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 行政監視委員会  二十一世紀における小児救急医療のあり方                                                      について

2005年07月11日 


鈴木寛君 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 私は、我が国の小児の保健医療水準の件につきまして本日は質問をさせていただきたいと思います。今日は、尾辻大臣、お忙しいところ、ありがとうございます。
 厚生労働省は、様々な医療政策に関するそのベースになるいろんな研究活動をやっていただいておりまして、その中には我々の医療政策を考える上で非常に参考になる研究活動をやっていただいているというふうに思いますし、率直に敬意を表したいと思います。
 それで、私も時々こうした研究成果を勉強させていただいているんですが、今年、二十一世紀における小児救急医療のあり方に関する研究という中で、国立保健医療科学院の生涯保健部が中心となって「わが国の小児の保健医療水準先進国との死亡率の比較より」という報告書がございます。
 この結果を見まして、私はこれ非常に重大な問題提起がなされているなということで、冒頭、質問をさせていただきたいわけでありますが、先進十四か国、日本を含めまして十四か国で各年齢ごとの死亡率を調査をしているわけでありますが、日本は総じて非常に良い成績といいますか、良い結果が出ているわけでありますが、一歳から四歳児だけ、一歳から四歳の幼児死亡率だけ見ますと、この調査対象の先進国中、実質上最悪の成績になっていると。つまり、いわゆるその先進国平均よりもこの幼児の死亡率が約三割高いという状況でございます。
 ちなみに、十万人当たり幼児の死亡率が三十三名でございまして、平均が二十五・五、スウェーデンは十四・三人なんですね。ですから、日本は三十三名亡くなる中で、スウェーデンは、スウェーデンが一番いいんですけれども、十四・三と、こういうことでございまして、これはこの田中さんたちの、国立の保健医療科学院の生涯保健部がこのレポートの中で言っているわけでありますが、先進国並みにこの死亡率を引き下げれば、具体的に三百五十四名の命、スウェーデン並みにすれば八百八十二名の命が救えると。もちろん、これいろいろな複雑な要因があって重なり合っているわけでございまして、ただ、いずれにしても、我々はこの三百五十四名ないし八百八十二名の命を救いたいなと、これは恐らく大臣も含めて、そのことには恐らくどなたも御賛同いただけると思います。
 また、健やか親子21でも、この問題は、正に幼児の死亡率をこのまま下げていくということも厚生労働省は打ち出しておられますけれども、これ非常にショッキングな私は数字だと思います、及び実態だと思います。この幼児の死亡率の高さ、そしてこの問題をどのように把握し、そしてこれにどのように取り組んでいかれようとしておられるかということについて、厚生労働大臣の御意見を賜りたいと思います。

 

政府参考人(伍藤忠春君) 若干、研究報告にかかわる事務的なことでありますので、少し私の方から御説明をさせていただきたいと思いますが。
 ただいま委員の方から御紹介のありました研究成果、これは国立保健医療科学院の方々が中心になって研究したものでありますが、その中で紹介されておりますのは、確かに、日本の場合、先進十三か国と比較をして一歳から四歳までの幼児の死亡率が高いと、こういう結果が出ておることは事実でございます。
 この要因は何か、原因は何かということは必ずしもこの研究報告の中でも明らかにされておりませんで、まあ、主任研究者というかそういう方々の話聞きますと、日本の小児医療体制に問題があるんではないかとか母親の注意不足ではないかとか、こういったことが言われますが、ただ全体として考えていただかなきゃなりませんと思いますのは、日本はやっぱり乳幼児の死亡率は非常にすぐれて改善をされてきたというのが戦後の一貫した評価でございまして、この研究報告によりましても、一から四歳以外のところではおしなべて我が国の死亡率は低いという結果になっております。
 特に、この一四歳と関連付けて見ますと、このゼロ歳児の死亡率は非常に他の先進国よりも更に低いという結果になっておるわけでございまして、特に乳幼児といった場合に、やはり死亡者の一番数が多いのは、絶対的に多いのはゼロ歳でございます。このゼロ歳児の死亡率が我が国はその先進十三か国に比べても低いと。
 例えば、この研究報告の、同じ研究報告の中で言いますと、先進国を一〇〇といたしますとゼロ歳児の場合には我が国は六七と、こういう結果になっておりますし、今委員から御指摘のあった一から四歳の場合には、先進十三か国を一〇〇といたしますと我が国は一二九、約三割高いと、このとおりの、そういう報告になっておりまして、乳幼児ということで、生まれて、まあ極端に言いますと、五歳まで到達する割合はどちらが低いかというと、多分、数字でいうと我が国は決して先進国に比べて高い数字にはなっていないんだろうと思います。
 以上が客観的な数字でございますが、小児科の現場の方々とか、そのほかいろんな方々が指摘されますのは、今いろんな不妊治療、そのほか医療の高度化によって非常に未熟児とかそういった子供の生まれる割合が非常に高くなっておると。日本の小児科の病院などでは非常にICUとかそういったところが非常に乳児で一杯だというような、こういう実情も指摘をされておるところでありまして、こういったゼロ歳児の救命率の高さというのが、この一から四歳の死亡率の、我が国の場合ですね、高さとどういうふうに関係があるのかといったようなことももう少し分析をしてみないとこれは分からないことかなというふうに思っておりますし、そういったことも含めてこの一から四歳のところの死亡率がなぜ高いかということを少し、もう少し疾病別その他要因を、地域別があるのかどうか、少し詳しい研究が必要ではないだろうかというのが今のところの率直な印象でございます。

 

