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 行政監視委員会  医療事故に関して

2004年03月29日 


○鈴木 寛
 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 本日は、この三月に出されました医療事故に関する行政評価・監視結果報告書に基づきまして質疑をさせていただきたいと思います。大変お忙しいところ、厚生労働大臣、ありがとうございます。
 この医療事故あるいは医療過誤の問題、これは本当に社会にとって極めて重要なかつ重大な問題だというふうに思っております。連日のように、本当に今まで患者としてあるいは国民の皆様方が信頼を寄せていた名立たる病院が医療過誤あるいは医療事故ということで記者会見を行い、陳謝、謝罪をするということも続いておりますし、本当にこの医療過誤というのは正に命と直結をした問題でございますので、この問題について今日はいただいた時間で御議論をさせていただきたいというふうに思っております。
 この問題、大臣も平成十五年の十二月の二十四日に緊急アピールを出されていらっしゃいます。いろいろな推計がございますけれども、医療事故の死亡者が年間二万人を超えているという推計もございます。交通安全あるいは交通事故の死亡者が一万人を割って今毎年低下する、数が減っていく傾向にあるという中で、正にいずれも社会的に極めて重要な課題でございますけれども、正に交通事故死の三倍を超えると言われているこの医療事故、医療過誤について、推計はいろんなところであるわけでありますが、厚生労働省にお伺いしたいのは、現在この医療過誤あるいは医療事故といったものがどの程度、要するに何件ぐらい発生をして、そして何人、これは推計ではなくて何人ぐらいの方が不幸にしてお亡くなりになっているのか、こういったまずその実態について御説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(岩尾總一郎君)
 医療事故につきましては、平成十四年四月十七日に取りまとめられた医療安全推進総合対策におきまして、医療にかかわる場所で医療の全過程において発生する人身事故一切を包含し、医療従事者が被害者である場合や廊下で転倒した場合も含むという定義にしております。医療過誤というのは、この医療事故の発生の原因に医療機関、医療従事者に過失があるものというような定義をさせていただいております。したがいまして、全国の医療事故の件数、内容などの実態というのが非常に多岐にわたっておりますので、現段階については把握をしておりません。
 ただ、近年、国民の医療事故に対する関心も高まるということで、この医療事故防止の観点から、実態把握、必要な分析は必要と思っております。私ども、平成十五年から平成十七年の三か年計画で、現在、事故頻度の調査を実施しているところでありまして、平成十六年からは医療機関で発生した医療事故を第三者が収集分析しようという事業を開始するところにしております。

