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  法務委員会 質疑

2002年11月28日 

○鈴木 寛
 民主党の鈴木 寛でございます。引き続き質問をさせていただきます。
 私は、改めまして、今回の法科大学院の教育と司法試験とのいわゆる連携法、それから司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律案のいろいろな条文を精査をいたしまして痛感をいたしましたし、それから司法改革というのはこれからもどんどん続いていくわけです。今回は、法曹養成の在り方についての抜本改革ということでありましたが、この後も参審制の在り方とかいろんなことが出てくるというふうに考えておりますけれども、これは是非、この法務委員会の委員の皆様方に問題提起といいますか、をさせていただきたいわけでありますが。
 今回の関係法案、いわゆる内閣の司法制度改革推進本部から提案をされて、閣法という形で出ているわけですね。やはりこれは少し問題だったなということを感じております。これは別に法務大臣に申し上げても申し訳ない話でありまして、むしろ我々法務委員会、いわゆる議会がもう少しイニシアチブを取るべきではないかと。これ、まだ司法改革終わっておりませんので、そういう意味で、だれがこの法案を国会に出すかということはもう一度きちっと改めて考え直すべきではないかという観点からこうした御意見をこの討議の席であえて申し上げさせていただいているわけでございます。
 と申しますのも、やはりこの裁判所法の一部を改正する法律案なんですね、今回。裁判所法の一部を改正する法律案を内閣が出すというのは、やはり違和感があるなということであります。これはやはり立法府が、特に裁判所法、あるいはそれに続く司法試験というのも正に司法制度の根幹、だれを法曹の世界に入れていくかということでありますから、こうした法律について本当に、私は、法務省ではなくて、ですから内閣全体として司法制度改革推進本部という大枠を作り、内閣総理大臣が本部長になっておやりになったということは、恐らくそういういろんな御配慮がある中で内閣としては最大限の工夫といいますか、配慮の結果こういう枠組みで御議論しているということで、恐らく根底に流れる問題意識は共有をしているんだと思いますが、しかし内閣が本部を作られた場合はどうやったって本部長は内閣総理大臣以上にするわけにはいかないわけでありまして、でありますから、むしろこちら側に向けて私は議論を提起しているわけでありますが、国が司法制度改革推進本部ということを作った場合には、その本部長は内閣総理大臣だけでは不十分でありまして、例えば最高裁判所の長官とか責任者とか、あるいはもちろん国会の最高責任者が本部長になってやるという私は性格のものではないかなという問題意識に立っております。
 こうした感をやはり改めて思いましたのは、先ほど先輩の江田委員からも問題提起がありましたが、連携法の三条で、「国は、」という言葉がいろいろ出てまいります。そしてそこにお書きになっていることは、連携を取るあるいは相互の協力をするということで、これはもっともなことなわけであります。
 それで、ちょっとまず御答弁を求めたいわけでありますが、三条の中で、「国は、」という言葉と「政府は、」という言葉と書き分けています。すなわち、三条の一項から四項までは「国は、」というのが主語になり、五項になりますと「政府は、」と、こういうことになっております。これは明白に意識して書き分けておられると思いますから、この国は、政府以外の国は何かお答えいただきたいと思います。

○政府参考人(山崎潮君)
 ただいま御指摘のように、国と政府を使い分けております。
 国につきましてですが、まず裁判所、それから行政機関、それも行政機関として、例えば検察庁も当然含まれるという趣旨でございます。政府は行政機関ということになるわけです。

○鈴木 寛
 「国は、」に裁判所が入るんだと、政府ではない国の中に裁判所が入る、当然だというふうに思います。
 それでもう一つお尋ねをいたしますが、三条の二項の中で、国の機関は今御答弁いただきましたので結構ですが、大学その他の法曹養成に関係する機関との密接な連携の下に行われることが必要であって、そしてこれら機関の相互の協力の強化によって必要な施策を講ずると、こういうふうにありますが、その大学その他の法曹養成に関する機関に大学が入ることは分かっておりますが、それ以外にはどういった機関が入るというふうに考えたらよろしいでしょうか。

○政府参考人(山崎潮君)
 ここには、法曹養成についてのいろいろ運用面に当たります日本弁護士連合会のそういうような機関が関係機関というふうに含まれているわけでございます。

