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  法務委員会 質疑

2003年03月25日 

○鈴木 寛
 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 それでは、本日の法案、債権譲渡円滑化法というふうに略しているんだと思いますけれども、その法律についての質疑に入らさせていただきたいというふうに思います。
 まず、提出人にお伺いをいたしますけれども、この法律が施行されまして五年弱が経過していると思いますけれども、本法律案についての施行状況を踏まえた評価についてお聞かせをいただきたいと思います。

○衆議院議員(山本幸三君)
 本法律によりまして、現在までの実績といたしましては、平成十三年度及び十四年度、これは主要行におきましてヒアリングをした結果でございますけれども、大体、千四百五十六債務者のうち七一%、千三十五債務者について本法が利用されているという状況でございます。つまり、この法律によりまして、金融機関等から整理回収機構やサービサーへ譲渡する不良債権処理の円滑な推進が大変図られているというように考えております。
 今後とも、政府の方針としても平成十六年度には不良債権問題を終結させたいという方針がございますので、是非この法律を引き続き使わしていただきまして、不良債権処理の円滑な処理を図りたいと思っておりますので、是非よろしくお願いしたいと思っております。

○鈴木 寛
 今はいわゆる譲渡をしようとする立場の側からの評価についての御説明があったかと思います。おおむね七割の方がこれを使われていて、このことによって譲渡をしようという側の立場からは意味のある、意義のある法律だということについての御説明があったわけでございますが、いわゆるこの根抵当権の設定者側からどのような評価をされているか、あるいはその辺の状況はどうかということについて、提出者の方々は何か情報を持っておられるでしょうか。

○衆議院議員(杉浦正健君)
 設定者、債務者が多いんですけれども、の立場からいたしますと、どうなるかということはケースによると思うんですけれども、おおむねと申しますか、ほとんどと言ってもよろしいかと思いますが、この法律に基づいて金融機関等から債権が譲渡される場合というのは債務者がほとんど破綻しているケースだと思うわけです。設定者は債務者と一致しない場合もあるんですが、いずれにしろ処理が必要だというケースと考えていただいてよろしいかと思います。
 それで、通常そういう場合の処理は、貸手と借り手、担保提供者が相談いたしまして、根抵当権、債権が確定していない場合は確定させる、相談の上、確定させる、そして登記を行う、そして譲渡をするという手続でやるわけでございます。ここに、今、山本先生が報告されたケースというのは、この法律に基づいて一方的にやったケースでございまして、大部分といいますか、かなりの部分といいますか、の処理は円滑に行われているのは普通でございます。私も弁護士時代、債権回収を一生懸命やっておりましたので、そういうケースを相当扱ったんですが、話合いで行われるものなんです。
 ですから、それができないというのはいろんな事情があるわけなんですけれども、一番極端な例は、債務者が夜逃げしちゃった、いなくなっちゃったと、相談もできないというケースがございます、かなりございます。そういうような場合にはこういうものは有効で、相談できないんですから確定しようがないということでございまして、譲り受ける側も、RCC等の債権、サービサーもそうですが、債権回収のプロでございますので、そういった点はできるだけ円満に話し合った上で譲り受けると、やむを得ない場合はこの法律を適用して譲り受けるということですから、さほどの不都合はないんじゃないかと。実際まだ起こってないんじゃないかというふうに思います。
 先ほども金融庁に聞いたんですが、そういう不都合、クレームなんか来ているかと聞いたら、特に聞いてはいないということでございますので、設定者あるいは債務者の側から見てもさほどの不都合は生じていないというふうに私は認識しております。

○鈴木 寛
 それでは、今回は、私が理解しておりますところによりますと、法律内容の単純な二年間の延長だというふうに理解をしておりますけれども、その理由と背景について、提出者の方から御説明を賜りたいと思います。

○衆議院議員(江崎洋一郎君)
 お答えいたします。
 先生も御承知のとおり、政府の「改革と展望」二〇〇二年度改訂版におきまして、この集中調整期間を一年程度延長すると、これが二〇〇四年度、平成十六年度までの延長ということで改革を集中的に推進するということでございます。その中で、この不良債権処理の加速化ということも同様にこの十六年度内に行うということでございます。
 したがって、引き続き、整理回収機構、RCCあるいはサービサーへの不良債権の譲渡を円滑に推進するということを目的に不良債権処理に必要不可欠であるという観点から、今回、平成十七年三月三十一日までの延長をお願いしている次第でございます。

○鈴木 寛
 先ほどの、その前の御答弁で、この法律が使われるケースは多くは破綻のケースで、いわゆる債務者がどこに行ってしまっているのかよく分からないというようなことによく使われて、それが非常に有効だったという御答弁があったわけでございますけれども、これから二年間もやはりこの法律というのは、その破綻先の債務の円滑な処理といいますか、そこに使われていくというふうな理解でよろしいんでしょうか。

