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  法務委員会 質疑

2002年12月03日 

○鈴木 寛
 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 今回、会社更生法の全部改正ということでございますけれども、私は、冒頭、現下の経済情勢というのは大変に深刻な状況にあるというふうに思います。本来、この臨時国会といいますのは、正に経済有事という問題に対してどのように取り組んでいくかということが主要な論点といいますか、議題の一つだったというふうに理解をしておりますけれども、そういう観点で今回の会社更生法の全面改正の提案の理由説明を読ませていただきました。
 確かに、相当古いものになっている。今の柏村委員との御議論の中でも、そういった状況については、一定の改正理由について理解はできるわけでありますが、あるいは、いろいろな不備が指摘をされていますからこの際直しますと、こういうこと、これはもう当然なわけでありますけれども。
 私は、もっとポジティブに、もっと前向きにといいますか、要するに今の経済が非常に深刻な状況にあるのは、そもそもやはり産業構造の転換とか、あるいは企業組織というもの、今までのビジネスモデルというものが相当制度疲労を来していると。今までそれなりに頑張ってきた企業も、ここでもう少し前向きに企業再生といいますかリスタートをしていって、そういうことを世の中全体として加速をさせながら、正にそういう意味での真の構造改革だと思うわけでありますけれども、そういうことを世の中全体として制度としても推し進めていくんだ、その上で、必要条件と十分条件とあると思いますけれども、今回の会社更生法というのはその必要条件を整備をしていくんだと、このように私は理解をしながらこの会社更生法の改正の議論というものを見守って、注視をしてきているわけでありますけれども。
 昨日も全国紙の中で、政府が発表されております失業率というのは五・五%だけれども、特に若年失業、特に十五歳から二十四歳の若年失業率は八・八%と、これは大変ゆゆしき事態だと私は思います。さらに、最近は無業者、失業者ではなくて無業者という言葉がありまして、これが六十一万人いるということなんですね。ですから、無業者を足しますと、実はグローバルスタンダードで見たときの失業率というのは六・三%になっていると、こういうふうな深刻な事態にあります。
 私は、会社更生法の意義、あるいは、いわゆる清算型ではなくて再建型の会社更生の意義というのは──正に企業というのは、これは経済生命体でありますから、もちろん創業も重要であります。これはこれで別途いろいろなところできちっとやっていただかなければいけないわけでありますが、やっぱり新しい生命体を作るというのは大変なことでありまして、もしも再生可能であればきちっとそれを生かしながら、正にビジネスモデルを変えて、あるいはビジネス・プロセス・リエンジニアリング、BPRという言葉もありますけれども、そうしたことで更に日本の経済の活力を上げていくという意味で、正に経済再生というのは、その柱の中に企業再生というものがあるというふうに私は理解をしているわけでありますが。
 今日は経済産業省お見えだと思いますので、現下の経済情勢あるいは現下の経済情勢を踏まえた正に日本経済の再建という観点からこの会社更生法の改正の意義をどのようにとらえておられるのかをお聞かせいただきたいと思います。

○政府参考人(桑田始君)
 お答えさせていただきます。
 先生から御指摘いただきましたように、私ども経済産業省としましては、経済構造改革を推進をして我が国の経済の活力の維持向上を図るには、何といいましても、やはり企業の有しております有用な経営資源が無用な散逸をしたり劣化をするというのをいかにして回避をして、また、それの有効な活用をできるだけ迅速に図るということが大事だというふうに考えてございます。こうした観点から、近年の倒産法制の見直しにつきまして積極的に当省も提言をしてきたところでございます。
 御承知のように、既に再建型の法的手続といたしましては民事再生法が二〇〇〇年度から施行されております。従前の和議と比較しまして約五倍の申立てが行われております。しかし、規模の大きな企業の場合には民事再生法の活用は難しいといった面が指摘をされておりますし、他方で、先生から御指摘がありましたように、大企業の倒産というのが地域経済にとりまして、雇用の問題、連鎖倒産の問題、非常に大きな問題を抱えてございます。したがいまして、できる限り早期の段階で、また、かつ迅速な手続により事業再生を図るということが何よりも必要不可欠だというふうに考えてございます。
 とりわけ、現下の企業を取り巻く情勢、大変厳しゅうございます。会社更生法を早期に改正をいただいて、会社更生法におきます入口要件の拡大、更には迅速な手続を可能としますと、不良債権処理の加速化でございますとか産業再生の促進、事業の再生というものがより一層円滑に進むのではないかという観点から私どもとしては極めて重要な問題だと考えてございます。

