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 文教科学委員会  私立学校法の一部改正について

2004年04月27日 



○鈴木 寛

 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 今日は、三人の参考人の先生方、どうもありがとうございます。
 私学の自主性と公益性という、これは非常に、永遠の課題でありますが、このことについて、正に二十一世紀の初頭に当たってこれをきちっと見直していくという、それが今回の私立学校法改正の意義だというふうに思っております。
 それで、先ほどから、いわゆる法律といいますか、政府と私学との関係において、私は政府の役割は二つあると思います。一つには、いわゆる私学助成金を中心として税金が投入されていますから、正に納税者の代理人として、政府が私学に対して、税金がきちっと適正かつ効果的に使われているかということについて監視といいますか、見ていくということが一つですね。それからもう一つは、バーゲニングパワーにおいて劣勢にある消費者である学生、その代理人、この二つの立場があろうかと思いますが、私は、新しい二十一世紀のガバナンスというのは、コントロールからコミュニケーションへということが大事だと思っておりまして、もちろん、消費者たる学生の代理人ではあっても、政府が自らコントロールをするということはなるべく、特にこの私学行政については抑制的にして、しかし一方で、私学を取り巻くステークホルダーのコミュニケーションをやはり充実をさせると、そのために政府が、あるいは法律が何をできるかということを点検、検討をしていくんだろうというふうに思っております。
 そういう観点からいたしましたときに、やはり正確な情報がきちっと伝えられる、あるいはきちっとフィードバックをされると、この情報の流れというものがきちっとできているかどうかという観点から一つ一つ見直していく必要があるんだろうというふうに思っております。
 そこで、そういうことは前提としつつ、まず一番最初の質問でございますが、これは田村参考人と孫福参考人にお伺いをしたいと思います。
 先ほどからございましたように、これから少子化で、あと五年もたつともう本当にいわゆる大学全入時代、既に百五十を超える大学において定員割れという事態が生じているわけでございまして、これ私学経営といいますか、大変なことにもう既になっているんだろうというふうに思います。
 それで、もちろん個々の私立学校あるいは学校法人における経営が適正化されるということは当然でありますし、今回の改正の主目的がそこにあったんだと思いますが、今回の改正はこれで良しとして、今井参考人もおっしゃいましたように、やはり不断の私立学校法の見直しというのはこれから恐らく数年間やっていかなければいけないというふうに思っています。
 その中で、この私学ビッグバンといいますか大学ビッグバン、国立大学の参入ということもあって、大学ビッグバンの中で、少子化の中で厳しい、私学の私は再編、グループ化とかあるいはフランチャイズとか、その学校を超えた単位でこの問題を取り組んでいかないと、各私学私学が努力をするということだけでは私は済まないんだろうというふうに思います。
 そういう意味で、いろいろな複数の大学が、学校法人と大学とを分けてきちっと議論をしなきゃいけないんですが、それをひっくるめて申し上げたときに、そうした大学がもう少し有機的に連携をする、あるいは経営が行き詰まったことが露見する前に、もう少し余裕のあるときに、五年、十年、二十年というスパンでもって戦略的な、もう少し前向きの経営の再編ということが私は必要なんだろうというふうに思いますが、恐らく、今後、私立学校法制の見直しもその点にもう少し切り込んでいかなければいけないというふうに思っております。
 そういう観点ですね、どういうことがそのシステムあるいは法制度あるいは税制、会計などについて必要なのかということについてお答えをいただきたいというのが私の最初の質問であります。
 とりわけ、私は本会議でも質問させていただいたんですが、評議員のメンバーの中に卒業生というのが入っています。もちろん、卒業生は建学の自由を尊重する上で極めて重要な存在だということは了知しておりますが、しかしながら、ともするとこの卒業生の存在が、有機的で弾力的な、機動的な組織再編というものに対して後ろ向きになってしまう。これも一つの、私は検討ポイントの一つだと思いますが、それを含めて、この私学ビッグバンの時代に対応した、我々が準備、検討、そして変更、進化をさせるべき法システム、会計システム、税制などについて論点をお聞かせをいただければと思います。

