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 文教科学委員会  学力・体力低下について

2005年03月15日 



○委員長(亀井郁夫君)
 ただいまから文教科学委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、教育、文化、スポーツ、学術及び科学技術に関する調査のうち、文教科学行政の基本施策に関する件を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○鈴木寛
 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 私、午前中の自民党の委員の皆様方と中山文部科学大臣との御議論を聞かせていただいて、少し文部科学省、特に中山大臣と我々が考えております学力低下の原因といいますか、学力が低下をしていると、学力だけじゃございません、これは体力も低下をしているわけであります。日本の子供の生きる力が低下をしている。これは恐らく全員の共通の認識だと思いますが、その分析、それは中教審でこれからきちっとおやりになると、こういうことなんだろうとは思うんですが、その議論を正しい方向に導いていただくためにも議論を深めさせていただきたいというふうに思います。
 これは、もちろん中山大臣、そういう心理ではないんだと思いますけれども、総合をやめて土曜日を復活して授業時間数を増やせば、これ日本の学力低下が戻ると、こういう単純な話ではないんだろうというふうに私たちも思っておりますし、恐らく大臣もそういうことだというふうに私は信じておりますが。
 この前の予算委員会でも少し問題提起させていただきましたが、やはり我々が一番注目すべきはこの二極化といいますか、学力段階の、例えば再三事例に出されますOECDのPISA調査、この詳細な分析はこの後我が佐藤理事から本論はやらせていただきたいと思いますが、PISA調査を見ましても、レベル5はそんなに変わってないんですよね、その落ちたと言われている、八位から十四位に落ちたと言われているところも。九・九%が九・七%ですから、これはほとんど誤差の範囲、変わってないと。問題はレベル2、レベル1あるいはレベル1未満、ここが二〇〇〇年のときは二五%だったのが四〇%に増えてしまったと。この中レベル以下の子供たちが増えて、そして全体の平均を押し下げたというのがその学力問題の実態だろうというふうに思います。
 我々が取るべき施策は、この中レベル以下の子供たちの学力をどうやってもう一回引き上げるかといったところを是非この委員会でも議論を深めていきたいし、中教審でも深めていただければなというふうなことを思います。
 それで、例えば授業時間数、これを増やせと。私も全く増やすなと言うつもりはございません。特に低学年の学びなど、やっぱり時間数をきちっと対応すべきところはあろうかと思いますが、小学校一年生から中学校三年生まで一律に授業時間数を増やせばこれは上がるというものではないと思います。
 ちなみに、今世界的に注目をされておりますフィンランド、これはOECD調査国の中で一番、授業時間数自体は一番少ないんですね。フィンランドの成功というのは、恐らくいろんな、我々があるいはメディアが注目をしていないところに実は隠されているわけで、そうしたところに私たちはもう少し目を配っていかなければいけないというふうに思います。
 それで、例えばこの学びあるいは学び方というところの議論が私は足らないような気がするんですが、勉強というのは授業、一斉授業で教えてもらう、それから個別ないし少人数で分からないところを今度は丹念に掘り下げると、それから自学自習といいますか自習と、この恐らくバランスが非常に重要なんだというふうに思います。恐らくフィンランドは、いわゆる一斉授業時間数はOECDの中で一番少ない、にもかかわらず成績がきちっと高水準を確保しているというのは、この個別学習とか少人数学習とかあるいは自学自習と、こういうところのバランス、あるいはこういうところは物すごくしっかりしていると。現に、日本の子供たちは自学自習時間はOECDで最低ですから、やっぱりここを上げていかなきゃいけないということは、これは明らかなんだろうというふうに思います。
 それから、やっぱり個別指導なんかをやっていくときに、日本の教員の数、これは明らかに少ない。OECD調査国で例えば中学校の教員の数、平均を見ますと二十三・七人に一人という割合でありますが、日本はそれより十人多い三十四・三人に一人なんですね。
 ですから、やはり三十人学級というのはなぜ必要かというと、もちろん割り当てた後のそのクラスの編制の仕方というのは非常に多様であっていいと思いますが、まず先生の質と量をきちっと確保しなければいけませんから。で、例えばフィンランドは二〇%ぐらいは授業だけでは理解できない、あるいは習熟できない生徒がいるということを前提にして、その二〇%に対して今のような十分に多い教員でもってかなり少人数、個別をきちっとやっていくと、こういうことで全体の水準を上げているんだろうというふうに思います。
 そこで、結局、結論を先に申し上げますと、日本は授業で付いていけない、その補完的な学習というものを公教育が十分にできない。そこを埋めているのが正に学習塾とか家庭教師とかあるいは家庭学習とか、ここなんですね。結局、ここはその御家庭の経済力によって学習塾に行かせられる子、あるいは家庭教師に行かせられる子、それからそうでない子ということで、この前も小泉総理に申し上げましたけれども、例えば総務省の家計調査、平成十七年の一月、四人世帯、有業者一人ですね、年間収入五分位階級別一世帯当たりの一か月の収入と支出。収入格差は二・二倍なんです、第一階級と第五階級。しかし、補習教育は実に十四・七倍です。第一階級は七百六十二円しか毎月々出せないんですけれども、第五階級は一万一千百七十一円。この差が正にその個別学習あるいは補習学習といったところの差に表れていると。
 それから、更に申し上げますと、昔は勉強のできなくても運動が得意な子とかいうのはいました。しかし、最近はそこすらおかしくなっているんですね。それは何を申し上げたいかといいますと、例えば水泳とかサッカーとかというのは、これはその御家庭がそれなりに裕福でないと水泳教室へ行かせられない、あるいは今サッカー、Jリーグはもう小学校のときから月謝を払ってそのJリーグのユースチームとかジュニアチームとかキッズチームとかへ入れますから、そうすると、それなりに裕福な御家庭の子供さんが運動もできるんですよ。それが証拠に、月謝というのは第一階級が三千四百二十二円です、しかし第五階級は一万七千四百三十三円、五・一倍の差が付いているんです。
 私は、正にこの世帯の収入格差と子供たちの生きる力、これは学力だけじゃありません、さっき申し上げた水泳とかサッカーとか、あるいはスキーもそうだと思いますけれども、冬休みスキー教室に行かせられる御家庭と行かせられない家庭、いるわけですよね、特に都会だと。そういうふうなところで生きる力全般の差が付いてしまっているというのがこれ日本の子供の生きる力の最大の問題だし、私たち国会議員は、あるいは国はここにフォーカスを当てなければいけないんだというふうに思っておるんですが、この点、文部省、いかがでございましょうか。

