなりいろいろな勧告でありますとか声明でありますとか報告を見させていただきました。大変なことに気が付きまして、それは何かといいますと、学術会議法の五条は、学術会議の主たる仕事として勧告ということがきちっと明記をされております。学術会議の本来業務であるこの勧告が、第一期から大体第十一期ぐらいまでは極めて熱心に出されております。例えば第五期、昭和三十五年から昭和三十八年が第五期でありますが、四十七件の勧告が出されている。その後も、二十九件とか二十七件とか、第十一期まではあるいは毎年十本以上の、あるいは時としては二、三十本出ている。それが、平成になってから毎年一本か二本なんですね。十八期、十九期に至っては勧告ゼロと。
 果たして、この第五条で定める正に一番重要な勧告、それが十八期以降ほとんどその活動がなされていないということは私は大変残念な事態だというふうに思いますが、その理由、あるいはそのことについてどういう認識を持っておられるのか、お答えを賜りたいと思います。

○政府参考人(吉田正嗣君) 
 先生御指摘になられましたように、昭和二十四年の学術会議の設置以来、昭和三十年代から四十年代にかけまして非常に多くの勧告、要望等を政府に対して行ってまいりました。しかしながら、当時の勧告、要望などが、予算の増額、研究予算の増額あるいは研究機関の新設といったようなものを求めるという内容のものが大変多かったわけでございますが、こういったものが政府として必ずしも財政面等で実現は容易でないと、そういったものが含まれておりました。そういう問題があったという認識を持っておるわけでございます。
 こういったことを背景に、勧告、要望等につきましても実現可能性というものを十分に考慮し、真に必要なものに絞って行おうということに努めたことから数については減少してきたと、そのように理解いたしております。

○鈴木 寛
 もちろん、過去の反省、総括はそういうことなのかもしれませんが、今回法律をお出しになっているその趣旨は、この学術会議をもう一回活性化しようと、そして二十一世紀、知性国家を作る上でもっともっと、大変な役割を担っておられるわけでありますから、その役割をもっともっと果たしていこう、発揮していこうと、こういう御趣旨だというふうに理解をしておりますけれども、じゃ、この法律ができて学術会議が生まれ変わって、今後この勧告、どういうふうになっていくでしょうか。

○政府参考人(吉田正嗣君)
 今回の改革におきましては、日本学術会議が我が国科学者コミュニティーの代表機関としての役割を真に果たしていこうということで様々な改革を行うものでございます。
 そういったことで、総合科学技術会議の意見具申では幾つかの機能を十分に発揮するようにという御指摘をいただいておるわけでございますが、その中の重要なものとして、政府への政策提言機能というものが掲げられております。これは、科学者の知見を広く集約して、長期的、総合的、国際的観点からの政策提言を行うというものでございまして、勧告、要望等を含む提言でございますけれども、こういったものに力を入れていこうということでございます。
 形式としては、勧告、様々な形式があろうかと思いますけれども、大変重要な機能を果たしていくということに努めてまいるということを考えております。