○参考人(田村哲夫君)
 先ほど、最初の御説明で、NPOとしての先駆けであったという御説明をいたしました。つまり、戦後、我が国で民間の力を教育の場で生かすという意味でのNPO的な活動を法制化したという、これが学校法人だったと思うんです。今日、その活動を、何といいますかね、余り評価しないで、違った勢力が入ってくることを勧めるような意見があるんですけれども、私はそれは基本的に間違っていると思っております。NPOとしての存在をもうちょっと見直して、もっと活力あるようにすべきだろうと思います。
 ただし、現行法制上は今御指摘がございましたような問題点がないわけではありません。例えば、法律で認められたNPOでございますけれども、基本的にできた以上はつぶさないという前提で作られているわけですね。ですから、会計基準なども常に右肩上がりでいるという前提で作られているんです。ですから、減ってきたというとき、つまり予算が減ってきたときにどうするということの対応は率直に申し上げましてできていないんですね。
 ですから、これは正に、今、文部省、文部科学省でもその問題点は認知しておりまして対応を始めていますけれども、それを一つの例として申し上げますように、このNPOで動き出した自由で流動的であるべき仕組みが、法律ができて五十五年も固定したために非常に動きが鈍い仕組みになっているということは認めざるを得ないだろうと思います。ですから、このような大きな変革のときに根本的に見直すという動きはどこかでやらなきゃいけないだろうというふうに私どもも認知しております。
 これも、しかし、本当は私立学校当事者が話合いをすることで、例えばリーグ制をしてみたり、いろいろな合併、MアンドAというような形でやっていくかどうか、いろいろな方式があると思いますけれども、いろんな仕組みを我々の内部で考えてその努力をするということがまず最初だと思います。
 それに応じていろいろな問題が出てきたときに、いろいろと政府のお立場あるいは文部科学省のお立場で援助していただくというのが本来の在り方であろうと。決して、官主導、政府主導でおやりになる改革は、本来のNPOであるべき私立学校をむしろ角を矯めて牛を殺すという、そういう危険があります。ですから、と私は思っていますので、その辺は是非うまくリードをしていただくことをお願いしたいというふうに思っています。大きな課題であることは間違いありません。

○参考人(孫福弘君)
 ただいまの鈴木委員の御質問は非常に重要なというか重い質問でありまして、なかなか答えにくいというのが実態でございます。これは多分、大学関係者全員に聞いても、なかなかこれ難しい、非常に答えの出しにくい問題だというふうに思っております。
 あえて、お答えになるかどうか分かりませんが、私の考えを述べさせていただきますと、やはり少子化というのが非常に大きくて、確かに二〇〇九年問題と昔から言われておりましたけれども、もっと早まるんじゃないかということも言っておりますが、とにかく経営危機であるというふうなことはよく言われます。
 そういう点で、確かに、どういうふうに考えていくか、グループ化とかフランチャイズとかというお話もありましたけれども、それ以外にも様々な、例えば連携といいますか、そういう形のものを探っていくとか、コンソーシアム的なものも当然考えるでしょうけれども、そういう考え方はあると思いますが、何といいますか、時代のトレンドの認識としては、そういう少子化の問題と同時に、やはりこれからより顕在化してくるだろうと思うのは、一つは教育の形態というのか、あるいは学びの形態というのか、そういうものが、従来型の大学のキャンパスに行って対面で学ぶというふうな、それはある意味では、大学のキャンパスの中に学生を取り込むというか学習者を取り込むという形の従来型の教育のシステムでありますけれども、それが変わってくるということがありますね。
 これはもう明らかに、いろいろ法的にも、例えば新しい通信教育の制度を様々できるように自由にするようにしたとか、そういうことがあって、それは背景としてはITの革命というふうなことがありますが、その意味で外国はもっと進んでおりまして、むしろ日本にもアメリカとかイギリスとか、そういうところから、むしろそういう形で競争を持ち込んでくるといいますか、こういうことがあるわけでありまして、それは日本の大学も安閑としておられないということがありますね。そういう意味で、日本の大学の中だけを考えてみても、一つの大学に所属をして、学生が一つの大学に所属をして一つの大学だけで学んで、一つの大学を卒業していくという学びの在り方から多分変わってくるだろうと思うんですね。ここのところの変化というものと、それからその少子化のようなものと、どういうふうに、両方考えていかなきゃいかぬだろうと思うんですね。
 それと同時に、もう一つは国際化といいますか、グローバライゼーションの問題があって、これは今のIT革命と併せて、従来ですとアメリカの大学に留学するとかイギリスの大学に留学するとか、そういう留学生の問題として教育の国際化の問題が考えられてきたわけですけれども、それが留学の問題ではなくて、日本にいて、あるいはある大学に所属していて、同時に向こうの大学も単位を取ってしまうということが起こるわけで、むしろ学生の中には、実は、これは私がおりましたSFCの学生の中にもそういうことをむしろ率先して、自分でそういうメカニズムを学びの体系のような形で本にして、それでむしろそういうことを奨励、自分たちで奨励するんだということをやろうとしている人が、学生たちもいました。ですから、そういう動きが出てくると思うんですね。
 そうすると、一体大学って何だというふうなことになるわけでありまして、どこまでが自分の大学で、どこからがほかの、外の、内と外の関係というのが非常に分からなくなってくるということがありますね。だけれども、それはある意味では学びの、学ぶ側から見たら非常にいい傾向でありまして、そういうところを制約をしないでどうやってより良い学びの環境を作ってやるかということが一つ、やっぱり法的な側面からもそれは考えなきゃいけない問題がある。それと同時に、個々の大学として経営的に不都合を起こさないような、そういうふうな法的な規制も含めて、助成的な意味も含めて政府の役割というのはあるんだろうというふうに思っておりますけれども。
 そのくらいしか、ちょっとなかなかお答えができないんですが、もう一つは、評議員の、例えば大学の公共性といいますか公益性という点でいうと、確かに評議員会が卒業生の問題で、卒業生というのは確かにうたわれているわけだけれども卒業生の集団自体がまた後ろ向きであるというふうな話がありました。そういう部分は確かにあると思いますね。
 やはり、その意味でいうと、将来の課題としては、やはり評議員会のようなところは、むしろ大学のステークホルダーというのは何かということをきちんと押さえて、それはいろいろ議論があると思いますけれども、ステークホルダーの代表のような人を、代表といってもこの選び方はいろいろありますけれども、そういう人をその評議員会の中に入れ込んでいくと。それが評議員会の多分将来の在り方、方向性としては僕はそれがいい方向だというふうに思いますね。
 以上でございます。