○鈴木 寛
 伊藤副大臣、お忙しいところ大変恐縮でございます。ありがとうございます。
 私も、この今回の会社更生法の改正といいますのは正に経済政策だというふうに考えておりまして、そういう観点から、正に金融の再生というものも今国会あるいは現下の最も重要な課題の一つだというふうに思っております。
 十月三十日に金融庁は、「主要行の不良債権問題解決を通じた経済再生」ということをあえて副題とした金融再生プログラムをお出しになっておられますが、いろいろな報道で、この主要行と金融庁のいろいろなやり取りが報じられておりますが、今、実際のところ、どういうことがどのように議論がされていて、本当にこの主要行の不良債権問題解決を通じた経済再生というものがうまくいくんだろうかどうだろうかと正にかたずをのんで見守っているところでございますが、現状のそうした御相談の状況あるいは御検討の状況について少しお教えをいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○副大臣(伊藤達也君)
 お答えをさせていただきたいと思います。
 先生は経済政策の専門家でいらっしゃいますし、今お話がございましたように、やはりこれからの経済構造改革の中にあって新しいビジネスモデルというものも次々に輩出しながら、お客様、消費者、利用者からやはり支持される、そういう産業に大きく生まれ変わっていくことが極めて重要でありまして、その中で、経営資源を再構築しながら経済の活性化を実現をしていく、そうしたことと金融の再生を一体的に実現をしていかなければいけないというのが私どもの強い問題意識でありました。
 その問題意識の下に、今回、十月三十日に金融再生プログラムというものを提示をさせていただいて、新しい三つの枠組みというものを明らかにさせていただいたわけであります。この点については、主要行を始めとした金融機関の方々も同じ問題意識を共有をしていただいて、総理から、十六年度中に不良債権問題を終局をさせるんだ、その方向に向かってお互いに協力をしながら、いい意味で建設的な緊張関係を持ちつつ、しっかりそれぞれの立場でやっていこうということで、お互いの建設的な意見交換を積み重ねてきているところでございます。
 私どもとしましては、主要行各行において不良債権処理を進めていただいて、そして各行の健全性を確保していただき、そして資金仲介機能というものを一層高めていただきたい、そして収益力を向上させていただいて財政基盤というものを強化をしていく、そういうことをしっかりやっていただくということを大きく期待をいたしているところでございます。
 今後も、本プログラムの実施については、適宜適切に金融機関と意見交換を行いながら、この大きな目的実現に向かって一生懸命やっていきたいというふうに考えております。

○鈴木 寛
 これも金融庁副大臣にお尋ねをしたいと思いますけれども、不良債権処理という言葉はすごく誤解されているといいますか、非常にネガティブなイメージを市場に与えているということを私は常々懸念をいたしております。
 不良債権処理ということは、裏を返せば企業のいわゆる返済能力強化ということなんですね。そうしますと、要するに不良債権というのはもっとダイナミックなもので、経済情勢が良くなって、いわゆる債務者であります企業の業績が上がり、キャッシュフローがどんどんどんどん入ってくればこれは返済に回ってくるわけでありまして、そうすると、不良だったものもやや優良になり、優良債権になってくると。正に生き物だとおっしゃっていることはそういうことを言わんとしているんだと思いますが、その後の解説がなかなかないものですから、よくそこのところがつながっていないわけでありますが。
 正にいろんなステージで企業を再生をしていく、それは更生法の適用、発動の前でやっていくということもあります、この後、産業再生機構のことについてお伺いしたいと思いますが。あるいは、それが間に合わない段階でも会社更生法あるいはいろいろな、様々な民事再生も含めた再建手続、いろんなステージでもう一回生き返らせていくんだ、なるべく破産型にならないんだということの構えが社会制度としてきめ細かく制度設計をされていて、それが実際にもきちっと動くんだという、やっぱりトータルな金融政策といいますか、正に経済金融、産業政策のこの両方、これはコインの裏表でありますから、そういう観点で、金融庁が今御苦労されておりますこの金融再生、特に不良債権問題の処理ということと今回の会社更生法の改正というものがどのような関係にあるのか、あるいはそれを推し進めていかれる中でこれはどういう位置付けにあるのかということについてお答えをいただきたいと思います。