○鈴木 寛
 先ほどから車の両輪論というのが議論されています。これ、総合科学技術会議の報告書、答申には車の両輪というのは述べられているんですね。しかし、平成十一年にお出しになった日本学術会議の自己改革についてという声明文では車の両輪論は述べられておりません。
 これはどういうことかといいますと、これは学術会議の方々も恐らくは私の意見と相当同じポジションに立つんだと思いますが、車の両輪というのは、これは並列ということであります。これは有馬先生がおっしゃった。だけれども、しかも提言というのは、まあ提言聞こうじゃないかと、そして、まあいいのがあればやろうじゃないかと、これは提言であります。
 しかし、学術会議は車の両輪の片っ方じゃないんです。その上という言い方はおかしいかもしれませんけれども、正に勧告と提言はこれは本質的に違う話でありまして、正に日本の科学的真理のオーソリティーとして日本国あるいは社会全体に対して責任を果たしていくと、そして政府に対してもきちっと意見を言っていく、社会に対しても意見表明をしていく、声明をしていく、これが声明であり勧告でありまして、このところを私は、法律作っておられる方は当然法律の専門家でありますから、これは意識的に混同しているんだというふうに思うわけであります。でありますから、提言ではなくて、やはりきちっと勧告というものをもう一回復活させていただきたい。
 現に、学術会議がおまとめになった声明では大変そのことを自己分析、ある意味で自己総括をされて、勧告の件数が少なくなっているということをきちっとこの自己改革の中に書かれていらっしゃいますし、様々な政策の形成に役立つ科学的知見を政府に提供する方向や、国民のニーズに対応する方向での審議には特別な注意が払われてなかった嫌いがあるときちっと総括しておられるんです。ですから、学術会議の総括は、私は極めて的確な総括だと思います。
 しかし、問題はそこからでありまして、その総括がこの法案にきちっと生かされているのか、反映されているのかと。その間に総合科学技術会議の答申が入ることによってそこがやや骨抜きになっている、あるいはそこが内容的に変質をしているということを私は大変に問題だというふうに思っているわけでございます。
 更に申し上げますと、総合科学技術会議の報告書は、日本学術会議の役割というものを私はやや矮小化しているんじゃないかと思います。
 この法律の第二条では、私は学術会議、二つ大きな使命があると思うんです。もちろん、二つとか三つとかっていろんな分類がありますが、一つは科学の向上発達を図る、これはもちろん今までも、これからもきちっと議論されると思います。しかし、もう一つ極めて重要なのは、今朝も原子力について有馬先生から御議論がありました。正に行政、産業、国民生活に科学を反映浸透させるという目的、これは極めて重要な目的だと思いますが、を日本学術会議は担っている。
 じゃ、その日本学術会議が正に行政に対して、産業に対して、国民生活に対して、科学的なこの見識、正に先ほど自己総括されていたところ、この部分というものが特にこの平成になってから極めて弱体化していると。この問題意識を日本学術会議と我々は共有するわけでありますが、しかし、そのことがこの法案審議あるいは法案の中身、あるいは法案を取り組もうとしている政府にそこまでの気概といいますか志というものがまだ残念ながら感じられないわけでありますが、私はせっかく二十数年ぶりの改革をやるその意義はここにあると思いますが、いかがでございましょうか。

○国務大臣(茂木敏充君)
 貴重な御意見として謙虚に受け止めさせていただきたいと、このように思っておりますけれども、今回の法案の改定のベースになりました総合科学技術会議の日本学術会議の在り方についての提言、ここの中でも、委員も御案内のとおり、日本学術会議に求められる機能として三つの機能と、そこの中の一つが政策提言機能であり、二つ目が科学に関する連絡調整機能、これは科学者の間のコミュニティーの意見の集約であったりとか各国の科学者との連携、交流が入ってくると、そして三番目に社会とのコミュニケーションの機能と、こういうのを明確に提案をさせていただいておりまして、恐らく一番目の政策提言機能の中でも、政府に対して科学的、中立的な提言を行うと、そこの中には委員御指摘の勧告であったりとかそういうものも入ってくると思いますし、提言といいましても、単にその、何というか、物をこうですよという中には当然科学者の専門的な立場から見解を示すと、こういうものも入ってくると思っておりまして、私も最近の勧告、声明の数等々見たわけでありますけれども、数だけいいましても少ないなと、こういうふうには感じます。ただ、じゃ数が多ければそれだけでいいのかといいますと、そういうことではありませんけれども、質、量ともに今回の改革を通じてしっかりした提言が出されると、そういうことを期待いたしております。