鈴木寛君 おっしゃるとおりで、ゼロ歳児のところは非常にいいわけです、これは引き続き、スウェーデンに次いでということなんですが。
 ただ、田中先生たちの研究でも、この年齢階級の、正に一歳から四歳での死亡率が高いのは、正に今局長がおっしゃった我が国のNICUというのは、これ新生児の集中治療管理室でありますが、これの整備が確かにいいんです、によって死亡時期が少し乳幼児にずれ込むからではないかと考えられたが、様々な修正を、もし仮にこのことが一部正しいとして、いろいろな修正を掛けてみてもこの年齢階級、要するに一歳から四歳の年齢階級の死亡率が先進十三か国に比べ高い値であることは間違いない事実でありますということでありますから、今のお話は全くおっしゃるとおりなんですが、しかしそれも踏まえても、やはり一歳から四歳のところに何らかの問題があるということを、これは本当にここにお集まりのすべての皆さんと日本じゅうで考えていく必要があるのではないかということで、今日問題提起をさせていただいているわけでございます。
 それで、この調査の主査でございます田中哲郎部長も、やはりいろいろ、つらつら考えてみますと、この問題、私、一年間ぐらいいろんな関係者と意見交換をさせていただいているんですけれども、やはり一つは一歳から四歳の乳幼児を持つ家庭での事故予防対策といいますか、事故予防教育というのが不十分だというのが一つあると思われます。
 例えば、これ五歳からになりますと幼稚園とか学校とかへ行き始めますから、それからいろいろな事故の発生を見てみますと、休日とか自宅でいるときに、例えばたばこの誤飲とかそういうようなこともあって、いろいろなことを見てみますと、病院とか学校とかの管理下にあるところはこれは世界的に見てもかなり高水準にあると。で、家庭においていろいろな事故が起こっているということが一つですね。
 それからもう一つは、それは要するに発生をいかに下げていくかという問題。それから、いったん事故なり救急救命が必要な状態になったときの、今度は小児救急体制の受入れ側にこれやはり問題があると。救える命が救えていないと。恐らく、大きく言うとこの二つぐらいの要因といいますか背景があるんだろうと。この両方を並行してやっていかなければいけないんではないかなというふうに私も思うわけでありますが。
 まず、正に事故予防。これは行政だけでもできません。病院だけでもできません。世の中全体でやっていく、こういう話になろうかと思いますけれども。正に一歳から四歳までの亡くなる死因の、亡くなる理由のトップはこれ不慮の事故であります。三十三名の中で七・六名が不慮の事故で亡くなっておられると。もちろんこれも改善がなされてはおりますけれども、ほかの国も改善がなされておりまして、しかしこれはゼロになるまで改善を続けなければいけない問題であります。
 これはまた別の調査でございますけれども、同じチームがやっている別の調査でございますが、今度は不慮の事故だけ見ますと、不慮の事故だけ見ますとゼロ歳児も先進十四か国中三番目に悪いんですね。これまたスウェーデンは十万人当たりゼロ歳児の不慮の事故は二・二名なんですよ。日本は十八・三名なんですよ。ですから、ゼロ歳児の不慮の事故だけ取りますと、日本はスウェーデンの八倍亡くなっていると、こういう。それから、先進国の平均に比べても一・七倍なんですね。それから、今問題としております一歳から四歳児のところも、先進十四か国中五番目に悪いんですね。これもイギリスなんかが一番いいわけですが、イギリスに比べても二・六倍ということでございまして、やはりこの不慮の事故を家庭ないし社会、世の中全体でもっともっと目配りをしていくということをきちっとやっていかなければいけないということは私は言えるんではないかなと思います。
 それで、済みません、数字がいろいろ並んで申し訳ありませんが、イメージを皆様方に共有していただくためにもう少しお付き合いをいただければと思いますが、今事故防止対策をやっている家庭の割合が、例えば一・六か月のお子さんの家庭で四・二%、三歳児だと一・八、それから事故防止対策を実施している市町村の割合が、例えば三か月健診時点でいうと三二・六ということです。
 この本当に田中チームは物すごくいろんないい研究活動をしていまして、今年の五月に発表されました「子どもの事故予防のための市町村活動マニュアルの開発に関する研究」というところで、こうした子供の転落とか誤飲、誤って何かを飲んでしまう事故防止について、八八%の市町村で何らかの指導は行われているけれども、その市町村の自己評価として、きちっと十分に行われていると、要するに健診時の指導が十分に充実していると考える市町村はわずかに一・五%、五〇%が指導力不足だと自分で自己評価をされているわけであります。
 一方、保育所に通っている保護者の皆様方も、事故が起こってしまった方にアンケートをしますと、やっぱり七三%は防げたと。そういう意味でやはりきちっと、家族がどういうときに事故が起こるのか、あるいは事故を起こさないためにどういうことを気を付けたらいいのかということについての情報、あるいはそれの教育といったことをやはりきちっとやるということが必要ではないかと。ちなみに、北九州でこれをおやりになったところ、やはり事故発生率が五・四%ぐらい減っているという事実もあります。
 是非、こうした保護者への小児の不慮の事故防止指導ということを徹底、充実をさせていただきたいというふうに思うわけでございますが、この点について厚生省、どういうふうな取組をされていて、そして更に今後それを強化していく御予定があるか、お聞かせをいただきたいと思います。

 

政府参考人(伍藤忠春君) 乳幼児の死因の中でも不慮の事故というものが非常に多いわけでございますので、これを何とか減らしていきたいということで、私ども、二〇一〇年まで今目標に掲げておりますが、健やか親子21という、こういう十年計画の運動の中でも、子供の不慮の事故死亡率を半減するという目標を掲げて今推進をしているところでございますし、昨年の末に子ども・子育て応援プランという新しい少子化対策のプランを発表いたしましたが、この中でも、今委員から御指摘のありましたように、まだ取組の後れている市町村、個々にいかに取組をやっていただくかということで、こういう事故防止対策を実施する市町村を一〇〇%に持っていこうという五年間の目標ということで掲げさせていただいておりますので、こういった家庭事故の半減、それから市町村の取組を推進するということは、私ども、大きな課題だと思っております。
 具体的にどうするかということでございますが、必ずしも一部の自治体を除いては取組がなされておらなかったということもございまして、今御紹介のありました田中先生等に研究をしていただいて、そういった事故防止のマニュアル、指導マニュアルというのを昨年度作成していただきましたので、これも市町村その他に配って周知を図っておりますが、それを更にダイジェストといいますか、非常に分かりやすい、母親学級とか両親学級とか市町村がやりますが、そういう際にお母さん方に配って、自分で点検をしていただくと。それも、四か月児の場合にはこういうところに気を付けてやっていますかと、それから、一歳六か月の子供の場合にはこういう項目についてどうですかと。こういう具体的な、市町村が取り組みやすい、今データ、資料を作って配布したばかりでございますので、この成果が上がることを私ども期待しておりますし、いろんな機会にこれの普及がどうなっているかということをまたチェックをしていきたいというふうに考えております。