○鈴木 寛
 今、厚生労働省の御答弁によりますと、医療事故あるいは医療過誤の統計すら役所は把握をしていないということが明らかになりました。もちろん何を医療事故とし、あるいは何を医療過誤とするかという定義が難しいということは私もよく承知をいたしているつもりではございますが、しかし難しいからといって統計すらないというこの実態が見過ごされていいわけはないというふうに私は思います。
 もちろん、交通事故のように今年は九千人だったと、あるいは八千人だったと。これ、もちろん一の単位までですね。これはもちろん命にかかわる話でありますから、約何人なんという表記ではおかしな話でありまして、私は、実は警察の行っている交通事故死亡者統計すらああした数字で表すんではなくて、本来一人一人のお名前を記して、我々はその尊い命が失われたということに対して敬意を払い、そして、そうしたことが二度と起こらないように最善を尽くすということを毎日のように確認をしながら、あるいは誓い合いながらやっていかなければいけないという問題だと思っておりますが、この医療過誤あるいはこの医療事故という問題がこの日本の国の中でどの程度、どのように行われているのかと、そしてその原因が何なのかということは、やはり命を預かる正に厚生労働省のお仕事としてきちっとその政策の中心に据えて私は取り組んでいただきたいということを大臣にも強くお願いを申し上げたいと思います。
 この医療過誤あるいは医療事故、正に医療安全対策についてでございますが、もちろんこの問題は恐らくずっと隠れた形では存在をしていたんだと思いますが、厚生労働省がこの医療安全対策に本格的に取り組まれたのは、平成十一年の一月に横浜市立大学で患者の取り違えがあって、そしてその後も十二年、十三年、十四年、十五年と毎年のようにこの医療安全対策について様々な施策を打ってこられております。
 更に申し上げると、医療安全の推進週間とか、あるいは医療安全対策検討会議の発足とか、私もこの質問に当たりまして厚生労働省の方からそれぞれの対策について御説明を伺いました。もちろん、この医療安全対策というのは、医療過誤による死亡者、あるいはそれによって負傷したりけがをされたり、あるいは後遺症が残られたりするという、そういう方をゼロにするまでやっていかなければいけない問題でありますが、政策としてはこうした政策を打っていくということにならざるを得ないということなのかなというふうに思います。
 ただ、今回の、正に平成十六年の三月に総務省がお出しになった医療事故に関する行政評価・監視結果の非常にショッキングなことは、平成十一年に問題意識を強く厚生労働省がお持ちになって、それ以後も何にもやっていなかったわけではないわけであります。毎年々それぞれに厚生労働省さんは医療安全対策をやってこられたと思います、施策としては。
 しかしながら、この総務省の調査によりますと、そうした政策を打ってきた、安全対策をそれなりにやってきたにもかかわらず、今回二百十七の機関を対象に調査をされたということでありますが、調査をした一年半の間で十七機関で、しかも同じような医療過誤、医療事故がやはり繰り返されていると。さらに、これ詳細を見てみますと、厚生省が設置されていらっしゃいます医療安全対策検討会議のメンバー、委員のいらっしゃる病院でもこうした過誤、事件が繰り返されているということが大変にこれショッキングな結果だというふうに私は思います。
 私は、これ問題だと、厚生省何とかしろと、甘いじゃないかと、こういうことだけを申し上げるつもりは今日はありません。これ、医療過誤のやはり非常に難しい問題をここに含んでいるんだと思います。正に安全対策会議のメンバーになるような大変に著名でそして立派な医師あるいは専門家がいらっしゃる病院でも、その現場ではこうした医療過誤が起こってしまうという医療過誤の持つ非常に問題の難しさ、あるいは、ヒューマンエラーというのはそもそもそうなんでありますが、恐らくすべての医療従事者、違反をしようと思って、法令違反をしようと思って、あるいは医療過誤を起こそうと思ってやっておられる方は恐らく一人もいないと思います。それが何らかの理由で、もちろん多忙であったりあるいは慣れであったり、あるいは更に申し上げると未熟、経験がまだ浅かったり、いろんな理由によってこの過誤が起こってしまうと。
 私、厚生労働省の方々と御議論をさせていただいて、そして今日の私の一番申し上げたいことは、こうした現場でいろいろなことが、事件が起こる、それに対しての管理監督体制が役所を含めて甘いではないかと。そして、役所が答弁の中では、あるいはいろいろな施策の中では、きっちりやります、そして現場に徹底します、通達も出し直します、アピールも出します、この繰り返し。これはもちろん必要なことだと思います。必要なことでありますが、それだけではこの問題は解決をされないんではないかと。もっといろんな多角的な観点から、国会も含めて、厚生労働省さんも含めて、いろんな知恵を出し合う契機にこの委員会の質疑がなっていただきたいというふうに思います。