○鈴木 寛
 恐らくその認識と、そういうことを法案の基本的なエッセンスに盛り込んでいくということ自体は私も当然だと思いますし、賛成をいたします。正に、これからの法曹養成ということを行っていくためには、やっぱり裁判所あるいは検察庁、それから日弁連、そして大学と、こういったところが市民社会のニーズを十分に踏まえて、そしてそれを抽出しながらこの法曹養成に協力をしていかなければいけないということでございまして、その相互協力は本当に不可欠だと思いますが。で、そのことは三条の二項で、国はそうした機関の相互協力を強化すると、こういうふうに精神としてはうたっておりますが。で、ここまではいいわけです。
 しかし、じゃ、これを行政庁の範囲、例えば検察庁に、例えば次の三項に出てくる教員の確保とか教員の教育上の能力の向上のために必要な施策を講ずるように、例えば検察官に法科大学院に行って法曹養成に協力をしなさいと、これを法務大臣が検察庁にお願いをするというのは、これは大いにあり得ると思うんですけれども、例えば裁判所とかあるいは日弁連とか、こうしたときにこうした方々の御努力あるいは御協力というのは、これは不可欠ですね、不可欠だということは、国はそういうことをしなきゃいけないと、こう考えているわけでありますが。
 そのときに、もちろん裁判所あるいは日弁連が自主的、自発的に御協力をいただくということは大いに結構だというふうに思いますが、更に例えば裁判所にもう一歩踏み込んでやってもらいたいとか、あるいは日弁連にもう一歩踏み込んでやってもらいたいとか、あるいは日弁連の協力を引き出すために更にどういうふうな制度的な支援の方法があるのかということを御相談するときの当事者というのがよく分からないといいますか、そこがみんな見合ってしまって、特に、国と日弁連の関係というのは非常に微妙でありまして、法曹の非常に重要な一角を日弁連は担う、あるいは弁護士の皆様方というのは担っているわけです。しかし、そこに協力要請もしなきゃいけないというこの微妙な関係の中で、しかし協力を仰がなきゃいかぬと、かつ、それがただ協力していただくだけじゃなくてうまく連携して協力していかなければいけないといったときに、この精神が本当にうまく実現をされるんだろうかということが非常に私は懸念をするわけでございますが。
 具体的にこの三条の二項あるいは三項を実効あらしめるためにどのようなことを念頭に置いて、あるいは具体的にこういうことをしながら協力体制をきちっと立ち上げのときからやっていきたいというふうに考えておられるのか、少し詳細にお聞かせいただきたいと思います。

○政府参考人(山崎潮君)
 ただいま御指摘の法曹三者の協力、これは大変重要なポイントになるわけでございます。
 私ども、具体的にじゃどういうことをやっていくかということでございますけれども、例えば、これは法科大学院の教育とも連動しなければならないということでございますので、今、一つの試みといたしまして法科大学院の設立予定の準備をしている準備会がございまして、そういう組織と法曹三者で協議会を設けておりまして、その中でお互いの連携をどうあるべきかということをこれから鋭意詰めていきたいということでございます。
 例えば、これから新しく法科大学院でいろいろ教育をしていくわけでございますが、従来の教育とはやっぱり違ったものをやっていかなければならない。そうなりますと、どうしても実務的感覚が必要になる。その場合に、教材をどのように作り上げていくかということが一つ大きな問題でございます。これにつきましては、法曹の方も十分にいろいろな素材を提供させていただいて、いい題材を作っていきたいと、こういうことが一つの典型の例でございます。
 また、教員の関係につきましても、それぞれ実務家を教えることにそれほど慣れていないかもしれません。それから、あるいは大学関係者は実務的な感覚の方が弱いかもしれません。そういうところをお互いに補うために研修等を行ったり、それで質のいい教育内容を確保していきたい、こういうふうなことを行っております。