○鈴木 寛
 ありがとうございました。
 私も、正に評議員会というのはステークホルダーのそれぞれのグループからきちっと構成されるべきだというふうに考えておりまして、ありがとうございました。
 それで、私は国の、国家のための大学で学んだものですから、慶應の湘南藤沢キャンパスに行きましたときに大変新鮮な感銘を覚えました。正に孫福参考人がおっしゃったように学生のためのガバナンスというのが相当程度確立されているなと。それは、もちろん関係者の御努力ということもありますが、ちょっと質問の時間がないので意見だけ表明させていただきたいんですけれども、と同時に、やっぱりその資金、要するに大学経営について必要な資金というものの、ある意味で、当時のSFC、今もそうかもしれませんが、バランスがいいといいますか、産業界からの研究、共同研究、それから学生からの納付金、そしてもちろん私学助成金ということでの税金、それからOBを中心とする寄附金と。このバランスが、やはりお金の流れというのは極めて重要だというふうに思っておりまして、ガバナンスの在り方とともにですね。そのバランスを良くするということがやっぱり、よりウエルバランスな大学経営、大学のガバナンスに重要かなと思っております。
 質問させていただきたかったのは、私学助成金の在り方、正に文部省から学校法人に直接流れるという在り方がいいんだろうかという問題意識を私は持っております。これを例えば、まず私立大学生から始めていけばいいと思うんですが、バウチャーとかクーポンという形で学生一人一人に交付すると、そのことによって相対的にやはり劣位にある学生からの大学経営に対するフィードバックというものの力関係といいますか、バーゲニングパワーをよりバランスいい形にする上では、私学助成金のお金の流し方というものについては更なる議論が必要ではないかなというふうな気がいたしておりますが、時間でございますので、またこの点については三人の参考人の方、引き続きいろんな場でよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 以上です。今日はありがとうございました。

○委員長(北岡秀二君)
 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 私立学校法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(北岡秀二君)
 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、鈴木寛君から発言を求められておりますので、これを許します。鈴木寛君。

○鈴木 寛
 私は、ただいま可決されました私立学校法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党及び無所属の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。


    私立学校法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、私立学校の自主性及び公共性にかんがみ、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一、学校法人の管理運営制度の改善に当たっては、学校法人の自主的・自律的な取組が一層求められることにかんがみ、学校法人関係者に対し、本法の趣旨・制度の内容等について十分周知し、その理解と自主的な努力を促していくとともに、改善の状況についての検証を行うこと。

 二、我が国の学校教育において、私学が大きな割合を占め建学の精神に基づく特色ある教育活動を通して重要な役割を果たしていることにかんがみ、私学振興策の促進に努めるとともに、私学助成の在り方については、私学の自主・自律性の確保、学費負担の軽減、適正な管理運営等の観点から不断の検討・見直しに努めること。

 三、理事長及び理事の権限の明確化に当たっては、教学面における自律性の確保を図るよう配慮するなど、評議員会、教授会等との信頼関係の確立に努めること。

 四、監事による監査の実効性を高めるため、適切な監事の選任、常勤監事の導入等監査体制の充実に努めるとともに、監事の意識や資質の向上等のための施策の充実にも配慮すること。

 五、学校法人に求められる高い公共性にかんがみ、財務書類、事業報告書等については、外部からも分かりやすい内容となるよう留意すること。
   また、設置する学校の種類や規模等、学校法人の多様な実態を踏まえ、各学校法人が自主的な判断により、より分かりやすい公開内容や方法を工夫し、積極的な財務情報の公開に努めること。

 六、私立学校審議会の委員の選任に当たっては、当該都道府県の教育全般にわたる充実と発展を図ることができるよう配慮すること。

 七、今回の法改正と外部評価制度とがあいまって、私学の公共性がより担保されることとなるため、大学等については、公平・適切な認証評価が行われるよう努めるとともに、初等中等教育については、自己点検・評価結果の公表を更に進めること。

   右決議する。
 以上でございます。



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