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 文教科学委員会  私立学校共済法の一部改正について

2004年06月14日 



○鈴木 寛
 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 本日は私立学校共済法ということでございますが、これも今国会で最重要課題の一つでございました年金改革法の一角を成す法律案だというふうに考えております。
 実は、十日の朝刊に非常にショッキングな数字、事実がまた明らかになりました。正に少子化、合計の特殊出生率が更に過去最低の一・二九になるという数字でございます。私は東京を選挙区といたしておりますが、東京の場合はついに一を割りまして〇・九九八七という本当に深刻な事態、この実態が年金改革法案質疑の後に明らかになったということも大変遺憾でございますが、そのことは今日はさておくといたしまして、やはりこの年金の問題、あるいは年金のみならずこの国の将来を考えていく上で、正に特殊出生率が東京については一を切ると、これは本当に深刻で、かつすべての関係者がこの問題に英知を振り絞らなければいけないというふうに思うわけでございます。
 私は今日はその観点から御質問をさせていただきたいと思いますが、先ほども有馬先生からお話がございました。私も全く同感でございまして、私も有馬先生の御意志を継いでこの文教科学委員会で引き続き高等教育の充実という仕事に更に邁進していきたいという思いを、先生のお話を聞かせていただいて更に新たにいたしたわけでございますが。
 やはり出生率の低下、いろんな要因があろうかと思いますが、その極めて重要な要因の一つが、やはり子供を一人前に育てるのに大変にお金が掛かる、時間が掛かる、コストが掛かる。お金だけではありません、いろいろな時間的な、子供を育てていく、あるいは一人前にしていく上でのいろんな意味での負担というものが社会全体としてそれをうまくシェアできていない、ここに大きな少子化の問題があるんだろうというふうに私は思います。
 いろんな、例えば財団法人こども未来財団が子育てコストというのを算定をいたしております。ここにはもちろん必需的な費用、生活費用、そして選択的費用、より高度な教育を受けようと、こういう費用を含むわけでありますが、実に一人当たり二千四百二十一万一千円と、二千四百万円掛かるんですね、一人。そして、この負担をほとんどがそれぞれの家計が負担をしなければいけないと。この二千四百万については家計が負担する分です。これではやはりなかなか抜本的な少子化が改善されるということにならないのではないかなと。とりわけ、この二千四百万のうち教育費が大宗を占めております。文部省が出されておられます資料でも、例えば私立の中学校から中高大と私立に通った場合は学費だけで一千六百万円掛かると、こういう数字もございますし、そしてその大宗が、やはり先ほど有馬先生もお話ありました高校を含む高等教育機関、高等教育段階の負担というものが極めて大きくなっていると、こういうことであります。
 いろいろ調べてみますと、やはり日本の高等教育についてのいわゆる私的負担というのが大変多いなというのがよく分かります。例えば、OECDが高等教育費の比率というのを出しておりますけれども、OECDの平均が対GDP比率一・〇%でございますが、日本はわずかに〇・五%でありまして、これはOECD全調査国中最下位の数字であります。
 更に申し上げますと、高等教育段階における私費負担の割合という数字がございます。これはOECD全体で平均を見ますと約四〇%、四一%でございます。韓国が一番高いんでありますが、日本は韓国に次いで五五%という極めて高い高等教育の私費負担割合がございます。例えば、ドイツとか見ますと私費負担割合は八%なんですね。あるいはノルウェーも七%、スウェーデンも九%、デンマークについては一%であります。私は最近、特に北欧の教育というのはOECDのいろんな調査でもうまくいっているというふうに評価されておりますけれども、やはりそうした国を見ますと、特にこの高等教育の私費負担の割合というのが物すごい低いわけですね、デンマークで一%ですから。
 更に申し上げますと、そのOECD加盟国調査三十か国のうち、高等教育、十二か国においては授業料は完全に無料であります。イギリスにおいても九八年までは無料でございました。今は約半分以下の学生を二十万だけ取るということになっておりますけれども、しかし希望者は全員奨学金をもらえるということになっております。
 ですから、そういう意味で、高等教育の正にレベルといいますか、一生懸命頑張って更に高い学力、知力を身に付けていこうという、そういう若人にとってこの国が極めて冷たい国であると。そして、OECDの中で正にグローバルスタンダードに全く達していないということを私はやはりこうしたときにきちっと私指摘をして、そしてこのことに向けて私は文教科学行政というものをもう一度立て直していただきたいというふうに思います。
 アメリカの場合でも、アメリカは一見高等教育費高いなと思いますが、先ほど申し上げましたように、アメリカだって私費負担割合、四割なんです。さらに、あの国は奨学金というのは極めて充実しておりますから、大学院以降はほぼ全員がもらえます。そして、学部レベルでも七割の人たちが奨学金をもらうということでありまして、一方、日本はそちらの方も弱い。今、国立大学、これも国立と私立でかなりその差がありまして、私立においては一〇%を割るレベルでしか奨学金がもらえないと、こういう実態なわけであります。
 私は、是非、正に子供が一人前になるまでの学費というものについて、これは真剣に文部科学省、取り組んでいただきたいというふうに思いますが、この点について御答弁をいただきたいと思います。