 

委員長(山口那津男君) 速記を止めてください。
   〔速記中止〕

委員長(山口那津男君) 速記を起こしてください。

 

鈴木寛君 私も、この国立保健医療科学院が出しておられる「子どもに安全をプレゼント」というこの今のパンフレット、それからホームページがありまして、それを見ました。それで、非常にきめ細かく、いわゆる保護者向け、市町村向け、それから、その成長段階に応じて、何歳の子にはこういうことというので、これは非常にいいものだなというふうに思いましたけれども、是非それを配っていただきたいと思いますが。
 私は、これ是非、今日大臣もいらっしゃいますけれども、御検討いただきたいのは、健診で来ていただいた保護者の方々に多分パンフレットを配るとか、あるいは市町村のいろんな機会をとらまえてパンフレットを配る、それからもう一つの入手方法はホームページを見て入手すると、こういう方法なんですけれども、是非やっていただきたいのは家庭訪問です。これ、お分かりになると思いますけれども、自分でホームページをごらんになってそういう情報を検索をして、そしてダウンロードしてそれを勉強するという御家庭は、それは恐らく大丈夫なんですね。
 私、イギリスとかスウェーデンとかデンマークとか、これ非常に成績がいいんですね。これをいろんな仲間と勉強していますと、要するに、訪問保健師さんが出産直後から御家庭を物すごくきめ細かく訪問されるんですよ。やっぱり健診に来れない御家庭、これはいろんな理由があるからしようがないと思います。ただ、そうしたところをやはりきちっと日本も手当てをして、確かに育児支援家庭訪問事業というのは御検討されて、開始されていらっしゃるようでございますが、これをやっぱり相当強力にこれは推進をしていっていただきたいなというふうに、是非これはもっともっとこの重要性を御認識いただいて、お取り組みをいただければというふうに思います。
 今は、いかに不慮の事故を減らしていくかという、家庭、社会の側の問題でございましたが、残念にして何らかの事故が起こってしまった、あるいは事故でなくても正に急病になってしまったと、重篤な急病が発症したといったときに、これは正に小児救急救命体制をきちっと整備をしなければいかぬと、こういうことになるわけでございます。
 それと、これは当然だと思いますけれども、育児の最大の不安は子供の急病だと答える保護者の方が六七・七%いらっしゃるわけですね。やっぱりこの小児救急医療体制の整備というのは最重要な少子化支援対策だというふうに私は思うわけでございまして、本当にこの小児救急の現場、大変でございます。私の友人もいろんな現場のそうした臨床医をしておりますけれども、例えば、急患センターの患者の半分は小児です。その八割はさらに三歳未満です。正に今日議題としています、一歳から四歳のところが正に小児急患センターに駆け付けていくということでありまして、しかも、夜の二十三時から翌朝の八時というこの深夜帯、これ大都市で言うと三割はこの深夜帯に集中しているんですね。ですから、やっぱりここにぴしっと手が届かないといけないのではないかなというふうに思いますが。
 一方、小児科は減っております。小児科を標榜する病院は、例えば平成八年、三千八百四十四あったのが、平成十四年では三千三百五十九、四百八十五これ減っておりますし、二割減っております。
 それから、いわゆる小児救急医療体制が整備されているのは、これは九の都道府県だけでございます。大体四百四地区の小児救急医療圏というのがございますが、そのうちの四五%に相当する百八十三の地区ではこうした体制が整備されていないと。例えば青森県というのは一地区もそういった体制が整っていないし、東北、九州では後れが非常に顕著であると、こういうことなんですね。
 それから、救急病院だと告示をしていながら、じゃそこに駆け付ければ何とかなるだろうと、こういうふうに多くの保護者の皆さん思うわけでありますが、実際に、じゃ、救急病院と告示をしていて小児救急を実施しているのは五四%しかありません。それからさらに、二十四時間、三百六十五日でやっているのは四割しかありません。さらに、そこに行って小児科医がいる病院は三割しかありません。ですから、小児救急、やっと見付けて、やっといろいろな、たらい回しとかなんとかの状況をクリアして行ったところ、三割しか小児科にきちっと診てもらえないと、こういう状態になっています。
 ここは別にその病院が悪いわけではありません。まして担当の小児科医が悪いわけでは全くなくて、これはシステムの問題だと私は思います。
 小児救急は非常に季節変動が多いんですね。当然、冬は多くなると。これはインフルエンザとか肺炎とか。そうなりますと、これ病床の稼働率が低くなりますから、これは病院経営としては一番採算が悪い。
 それからもう一つは、救急患者の場合は、救急車で来ないで、自分でタクシーに乗って、あるいは車に乗って駆け付けるというケースが小児救急の場合は多い。そうすると、小児救急を行えば行うほど紹介率が下がるんですよ。紹介率が三割を上回るとむしろ加算得点になるんですけれども、紹介率が低いものですから、これまた病院の収益の悪化の要因になると。
 それから、もうこれは御説明するまでもありませんが、小児科医というのが今大変なお仕事でございますから、ここが大変厳しくなっていると。ちなみに、内科は人件費が三六%なんですけれども、小児科は掛かるコストの六割が人件費と、こういう状況になっております。正に、別に内科よりもという、そういう比較することは全く意味がありませんが、薬の使用量も少ないと。それから、診療に手間が掛かると。それから、さっき申し上げたように、季節によって変動要因が多いということで、不採算部門としてどんどんどんどん小児救急医療が切られてしまうと。さらに、先ほど申し上げましたように、急患の五〇%は小児で、そのまた八割が正に三歳未満と、こういうことで、物すごく夜間急患の激務でそこにコストが掛かるというような中で、先ほど申し上げましたような小児救急の実態でございます。
 ここは正に小児救急実施病院を実質的に数を増やして、そしてきちっと配備していくということは、これは本当に重要な課題だと思いますが、この点いかがでございましょうか。