○副大臣(伊藤達也君)
 今、先生から御指摘がございましたように、やはり総合的な政策が極めて重要だというふうに私どもも考えております。
 特に、今回の会社更生法の改正によりまして、会社更生手続開始後、原則として一年以内に更生計画案の提出が義務付けられ、また会社更生手続の終結時期の早期化が図られるなど、会社更生手続は迅速に遂行できるようになるというふうに考えられます。
 金融庁といたしましては、やはりこの法的な枠組みの中で会社更生法がある意味では会社の更生を実現をしていくということの中で極めて重要な法律でございます。したがいまして、会社更生手続が合理化、迅速化され、適切に利用されることになれば、その結果として不良債権処理の促進につながるものというふうに考えております。

○鈴木 寛
 今回の会社更生法が新しい会社更生法になれば──今は、どちらかといいますと、最悪の状態になってから会社更生手続が行われるわけですね。最悪の状況になって会社更生手続が行われますと、いわゆるその債権者の側からいえば、正にそれを通じた債権回収というのは非常に、何といいますか、割合として十分ないわゆる債権の回収というのが厳しくなる。これがもうちょっと会社更生法の適用が弾力的に、要するに会社の経営状況が、最悪の手前というのは何と言ったらいいんだかよく分かりませんが、今よりももう少し再生可能な状況でいろいろな手が打たれていれば、実はその債権者からした場合の債権の回収額というのもこれは当然上がってくるわけですね。
 そういう意味で、私は、正に会社更生法が文字どおり会社更生のためにワークするということになるということは、不良債権の処理の観点から、あるいは不良債権額を少しでも圧縮をしていく、不良化する債権の額を少しでも圧縮していくという観点から大変に重要だというふうに思っているわけでありますが。
 そこで、今日は内閣府にもお見えをいただいていると思いますが、正に総合デフレプランの中で産業再生機構の構想がございました。これ、産業再生機構(仮称)を作るとしか書いていないわけでありまして、その後、何日かたっておりますので恐らく様々な検討が行われていると思いますが、この産業再生機構を通じてどのような措置、施策、支援策を考えておられるのか、現在の検討状況をお話しをいただけたらと思いますが、よろしくお願いいたします。

○政府参考人(梅村美明君)
 お答え申し上げます。
 十月三十日に政府の方でまとめました「改革加速のための総合対応策」におきましては、産業再生機構は、まだ仮称でございますけれども、産業再生・雇用対策戦略本部が策定する基本指針というものに従いまして、金融機関におきまして要管理先などに分類されている企業のうち、メーンバンクあるいは企業間で再建計画が合意されつつある等により当該機構が再生可能と判断する企業の債権を企業の再生を念頭に置いた適正な時価で原則として非メーンの金融機関から買い取るというようなことでございます。
 産業再生機構がこうした機能を果たすことによりまして個々の問題企業の再生が可能となる、また、ひいてはこのような企業再生を推進していくことによりまして金融及び産業の早期再生を目指した一体的対応、つまり不良債権の処理の加速と併せまして一体的対応を進めていくことに資すると、かように考えて今鋭意検討をしているところでございます。

○鈴木 寛
 先ほども柏村議員の中でも少し議論になっておりましたが、この産業再生機構を通じた産業再生の今御検討中のプランと、それから新会社更生法、先ほど役割分担がどうなっているのかと、デマケができているのかという御質問だったんですけれども、私の質問の意図は、デマケるというよりも、もっと連携した方がいいというか、新会社更生法による──もちろん法的な分類分けは先ほどの御答弁で、法務省からしていただいた、それはよく分かりました。
 しかし、私の質問の意図は、結局、今の企業再生というものが抱えている問題というのは、以前であればメーンバンクがもっとしっかりしていましたから、相当きめ細かく企業が経営状態が悪化したときにいろいろな手だてをメーンバンク主導で、いろいろな債権者をも含めて、ある意味での債権のオーガナイザーとしていろいろな役割を果たしてきたと思うんです。しかしながら、最近は金融機関自体が相当傷んでいますから、そうすると、そこにどれだけのエネルギーを割けるか、あるいは金融機関自体の体力がなかなかないものですから、従来ほどメーンバンクとしてその再生のオーガナイズあるいは再生のイニシアチブをなかなか取れなくなってきているというのは現状あると思うんです。そうした中で、恐らく産業再生機構というものを官製で作らなければいけないという現状にある。
 これは本当に官製でできるのかどうかということで、その政策の当否はまた別のところで議論しますけれども、しかし、せっかく産業再生機構ということをやる以上、ここがかなり、従来、企業の経営が悪化した正に最悪の状況にあるところの再建に向けたオーガナイザー、イニシアチブを取るということ、そのプレーヤーになれるかどうかというのが恐らくこの産業再生機構という政策の成否といいますか、やって良かったと言われるか、やっぱり駄目だったと言われるかということの正にそのターニングポイントを分けると思うわけです。
 そういう意味で、産業再生機構はいろんな道筋というものが法的に準備されていた方がいいと私は思うわけなんですが、そういう意味で新会社更生法というのはうまく使えるのか、あるいはそれを何か、この道が更に広がることによって手数が増えるといいますか、選択肢が増えるといいますか、総合的な施策を打っていく上で、仮に産業再生機構による再建プランがある程度のところまでやって、その次、新会社更生法の世界に引き継いでいくというか、バトンタッチしていくというか、あるいはそこの出動を求めると、言い方はいろいろあると思いますが、そういう意味で新会社更生法というのはどういうふうに評価というか、使えるというか、どういうふうに認識されておられるかということについてお話しください。