○国務大臣(河村建夫君)
 今回、特殊出生率、最低一・二九という数字、これがかなりいろいろな問題点を呼んでおる、議論のこれからまた大きな的になるわけでございます。
 かねてから出生率がどんどん下がっていく、これにどう歯止めを掛けるかということで、先般ああいう少子化社会対策基本法もできたわけでございまして、これに具体的にこれから取り組んでいかなきゃならぬと、我々政治家みんなそう思っておると思いますし、また日本の国にとってもこれは非常に大きな課題だと思っております。その一つのバリアとして考えられる中で教育費が高いというのがいつも原因の中に上がってきておるというのも私も現実であろうと、こう思っております。
 これは、まず経済的なそういう面からきちっと文部科学省として考えていく、その直接的な原因をまず取り除いていくということと、もう一つは、やっぱり教育の中で子供を産み育てること、これはやっぱり一つの大きな人生における大事業であるという意識、ややもするとそういうことがこれまで希薄になってきておったんではないか。男女共同参画社会でありますから、子育ても夫婦一体となってやっていく、当然のことでありますが、ややもすると日本ではこれまで子育てはお母さんといいますか、主婦に負担が掛かっておる、それだけ掛けながらもそれに対する評価が少ない、こういう傾向がある。我が家でも絶えず妻からそういうことを言われ続けておるわけでありまして、この子育てに今まで掛けてきたのをどういうふうに評価してもらえるんだと、こういう話を聞くにつけ、そういう点がこれまでのずっとその積み上げが今日になってきたんではないかと、こう思っております。
 かつての戦後の非常に厳しいとき、しかし、それでも皆さん、先輩の方々が頑張って、私どもの兄弟を見れば今のような状況ではなかったということを考えますと、やっぱりこの社会の大きな変化の中でこれからの時代に対応した対策を立てていくというのは当然だと思っております。
 特に、御指摘のありました教育費の問題、これはやっぱり日本の今当面からいえば、奨学金をやっぱりいかに充実するかということに一つは大きな課題が入ってきておると思いまして、基本的には、無利子、有利子ございますけれども、ここまで来たといえば聞こえはいいかもしれませんが、有利子については少なくとも希望し学ぶ意欲のある方にはこれはもう全員差し上げる、そしてこれは自らの、自立して、大学においては自分で返還していく、そしてそれで自立の道を目指してもらいたいと、そういう方向に来ておりますし、これまでも、単なる育英資金という考え方じゃなくて、学生支援機構という仕組みにも上げて、正に学生を支援していくんだという体制でいこうということが今政策としても大きく転換をしてきたところでございまして、これからこの問題も含めながら、特にこれからこの基本法に伴いまして大綱ができてまいりますし、それから政府の基本計画も出てまいります。
 これは厚生労働省側との少子化対策にもいろいろ関係あるわけでございますが、新新エンゼルプラン、こういう中で具体的に今から計画も、政策も出てきてまいりますから、これを受けまして、文部科学省としてやらなきゃいけないこと、少子化対策の推進、これは大きな課題でございますから、文部科学省を挙げてこれにも取り組んでいく体制を作っていかなきゃならぬと、このように考えておりまして、少子化対策大綱は閣議決定をもうしたわけでございますので、これを受けて対応していく。
 一義的に一番重要な課題は、やっぱり経済的負担の重要性、そして家庭教育をしっかり支援をしていくということ、それから幼稚園における子育て支援ももっと力を入れていくというようなこと、このようなことを施策の充実に全力を尽くしてまいりたいと、このように考えております。