 

政府参考人(岩尾總一郎君) 委員御指摘のように、地域の子供の病気に対して適切に対応していかなきゃいけないと思っております。
 小さいお子さんですので、御両親が働いているということもあり、どうしても夜間に掛かるというケースが多いのかと思います。
 私ども、医療機関に対しましては、十六年度の診療報酬改定で様々な、小児あるいは小児救急、新生児等々への点数の評価を行ってきております。それから、制度上、全国に小児救急の医療拠点病院を整備するということで、補助金等々も出しております。
 しかしながら、先生御指摘のような点があるということで、もちろん病院の体制を構築するということは十分やっていきますが、それ以上に、先ほど言いました、核家族化して親が子供の病気に対してなかなか経験がないということもございますので、私ども、十六年度から、保護者が夜間等に安心して小児救急医療に関する相談ができる窓口の設置をいたしました。これによって、既にデータもございますが、対応結果として、翌日かかりつけ医に行っていただくとか、何かあれば医療機関に行っていただくとかで、現場の医療機関が混乱といいますか、混雑しなくて済むような傾向もございます。
 したがいまして、このような子供の症状の変化が軽微である場合には、電話相談などによって適切な指導をしていく、そして、保護者等に安心してもらう、適切な受療行動を促すというような方策も取っているところでございます。
 今後の問題でございますが、小児科医が不足している、一人の医師に掛かる労働負荷が大きいというような指摘もございますので、十分な質の高い小児救急医療を提供するために、現在、平成十八年度に向けて医療制度改革をしておりますが、この中で、小児救急の拠点あるいは小児救急医療機関の再編、集約化などの機能強化を通じて適切な医療が提供できるように検討していきたいというように考えております。

 

鈴木寛君 この場は正に行政監視委員会でございますから、厚生労働省もいろいろと、対策は毎年いろいろ考えていただいていることは私も認めますが、これがなかなかやっぱり、これ結果にもっとダイレクトにつながるような形で、これは医療制度の根っこにかかわる部分もあることは私はよく承知をいたしておりますけれども、是非この正に小児医療あるいは小児救急医療について、正に行政監視あるいは行政評価、政策評価の観点からやっぱり総合的に我々の委員会でこれ後押しをして、正に厚生省も頑張っておられると思いますけれども、やっぱりそれは財務省との折衝とか、あるいは医療制度の根っこにかかわるところとか、いろいろ難しいところがあろうかと思いますが、ここは是非、尾辻大臣もリーダーシップを取っていただきたいと思いますが、この委員会でも皆様方のお力をいただきたいなというふうに思います。
 それで、今、やっと今度は救急病院に行ったとしますね。しかし、そこでの設備の問題もあるんです。
 ICUと言いますが、これは集中治療室です。これにも小児専用のICUというのがあります。これPICUと、こういうふうに呼びますが、これは欧米ではこういう小児専用病院のベッドの一〇%はICUなんですよ。しかし、日本は全国で九十七床しかありませんと。子供向けのそういうベッドの一・二%しかこのICUがないと。これは日本集中治療医学会の全国調査の数字です。
 それから、埼玉医大の田村先生という方がこの二〇〇五年の四月に日本集中治療医学会で発表されていらっしゃいますが、二〇〇三年度段階で、いわゆる大学病院とか子供病院などの中で専用の小児専用集中治療室、PICUを備えているのは一六%しかないんです。恐らく、我々の感覚からすれば、正に大学病院とか子供病院とかに行けばそうしたものは整備されているだろうと。そして、小児専門医、小児救急専門医に診てもらえるだろうという恐らく期待はあると思います。そこに一六%しかこたえられていないと。
 これも例えば、PICUがある十三都府県では、例えば不慮のいろいろな事故が、転落とかそういうことがあって担ぎ込まれますね。そのときに十万人に対して五・五人なんです。PICUがない残りのその三十四都道府県だと八。ですから、あるところは、PICUがあるところは五・五、PICUがないところは八なんです、これ死亡率が。そうすると、明らかにPICUのあるなしで死亡率の結果に差異が出ているという研究発表もあって、やっぱりこれはPICU大事だなと、こう思わざるを得ないわけであります。
 ちなみに、田村教授は、このPICUを欧米並みに整備をすれば年間五百人の救命はできると。これ、全然違う研究班がその調査をしているんですけれども、どうやら何かをやると、おおむね五百名ぐらいの命が救える可能性があるというこの研究チームの発表が、いろんなサイドから攻めていったときにあるということが私は申し上げられるんじゃないかと思います。
 これはいろんな調査ありますが、これまとめてお伺いします。
 現在の日本の小児専用の集中治療室の整備の現況と、じゃ、これを私はきちっと整備をしていただきたいと思いますが、この方策、併せてお答えいただきたいと思います。

 

政府参考人(岩尾總一郎君) 小児の集中治療ということですが、十五歳以下の子供で人工呼吸などの呼吸管理、血圧などの循環管理が必要な重症の小児患者を対象に手厚い治療を行う施設ということで、通常私どもが理解しておりましたのは、救急で使うというよりも、子供の場合、心臓の弁膜症ですとかそういう病気があって、心臓の手術や何かした後の容体管理に用いられるという認識でございました。
 多分その調査をした先生方もそうだと思いますが、救急救命ということでこのような施設が使われているというようなものは限られているというふうに思っておられるだろうと思います。
 先ほど言いましたように、調査結果、私ども持ち合わせておりませんが、十六施設で九十七床ということですが、国立の成育医療センターには二十床ほどあるということですが、先ほど言いましたように、心臓等々の手術の関係で整備しているというふうに思っております。
 予算でございますけれども、基本的には、施設整備費というものが、私ども持っておりますので、小児病院におけるその小児の専用集中治療室の整備についても、申請があれば適宜、まあ予算の範囲内ということになりますが、支援してまいりたいというように考えております。