○政府参考人(梅村美明君)
 先ほど申し上げましたように、産業再生機構の詳細については現在検討中でございまして、現時点で断定的なことというのはなかなか申し難いところもあると思うんですけれども、一般論といたしましては、今御指摘のとおり、産業再生機構に持ち込まれた案件でありましても、必要に応じまして民事再生法とかあるいは会社更生法等による法的手続を用いた企業再生ということに移行することもあり得るのではないかと、かように考えております。
 いずれにしましても、冒頭申し上げましたように、設立とか運営につきまして今後引き続き検討を鋭意進めてまいりたいと、かように考えております。

○鈴木 寛
 是非、これからの御議論の中で、今の論点も踏まえて御検討をいただきたいというふうに思います。
 そこで、ちょっと経済産業省に伺いたいわけでありますが、現在の政府のいろいろな経済政策を見ておりますと、マクロ経済政策とミクロ経済政策、私はこれは車の両輪だと思うんですが、どうもそのバランスが悪いんじゃないかという気がしてならないわけであります。
 マクロ経済政策についてはいろんな改革案がそれなりに検討されて、我々によく、当否は別として、何をやろうとしているのかということについてはよく分かる。しかし、マクロ経済政策というのはやっぱりマクロですから、正にそのベースといいますか、経済のベースを整えていこうと、こういう話だと思います。
 しかし、私はやっぱりミクロの経済政策というものが相対的に弱いというふうに最近感じておりまして、やはり企業の再生をやっていく上で当然金融あるいは不良債権処理ということは大変重要でありますけれども、企業といってもいろいろな規模によってやっぱりその対応というのは違っていく、あるいは産業というものによってその再生の道筋というものはやはり違っていくわけでありまして、そうした正に金融庁あるいは経済財政諮問会議とか、そういうところは、要するに鳥瞰的に、鳥の目と虫の目というふうな言い方がありますが、鳥の目で鳥瞰して世の中うまく回るかなと、こういうことでやるわけでありますが、逆に再生する企業の側からは、先ほど申し上げましたように、正に不良債権処理というのは個々の企業の債務返済能力の強化なわけでありますから、そういう観点から資金調達が、あるいは今抱えている不良化した債務、企業からすれば、それをどのように一つ一つ片を付けていくかということをもう少しきちっときめ細かにだれかが見てあげなければいけない。その部分が、そこはいや民間なんですということなのかもしれませんが、今はある意味での経済有事でありますから、恐らくその視点でもって様々な政策を立てる責任は私は経済産業省にあるというふうに思います。
 そういう観点から、現在の産業再生機構構想について、経済産業省としてどのようにかかわってこられているのか、あるいはこれからきちっともう一回ちゃんとそういう観点でかかわっていくというのか、その辺りのことについてミクロ経済政策の責任省庁としての御答弁をいただきたいと思います。