○政府参考人(銭谷眞美君)
 今、家計収入によりまして子供たちの生きる力、学力や体力に差が出ているんではないかという先生のお話がございました。最近、そういう考え方を御披瀝をされる大学の先生もいらっしゃいまして、私どももその点はよく考えなければいけない課題だと思っております。
 ただ、一方で、OECDの調査によりますと、親の社会的な地位とか家計収入とか、そういうものと成績の相関を調べたデータもあるわけでございますけれども、比較的日本は、親の言わば社会的な地位とか家計とか、そういう学歴と成績の相関は低い国だというふうに、世界的に見た場合はデータとしては出ております。
 ですから、今後もちろん私どもの心掛けなければいけない点として、そういう親の収入と子供たちの学力や体力の問題、考えなければいけないわけでございますけれども、現在までのところ、国際的な比較では比較的影響は少ない国だというデータもございます。

○鈴木寛
 今のその数字といいますか調査研究というのは、文部省が、文部科学省がおやりになっている、あるいはその附属機関である国立教育政策研究所がおやりになっている調査ですか。

○政府参考人(銭谷眞美君)
 先般公表されましたOECDのPISAの調査の中にそういうデータがございます。

○鈴木寛
 それ、是非きちっと我々に教えていただきたいと思いますが、例えば、じゃ、文部省は、世帯の収入格差と児童生徒の授業外の学習時間、これは日本は一番低いと言われております。あるいは意欲格差、これ午前中大臣もおっしゃいましたが、意欲と学ぶ態度だと、これ私はおっしゃるとおりだと思いますが、そことの相関がどうなっているのかというのは把握されていらっしゃいますでしょうか。

○政府参考人(田中壮一郎君)
 文部科学省におきましては、その学力、体力、それから健康といったことにつきまして、教育課程の実施状況調査、あるいはその体力・運動能力調査、それから学校保健統計調査等の調査を行っておるところでございますけれども、この調査の中では世帯の収入というものを調査項目に入れておりませんので、具体的な相関関係につきましてはこれらの調査の中では把握できておりません。