 

鈴木寛君 これはもちろん、今おっしゃったように、容体の急変、それからもちろん救急、いろんな用途があって、いずれにしても、しかしこれは私は是非欧米並みの配備ということを、今の予算も充実させていただいて取り組んでいただきたいというふうに思います。
 それで、正にその設備の問題。それから、小児科医がどんどんどんどん減ってしまう、とりわけ小児救急の専門医が十分に確保できていないと。この理由は正に過剰労働ですね。
 いろんな調査がありますけれども、本当に、月の休みがゼロあるいは一日という方が本当にこの世の中の小児科医の実態なんですね。一々もう数字は申し上げませんけれども、いろんな調査がございます。それから、実は高齢化も進んでおります。
 それから、この小児科の確保につきましては、小児科学会が相当な問題意識を持っておられて、平成十六年の四月にきちっと小児医療体制の改革の目標と作業計画、そしてこの十七年の四月六日には病院の小児科医の将来需要ということもきちっと発表されていらっしゃいます。
 それで、なるほどなと、現場の先生方がきちっとくみ上げていただいたプランで、私はこういうことを是非やっていただきたいと思いますが、例えば、ちなみに、施設数は今千二百九十一ぐらいあるらしいんですが、それをむしろ八百四十ぐらいに集約をして、そして中核病院を五十ぐらい、そして地域小児センターを二百四十ぐらいというようなことなわけでありますが、その中で、小児科医をきちっと確保するということと同時に、例えば、このプランによりますと、小児科医は四千四百人、それから新生児の専任の人が千六百八十人、それから小児救急専任の人が九百八十人、それからPICUに付く先生が五百人と、これぐらいが必要だという需要などもされていらっしゃいます。
 それから、その中で、しかし一方で、今医学生で小児科の希望者は物すごく減っているわけですね。それで、このまま例えば今申し上げたプランを実現するためには、各大学の小児科で今よりも、今大体四百四十名ぐらいの志望者なんだそうですが、三割増希望してもらわなきゃいけない、それが十年続かないといけないと、こういうことも言っておられるわけでありますけれども、正に私は、この小児科学会が出しておられるプラン、何とかして皆様方と一緒に実現をしたいと思います。
 それで、こうした小児科学会の具体的なプランとか提言、正に小児科医不足というのは厚生労働省も十分重要な課題だと思って御検討されていらっしゃると思いますが、これ改めてお伺いしますけれども、どうしていくのか、そして、こうした具体的なプランも出てまいりましたので、これについての実効ある施策を取り組んでいただきたいと思いますが、御答弁をいただきたいと思います。

 

政府参考人(岩尾總一郎君) 小児科医、確かになかなか仕事の負荷が多いということで、なりたがらないという話も聞いておりますが、毎年七千数百人のお医者さんが卒業する中で、着実に専攻する方々が増えているという話は聞いております。
 どうしても専門医志向というのが国民にもございますし、それから先生方の中にもあるわけですが、私ども昨年から臨床研修の必修化を始めまして、小児科というのを必ず研修してくれということで始めております。そういう中で基本的な小児救急の疾患というものは経験していただいて、いわゆる風邪引き、腹痛とは言いませんが、最初のそのちょっとしたことについてはすべてのお医者さんが分かるような研修にはなっているだろうというふうに期待はしております。
 また、そういう方々に対しまして、厚生労働科学研究の成果を基にした小児救急の救急診療ガイドブックというのも作っております。こういうものをすべての医師に対しまして、先ほど言いました小児の初期救急医療についての研修の中できちんと担っていただくというようなことは、現在進めているところでございます。
 そうはいっても、なかなかやはり専門医ということになってくれば、先ほど小児科学会の方で集約化、重点化ということを進めるという話がございますので、私どもも今後、特に地域で小児救急を担うお医者さんの確保という点では、在宅当番とか休日、夜間の急患センターとか進めておりますが、今後、先ほど申し上げました医療計画を見直して地域の小児の救急体制をどうするかということを議論しておりますので、その中で適切に対応を図ってまいりたいというふうに考えております。

 

鈴木寛君 局長からは、小児救急専門研修、重要だとおっしゃいました。私もそうだと思います。しかし、これ実態どうなっているかと、これも厚生省の研究班の調査がございます。これは本当にいい調査しているんです。だからといって、是非、本省はこの調査を是非促進してあげていただきたい。別に、建設的な議論をするためにいい材料を出していただいているということで御紹介しているわけでありますが。
 厚生省の研究班の調査で、救急専門医の数が足らないと感じているところが九割なんです。この問題認識は共有していると思います。さらに、これは今年の六月に出ている調査報告でありますが、正に小児科の研修施設、研修施設が九百二十二ありますけれども、そこにアンケートをして、そしてもちろん答えてもらった中で、小児科の研修施設ですよ、小児科の研修施設全体の中で救急の研修をやっている、小児救急の研修をやっているのは三八%しかありませんという答えが出ているんですよ。
 ですから、厚生労働省、今局長から御答弁をいただきました、その方向は私たちも賛成であります。しかし、それが届いているのか。もちろん届いていると思いますけれども、すべての小児科の研修施設の担当者は救急もやりたいと思っておられます。しかし、できないという実態があるわけでありまして、そして本当にその小児救急の現場、その教育を携わっておられる方も含めて休みはない、そして当直も二十代ですと月十回です。こういう中で本当に燃え尽きてしまっているというのが現状でありまして、これ、改めてそうした研修体制、そして救急専門医の確保、これは九百八十名小児救急専任を確保しなきゃいかぬと小児科学会も言っているわけでありまして、ここの対策、改めてお伺いをしたいと思います。

 