○政府参考人(桑田始君)
 お答え申し上げます。
 不良債権の抜本処理は、先ほど伊藤副大臣からの御答弁がありましたけれども、金融機関の収益力などの改善を通じまして新たな成長分野の資金の移動を促進をするという効果が期待され、それによりまして日本経済の再生につながるという認識でございます。
 他方で、この不良債権処理の加速化は、先生から御指摘いただきましたように、いたずらに経営資源の散逸をもたらすことのないよう、産業再生の加速化によりましてある意味では過剰供給構造を解消するとか、更には事業の早期再生によりまして過剰債務構造の是正を同時に進めるということが私ども肝要であるというふうに考えてございまして、ある意味ではこの不良債権処理と企業、産業の再生というのは一体として適切に進めていくというのが、先ほど車の両輪という御指摘がございましたけれども、私ども自身もそう思っております。
 私ども経済産業省といたしましては、産業政策を統括をする立場でございます。こういう立場から、我が国の企業・産業再生を円滑に進めていく上で産業再生機構が的確に機能を果たしていけるように引き続き積極的に役割を果たしていきたいというふうに考えてございます。
 以上でございます。

○鈴木 寛
 是非、そういうことで頑張っていただきたいと思います。
 次に、先ほども議論になっておりましたが、いわゆる二〇〇〇年度から発動されております民事再生法、既存の、それから新しい会社更生法が併存する形になります。更に申し上げれば、商法による会社整理と、この三つが併存することになると思いますが、先ほど分かりにくいという御議論がありましたが、分かりにくいこともさることながら、きちっとやっぱり理念の整理というものに立ってこの法制度の設計というのはしていかなければいけないというふうに思います。
 現在の整理として、今までの民事再生法と新会社更生法、改正後の会社更生法をどのように企業の側に立った場合に使い分けていったらいいのか、そのときの判断基準というものは何なのかということについて御答弁をいただきたいと思います。

○政府参考人(房村精一君)
 まず、民事再生手続と会社更生手続のそれぞれの特徴の違いでございますが、民事再生手続は、担保権付きの債権あるいは優先権がある債権、株主の権利、こういったものは手続の外に置いております。また、合併等の企業組織の再編行為、これも手続の外に置いております。その代わり、再生手続そのものは非常に迅速かつ低廉に行えると、こういう特色がございます。
 これに反しまして、会社更生手続は、今申し上げたような諸権利すべてを手続に取り込み、会社の組織再編行為も手続の中で行うと、こういう株式会社をめぐるすべての権利関係を更生計画により変更するという強力な手続でございます。
 そのようなことから、この利用に当たりましては、企業再建につきまして担保権付きの債権であるとか優先権がある債権、これについても権利変更を行わなければ企業を再建できない、あるいは手続内で株式会社の組織再編行為を行う必要がある、こういう場合には会社更生手続によらなければ再建は難しいということが言えようかと思います。
 そういうことをもう少し敷衍しますと、一般的には、事業規模が大きく権利関係の複雑な大企業は会社更生手続を使う、それほど権利関係も複雑でない中小企業については民事再生手続を選択する、これが合理的だろうと思います。ただ、大企業であっても、例えば私的整理が進んでおりまして担保権者等の同意が得られている、こういう場合には民事再生手続を使って迅速に行うということも可能な選択肢の一つである、こういう考え方で整理をしたいと思っております。

○鈴木 寛
 法務大臣にお伺いをしたいと思いますが、正に今の点なわけでありますけれども、重要なことは、やはりそれぞれのフレームワークがどういう条件で、今も権利関係が複雑な場合は更生法だと、そうでない場合、じゃ、どこで複雑であるか複雑でないかという線を引くのかとか、これ、なかなか判断しづらい。やっぱりある程度のガイドラインといいますか、考え方の整理ということをきちっとするべきだと思います。
 それから、将来的にはやはり倒産法制全体についての再建型そして清算型、先ほど御答弁がありましたけれども、じゃ、その商法を使ったらいいのか、民事再生を使ったらいいのか、会社更生を使ったらいいのかということについて、やっぱりもう一度、今回の会社更生法の改正は改正として、きちっと整理をして、予測可能な制度設計をすると。そうすると、企業行動も当然それに応じてより合理的になってくるわけでありまして、日本の良くないのは、これ、どうなるか分からないということなんで、いろいろな判断がどうしても遅れてしまうということがあると思いますので、その点、そうした倒産法制全体についての法体系を更にきちっと検討され、きちっと整理をされた形で再編をされる、するということを私は提案をさせていただきたいと思いますが、法務大臣の御見解をお伺いをしたいと思います。

○国務大臣(森山眞弓君)
 おっしゃることもよく分かりますけれども、我が国の再建型の倒産処理手続の在り方につきましては、御指摘のような会社更生手続と民事再生手続とを統合して一つの手続をするのが望ましいという意見が確かにございます。その一方で、債務者の法人、個人の別、債務者の規模や業務内容、事件の規模、必要となる再建手法など、倒産事件の種類に応じた手続類型を別々に設けるべきであるという意見も有力でございます。
 しかし、現時点におきましては、民事再生手続を再建型倒産処理手続の基本的な手続としながら、大規模な株式会社のための特別な手続といたしまして会社更生法手続を併存させるということについて、例えば法制審議会その他の場でもおおむねコンセンサスが得られているというふうに考えております。