○鈴木 寛
 是非、大臣、お願いしたいと思いますが、学術会議は時として本当にいい勧告、声明を出しておられるんです。例えば、平成十二年に人間としての自覚に基づく教育と環境の両問題の統合的解決を目指してという声明があります。この中で何を言っているかといいますと、要するに、物質・エネルギー志向から脱物質・エネルギー志向へ根本価値の転換を図り、人間としての自覚に基づいたより豊かな人間性を確保する、より多様な内容を持った新しい価値観の醸成を図る必要があるという提言をしているんですね。これはすばらしい提言だと思います。そして、今、国会で憲法の議論をしていますけれども、こういうところから私は憲法議論って始めなきゃいけないと思う。
 要するに、学術会議のこうした声明、勧告をより権威あるものにどうやってしようかという議論が午前中から続いているわけでありますが、それはひとえに、こうしたものを政府の側がいかに本当にこれを尊重して受け止めて、そしてそれを政府の政策立案、政策形成の中に取り込んでいくかという政府の姿勢、その姿勢がこの今回の法律の中でも少し寂しいなと思っているわけでありますし、それ以外の例えば憲法議論にも、あるいは教育の議論でも、文教科学委員会で盛んにやっておりますが、脱物質・エネルギー志向の時代の新しい価値観を前提に果たして日本の初等中等教育の学力問題議論がなされているかと、これは我々も含めてでありますけれども、もっともっとこういう知からの提案といいますか、正に知をきちっと尊重をしていかなければいけないのではないかなというふうに思っております。
 今日は学術会議の黒川議長にも来ていただいておりますけれども、御感想あればお願いを申し上げます。

○参考人(黒川清君)
 おっしゃるとおりだと思います。
 私、外国で生活したのが長くて、二十年前に日本に帰ってきておりますが、そうして見ると、やはり日本の社会の在り方その他についても、やはりこれから二十一世紀の知の輝く日本というのは、何も経済復興だけではなくて、新しい方向を模索すべきだと思っております。
 実は、二十年前の学術会議の改正についても議事録その他を読ませていただきますと、やはり時代は随分変わってきたなと思っております。そういう意味からいうと、教育の環境の今おっしゃった報告も実は国際的には非常に評価されておりまして、その後でいろいろな会員がそこの外国のアカデミーに呼ばれて、この報告についてのいろいろなヒアリングとか意見を聞かれたということも聞いております。そういう意味では、全地球的な規模での検討が非常に中長期的に大事ではないかと、それはやはり学術会議のようなボディーの責務だと思っております。
 実際、そのような動きが世界的に動いてきているのはここ数年でありまして、二〇〇〇年には学術会議がホストをしました国際アカデミーのパネルというのができまして、九十か国のアカデミーの連合体ができ、それの下に今度十五か国のインターアカデミーカウンシルというのができまして、つい先月の、二月の五日に最初の報告書、特に南北問題の底流にある教育、人材の育成ということについて、これは国連の本部でアナン事務総長がホストをされまして、全大使を呼んでプレスリリースをし、各国のアカデミーは是非この一部でもインプリメントできるようなことを考えてほしいということで、今担当の政府あるいはそこといろいろ相談しているところでございます。
 二番目にはアフリカの食料問題を今年六月に出す予定になっておりまして、このようなことも学術会議の一つの現れとして国際的に非常に今注目を集めておりますし、さらに、エネルギー問題も去年十二月にやっておりますけれども、この辺も今、国際連合で非常に動いているというところでありますので、これから是非、私どもも科学者コミュニティー全体がアジア、世界に向けて発信するようなメカニズムと、政府当局にも是非連携を強めていきたいと思っているところでございます。