○鈴木 寛
 はい。よく分かりました。
 それで、先ほど私は冒頭に申し上げましたこのような司法に関する法律を内閣が起案をされ、そして提出されることの限界といいますか、御苦労というものが実はこの連携法の六条に私は一つ例示として出てくるんではないかというふうに考えております。
 と申しますのも、この六条というのは、まず法曹養成の中核になる、正にプロセス教育の中核になるロースクールの設置基準を決めるということですね。それから、法科大学院が動き出して、それに対する評価基準というものを決めていく、あるいはそれを評価する評価者の認証をしていくという、これは非常に重要なことを決めているのがこの六条なわけであります。
 そのいい設置基準を作る、それからいい評価基準を作る、それから適格な評価機関を認証するということが正にプロセス教育のこれからの核になるわけでありますが、それの評価基準を作る、あるいは設置基準を作る上で、法務大臣が文部科学大臣に対して意見を述べて、そのことによってよりよい設置基準、あるいは評価基準、あるいはその評価機関というものができるというところは、これは確保されているわけでありまして、このこと自体私は何ら問題視しているわけじゃないんですが、本当に法務大臣と文部大臣だけで十分なのかと、こういう問題提起をさせていただいているわけです。
 これは、私も霞が関におりましたから、霞が関の中で内閣の司法制度改革推進本部が起案をしたときに、そこに、先ほども「国は、」の中には裁判所が入っているとお話がありましたが、そこに裁判所を書くというのはやはり僣越ではないかという自制が働いてしまうわけですね。それは非常によく、気分としてはよく分かります。
 しかし、よりあるべき法律の在り方ということを考えた場合には、先ほど事務局長の方からそういった法曹三者も入った大学関係者も入った集まりがあるからということで、実質的にはそうした中で設置基準とか評価基準とか是非御議論いただきたいというふうに思いますけれども、そのことはやはり法律においてもよりよい設置基準、よりよい評価基準を作るために、例えば最高裁判所もきちっと意見表明ができるということでありますとか、あるいは大学以外に法曹養成に関する重要な機関として日弁連が入るという御答弁がありました。であれば、法務大臣とともに最高裁判所とか、あるいは日弁連とか、そうしたところがその設置基準に対して意見表明ができるということを、実態はおやりになっていただけるというふうには思いますが、しかしそれは、せっかく五十年ぶりの司法改革を行う、そして一発入試からプロセス教育へと、こういうことで、その趣旨はおおむねいいわけでありますが、であれば、この法律もきちっと、法曹養成というのは法務大臣だけではない、そうした法曹三者がすべてかかわっていくんだという同等の地位を法的にも与えていくべきであったなというふうに私は理解をいたしまして、そしてそのことをこの法務委員会の場ですべての委員の皆様方に問題提起をしていきたいと思っていますが。
 これは入っていないじゃないかと言って、いや、入れづらかったんですという御答弁になるのかよく分かりませんが、ちょっとその感想といいますか、苦悩の一端でも何でも結構なんですが、今の日弁連、裁判所などもその六条の二項における法務大臣と同等の法的地位を与えるべきではないかという私の問題意識についてのコメントをいただければと思います。

○政府参考人(山崎潮君)
 ただいま御指摘のとおり、ここには裁判所それから日弁連が入っておりません。これは、この条文六条自体が、法科大学院の設置基準の制定、改廃などの行政上の行為に関しまして、法科大学院における教育の充実及び法科大学院における教育と司法試験との有機的連携の確保、こういう観点から司法制度を所管する法務大臣と教育制度を所管する文部科学大臣という行政機関相互の関係を規定したもので、そういう性格なものであるわけでございます。
 日弁連、裁判所について同様の規定を設けないというのは、これらはやはり行政機関には属さないということから、行政機関相互間における事務分掌による制約を前提とするこの二項のような規定によって意見を述べる機会を付与されるというものではないということから置いていないわけです。
 ただ、これはそういう性格ではございますけれども、実質の問題として意見をきちっと反映させるという必要がございます。そこで、この連携法案の三条の三項に規定がございまして、「関係する審議会等における調査審議に法曹である委員を参画させるものとする。」と規定しております。これは設置基準、認証基準等の行政行為をする前提といたしまして文部科学省の方で審議会を設けておりまして、そこの審議会の結論を尊重しながら最終的な行政行為を行うという構図を取っておりますので、そこの審議会の中に法曹三者、これを参画させて、実質上はそこできちっと意見が反映されるようにということで、わざわざこういう規定を置いているわけでございます。

○鈴木 寛 
 
少しちょっと確認させていただきたいんですが、今の三条三項の「関係する審議会等」に今、文部省関係の審議会もお入りになるというような御答弁だったかと思いますが、具体的には何審議会は必ず含まれるということなんでしょうか。