○鈴木寛
 じゃ、更に申し上げますが、先ほど銭谷局長が世帯間の収入格差と相関は薄いというお話があったのでお伺いしているんですけれども、そもそも今どれぐらいの子供が塾や家庭教師に通っておられるか、で、塾や家庭教師に通っている生徒とそうでない学力の差について、これ、文部省、把握されていらっしゃいますでしょうか。

○政府参考人(銭谷眞美君)
 まず、通塾率でございますけれども、これは平成十四年度の調査でございますが、小学校二年生で一五・一%、小学校五年生で二七・七%、中学校の二年生では四九・八%、約半数の子供が塾に通っております。
 それから、塾と並びまして、家庭教師とか、あるいは通信教育などを受けている子供もいるわけでございますが、これは子どもの学習費調査報告書という、これも文部科学省の十四年の調査でございますが、これから推計をいたしますと、家庭教師費、それから通信教育費などを支出をしている家庭の割合は、小学校、公立の小学校で二五・九%、それから公立の中学校で三四・六%という数字でございます。
 なお、塾に通っている子供と家庭教師や通信教育を利用している子供とは重複している場合もございますので、塾や家庭教師を利用している児童生徒全体の割合というのはちょっとなかなか把握していないところでございます。
 それから、塾や家庭教師を利用している生徒とそうでない生徒の学力の比較でございますけれども、これも平成十三年度に文部科学省が実施をいたしました小中学校の教育課程実施状況調査、ここで児童生徒に対して質問紙で調査を行っておりまして、その内容が、塾で勉強したり家庭教師の先生に教わったりしていますかということで、その場合に、その塾、家庭教師で発展的な内容を学習をしている子供、それから塾や家庭教師で補充的な内容を学習している子供、こういう子供について聞いております。それから、当然でございますが、塾、家庭教師を活用して学習をしていない子供、言わば塾に通っていない子供ですね、この三つに子供を分けてどのぐらい割合いるかというのも聞いております。
 そういう三つのグループに分けた子供たちの教育課程実施状況調査における平均点をちょっと比較をしてみたんでございますけれども、ちょっと順番を申し上げますと、最も平均点が高いのは塾、家庭教師で発展的な内容を学習している子供。二番目が、塾にも行っていない、家庭教師にも付いていない、塾、家庭教師で学習をしていない子供、これが二番目でございます。三番目が、塾、家庭教師で補習的な、補充的な内容を学習している子供という、こういう順番になっております。考えてみると、まあある意味ではそういう結果かなという感じでございますけれども。

○鈴木寛
 恐らく学校で付いていけなくて、そして補充的学習が必要だと思って、で、付けていると。しかし、経済的な理由でそれすら付けられないという御家庭の世帯がかなり増えているんではないかというような見解というか、例えば塾の業界の方々が、今までは割と広く一般の御家庭の子弟が通っておられたと。しかし、昨今通塾率は減っているんですよね。で、特定の御家庭のお子さんしか塾に通わなくなったと。その特定のお子さんの支出は増えているものですから、塾産業の経済規模はそんなに変わっていないようなんですが、というような民間の報告書もあるんですよ。
 OECDの調査と抱き合わせてみますと、あるいはいろんな調査で、平均点もさることながら、要するに無解答ですね、いろんな試験をやると、答え書いて間違っているんならまだしも、もう答えすら書かない、空欄でもう出しちゃうと。何かいろんな質問とか問題とかやらされたらもうそこにお手上げという、あるいは、もう机に突っ伏してしまって、こういうのはもう答えるのも嫌だと、こういう層がかなりこのところの不景気もあって増えつつあるんではないかというような見解といいますか、仮説もかなり有力な説としてあるわけでございまして、ここは是非、平成十三年、もう四年前の話ですね、要するに、この二〇〇〇年と二〇〇三年の中でもう既に八位から十四位という大幅なランクダウンでございます。
 ここで申し上げたいことは、是非こうしたことについてきちっと調査を、やはり定点観測も含めて、それからOECDの調査とか今のやつというのはこれはサンプル調査ですから、そうではなくて、どういうところに、どういう地域に、あるいはどういう世帯に問題があるのかということについての絞り込みとそれについての対応策というのをやっぱりきちっと科学的に私は対応していくべきだというふうに思いますが、その点いかがでしょうか。