政府参考人(岩尾總一郎君) 非常に必要な分野ということで我々もお願いをしているところですけれども、今の若い人と言っちゃいけないですが、今の研修に入る先生方、非常に意欲に燃えてこの救急を専門にしたいという方が非常に多いんですが、一つは、小児救急をまた教えていただく方々、先ほど先生統計でお示ししていただきましたけれども、結局教える側のマンパワーと、それから実際にいわゆる重症化なのか、それとも夜中に引き付けを起こしたのかというような、まずその最初の見極めのところですとか、そういうようなものというのをやはりきちんと教育していくという意味では、まずその最初の二年間の全体の臨床研修が必要であって、その中でまずやっていただきたいと思っております。
 その先に、後期の研修といいますか、三年目からこういう分野でやっていただきたいという人たちのために、いわゆる初期ではない、小児科医の中でそれぞれの専門分野を定めてより深い部分をやっていただかなきゃいけないというように思っておりますけれども、先生御指摘のように、その研修すべき施設の問題ですとか、それから研修を担当する先生ですとかいうような、あるいは設備の問題等々、問題があるというふうに聞いておりますので、また先生方の御指摘を受けながら、来年度の予算その他に反映させることができればというふうに思っております。


鈴木寛君 これは本当に重要な問題だと思うんですね。是非これはやっぱり来年度予算の、私は恐らく数多くある予算の中で最重要、最重点課題の一つだというふうに思いますので、是非きちっとお取り組みをいただきたいというふうに思います。
 加えまして、やっぱりこれは小児科学会も御提唱されておりますが、やっぱり小児保健法というものを私は勉強をし、そして多くの皆様方と作っていくということをやっていきたいと思います。
 今、学校保健法というのがありますから、そこに、学校に就学をしますと、いろんな形での健康診断や、あるいはそこに問題があった場合の治療体制というのができますが、正に今日一番最初から申し上げていますように、この四歳児までのところの救急、そして要するに出産をして病院を出てから学校に入るまでのところが本当に空白になっている。
 ここにも、後で経済財政諮問会議のお話をさせていただきますけれども、正に市場メカニズム、合理性という原理が導入をされて、そして小児救急というところに極めてしわが寄っているというのが状況でございまして、日本の医療費の四・五%しか小児医療には使われていないと。ここを増やさないと、それは後で是非、もう皆様方御存じだと思います、この小児保健法、やっぱり医療保険の中で老健法に対応するような小児医療のカテゴリーをつくって、そこにやっぱり診療報酬点数のところもきちっともう別枠で考えると、それからそういう採算だけで物を考えないという違う哲学で新しい体系をつくるというようなことを、それから、もちろんそれは医療費の問題もそうであります、といったところを私たちは、これ行政監視委員会全体として問題提起をし、そしてこの法制化に向けて取り組んでいかなければいけない時期に来ているんではないかなというふうに思いますが、この構想についていかがお考えでしょうか。

 

政府参考人(伍藤忠春君) 御提言いただいておりますこの小児保健法というものでございますが、内容を見ますと、母子健康手帳の交付対象の拡大でありますとか、あるいは虐待を受けた子供の支援の強化、それから小児医療費助成制度の、これは市町村がいろいろ、あるいは都道府県が取り組んでおりますが、これの全国の均一化と、それから小児救急医療体制の充実と、実に様々なことが盛り込まれております。
 こういった施策はいろんな、母子健康手帳でありますと母子保健法というのがございますが、いろんな施策、法制度の下で今実施をされておるものが非常に多いわけでございますが、こういう現行の法体系あるいは既存の制度の枠組みの中でどこが不十分なのか、この法律がないとなかなかできないものはどこなのかといったことについてはもう少し研究をする余地があろうかと思いますが。
 いずれにせよ、こういう法案が提案をされておるといいますのは、少子化対策の中で、高齢者給付に割く割合に比べて子供の対策というのが非常に負担が少ないんじゃないかと、こういう議論がなされておりますが、そういう全体の中での、そういう文脈の中での御提言ではないかと。現場から小児保健、小児医療、いろんな分野についてもう少し充実を図るべきではないかというようなことで、こういった統一的な法案を作って全体の施策を底上げすべきじゃないかと、こういう意識ではないかと私は考えておりますが、そういった趣旨は十分踏まえながら、今申し上げましたように、法制度としてどういう、この法案がないと何が困難なのか、難しいのか、そういった点についてはこれからもう少し研究をしてみたいというふうに考えております。

 

鈴木寛君 少しではなくて、是非検討をしていただきたいと思います。
 少し時間がなくなってまいりましたので先を急ぎますが、やっぱり医療現場を見ますと、今日は小児の問題を中心にやらしていただいておりますが、いろんなボトルネックがあります。その一つが麻酔科医、これもう手術ができないという悲鳴が聞こえてまいります。もう今大臣も大きくうなずいていただきましたので一々詳細は申し上げませんが、これも麻酔科学会が悲鳴のような提言を二〇〇五年二月九日に出しておられます。
 それから、いわゆるがん対策推進本部も尾辻大臣がおつくりになられました。これ、腫瘍の専門医も同様でございます。例えば、抗がん剤治療というものが重要であるとされていますが、それをきちっとマネージできる腫瘍内科医というのは、アメリカには九千人ぐらいいると。しかし、日本は本当に数百人だと。あるいは放射線治療、これもがんの有力な方法の一つとなっていますが、アメリカは四千人いますけれども、日本は四百五十名程度しかいないという、正にこうした完全にボトルネックになっているこの専門医。それの裏側にはそうした現場の方々の大変な過剰勤務があって、そしてネガティブスパイラル、悪循環になっているわけですね。もう本当にすばらしいお仕事なんだけれども、余りにも過酷な労働をされているのを後輩たちが見て、あるいはそこに従事されておられる方も、これはもうたまらないから専門医としてのキャリアを放棄して、そして開業をするとか、あるいはほかの科に移るとか、こういうようなことになっていって、どんどんどんどんボトルネックが進んでいくというのが状況だと思うんです。
 これ、もうまとめてお伺いしますが、この麻酔科の問題、それから臨床専門医の問題、学会あるいは現場から悲鳴が聞こえてきております。こうした正に実態を厚生労働省はどの程度把握をされていらっしゃって、そしてこれに対してどのようにこたえていこうとされていらっしゃるのか、お答えをいただきたいと思います。