 私も実はコミュニケーションというものを勉強をいたしておりまして、そして最近は安全学という学問もできております。結論から申し上げますと、そういうところでいろいろ議論をされている知恵、工夫、方法論と、もっともっとこの医療安全対策の中に活用できるんじゃないかなと。
 例えば、同じ霞が関の行政分野でも、例えば原子力発電所の安全の問題、いろんな、制度的あるいはその安全管理体制、いろんな知恵があります。あるいは消防庁、いろんな現場に立入検査をして、消防署の職員の方々が廊下に物を置いちゃいかぬとか、いろいろな細かな指導もされていらっしゃいます。
 更に申し上げますと、最近は役所は全部チェックできません。そういう中で、ISOというのがありまして、昔はISOというのは物の安全性とか品質とか、その管理だけだったんですけれども、最近はサービス分野にこのISOをどんどんどんどん広げていこうという動きがあります。医療というのは究極のヒューマンサービスでありますから、当然、医療に関するISOというのもできています。そして、その一部、私の友人の若い歯科医が集まって、そういう歯科の業務についてISOの基準をどんどんどんどん広げていこうという動きもあります。こうした様々な観点からの知恵を持ち寄って社会全体としての安全対策をやろうとしたときに、私は、この勧告も含めて、今までの古い安全管理あるいは安全行政にまだまだ拘泥されているんじゃないかなというふうに思います。
 それで、こうした問題でやはり一番重要なことは情報なんですね。その観点から御質問を申し上げたいと思いますが、この勧告書の中でも書いておりますけれども、そもそも院内でどういう事故が起こっているかということを院内の医療機関の長に報告をする院内報告という制度が、今回調べたのは特定機能病院とか、要するに名立たる病院二百十七です。その中でも極めてばらばらだという指摘があります。これはもうこの勧告にのっとって、やはり速やかにまず院内報告というものをきちっとやっていただきたいということでありますし、それからこの医療事故報告というものが、要するに医療機関で起こった事故をきちっと、重大事故については厚生労働省なり都道府県にきちっと報告をするという、これも平成十一年からこの五年間の中でかなり改善をされていることは私も評価をしたいと思いますが、しかしこれ私、問題だと思います。
 この勧告の中にもございますが、国立病院や国立大学の附属病院では、医療事故報告、これは毎年マニュアルができて、そして更に言うと報告義務が付けてということで進化をしています。しかし、すべての病院あるいは有床の診療所に医療事故の報告が行われているか、あるいは義務付けられているかというと、ここについては行われていないということになっていると思いますが、私はこの点を速やかに、すべての医療機関あるいは有床の診療所における医療事故事例の報告というものを制度化していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(岩尾總一郎君)
 先生御指摘のように、すべての医療機関に対しましては、平成十四年の十月から省令を改正いたしまして、医療機関内における事故報告等医療に係る安全確保を目的とした改善方策を義務付けました。
 それから、先生おっしゃるような大きな病院、特に高度機能病院、特定機能病院のようなところに対しましては、平成十五年の四月一日から、専任の安全管理者を配置しろとか、様々な体制確保、それから所要の規定の整備などを義務付けております。それを全部の病院に広げろということでございますが、まず私ども、そのデータが、結果として、事故はなくならないと、減らす努力をしなきゃいけませんので、そのためにはやはりそのような事例をきちんと収集、分析、解析して、それぞれの医療現場に届けなきゃいけない。そのためにはやっぱり数多くのデータを集めるということが必要ですので、まずは医療機関に協力をしていただくことが必要であろうと。
 そういうことで、行政が集めますと、どうしても直接何かそれを違反とか、あるいは規則に違反しているということで処分されるんじゃないかということで協力が得られないというような懸念もあるものですから、私どもとしては、来年度、平成十六年度から第三者機関というところに医療機関で発生した事故情報を収集して分析、提供をしていただこうと、まずはこれから始めようというふうに考えているということでございます。