○政府参考人(工藤智規君)
 大学あるいは大学院の設置基準、大学の発足に当たっての審査を行うに当たっての基準でございますが、そういう設置基準の御議論については中央教育審議会の大学分科会で御審議いただくことになります。それから、実際の設置認可さらにはその認証基準の在り方などもあるわけでございますが、もう一つ関係しております審議会としまして大学設置・学校法人審議会というのがございます。そちらはそれぞれの分野ごとに専門家をお願いして具体的な審査をお願いしているものでございます。

○鈴木 寛
 追加ありますか。いいですか。

○政府参考人(工藤智規君)
 審議会は二つでございます、今申し上げたように。それで認証基準は中教審の方でございます。

○鈴木 寛
 恐らく行政の側からの御答弁としては、というか御苦労としては、与えられた枠の範囲の中で最大限の実効性を担保しようということになると今みたいなことになるんだと思うんですね。そういう意味では、枠内で最大限の知恵と工夫を、創意工夫をされて実質が今のように確保されるようにという御努力は、本当にこの条文からよくうかがい知れるんです。
 しかし、そうなりますと、結局やはり、更に申し上げると、司法試験法あるいは司法試験委員会、先ほど江田委員の方からも問題提起がありましたが、それをそもそも行政の中に置いている。三条委員会とはいえ法務省に置いているわけですね。ここ自体やはり無理があって、その無理の中で何とか実効を担保しようとすると、今のような大変に法技術上の御苦労をむしろ強いている、我々立法府からいえば強いているということになってしまっているのではないかというふうに私はやっぱり思います。
 それで、今度、司法試験法の改正の方の御議論をさせていただきたいわけでありますが、これも最終的には法務大臣がいろいろ決めていくと、こういうことになるわけでありますけれども、私はまず意見を申し上げますと、これせっかくの司法改革でありますから、法曹の入口をどのように、どういう人材を法曹に入れていくかということを決めていく。今までは基本的に法曹養成というのは司法研修所以降でやると、こういうことだったというふうに思います。「司法修習生は、司法試験に合格した者の中から、最高裁判所がこれを命ずる。」と、こういうことでありますから、合格した人が全部最高裁が引き取ってその管理の下で一貫して教育する、こういうことでありますから、ある種のコンシステンシーというのは確保されている。ただ、しかも司法研修所で相当みっちり、もうゼロからやるわけですね。
 しかし、今回はその前段階といいますか、前段階をかなりロースクールにも、しみ出してというか前倒ししてやっていきましょうと、こういう制度設計になりますですね。で、今のような混乱が起こっているわけでありますけれども、でありますから、前段階の工程、しかもその一番つなぎをする司法試験の役割というものも相当程度変わっていくという中で、その辺の責任体制というのをもう一回ゼロベースで私は議論し直しても良かったんではないかなという問題意識を持っているわけでございますが。
 そういう問題意識の下に少し具体の質問をさせていただきたいと思いますが、改めてお伺いをいたしますが、どういう人材を司法試験で合格をさせていくというふうに、そういう合格者の人物像といいますか、ということについて少しお話を、御見解をいただきたいと思います。

○国務大臣(森山眞弓君)
 これからの法曹は、非常に複雑多様化していきます社会の中で国民の様々な要請にこたえていくという、しかも専門的な高度な能力、優れた資質を有する多数の法曹が求められるということでございます。
 新しい司法試験では、法科大学院を卒業した人に受験資格が与えられるということでありますので、試験自体は法科大学院の教育内容を踏まえまして、実体法と訴訟法を融合させた出題をも可能とするような試験科目にするほか、法曹としての専門性を高めるために論文式の試験に選択科目を付け加えるということも考えまして、様々な面で将来法曹としてその応用能力を十分に発揮することができるような人ということを考えております。

○鈴木 寛
 確認なんですが、新改正法では口述試験は、予備試験じゃなくて本試験の方ではなくなりますよね。

○政府参考人(山崎潮君)
 なくなります。 なくなる理由を申し上げてよろしゅうございますか。

○鈴木 寛
 はい。

○政府参考人(山崎潮君)
 法科大学院におきましては、この連携法でも定められておりますけれども、少人数で双方向的な教育をきちっと行う、それから厳格な成績評価と修了認定を行うということでございます。この双方向的な中には、やはり表現能力、それから相手の言うことを聞いて分析する能力、それに対応する能力、こういうものも全部そこで培われるわけでございまして、そこでパスをしている、厳格な成績評価を受けているということは、一応そこの能力が備わっているということを前提で、ここでは行わないということ、こういう連携をしているわけでございます。