 

政府参考人(岩尾總一郎君) 専門医というのが延べでいいますと、日本のお医者さん二十六万人ほどおりますが、専門医というのは二十万人ほどいるというふうに聞いております。国民の望んでいる専門医というのと、お医者さんが名のる専門医というのの間に若干、若干といいますか、かなり私はずれがあるんだろうというふうに思っていますが、私ども、しかしながら、少なくとも小児科それから麻酔科、先生がおっしゃいました、診療科別の偏在、お医者さんの偏在ということがあるだろうというので、今月中にも、医療資源、人としての医療資源の集約化等の対策を図っていくということで、緊急提言を盛り込んだ医師の需給に関する検討会の中間報告書を現在まとめております。今月中にも発表できると思いますので、こういうようなものを踏まえて、適切な施策は講じていきたいというふうに考えております。

 

鈴木寛君 私は今、文教科学委員会の理事をいたしておりますが、この正に診療科別の偏在の問題というのは、正に政府を挙げて、育成して供給する側はこれ文部省でありますから、最近は少し今の需給の問題も連絡を取られているということでありますが、ここはやはりもうもっと政治主導で、そうした省庁の枠を超えてやはり取り組んでいく問題だというふうに思います。
 それから、やっぱり根っこのところは、私は、診療報酬制度、重要ですよ、やっぱり。ですから、やっぱり財務省がここは大事だと。やっぱり診療報酬できちっとそこをこたえていくと、手当てしていくという、厚生省そして文部科学省に含めて、やっぱり財務省も含めた本当に骨太の取組というのは非常に必要だと思います。そこで、学会もかなり最近は、昔はいわゆる純粋科学の分野の研究が中心でありましたが、こうした政策提言もかなりこの一、二年盛んにやっていただいておりますので、こうした知恵もどんどん聞いていただきたいということを強くお願いを申し上げたいと思います。
 それから、ちょっと時間がなくなってまいりましたのでまとめてお伺いをしますが、そうした中で、がん対策推進本部が設置をされました。これは尾辻大臣のリーダーシップに敬意を払いますけれども。がんを一つのテーマとして、これ、日本の医療制度の抱える様々な矛盾、あるいは様々なボトルネックを突破をしていくというやっぱり決意で、私はこれ取り組んでいただきたいというふうに思います。
 今回、要するに、本部はつくりましたと、しかしこれは何が変わるんですか、あるいは何が変わろうとしているんですか。あるいは、我々は何を応援をさせていただいたらいいのかというそこの切り口ですね、そこのところがまだ少し我々に見えてこないところがありますので、是非お聞かせをいただきたいと思います。

 

政府参考人(松谷有希雄君) がん対策につきましては、委員お話しのとおり、このたび厚生労働省内にがん対策推進本部を設置をして、がんの病態、あるいは国民のニーズに応じた患者本位の対策を部局横断的に検討しようということで立ち上げたところでございます。
 先ほど先生御指摘の救急などもそうですが、がんも、今までの内科とか外科とか放射線科とか小児科とか、そういう伝統的な医療の世界の分科とは違う統合的な対策が必要でございます。そのためにはどのようなことが必要なのか。例えば、がんにつきましてはがんのステージがございます。発症を予防する、あるいは検診によって早く発見をして早い治療に持っていく、それから、残念ながらがんにかかってしまった場合の治療を的確なものにしていく、この場合にもチームで行っていく、それから末期になった場合の緩和ケアについての対応を考えるといったような、そういう疾病のステージごとの対応ということが必要でございまして、それぞれのステージごとに分析をいたしますと、いろいろ不十分な点等がございます。ここら辺が患者さんからの声にもなっているところでございまして、現在、これからがん予防に関する知識の普及の促進、あるいは有効ながん検診の普及、受診率の向上対策について、あるいはがん診療拠点病院の整備及びがんの専門医等の育成、それからがん患者の苦痛の軽減を目指す治療法の普及や体制の整備といったようなものに向けての対策を進めていく必要があると考えてございます。
 もちろん、資源に限りがございますから、なかなか一挙にいくというわけにはまいりませんけれども、一つ一つ、今までのそういう伝統的な区分とは違う、厚生労働省内においても部局横断的にこれを対応をやっていくというところが新しい切り口であろうというふうに考えております。

 