○鈴木 寛
 これはやはり本当に重要な問題なので、特に重大事故情報についてはこれは速やかに届け出る。処分というと、やっぱり人が亡くなるような重大な重過失を犯して医療過誤が起こった場合にこれを届け出ると、すべての病院が、これは私は当然のことだと思います。そのことと、もちろんどういう状況においてヒューマンエラーが発生し医療過誤が起こるかという分析、これはどんどんやっていただいたらいいと思います。これ、分けてお考えいただきたいということを重ねてお願いを申し上げたいと思います。
 それから、いろいろな医療過誤の現状を見ますと、ある種の傾向が分かってまいります。やはり経験年数が一年未満の医療従事者が医療過誤に関与しているというのがやっぱり多いなと、これは当然といえば当然でありますが、そういうことであります。
 そのことともう一つ、俗に言われておりますいわゆるリピーター医師、要するに何度も何度も繰り返して医療過誤を起こす医師というのはある特定の人たちであるということが言われております。時間がありませんので、いわゆるリピーター医師対策について今どういうことを御検討されているのか、お答えをいただきたいと思います。

○政府参考人(岩尾總一郎君)
 私ども、このリピーター医師ですが、今後も医療過誤を起こす可能性が高いということで、何とか行政処分ができないのかということでございました。医道審議会の方から、刑事事件とならなかった医療過誤についても、明白な注意義務違反が認められる場合については処分の対象として取り扱えという意見をいただきましたので、現在、厚生労働省におきましては幾つかの過誤事例において調査を行っているところでございます。
 なかなか、民事上で和解するとか両者の間でそのような形で収まったときに、私ども把握するということもなかなか難しいところもございますが、限られた情報しかないとはいえ、私どもとしては精一杯情報収集に努めたいと思っております。

○鈴木 寛
 時間がありませんのでまとめてお答えをいただきたいと思うんですが、この医療過誤をやっぱりなくしていくというのはいろんなことが必要です。まずは、やっぱり当事者があるいはその当該医療機関が相当意識を高くこの再発あるいはこの発生というものを抑制をする。そのために、先ほど申し上げました院内報告がきちっと行われるということは極めて重要だというふうに思いますが、と同時に、やはり外部監査、外部チェックというものも、しかも行政によるチェックだけではなくて、正に多角的なチェックシステムというものを作っていくことが必要だというふうに思っております。
 まずは、行政によるチェックでありますが、これは、現場の立入検査というのは都道府県が行っているわけでありますけれども、これは例えば金融なんかの分野でも金融庁とか日銀とかが検査とか監査、考査に入るわけですね。あるいは、食品安全の場合でも保健所がどんどんいろんなところに行っていると。こういうのに比べて全然足らないんだというふうな気が私はいたします。
 ですから、まず一点は、都道府県のこうした医療現場についての立入検査、あるいはそうしたものを、立入検査の以前で結構ですが、いろいろ回って、現場に行って、ここはおかしいよとか、こういうふうに直した方がいいよとか、そういうことをやはり、こういうことはやっぱり行政がちゃんとやらなきゃいかぬということを一つ思います。
 それから、しかし行政だけが進みますと、先ほど局長がおっしゃったように、その監査官が来るときだけやればいいやという本末転倒なことになってきます。ですから、それだけを強化するんではなくて、私は、この報告書の中でも出ておりますけれども、相互チェックですね、要するにプロ同士の、医療機関同士の相互チェック。ある医師が別の医療機関に行って、地域の近くの、そしてお互いに、ここ直した方がいいよと、こういう問題があったよと。この方が行政が言うより的を射た指摘ができるし、それから指摘された方も納得がいくものですから、それは自らやろうと、直ちにやろうと。こういうことで、実質的な安全対策にはこれは非常に私はいいことだというふうに思っております。
 私は、こういう相互チェック、行政からのチェック体制の強化、それから医療機関の相互チェック、これ双方組み合わせるということはとっても重要だと思いますが、この点について厚生省の見解を伺います。

○政府参考人(岩尾總一郎君)
 まず、都道府県の立入検査、医療監視の実態でございます。
 平成十五年四月一日現在、医療監視員、全国に約一万四十六名発令されておりまして、その職種は、事務職が約三割、医師、薬剤師等の医療関係者が七割と聞いております。都道府県などでは、病院の立入検査、原則年一回ということでございます。平成十四年度の実施率、九四・三%ということでございます。
 それから、相互チェックの方法でございますが、大学、国立大学の附属病院が、医療事故の防止、医療安全向上の観点から、そのような複数の病院の医師を構成員とするチームを作って検証しているという話は聞いております。医療事故を防止するためには有効だろうと思いますが、また一方で、同じ組織の人間同士ですとやっぱりなれ合いになるというようなこともあるかと思います。
 私ども、先ほど申し上げました第三者によるチェック機能ということで、現在、日本医療機能評価機構というところでこの医療安全に関する様々な項目を作って審査員による受審という行為を進めております。このような機構での審査、医療機能、病院の機能評価の審査を受けていただくということで複数の視点からの医療安全対策の確保ということを進めていきたいというふうに考えております。