○政府参考人(銭谷眞美君)
 まず、通塾率の調査は、十四年のものが一番新しいものでございます。それで、その前年の十三年に調査したデータもございますけれども、若干通塾率は上がっておりますけれども、余り差はないという状況でございます。以後のデータはちょっと今私ども持ち合わせておりません。
 それから、先ほど申し上げました、塾に通っている子供、通っていない子供、あるいは塾の中でも補充的な指導を受けている子供等の学力のデータ等については、私ども教育課程実施状況調査、二、三年に一度やっておりますので、そういったデータをまた集積、分析をして、きちんと考えていきたいというふうに思っております。
 それから、割と無解答が多いというのはOECDのPISAの調査でも、自由記述の解答では、我が国の十五歳の子供たち、そういう傾向、今回は出ております。選択肢から選ぶものはそういうことはなくて比較的いい成績を取っているわけでございますが、やっぱり自分で考えて表現をしたり、あるいは文章をよく解釈して自分の解釈したことを書くとか、そういう力というのはもう少し指導の中で重視をしていかなきゃいけないというふうに私どもも思っております。

○鈴木寛
 東京都の教育委員会が平成十六年の六月に、児童生徒の学力向上を図るための調査報告ということをやっております。これ、東京都がこれ悉皆で中学校二年生、それから小学校五年生を始めておりますが、これを見ると非常にいろんなことが分かります。
 やっぱりまず大変にびっくりいたしますのは、これは東京都内の市区町村でありますけれども、その東京都内の市区町村でも地域ごとの学力差が物すごくあるんですね。例えば平均点で、平均点で一番いい区と、一番いい市ですが、実は小金井市なんで、一番最下位のところだと一八ポイントぐらい違うんですよ、例えば英語とかですね。あるいは数学でも一五、六ポイント違うんですよね。
 しかも、やっぱり子供は非常に素直でありまして、これどうして教科が分かるようになったかという調査報告が、これまたアンケートがありまして、数学と英語は非常に顕著なんですけれども、先生の教え方が丁寧という項目よりも塾や家庭での学習と答える人の方が、数学と英語については、やっぱり特に落ちこぼれたなとか、あるいは、あ、付いていけないなというのは多分この二教科が典型的だと思うんですけれども、そこのところは、子供たちの実感としてはやっぱりそこなんですね。
 で、その調査と実はもう一つ、就学援助、これは給食費とか修学旅行費とかでありますけれども、この調査をやってみますと、これはもちろん偶然かもしれませんが、私は決して偶然ではないと思っております。就学援助費、中学生、四割を超える区が一つ、それから二十三区中だけで取ってみても、三割を超える区が九区あるんですよ。二十三区中九区は就学援助三割超えるんです。そうしたところは、やはりこの学力試験を見ても劣位にあるという、この東京都内だけ見ても、やはりこの地域の経済力といいますか、その地域世帯の標準的な経済力と学力の差、そしてその要因としてこういうアンケートもあるということは、私はこれ真剣に受け止めていただいて、是非ともそうした詳細な調査をしていただきたいというふうに思いますので、この点は是非よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 それで、今のお話は体力とかあるいは学力の問題でございましたが、今回の三位一体に伴って行われる義務教育国庫負担制度、これは子供の健康、これ絶対地域差とか、絶対家庭の経済力によって差が付いてはいけない。もちろん学力も体力も付いてはいけませんけれども、健康というのは、これはもう何にも譲ることのできない極めて大事なことでございますが、そこが大変に危うくなっております。すなわち、今回の国会に御提出をされていらっしゃいます義務教育国庫負担制度の改革で、準要保護者に対する、例えば学校給食費とか学用品とか修学旅行費、通学費、医療費が見直されますが、その中で、特に学校保健法で定める医療費について、準要保護者の分については、これ一般財源化するということが入っているわけですね。これは、私は大変問題だというふうに思っております。
 このことについて御質問をさせていただく前提で、実は学校保健法の第十七条で、学習に支障を生ずるおそれのある疾病で政令で定めるものについては、治療指示というのを学校医が出します。その場合は必要な援助を保護者はもらえると、こういうことになっているわけでありますが、実はその学習の支障になる疾病というのは今増えているんですね。例えばアレルギー。これ、なぜ子供が集中して勉強できないかというと、これアレルギーって物すごい大事なんです。しかし、今現在、このアレルギーは、この学習に支障を生ずるおそれがある疾病に入っておりません。それから、最近は子供の歯周病というのが、昔は虫歯で勉強できないというのがありましたが、最近は歯周病が非常に気になって勉強に集中できないというのが非常に増えているんですね。
 このように、子供の生活習慣とかいろいろなものの変化によって、体の健康の理由で集中できない、こういうアレルギーとか歯周病とかは即刻政令追加をすべきだということをまずお願いをしたいと思っているんですけれども、こういうことの対応がまず国ですら物すごく後れているという事実があるということを委員の先生方に御理解いただいて、まずちょっとこのアレルギー、歯周病問題、特に昨今増えている学習に支障のある疾病問題について、文部科学省、きちっと取り組んでいただきたいと思いますが、この点いかがでしょうか。