○鈴木 寛
 私は、これを単に一本化したらいいというわけじゃなくて、きちっと道筋を整理をして、それがある程度の合理的な考え方の中で整理されていることが必要じゃないかということを申し上げております。
 答弁は要りませんが、例えばこれから起こってくる倒産法制の中で若干議論をもう少しした方がいいなと思うことに、学校法人とか社会福祉法人とか医療法人、これも、特に、私は大学改革の方もやっておりますが、学校法人の経営状況というのは、これは相当これから急激に悪化してくる、大変な競争環境の中で。今申し上げた学校法人とか医療法人というのは、特にその事業の性格から清算型ではなくて再建型の整理というのは非常に重要なんです。しかし、会社更生法では、例えば学校法人、これは学校法人というのは非常に複雑な私は債権債務関係を持っていると思います。しかし、現行の会社更生法では、巨大な学校法人は整理というものがこれはできないというようなことがあります。
 そういう意味で先ほどのような御提案を申し上げているわけでありますが、いずれにしても、いろんなことがこれから出てまいりますし、想定をされますので、是非そういう意味での、全体を見ておられる法務大臣にそうした観点からの御検討もお願いを申し上げたいと思います。
 そういう意味で、いろんな観点から見ていかなければいけないということで更に質問を続けたいと思いますが、今までは会社をどう再建をさせるかという観点で議論をさせていただきました。しかし、会社更生ということにかかわりまして申し上げますと、会社に対する債権者あるいは債権債務関係というのは本当に多岐にわたるわけですね。
 更に私が申し上げたいのは、実は私は九五年辺りからいわゆる資産担保型証券とか不動産の流動化、証券化とか、あるいは売り掛け債権の流動化とか、そういうことにも少し携わっていたことがあるわけでありますが、これは、いわゆるコーポレートファイナンスではなくて、正にプロジェクトあるいはアセットというものに着目して、それを一くくりにしていろいろな仕組み証券を作っていこうというファイナンシャルエンジニアリングの一環として様々な商品が出てきている。あるいは、それが金融ビッグバンの目玉の一つでもあったというふうに思っております。
 その点は金融庁も相当な御努力、御尽力をされたのでありますが、今回の例えば会社更生法、そういう観点からもきちっと議論されているのかなということが若干気になります。
 例えば、今回の会社更生法では包括的禁止命令ができることになっている。これは会社更生という観点からすると恐らく望ましいことだというふうに私は思いますが、これには担保権実行も含む包括的禁止命令というのができているわけですね。
 そうしますと、資産担保型証券というのは、いわゆるそういうふうな企業がバンクラプシーした段階でも、あるいは売り掛け債権でもそうですが、そういう仕組み証券というのは、そういうコーポレートとは別にきちっと債権なり資産を切り出して、そしてそこについてはきちっと、バンクラプシーリモートと言いますが、要するに倒産を回避されたところに安全な債権を寄せて、それを正にバックト、要するに担保としてその証券を作ると、こういうことになっているわけでありますが、新会社更生法で包括的禁止命令が出てきて、そこに対して担保権の実行も含む包括的禁止命令ができるということになりますと、その商品設計に対してはバンクラプシーリモートがきちっと本当にできるのかどうかと。
 今、民間の商品をお作りになる方は、その辺は相当に契約でもって、あるいは商品設計の段階でそのことは私的にやっておられるわけでありますが、これは強行法規ですから、これをオーバーライドされるということになりますと商品自体のリスクというものに対して影響があるということなんです。
 これ、別に一般の債権者もきちっと配慮していかなければいけない。それから当然、後で申し上げますけれども、労働債権もこれは配慮していかなければいけない。それから、いわゆるコーポレートの社債権者、あるいはコーポレートのいわゆる株主、いろんな人にも配慮しなければいけませんと同様にこうした仕組み証券の投資家の配慮もしていかなければいけない、これは本当に難しい話なのでありますが。
 今申し上げましたいわゆる仕組み証券の健全な運用、活用という観点から今回の会社更生法というのは大丈夫なのかどうなのかということについてお答えをいただきたいと思います。