○鈴木 寛
 今お話があった医療機能評価機構、この認定を受ける、これも非常に私はいいことだと思うんです。この認定を受ける医療機関が、あるいはISOを取得する機関がどんどんどんどん増えていくということを私は奨励をしていきたいと思いますし、それを是非厚生労働省とも推進をしていきたいと思うんですが、そのときにどういうインセンティブを社会制度として設計をするかということも重要だと思います。
 ここで私が一つ御提案をさせていただきたいと思いますが、今までは行政が上から見る、それからそういう第三者評価機関あるいは相互チェック、プロ同士が、ピア・ツー・ピアと言いますけれども、横で見るということですね。私は決して患者が下だと言うつもりはありませんけれども、患者の側から医療機関が本当に安全管理体制がきちっとできているかどうかというのをやっぱりチェックをできる機構というのは、これは一番意味があると思います。
 そういう中で、もちろん患者が一人一人が医療機関をチェックするということが私は最後、究極、一番重要なことだと思いますが、患者の代理人として、エージェント機能として、健康保険組合、これがこの病院は大丈夫か、この診療所は大丈夫かということをチェックをしていく、あるいは申入れをしていく、これは非常に重要な視点だと思うんですが、余り勧告の中でもあるいは厚生省の政策の中でも議論されていないので、ここは是非検討していただきたいと思います。
 このたび医療機関と保険者が直接契約ができるようになったんですよ、その医療保険。そうすると、直接契約を新規にするとき、あるいはその契約を更新するときに、こういう医療安全体制がきちっとできているかどうかということを確認して契約するということができますから、この規制緩和された直接契約制度と相まって、このところは極めて進むのではないかというふうに、そのときに直接契約を自ら入っていってチェックするのもありますし、今おっしゃった医療機能評価機構の認定があるなし、あるいはISOを取得している取得していない、こういうことを見ながら契約にしていくということは是非進めていただきたいと思いますが、いかがでございますか。

○政府参考人(辻哲夫君)
 御指摘の健康保険組合等保険者の役割でございますが、基本的には各保険者は医療機関に対する一般的な監督権限を有していない、あるいは現状におきましては各保険者の医療機関の安全性を一つ一つチェックできるというような専門能力がないわけでございますが、ただ、御指摘のように、これからは保険者は言わばそもそも加入者の健康維持増進のための存在でございますので、被保険者の窓口的機能と申しますか、いわゆる保険者機能と私ども呼んでおりますけれども、これを強化すべきだという流れにございますので、基本的には各医療機関に関する今の第三者機関の受審状況と医療情報を提供していくという形。
 それからもう一つ、御指摘の直接契約につきましては、昨年五月に実施のための通知を発出いたしておりますが、これにつきましては、今言ったような制約はございますけれども、やはり直接契約を行う場合におきましては、医療機関において安全性の確保がなされているかどうかといった観点、これは当然契約更新時に考慮されるべきものということで運用されるものと考えております。