○政府参考人(素川富司君)
 お答え申し上げます。
 今御指摘のありました医療費援助の対象となる疾病でございますけれども、伝染病又は学習に支障が生ずるおそれのある疾病のうち、早期発見、早期治療が有効な疾病というものを政令で指定するという考え方で行っているところでございます。ある程度治療法が確立して早期に治療すれば治癒すると、そういうような疾病を考えて対応してきたわけでございます。
 アレルギー疾患につきましては、先生御指摘のように、今、児童生徒の間で増えつつあるということについては承知いたしておるわけでございますけれども、その実態の把握というのはまだ十分ではないわけでございます。また、アレルギー疾患は一般にその個々人の体質の問題と密接に絡んでおりまして、まだ根本的な治療法も確立していないと一般的に言われているところでございます。ということで、現時点ではこの対象となる疾病に追加するということはなかなか難しいのではないかと考えております。
 しかしながら、私どもとしては、アレルギー疾患の重要性にかんがみまして、実態の把握と今後の学校におけるアレルギー対策のための支援方策というものを検討するために、平成十六年度からアレルギー疾患に関する調査研究というものを開始したところでございまして、その結果を受けまして学校におけるアレルギー対策というものを推進してまいりたいと考えております。
 それからもう一点の歯周病、歯周疾患でございますけれども、これは、一般に歯肉炎に始まりまして歯周炎、歯槽膿漏という経過で長期間を経て進行していくものというふうに言われておりますけれども、これにつきましてはいわゆる適切な歯磨きということを早期に行うということで一定の改善が見られるということで、文部科学省の健康診断マニュアルにおきましては定期的な観察と保護指導、すなわち適切な歯磨き指導ということを保健指導の手引や指導用のパンフレットというものを作成して指導しているところでございます。

○鈴木寛
 今の御答弁少しおかしいと思うんですね。要するに治療方法が確立していないから指定できないと、こういう御答弁だったと思います。しかし、アレルギーは問題だと。
 で、治療方法が確立していないこれは大変な非常に対処困難な病気なんですよ。したがって、そもそもこの学校保健法の十七条の趣旨は、要保護の御家庭あるいは準要保護の御家庭でなかなかお医者さんに行けないと、とにかくそういう子供がいたときに、その補助を、援助をしてあげますから、お子さんをとにかくまず病院に連れていってあげてくださいと。
 そして、アレルギーの場合は本当に付き合っていくの大変です、これは。しかも長期間掛かります。しかし、お医者さんに行けば、もちろん完治はしません、完治はしませんけども、寛解します。より、何といいますか、アレルギーとうまく対応をできるような処置は、それはお医者さんに行けばしてくれるわけです。そして、そのことによって、本当にもうアレルギーが大変で大変でしようがない子が、治りはしないけれども状態は少し良くなって、そして就学に専念をしていただきましょうと。そういう趣旨でこの学校保健法第十七条というのは決めている。元々言えば、もっと言えば学校保健法というのはそういう趣旨の法律でありますから。
 その法律の趣旨に照らせば、歯周病だって同じです、歯磨きがちゃんとできていない子がなるわけですから。そういう人は学校の校医だけでは面倒見られないので、地元のお医者さんとか歯医者さんに行ってその子に特別にその処置をしましょう、対応をしましょうと。しかし、経済的な理由があってなかなかお母さん、お父さんが連れていけない子供はここまでしてきちっと手当てをしましょうという趣旨でありますから、今の御答弁では、この法律の趣旨を満たして、そしてそのことを達成しているというふうに私はなかなか理解できませんでしたので、もう一回、これは是非、文部省、再考をしていただきたいというふうに思います。
 そして、時間がございません中で今日は総務省に来ていただいていると思いますが、今の学校保健法の関係で、今回のこの三位一体の国の補助金の整理合理化に伴う義務教育国庫負担法の一部改正する法律案で、五条、六条、七条と、それぞれ教育費、それから学用の関係費ですね、それから医療費というふうな、この一般財源化が決まっているわけでありますが、準要保護家庭については。ここはきちっとそもそも地方財政計画でこれ確保されているんでしょうか。
 それから、既に各市町村で予算編成が行われていますが、これ今までの御主張は、地方自治体に下ろしても十分その額は確保されますと、その地方の財源の中で、だから御心配要りませんとおっしゃっていました。そのことは本当かなと思っていましたが、そうではないと思います。
 で、もしもその御主張であれば、どうぞごらんくださいと、市町村の予算編成の中で一般財源化しましたけども、この五条、六条、七条分の実額は今までと全く乖離ございませんという証拠を示していただければ、私たちも来るべき義務教育国庫負担法の一部改正の重要な審議材料の前提となりますので、この実態についてお聞かせいただきたいと思います。