○鈴木 寛
 是非、恐らく年金改革について、参議院選以降も恐らくこのままでは済まないと思いますので、抜本的な議論が行われるんだと思います。その中で、やはり少子化の問題というのはきちっと真ん中に据えていただきたい。そして、その核心が相当程度いわゆる教育費問題にあるということをもっともっと声高に、文部科学大臣、内外に主張をしていただきたいというふうに思います。
 そこで、もちろん我が国の財政が極めて逼迫していることは私も承知しております。そういう中でいろんな知恵を出していくということが、もちろん私は、例えば先ほど申し上げましたように、対GDP比の、アメリカでも一・四です、高等教育だけで。スウェーデンとかフィンランドになれば一・七ですね。日本は〇・五ですから、これを早急に三倍にしていただくということはもちろん常に声高に主張していただきたいということは当然なわけでありますが、加えて、税制とかいろんな工夫の余地があると思います。
 そこで、私は幾つか御提案を申し上げたいと思いますが、一つ目は、親御さんがお子さんの教育費、授業料、大変に多額に払っておられます。これを所得税額控除にするということについて、今勤労学生が自分の学費をという税制はありますけれども、保護者が自分の子供の分を所得税額控除にする、これは一つ大きな施策になるんではないかというふうに思いますので、これについて是非御検討をいただきたいというのが一つ目の提案でございます。
 時間がございませんので、ちょっとまとめて何本か御提案と御質問を申し上げますが、それから二つ目は、年金の積立金の使途の乱脈ぶりというものが今国会でも明らかになりました。先ほど大臣は、有利子については希望者がというお話でございましたが、確かに私が国会に参りましてから、そのときは六十九万人でした、もらえる人が。それが八十六万人と、毎年本当に一生懸命頑張っていただいていると。私ももう本当にスッポンのごとく言わせていただいていて恐縮なんですが、これはしかし言い続けさせていただきたいと思います。大体、私の認識ですと、百三十万人ぐらいいるんだと思います、希望者は、潜在的希望者も含めますと。そうしますと、今八十六万ですから、やはりもう少し頑張っていただかなければいけない、有利子についてもですね。
 その際に、これも御提案なんですけれども、今、年金の積立金を原資にしてこれを奨学金として貸し付ける、そしてきちっと有利子については返していただくと。場合によれば、返済がない場合は年金分から相殺をすると。いろんな制度設計はあろうかと思うんですけれども、確かに今厳しいいろいろな、財政投融資の状況も厳しいということは存じています。その中で、私は是非この国の将来、次世代を温かく、そういう国にしていく、そのことが年金財政の、あるいは財源の健全化ということにもつながると。
 そういう意味で、奨学金の原資として年金積立金を使うというのは、私は国民的なコンセンサスは得られるんだというふうに思います。こういう点も是非厚生省、そして財務省、文部科学省一体となってもっともっと踏み込んで検討をいただきたいというふうに思います。
 それから、これは私はもう何度でも申し上げさせていただきますが、やはり奨学金、そろそろ概算要求の時期にもなりますけれども、まだまだ不十分だと思います、有利子についても、そしてとりわけ無利子についても。
 そもそも、スカラーシップというのは給付するのをスカラーシップと呼ぶわけでありますから、我が国についてはそういう意味では奨学金がないと。教育ローンなんですね、有利子奨学金という言葉は使っていてもですね。でありますので、是非、文部科学大臣に、この夏の予算獲得に向けて、この点についてはより一層の御奮闘をお祈りを申し上げ、御期待を申し上げたいと。
 以上三点についてお答えをいただきたいと思います。

○政府参考人(玉井日出夫君)
 所得税等の御指摘がございました。
 これは御案内のとおり保護者の経済的負担の軽減ということで、これは予算、税制などの様々な面での施策が必要だろうということを考えているわけでございまして、そのうちで税制面につきましては、御案内のとおり十六歳以上二十三歳未満の扶養親族にかかわります扶養控除額の割増しいたします特定扶養控除制度、こういうものが平成元年度に創設をされまして、その後、控除額の引上げが図られてきているわけでございます。また一方、児童手当の充実なども図られてきているわけでございまして、したがいまして、これは他の施策との関連というものも十分考慮いたしながら税制面についての必要性についても研究、検討していく必要があろうかと、かように考えているわけでございます。

○政府参考人(遠藤純一郎君)
 奨学金の原資として年金をという御提案でございます。
 実は、厚生労働省に置かれております社会保障審議会の年金部会、ここでこの問題が審議をされまして、昨年の九月でございますか、年金制度改正に関する意見が提出をされまして、その中でこの問題につきまして肯定的な見解、否定的な見解と両論があったという旨述べられておるというふうに承知をしておりまして、まだこの問題についての方向性が出されていると、こういう状況にはなっていないと、こう思っております。
 私どもとしましても、全体として奨学金事業が充実していくという方向は大変いいことだとは思っております。ただ、年金積立金を学生に対する奨学金に活用するということについてはやはり検討すべき課題もあるんじゃないかと、こう思っておりまして、例えば、事業の永続性の必要等から、長期かつ安定的な財源確保が可能なのかどうか、あるいは学生に有利な現行の貸与条件を維持するためには無利子あるいは低利での資金調達が可能なのかどうかと、こういったような問題等々いろいろあろうかとも思うわけでございまして、いずれにしましても、私どもとしては、厚生労働省の社会保障審議会における今後の審議の動向というものを踏まえながら、厚生労働省とも連絡調整を図りながらこの問題については対応してまいりたいと、こう考えております。
 それから、奨学金の充実のお話でございます。
 先般の骨太方針二〇〇四、この閣議決定の中におきましても、「奨学金制度による意欲・能力のある個人に対する支援を一層推進する。」と、こういう方針が示されておるところでございまして、来年度の奨学金の事業につきましてはこの方針に沿ってしっかりと取り組んでまいりたいと、こう考えております。




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