○鈴木 寛
 そして、時間がなくなってまいりましたが、やはり患者さん御自身がきちっとした安全な医療が行われる現場なのかどうか、あるいは行われたのかどうか個別事例についてきちっとチェックをできる、あるいはそれに問題があった場合、医療過誤、医療事故が起こった場合にその正に権利といいますか、生命にかかわる話でありますから、人権救済あるいは権利救済の観点から、医療裁判というのは極めて重要だと思います。
 最近、医療裁判の件数が増えてきた。これは今まで泣き寝入りしていたものがそうでなくなったということでありますが、しかしまだまだ患者さんが挙証責任を負った形で医療裁判を医療機関に提起して、そしてそれに勝訴するというのは、これ大変なことであります。私は、この正に医療過誤をめぐる裁判の在り方、特に挙証責任の在り方、これ是非検討し直していただきたいと思います。
 今、PL法というのがあります。これは完全に挙証責任が転嫁をされています。それから、不正競争防止法というのは、これは普通でいくと民法の不法行為なわけでありますが、不法行為立証のための相当因果関係の立証とか、あるいは損害額の推定とか、証拠保全のための請求とか、相当緩和をしています。そういう意味で更に言うと、信用回復措置があります。これ、取引行為ですらこうした改善が行われているわけでありますから、なお、そのいわゆる経済行為よりよっぽど大事な医療過誤訴訟については、こうした訴訟法上の見直しということについても私は取り組んでいただきたいというふうに思います。
 それで、最後に大臣に御質問をさせていただきたいと思いますが、この今のことも含めて、それから私、これ今日質問できませんでしたけれども、一つどうしても納得いかない話があります。
 それは、要するに薬の名前が紛らわしいので医療過誤が一杯起こっているということがこの中に書いてあるんです。しかし、その医薬品の名称あるいは形状、容器の変更を改善策を講ずることは困難だと厚生省が言っているわけですね。それはなぜかというと、変更承認申請手続が必要で、その時間、労力、費用が掛かる、それから名称変更については商標登録にも影響すると言っているんです。
 確かにそうかもしれません。しかし、経済的価値と人命とどっちが大事なのかと。これは、私はすべてのこの行政監視委員会の皆様方に考えていただきたい。これは厚生労働省だけの問題じゃないと思います。商標なんかより人命の方が絶対大事だと私は思うわけでありまして、そういう意味で本当にこの医療安全対策を、いわゆるやったふりとか自己満足に終わらすのではなくて、実質的に過誤を減らしていく、そのためにいろんな知恵を持ち寄って頑張っていかなければならないということを思うわけでありますが、厚生労働大臣の御決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(坂口力君)
 医療事故につきましては、御指摘をいただきますように非常に多く発生をいたしておりまして、憂慮いたしているところでございます。
 最近この多くなりました原因を突き詰めてまいりますと、最近、医療の分野がいわゆるチーム医療ということになってまいりまして、いろいろの人が一人の患者さんのことにかかわるようになってまいりました。一人の医師が、一人の看護婦さんが始めからしまいまで見ておるということでなくなってまいりました。そうしたことも原因の一つではないかというふうに思っておりますし、今御指摘のように、薬の事故あるいはまた注射薬の事故、それからいわゆる医療機器、この事故、これも非常に多いわけでございます。
 で、今お話ございましたように、薬の形、名前、色、それが本当に似通ったのがあるわけでありまして、これはもう変えるように指導しております。もう名前もよく似ている、そして形も似ている、色も似ている、それはもう間違うのは当然でございます──当然って、間違いやすいわけでございますから、失礼しました、当然とは言ってはいけません、間違いやすいわけでありますので、それは是非変えさせなきゃいけないというふうに思っております。
 それから、器械、器具も同じような穴が開いていて、そしてガスなんかでも同じようにそこへセットするというようなことになっておりますと、違うガスを使うということにもなりますので、そうした器械、器具の問題につきましても、ガスが違えばその穴の大きさも変えるとか、いろいろな工夫をしなきゃいけないというふうなことを今あらゆる方面からやっているところでございます。
 そうしたことを行いながら、先ほどから先生御指摘のように、やはり病院が自分たちの犯したことについてそれをはっきりと患者さんないし外部に対しまして明らかにさせなければいけないわけであります。そこを自分たちの中であいまいに済まそうというようなことがあってはならない。その内容というものを開示をするということが一番大事でございまして、そこがしかし一番また難しいところでございまして、そこを病院に対しましても、今までのようなことではなくて、はっきりとそこを患者さんに対しては申し上げるという、そういうシステムができ上がらないといけないというふうに思っております。
 まあ日々患者さんがたくさんお亡くなりになるわけでありまして、その中で本当にそれは疾病によってお亡くなりになったのか、あるいはそういう医療過誤によってそれが起こっているものかということを、なかなか分かりにくいケースも確かにあることは事実でございますが、病院の側は自分たちが行いました行為というものについて十分なやっぱり説明責任があるというふうに私たちも思っております。その辺を明確にして、私たちもどれだけの事故がどういうふうな形で起こっているのかということを把握をしたい、それに対して対処したいというふうに考えているところでございます。

○鈴木 寛
 終わります。


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