○鈴木 寛
 今の御答弁は、恐らくそうなんだと思います。
 確かに今のような、口述式といっても短時間でありますから、本当に三年間なり二年間のロースクール教育において、きちっとその人のコミュニケーション能力とか、あるいは更に言えば人格識見といったものも、ロースクールでの教育がきちっと行われ、そこでの進級あるいは卒業認定というものがきちっと行われれば、むしろ改善をするのではないかというふうに思っていますが、これもまた、じゃ、ロースクールがきちっと設置され、それが運営されるかと、こういう話になってくるわけでありますが。
 もう一つ御質問をさせていただきますが、三条の二項の四号で、要するに、専門分野の試験科目を法務省令で一つ定めるということが加わっております、公法系、民事系、刑事系に加えて。ここは実は重要だと私は思っておりまして、今後、ロースクールというのは、相当、司法試験の制度設計、特に試験科目の設定に相当カリキュラムの内容が引きずられるということになると思います。ですから、当然、ロースクールのビヘービアとしては、やはり各ロースクールの司法試験合格者を上げたいと思うのは当然だと思いますから、そういうふうになってくるんだと思うんです。そのときにどういうふうな試験をやっていくかということでロースクールの教育がどんどんどんどん影響されていくというふうに思いますが、例えば、この法務省令で定める科目で今どういうことを、どういう科目を現実想定をされておられるのか、お答えをいただきたいと思います。

○政府参考人(山崎潮君)
 この構造でございますけれども、私ども考えているのは、まず、社会のニーズがどういうところにあるかですね。これは、大学の方でも私どもの方でもいろいろ調査はいたしますけれども、まず、そういうニーズにこたえられる教育をしなければならないわけでございまして、まず、私はそちらが先行だろうと思います。そういうものがたくさんいろんなところで全国的にくまなく教えられているということになれば、そういうものをテストに取り上げていくという、そういうつながりでございまして、最初に試験科目がありきで、それに合わせた教育をしていくというのは、私は逆であるというふうに考えておりまして、そういう関係から、やはり、まず法科大学院を立ち上げていただいて、やはりどういうような選択科目で教えられているか、その状況をよく把握いたしまして、それにある程度見合うような試験科目を決めていくということから、法律そのものでは書かずに、省令等でその状態を見ながら決めていくと、こういうことでございます。
 ちなみに、私ども、いろいろアンケートを昨年させていただきましたけれども、知的財産関係とか、それから労働関係、それから倒産関係とか、世の中でかなり重要だろうと、税金の問題も、租税の問題もあるかと思いますけれども、そういうものが上のランクに掲げられているという状況でございます。