○政府参考人(房村精一君)
 御指摘のように、最近いわゆる資産担保証券、これの利用が進んでおります。
 これは、企業が保有する債権あるいは不動産等の資産を企業から分離いたしましてその資産の信用力を背景に証券を発行する、その証券の利払いあるいは償還はその分離された資産から生ずるキャッシュフローに基づいて行うと、こういう仕組みでございます。
 一般的な形としては、担保となる資産を保有する会社、これはオリジネーターでございますが、これが特定目的会社にその資産を譲渡いたしまして、その資産譲渡を受けた特定目的会社がその資産を裏付けとして証券を発行し、そのキャッシュフローから償還、利払いを行うという形でございますので、この資産の企業からの分離がきちんとした法的な形式を取っていれば、企業が倒産をしてもその倒産は特定目的会社の保有する資産に影響を及ぼさない。正にこれがおっしゃっている倒産隔離でございますので、手続的にはそういうことを念頭に置いた更生手続となっております。

○鈴木 寛
 今の御答弁で、少なくとも仕組み証券を設計をし、あるいはその販売をしている、あるいはそれを購入している投資家に対する心配というものはある程度払拭されると思いますが。
 これは答弁要りませんけれども、昨日、いろいろ事務方の方と議論していますと、いわゆる特定目的会社型、SPC型だとこれは完全なバンクラプシーリモートはできるんですが、信託受益型だとここのところがやっぱり若干グレーなんですね。だから、そういう観点からも、より更に金融庁と法務省と連携されて、本当に法的な漏れがないかどうかということについては引き続きの詳細な御検討を両省にお願いを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。
 そして、次の質問は、会社更生法、これ、必要条件として、より柔軟かつ弾力的な会社更生ができるということになっておりますが、せっかくこうした新しい会社更生法の下で会社更生、これを是非成功させていかなければいけないわけであります。そうした観点から、法的な問題は新会社更生法である程度担保されるんだと思いますけれども、私はやっぱり会社更生が更生計画どおりうまくいくかどうかというのは、その更生中の会社の資金調達がうまくいくかどうか、正にそこに懸かっているというふうに思います。
 先ほども柏村委員の御質疑の中で、デット・エクイティー・スワップの現状とかあるいはDIPについての御答弁、御議論がありましたけれども、私はやっぱりこれ、正に更生中の会社の側に立って本当に資金調達がうまくいくのかどうかということをきちっとやっぱりチェックを、あるいは手当てをしていかなければいけないんではないかというふうに思っております。
 これは、金融庁と経済産業省にお伺いをいたしますが、金融庁には、まず、そうした観点からDIPファイナンスについて、これも若干誤解といいますか、まだ十分に浸透していないということかもしれませんけれども、いわゆる更生中の会社ですから、債務者区分でいくとこれは問題ある会社ということになってしまいます。そういうことからDIPファイナンスがなかなか進まないんじゃないかというような懸念がありますが、これはそうではないんだということで昨日確認をさせていただきましたけれども、そうではなくて、きちっとそれぞれのDIPファイナンスの担保がどうなっているかという個別の債権を注目しながら判定をしていくということで金融庁マニュアル上もきちっとした整理がされているということは確認をさせていただきましたけれども、そうした会社更生をきちっと進めていくんだという視点に立った金融庁の金融行政についての見解、姿勢について御答弁をいただきたいと思います。
 そして、経済産業省には、更生中の会社がちゃんと資金調達ができる、この調達先はデット・エクイティー・スワップの場合もあるし、DIPを民間金融機関から借りる場合もあるし、しかしそこがなかなか、金融庁は制度設計をされても最後判断するのは民間金融機関ですから、そうすると実態上はやっぱり政府系の金融機関でそこを埋めていかなければいけないと。そういうことをトータルに、借り手、企業の側に立ったいろいろな手当てをどのようにされていくのかということについて御答弁をそれぞれいただきたいと思います。

○副大臣(伊藤達也君)
 お尋ねの点でありますが、そもそも金融検査は金融機関の経営判断や融資判断にまで立ち入るという性格のものではございませんので、デット・エクイティー・スワップやDIPファイナンスを行うか否かについては金融機関自らの経営判断により行われるものでございます。
 今、御紹介ございましたが、金融検査マニュアルにおいては、会社更生法の規定による更生手続開始の申立て等が行われた債務者に対する共益債権については、回収の危険度の度合いを踏まえ、原則として非分類ないしはU分類としているか検証することとなっておりますので、したがって金融検査がデット・エクイティー・スワップやDIPファイナンスの利用を妨げるものではないというふうに考えております。