○政府参考人(瀧野欣彌君)
 準要保護児童生徒に対します今回の一般財源化の措置に伴います地方財政計画上の取扱いでございますが、今回の三位一体改革に伴います補助負担金の整理合理化に伴います一般財源化につきましては、基本的にその全額を地方財政計画に算入するということとしておりまして、御指摘の準要保護児童生徒につきましても、地方財政計画の一般行政経費の中に所要額の全額、二百六十八億円でございますけれども計上しておるところでございます。その上で、普通交付税の算定におきましても同じくその全額を基準財政需要額に算入いたしまして、それぞれ小学校費、中学校費で算定をすることとしておるところでございます。
 それに対応して地方団体がどういうことになっているかという御質問でございますが、我々といたしましては、そのように総額を確保し、各団体に普通交付税を通じて配分をいたしますところでございます。各地方団体におきましてはそれぞれ、学校保健法の規定もございますから、その趣旨にのっとって適切に対応していただけるものというふうに考えておりますし、全般的なそれに対します指導等が必要であれば、所管大臣におきまして是正要求あるいは勧告等できるようになっておりますので、そういった規定を通じてやっていただければ十分対応できるというふうに考えております。

○鈴木寛
 これは文部科学大臣にお願いをしておきたいと思いますが、今回のその五条、六条、七条関係で、地方財政計画には位置付けましたという総務省の御答弁でした。じゃ、それが各市町村の予算編成においてどういうふうな実態になっているのかということについて是非お調べをいただいて、後ほどでもちろん結構でございますが、国会の方に、我々の方に御報告をいただきたい。あるいはそうしたことを前提にこの中教審の義務教育国庫負担制度の在り方について御議論を進めていただきたい。お願いでございますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 それから、少し質問を変えまして、私も、今日は総合学習の是非などについても午前中議論がありました。私は、それぞれの学校の現場を見てみますと、幾つかいいモデル的な事例、ベストプラクティスというような言い方もしておりますが、優良事例、実践例ですね、例えば総合学習についてもあるいは選択社会についても、今日、実はこの後私は予算委員会の公聴会の方に行かなきゃいけないんですが、杉並区立の和田中学校の藤原先生がやっておられる「よのなか科」とか、あるいは広島の、委員長の御地元でもあります広島の尾道の土堂小学校で行われております様々な先進事例がございます。
 こうした先進事例が全国各地のいろんな小学校に普及をされ、そして、それ、うのみにしちゃいけません。それを参考にして、きちっと消化をして、そしてより現場に合ったものをその現場で創意工夫を持って不断に見直していくと、こういうこと、あるいはこういうムーブメントを起こすことが私は非常に重要だというふうに思いますが、文部省はさきに学習指導要領の最低基準性、そしてそうした学習内容については現場に任すと、そういう方針をお出しになったというふうに思いますが、実際のところ、各教育現場を聞いて、見て回りますと、かなりその解釈と運用についてばらつきがあるように見受けられます。
 例えば、土堂小学校ではモジュール型授業編成っていって、四十五分間を十五分掛ける三にして、その十五分は大臣のおっしゃるように例えば計算とか集中して、正にかなり自習に近い形の授業をやる。これを週三日、三時間やるだけで相当成果が上がっているという報告もあります。それから、例えば小学校三年生に一年生の百升の内容をもう一回勉強し直させると、もう一回基礎基本ができるわけですから、足し算とか引き算。そうすると、三年生の掛け算とか割り算の成績も上がるという事例もあるんです。これまあよく考えてみれば、そうだろうなと思います。
 そういうことを、ただほかの学校がまねした場合に学習指導要領違反かもしれないと思っておられる校長先生とか現場の先生が物すごく多いんですよ。土堂小学校は、あれはコミュニティ・スクールあるいは研究開発学校ですから、それは合法的にそういうことをやっているんですけれども、いわゆる一般のところでそれが学習指導要領違反じゃないかという。
 これは違反ですか、違反じゃないですか。まず、教えてください。