鈴木寛君 そこで少し御提案を申し上げておきますと、今なかなかこれ、実は供給側の絶対水準は決して低くないと思うんですね、日本というのは。それはWHOなんかでもいろんなこと言っている。しかし、患者さんあるいは家族の満足度というのは、これは極めて低いと。
 これ、いろいろ考えてみますに、やっぱりこれ、患者の皆さんとそして医療関係者の方々のコミュニケーションというのがやっぱり十分に行われていないと。それは恐らく患者の皆様方のリテラシーの問題もあろうかと思いますし、これは先ほどの小児救急の場合の保護者にも当てはまる話なんですけれども、具体的な医療の処置とか処方せんの処置という、そういう、投薬とかいうことに加えて、どういう今、患者が現状にあって、そしてどういう方法があって、そしてそれについてきちっと説明をしてやり取りをしながら、本当に患者の皆様と一緒になってお医者さんが病気に立ち向かっていくというか、このためのコミュニケーションをしようにも、これに対する診療報酬も含めて制度的な支援というのが全然制度的に組まれていないんですよ。これをやればやるほどボランティアになってしまう。
 私も多くの友人がいますけれども、結局、診療時間を終わって、夜、その患者さんあるいは家族とそうしたことについて話す。しかし、それをやればやるほど収益は悪化するというような状況などがあります。
 この点については、また時間があったら議論をさせていただきたいと思いますけれども、正にこうしたコミュニケーションとかコンサルテーションとかコーディネーションとか、正に医療というのはどんどんどんどん高度化します。それでなくても非常に複雑で難しい医療技術について的確に理解をし、そして的確に判断するために、患者の側に立って医療の専門家が支援をしていただくということを是非対策の中で御検討いただきたいというふうに思います。これはお願いをしておきます。
 それで、最後に大臣にお伺いをしたいと思いますが、今日はいろいろ医療現場の問題を議論させていただきました。これは本当に、戦後の医療政策をもう一回全部総括して、本当にいろんなボトルネックを解消していかなきゃいけないと思います。
 そういう私の理解から立つと、経済財政諮問会議で行われております医療費抑制の、これ、議論、およそ現場の問題と遊離したところで議論がなされていると言わざるを得ないと。
 例えば、今日議論させていただきました小児救急専門医の問題、臨床医の、あるいは腫瘍内科医がいない、あるいは麻酔科医が足らない、そうした、それから患者さんと医療関係者のコミュニケーションが全然できていないと、こういったことを改革をするために私は医療制度改革というのはあるんだと思いますが、今聞こえてくる議論は、これは経済財政諮問会議ですよ、議論は、GDPにリンクさせてとにかく抑制をすればいいんだと。もちろん、もちろん医療費の無駄遣いは徹底的になくさなければいけないと思います。無駄な部分はあると私も思います。しかし、本当に頑張っておられる臨床現場に必要なものが届いていないということは、これは明らかだと思います。
 例えば、日本は対GDPで医療費を見ますと十七位ですよね、世界的に見て。まあ、アメリカは対GDP一四%、スイスは一一%、ドイツも一一%ですよ。日本は八%です。もちろん、これが伸びていくから抑えなきゃいけないという議論でありますけれども、やはり私たちは何のために経済成長をするのかと。それは、正に病気になったときに、あるいは健康で充実した人生を送るために、こうした一生懸命経済成長をある程度確保して、そして万が一のときには本当に納得した人生、健康な人生を送ると。これ、何か今の議論は本当に本末転倒しているんじゃないかなということを私は思わざるを得ません。
 そういう中で、これはもう与野党の総意を尾辻大臣に背負っていただいて、今極めておかしくなっている、小泉政権下で極めておかしくなっているこの医療改革の議論に私はきちっと立ち向かっていただかなければいけないと。そして、必要なものは必要で確保する、もちろん無駄は減らすと、そういう意味で医療費の適正水準というものを確保して、で、それがないと、やっぱり確保しないで現場にばっかり問題を押し付けちゃうと、もうどんどんどんどん袋小路に入っていって、そしてそのしわ寄せは現場の臨床医と患者さんに寄ってしまうという事実がありますから、ここは是非本当にきちっと取り組んでいただきたいと思いますが、今日の御議論をずっと聞いていただきました大臣、是非最後にこの問題についての取組をお聞かせいただきたいと思います。

 

国務大臣(尾辻秀久君) 本日は、日本の医療を取り巻く大変私どもも深刻だと思っております幾つかの問題点について御指摘もいただきましたし、また御指導もいただきました。
 最初に、小児科の救急医療を始めとする諸問題についての御指摘もございました。小児科のお医者さんが自殺までするという実態もございまして、私どもは大変これも深刻な問題だというふうに思っております。
 その問題から始めまして、もう麻酔科の話、抗がん剤を使っていただけるお医者さんの話、あるいはもう、今日は産婦人科のお話出ませんでしたけれども、もうそういうふうに挙げていくと、もう偏りというだけでももう切りがないぐらいの大変深刻な問題を抱えておることは事実でございます。
 そしてまた、その偏りと直接の原因ではありませんけれども、日本のお医者さん方が、途中局長もちょっとは言っておりましたけれども、標榜制になっておる、自分が内科だと言うと内科になるという、この辺の基本的な問題もあると私自身も認識をいたしております。
 それから、がんの問題もお取り上げいただきました。もうこの問題についても大変大きな問題でありますし、がんが今、日本の死亡原因の第一位でありますから、この問題も一つずつ取り上げていくとまたいろんな問題が生じる、正にがんの問題を取り上げていくと日本の医療を取り巻く象徴的な話にもなると先生お述べになりましたが、私もまたそのようにも理解いたしております。
 そうした中での、もう本当に今日は幾つもの御指摘をいただいたわけでございまして、今私どもが言っておりますのは、来年の通常国会に是非そうした医療を取り巻く諸問題、そしてまた医療保険まで含めて抜本的な見直しをする法案も出させていただきたいと思っておりますので、もう必死になってこの作業取り組んでまいりますので、是非先生方の御指導いただきますように、改めてお願いも申し上げたいと存じます。
 そうした中で、骨太の方針のお話もございました。これマスコミでも幾つも報道されましたので御案内のところももう十分おありだと思いますけれども、経済財政諮問会議、民間議員の皆さんとはこれまでも随分いろんな議論をしてまいりました。このところの議論は、これは先生言っていただきましたように、医療費の伸びをGDPの伸びに連動させよというのが民間議員の皆さんの御主張でありますけれども、私はそれはちょっと違うでしょうと主張をいたしました。
 端的に言いますと、医療費の伸び、大体年間三ないし四%、これはもう経済にかかわらず伸びておるわけでございますから、じゃ、極端な言い方をすると、GDPの伸びが三、四%よりも大きく伸びるときは、その伸びに医療費合わせろと言われると逆に医療費は余裕が出ますが、今度は低くなったとき、もうどうするのという議論になってしまいまして、とてもそんなことで医療費を考えるわけにはいきませんということを盛んに主張をいたしたところでございます。
 そうした主張も踏まえていただきまして、骨太の方針の記述というのは、国民の安心、制度の持続可能性の確保という観点から、医療費適正化の実質的な成果を目指す政策目標を設定するとともに、保険給付の内容見直しについて検討すると、こういう記述になりましたから、今後また私どもはこの政策目標をどう定めるかということで、先ほど冒頭申し上げた、来年の通常国会にどういう法案にさせていただく形にさせていただくとかということを含めての準備を始めたいと思っておりますので、先ほども申し上げましたように、今後の是非御指導よろしくお願いを申し上げます。
 本当に今日は、いろんな問題点御指摘いただきましてありがとうございました。

鈴木寛君 ありがとうございました。

 





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