○政府参考人(桑田始君)
 お答え申し上げます。
 法的再建手続を活用しております企業にとりましては、先生から御指摘ありましたように、短期、長期の運転資金でございますとか、設備資金、これをいかに円滑に調達するかということが再建の可否を握る重要な課題というふうに認識しております。このため、DIPファイナンスでございますとかデット・エクイティー・スワップ、企業再生ファンドの活用促進が必要不可欠という認識でございます。
 いわゆるDIPファイナンスにつきましては、昨年度から日本政策投資銀行と政府系金融機関により民間金融機関との協調融資という形で開始されているところでありまして、実績も比較的上がってきている状況にございます。今後は、むしろ民間金融機関におきまして倒産企業に対する融資といったいわゆるネガティブなイメージが払拭をされまして抵抗感がなくなるように、制度の理解を社会全体に進むように期待をしております。
 また、デット・エクイティー・スワップにつきましては、平成十一年に独占禁止法並びに銀行法における運用の見直し、いわゆる五%ルールの見直しが行われまして活用事例が出始めております。法的再建手続のみならず私的整理ガイドラインに基づきます私的整理におきましても活用が今後進んでいくというふうに期待しております。
 それからさらに、本年に入りまして設立が相次いでおります企業再生ファンドにつきましては、更生企業のスポンサーとして資金を供給する主体となり得るものというふうに期待をしております。
 私ども経済産業省といたしましては、このような事業再生に向けた関係者による取組が何とか促進されますよう、関係省庁とともに引き続き環境整備に向けた検討を行ってまいりたいというふうに考えてございます。

○鈴木 寛
 次の質問は労働債権の問題でございます。
 今回の会社更生法の改正の前と後と労働債権の取り扱われ方が要するに変わるのか変わらないのか、きちっと引き続き共益債権として労働債権というものを位置付けていただいているのかどうかということが一つでございます。
 それから、併せて御質問を申し上げたいのは、いわゆる実質的な労働債権と理解できる債権というのはほかにもございます。例えば請負とか、あるいは委任、あるいは準委任、要するに正に労務に対する、労働に対してきちっとその対価が支払われるという性格の債権、これは私は労働債権と位置付けていいと思いますが、こうしたものが現状共益債権に十分に加えられていないということは私は問題だと思いますが、そうした実質労働債権と理解できる請負、委任、準委任も共益債権に加えるべきだというふうに私は考えておりますが、法務省の御見解をいただきたいと思います。

○政府参考人(房村精一君)
 まず、労働債権の扱いでございます。
 これは、給料債権あるいは退職金債権については今回の改正において扱いは変更していません。
 それに関連するものとして扱いが変わりましたのが使用人の会社に対する預り金債権でございます。これは、預り金でございますので厳密には労働債権ではございませんが、従来、立法当時の経緯からその全額を共益債権といたしておりました。しかし、実体法上、先取特権等が与えられております給与債権あるいは退職金債権と比較いたしまして、退職金債権でも手続開始前六か月というような限定がございますのに、実体法上、先取特権もない一般的な貸金債権の性質を有する預り金についてその全額を共益債権とするということは法理論的に合理性を欠くのではないかということから、今回、共益債権とする範囲を限定いたしまして、手続開始前の給与六か月分相当額又は三分の一の多い額という、退職金債権と同じ範囲のものを共益債権とするという変更をしております。
 それから、実質的な労働債権の保護がどうなっているかという点でございますが、これは確かに労務提供に当たりまして請負、委任というような様々な法形式が取られることがございます。ただ、現行の会社更生法の解釈といたしましても、この労働債権というのは、形式的に雇用契約に基づく労務提供、その対価のみを指すのではなくて、実質的な雇用関係に基づく債権であるということを判断して労働債権としての保護を与えておりますので、その点はこの改正後も変わらない扱いでございます。

○鈴木 寛
 最後に、お願いします。
 今の点は是非きちっと告知をしていただきたいと思います。それから、いわゆる社内預り金について、これは改悪という私たちはちょっと解釈をせざるを得ないわけでございますが、この点については引き続き議論をさせていただきたいということ、それから、現行そうなるということであれば、それぞれの従業員は自衛をしなければいけませんので、きちっと告知をしていただくことは最低限お願いを申し上げて、私の質問を終わらさせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。


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