○政府参考人(銭谷眞美君)
 まず、土堂小学校のモジュール授業、あるいは百升計算について御説明を申し上げます。
 授業の一単位時間というのは、昔から小学校は四十五分、中学校は五十分というふうに、我々の時代はそうだったわけでございますけれども、現在の学習指導要領におきましては、各学校において、各教科等の年間授業時数を確保しながら各授業の単位時間というのはそれぞれいろいろ工夫をしていただきたいというのが今の指導要領の考え方でございます。
 ですから、土堂小学校で実施をしておられるような一単位時間を十五分とか二十五分とか、そういうモジュールで実施をするということは一向構わないわけでございまして、それぞれの学校がよくお考えになってやっていただければよろしいかと思います。現に、授業の一単位時間の弾力的な運用を行っている学校は、小学校で四二・八%、中学校で二〇・八%の学校でそういうことを実施をいたしております。
 それから、百升計算につきましては、学校において特に必要がある場合には、指導要領に示している内容に加えてほかの学年の内容とかあるいは復習とか、そういうことができるようになっておりますので、学校が指導上の観点から必要と判断すれば百升計算というのはほかの学年でももちろん実施できるわけでございます。

○鈴木寛
 すっきりいたしました。
 ただ、今の局長の御答弁にも、特に必要にある場合にはということがくっ付くわけですね。こういうことが現場の混乱を招くんですよ。
 これはよくよく調べてみますと、文部省はかなり弾力化していると、しかし都道府県教委とか市町村教委で伝言ゲームになっていると、現場に物すごいおかしなことになって伝わっているんですね。
 特に、ちょっと私はこれ御提案を申し上げたいんですけれども、現場の校長先生とか教員とかあるいはPTAとかあるいは市町村教育委員会から直接この法律とか政令とか学習指導要領の解釈について文部省に問い合わせができる仕組み作っていただけないでしょうか。そうすると、かなり混乱は、これまた憶測が憶測を呼びますから、もうとんでもない尾ひれとか羽ひれが付いてしまっているということを是正する、やっぱりこういう事前相談制度みたいなことというのはやっぱりやった方がいいと思うんですね。通達なんかだけ流すと、いや、あの通達は実はこうなんだけど実はこうなんだと、こういう通達の解釈の解釈の解釈みたいなのが出ちゃうんで、それはいかがでしょうか。

○政府参考人(銭谷眞美君)
 もちろん現在でも、市町村教育委員会とか学校長とかあるいは保護者の方から文部科学省に直接お問い合わせがあれば、それに担当課の方からお答えをしているわけでございます。また、最近、教育御意見箱などというのも作りまして、直接、ある時期集中的にいろいろな御意見をお伺いをしてそれにお答えするというようなこともやろうと思っております。どこまでシステマチックにできるか分かりませんけれども、私ども、そういう外部からのお問い合わせにはできるだけ丁寧にお答えをしていきたいと思っております。
 それから、私ども、やっぱり先ほど先生の方からベストプラクティスを紹介するといったようなお話、それが必要ではないかというお話ございましたけれども、私どもも全くそう思っておりまして、これまでも優れた実践をまとめた実践事例集とか、あるいは数学や理科などの教科の優れた指導を織り込んだ指導資料の刊行とか、それから定期刊行物で「初等教育資料」、「中等教育資料」という雑誌を私どもも発行しておりますので、そういった中で各地の優れた取組を紹介をしているところでございます。また、教育委員会や学校の先生方を対象とした研究協議会などで意見の交流ということも心掛けてやっているところでございます。
 いずれにいたしましても、私ども、私どもの考えを率直にお伝えをするとともに、優れた実践事例の紹介に今後とも努めていきたいというふうに思っております。