○鈴木 寛
 どうもありがとうございました。是非頑張っていただきたいと思います。
 私が引き続き提起したい問題は、今日、文部科学省もお見えだと思いますが、これも午前中、有馬先生からお話がありました、日本の学界というものをもっともっと活性化をしていきたいと。特に私の問題意識は、私は、情報社会論とか知価社会論という講座を、これまたある大学では環境情報学部、ある大学では総合政策学部、ある大学では法学部、ある大学では教育学部、こういう、同じ講座名なんですけれども、いろんな学部で担当をしてまいりました。そうした私ないしは私の仲間の日本の学界の現状に対する問題意識なんですけれども、やはり日本の学界というのはまだまだ硬直的といいますか、何もそれは硬直的であることを批判するつもりはありません。しかし、今、科学というのは本当に何百年に一回かの大きなパラダイムシフトを迎えていると。要するに、今日、哲学の話がありましたが、本当に哲学的、思想的な次元で大きなパラダイムがシフトしている、あるいはそのことを日本がリードしていただきたいというふうに思います。
 そういう観点から考えたときに、やはり日本の学界の現状は、もちろん例外はいろいろありますが、午前中に有馬先生が総括していただいたように、オールドパラダイムで大変な業績を収められた方がやはり大ボスとしていらっしゃる、そしてその一つの集まっておられるのが学術会議であるという実態は私は否めないと思います。
 日本が引き続き二十一世紀、正に知の世界で世界をリードする存在になるためには、ニューパラダイムの科学の進歩にどれだけ貢献をするかということが極めて重要だというふうに思っておりまして、そういう意味でも、何も若い研究者と言うつもりはありません、若くてもオールドパラダイムの若い研究者も一杯いますから。そういうことじゃなくて、ニューパラダイムを、あるいはそういう領域で頑張っておられる研究者、あるいはそういう領域を開拓していかれようという若き志を持った非常に経験豊かな、年齢的にはもちろん若くなくても結構なんですけれども、そういう正にパイオニアというものがこの日本の学界というものを活性化していく。そのために、私は、学術会議の在り方も、あるいは学界、正にアカデミーですね、広義の意味での日本の学界の在り方というものをもう一回点検をし、そして今回の議論にも反映をさせていかなければならないというふうに思いますが、学界の活性化、特にニューパラダイムに対応した日本の科学技術振興の在り方について、文部科学省、お答えをいただきます。
 そして、その同じ質問について学術会議がそのことにこたえているのかどうか、お答えをいただきたいと思います。

○副大臣(稲葉大和君)
 今まで鈴木先生の御意見を拝聴しておりまして、大変学術に関しましての含蓄を含んだお話に感銘しているところであります。まさしく文部科学省におきましても科学技術創造立国を目指しているわけでありまして、これを実現するには特に若手の優秀な研究者が自由濶達に研究をすることができる環境、そしてその研究成果を十分に発表できる環境を整備することが何より肝要かと考えております。
 したがって、御承知のように、平成十三年に閣議決定されました第二期科学技術基本計画におきましても、若手の研究者がその能力を最大限発揮できるように自立性を確保し環境を整備することと、こううたっているわけでありまして、その具体的な案としまして、ポストドクターに対する支援、あるいは研究費に対しましての補助金の制度、こういうところを年々拡充してきているところであります。特にポスドクにつきましては、前年比、これは実質になるかもしれませんが六億円増の百三十九億、これを十六年の予算として皆さんに御承認いただいたところでありますし、さらに科学研究補助金としまして前年度比三十三億円を超える増額を果たすことができたわけであります。
 これで十分だとは決して考えておりませんが、さらに年次を経てこの数字をかさ上げすることと同時に、先生から御指摘のあります、いわゆる閉鎖的と言われるんでしょうか、先生と助教授、あるいは助手、講師、こういった関係についても更に解消できるところを積極的に解消するように努めているところでありますし、また、先生におかれましては、そういった御指摘を今お持ちでございましたら、御指摘いただけるのであれば、私たちもその先生の資料に基づいて改善できるよう最善の努力を果たしてまいりたいと、かように考えております。

○参考人(黒川清君)
 先生のおっしゃるとおりかと思いますけれども、この本体が今までの研究連絡委員会ではなくて連携会員ということで、その機能的なベースを広げるというのがこの趣旨でございまして、そうなると、いろんな報告書を出す、あるいは勧告を出す際に、適材適所といいますか、必ずしも会員だけではなくて、いろんなその分野の方たちに参加していただく、そういうものが出てくるという、輝くようなボディーになっていくというのが一番大事じゃないかと思っております。
 実際、この日本の計画というのは、ブルントラントの八七年の持続可能な社会への呼応したアメリカのアカデミーの報告書、ヨーロッパの報告書、それに対応して私どもが二年前に出しましたけれども、これも会員じゃない人も何人か入っておりまして、そのようなメカニズムですね、是非このボディーをもっと機能的に、国の中で政策提言をする、あるいは学術の大きなコミュニティーからの認められるようなボディーにしていくのが我々の責務だと思っております。

○鈴木 寛
 正に日本が知性国家になれるかどうかは黒川会長を始め皆様方の双肩に掛かっていますので、是非御健闘をお祈りしたいと思います。
 今日はどうもありがとうございました。


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