○鈴木 寛
 この点については、この法務省令は、司法試験委員会でも意見を聞きながらやっていくということでありまして、そこに法曹三者が入っていくという話でありますので、また引き続き、文部省あるいは法務省の方々と一緒にその動向を、私からもいろいろ御提案もさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。
 時間がなくなってしまいましたので、今の話もう少し伺いたいわけでありますが、ちょっと次に行きたいと思います。
 私が次に御質問をさせていただきたいのは、ロースクール導入後の法学教育ということでございます。
 今まで、法学教育が期待されていたものは、もちろん裁判法曹の養成ということを重要な柱の一つとしては現行の法学部も、法学部教育ももちろん想定はしていたとは思いますが、しかし、実態から申し上げますと、法学部がどういう人材を世の中に輩出していたかといいますと、裁判法曹のみならず、リーガルマインドというものをきちっと身に付けて、そしてルールを作るとかあるいは政策を作るとか、そうしたいわゆる組織、社会のガバナンスというものを実は今までの法学部というのは教えてきたのではないかというふうに思います。
 こうした人材というのは、これから現場主権、現場にいろいろなものを、具体的なルールメーキングというものをゆだねていくという社会を我々は目指しているわけでありますから、そういう意味では、もちろん、何か事件が起こったときにそれを事後的にジャッジをしていく、そういうある種の法的な秩序というものを確保していく、この人材養成も非常に重要なわけでありますけれども、むしろ事前の段階で、これ、もちろん中央政府はそこはリリースをしていくわけでありますけれども、しかし、むしろ現場で、きちっとそういうガバナビリティーを持った人材がどんどんどんどんそういう現場でいろいろなものを決めていくということは、これは非常に重要なことだと私は思っております。
 そうした観点から考えてみたときに、今回のロースクールの設立後、裁判法曹を大学教育というものがきちっとより強化して輩出をしていくということについての道筋は見えるわけでありますが、その反射的な効果として、今まで法学部が割と頑張ってきたルールメーカーとかポリシーメーカーとか、そうした人材養成というものがやや相対的に手薄になってしまうのではないかという懸念が私はしてならないわけであります。こうした、今後、裁判法曹以外のいわゆる広い意味での法曹人材の養成というものについてどのように考えておられるのか、御答弁をいただきたいと思います。
 それから、ちょっと時間がありませんのでもう一つ申し上げますが、ロースクール、これからかなりロースクール間の、第三者評価も入りますから、切磋琢磨して競争するということになると思います。これは非常にいいことだと思いますが、結果、淘汰されるロースクールも出てくるというふうに思います。修学途中で学生さんが、ロースクールが閉鎖ないし統合されてしまった場合に、これはどういうふうにしていくのかという問題、それから、だれが最終的な責任を取るのかと。
 それから、今のはむしろ何かネガティブなときの事後救済の話でありますが、もう少しポジティブに、大学間の単位互換といいますか、ロースクール間の単位互換、学生がいろいろなところで単位を取ってくる、より良い教育を受けていく、そういった単位互換はどういうふうになっているのかということについて御答弁をいただきたいというふうに思います。

○政府参考人(工藤智規君)
 これまでの法学部の役割で、一般的なリーガルマインドを養成していくという機能は確かにあるわけでございまして、現に、法学部卒業者の進路動向も、法曹にお進みの方は一%にも満たないぐらいでございまして、大半は、企業でございますとか各種のサラリーマンになる、あるいは家庭に入られているとかということがあるわけでございまして、こういう法学部の機能といいますか、リーガルマインドを養成するという機能は今後ともなくなるわけではないと思います。
 他方で、公務員もそうでございますが、それぞれの分野でより高度な人材養成が求められておりまして、各大学の検討状況を見ましても、法科大学院の設立だけではなくて、あるいは立法、行政など、政策立案といいますか、ポリシーメーカーの高度人材養成の大学院をしっかりしたものにしていきたいという御意向の大学もございますし、法学部のみならず、大学院レベルでも多様な人材養成が今後とも考えられていくことを私どもも腐心してまいりたいと思います。
 それから、切磋琢磨しながら、場合によったらつぶれた大学の学生はどうなるのかということでございますが、確かにいい意味で法科大学院同士が競争してより良い法曹養成がなされることを私どもは期待しているわけでございます。基本的には、それぞれの学校の経営、運営というのは設置者の御判断、良識の問題でございますけれども、私ども、例えば私学につきましては、従来から私学助成の充実でございますとか、あるいは専門家を委員にお願いしまして、学校法人運営調査委員制度を設けておりまして、時々現地、それぞれの学校にお邪魔しながら指導、助言を行ったり、あるいは日本私立学校振興・共済事業団の方で経営の御相談業務に日ごろあずかるような仕組みなどを取っているところでございます。
 そのほか、今回の学校教育法の改正によりまして、第三者評価という仕組み、それから緩やかな、段階的な是正措置という制度改正をさせていただいてございますが、ある程度日ごろから、いきなりばったり廃校ということではございませんで、日ごろからいろいろ改善、立ち直りの機会、御努力をお願いして、それでどうしても駄目であれば最後にはということにはなりますけれども、そういう段階を踏みますので、突然学生さんが困るということにはならないのではないかと思いますのが一つと、もう一つは、仮にどうしても学生さんが在学中に学校をもし替わった場合については、これはそれぞれの入学者選抜は大学の御判断でございますけれども、私どもも各大学の御協力をいろんな形で仰いでまいりたいと思っております。
 それから、むしろ積極的に各大学の質の向上のためにも単位互換をということでございますが、これももちろん制度設計として中教審の方でもそういう方向での御議論がなされておりますので、可能なような制度設計にしてまいりたいと思っております。

○鈴木 寛
 終わります。


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