○鈴木寛
 それは是非やっていただきたいと思うんですけれども、どうもそのように現場は思っていないということを二〇〇%意識してやっていただきたいと思いますし、それからやっぱり世の中で優良事例、ベストプラクティス、もちろん文部省も、文部科学省もあるいは研究所もその人員の問題というのはあろうかと思いますが、もう少し効率的に調べる体制、必要じゃないでしょうか。
 例えば、世の中で評判になっているいろんなベストプラクティス、いや文部省だけ来ていないんですよねという話が非常に多いような気がいたしまして、今の局長のことをきちっとやっていただきたいというふうに思いますし、特にやっぱり研究開発学校とか特区とか、そういうベストプラクティスをやってもらって、その知恵、ノウハウを普及するためにやっているわけでありますから、そういうところのやっぱり出てきた成果というのはもっともっと取りに行って引き出してきて広めるという、そういうことはやっていただきたいと思います。
 それから、もう一つお願いでありますが、いわゆるそういうベストプラクティスを実践されている、これ先生ですね、教員、これはベストプラクティスが広まるのはいいんですけれども、これ教材だけ広まると、またこう曲解して広まっていくわけですね。
 例えば、私は、陰山先生なんかは、陰山先生が一番推進しておられるのは百升計算じゃないですよね、早寝早起き朝御飯、そしてテレビ抜きと、これを彼は一番やりたくて、そして加えて百升もまあやったらいいですねと、こういう話で。しかし、今マスコミに乗ってしまうと、結局、百升の陰山さんとこうなってしまって、本人もまあちょっと面食らっているということだと思うんですが。
 やはりそういう意味で、実際にそれを推進しておられる先生、かつ、別にメディアで有名になろうが有名にならなかろうが、本当に頑張っておられる方一杯います。しかし、その方々が自ら、私は、現役の教員とか、あるいは教育学部の次の教職、教員を養成する課程とか、そういう教壇に立って、昔、師範学校というのがありましたけど、教育学部が今それに変わっているわけですけど、教育学部の先生は私も知り合い一杯いますから余り文句言いたくないんですけれども、学者のための学者みたいな人が多くて、やっぱり医者の世界でも臨床のプロがやっぱりそういう現場に行くということが重要でありまして、正にベストティーチャーが教育学部とかあるいは教育研究所とかあるいは研修会とかの教員の教壇に立つという、そういう人事交流とか出向とか配転とか、本当にそのノウハウをつまみ食いじゃなくてトータルでこの世の中に広めていくということについて、文部省、頑張っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(銭谷眞美君)
 ただいまの先生の御指摘は大変示唆に富んで、私どもも十分考えなければいけない内容だと思っております。
 一、二申し上げますと、研究開発学校でございますけれども、これは基本的には先駆的な研究をしていただいて次の学習指導要領の改訂に反映しようというのが主目的ではございますけれども、私ども、研究開発学校の実践について、有識者から成るチームを作って評価、分析を行った上で、その研究内容についていろいろ紹介をする事業も今始めております。
 特に、今年から正に始めたわけでございますけれども、研究開発学校フォーラムというのを開催をいたしまして、研究開発学校の方に集まっていただいて、そこに一般の先生が参加をしてそれぞれの学校の研究発表を聞き、更に個別にお話し合いもできるような、そういう事業も今年から始めたところでございます。こういう事業は今後とも充実をしていきたいというふうに思っております。
 それから、ベストティーチャーといいましょうか、優秀な先生方を大学の例えば教員養成の現場で活躍していただくといったようなことも、学校現場の実情を熟知した方が指導者になるわけですので非常に意義のあることだと思っております。
 今年、調査を行ってみたんですけれども、二十六の都道府県の教育委員会で現職教員を大学の客員教授や講師あるいは専任の教授等として派遣をして、大学の教員養成課程でいろいろ教壇に立ってもらったり一緒に研究してみるといったような事業を行っているという結果が出ております。こういうことは大いに進めていきたいなというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、文部科学省としても、例えば私どもの初等中等教育局と国立教育研究所が主として教育内容を担当しているわけでございますけれども、そういうところにも現場の優れた先生を研究協力者として大いに参加をしていただいて、そのノウハウをきちんと広めていくというようなことを心掛けていきたいと思っております。組織的に優れた研究実践が世に紹介され、きちんと伝達できるような方法を更に工夫して考えていきたいと思っております。

○鈴木寛
 今日は幾つかのお願いと提案をさせていただきました。是非、中山大臣のリーダーシップで精力的に進めていただきますことをお願い申し上げます。
 どうもありがとうございました。




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