○衆議院議員(杉浦正健君)
 金融庁が設けております債務者区分でございますと、破綻先とか実質破綻先が中心になると思います、対象としてはですね。そういうふうに思っております。

○鈴木 寛
 金融庁来ていらっしゃいますでしょうか。
 私が昨日お伺いしたこの背景で、金融庁のお話は、いわゆる破綻先の不良債権処理というのはかなり進んでいる、更に二年間これが必要なのは、健全行によるいわゆる不良債権の加速化といいますか、処理の加速化という要素もある、あるいはその方が強いんだというふうな御説明いただいたわけでありますけれども、今の提出者のお話のありました提案理由と金融庁の背景認識は一致しているのか、それとも付け加える点があるのか、そこの点はいかがでしょうか。金融庁の御認識をお尋ねしたいと思います。

○政府参考人(西原政雄君)
 お答え申し上げます。
 昨日、恐らく金融庁が申し上げたのは破綻金融機関、これからの債権譲渡、これを申し上げたんだろうと思います。いわゆる金融機関の破綻処理を円滑にするために、それを受皿金融機関に対して円滑に譲渡をしていくと、こういう処理が一方でございまして、これについてはだんだん終わり掛けていると。
 ところが、今、話になっておりますのは、健全な金融機関からいわゆる不良な債権、その債権がいわゆる破綻先ですとか破綻懸念先とか、そういったものについてのいわゆる譲渡、これがこれまでも不良債権処理として使われてきておりましたが、今後もこれは非常に重要であると、こういうふうに申し上げたんだと思います。

○鈴木 寛
 提出者の先生方はいずれもこの道の大変な御専門家なのでお伺いをしたいと思いますけれども、そもそも根抵当という制度、これについて、これは我が国に大変特徴的な制度であるというふうに私は理解しておりますけれども、この根抵当の持つ、何といいますか、いわゆる債権債務者の関係における、何といいますか、地位といいますか、その力関係といいますか、そういったことにどのような認識を持っていらっしゃいますでしょうか。

○衆議院議員(杉浦正健君)
 この根抵当権制度というのが我が国の産業経済の発展に果たしてきた役割は計り知れないと思います。
 要するに、根抵当権というのは、その極度額の範囲で貸したり借りたり、借りたり返したり繰り返すことができるわけでございます。抵当権というのは、額が決まっておりまして、一億円なら一億円。返済した場合は減っていきます。増減がございません。根抵当権の場合は返せば額は減るし、極度額の範囲内で債務者にとっては借りる、金融機関にとっては貸すと。ですから、担保として押さえている不動産その他が例えば一億円あれば、その範囲であれば回収も安心しておれるという制度でございます。
 これは、貸す側にしても借りる側にしても非常に都合のいいといいますか、非常にお互いの利益になる制度でございますので、実態としても、ビジネスの方々の利用する制度としてはほとんど根抵当権だと思います。抵当権を設定するというケースもちろんありますけれども、御商売なさっている方は金融機関から根抵当権の設定を求められるというケースがほとんどではないかというふうに思っております。
 例えば、家を建てた、住宅資金借りたという場合は、借りた金額一定していますし、返す条件も一定していますから、抵当権が随分多いですけれども、ビジネスの場合にはほとんど根抵当権ではないでしょうか。

○鈴木 寛
 今、提出者の先生からは、債務者にとっても債権者にとってもいい制度ではないかという御答弁がございました。私はそこはちょっと見解を異にいたしておりまして、この委員会は弁護士の先生方も大変に大勢いらっしゃいますので、先生方がどのようにお考えになるかということはそれぞれあるかと思いますが、弁護士資格を持っておられる先生方も多いと思いますが、私は東京の選挙区でございますが、いろいろな債務者の方々からお話を伺います。
 この根抵当権、私の理解では正に債務の付従性という問題がありまして、とにかく、いったん金融機関と取引関係に入りますとずっと抜けないと。正に日本の、戦後、経済を支えてこられたというふうにおっしゃりました。メーンバンク制というのがあって、そして、確かに戦後、日本が右肩上がりの成長期にはメーンバンク制というのは非常に有効に機能したことは私も否定をいたしません。しかし、産業構造、社会経済構造が変わって、そしてメーンバンク制度というものがいろいろな意味で制度矛盾、制度疲労を来しているというのが、住専処理以降の日本の金融政策あるいは金融構造の抱える問題点だというふうに少なくとも私は理解をしております。
 そういう中で、私は、この根抵当権という日本の制度が少なくとも一九九〇年の後半、九〇年代に入ってから、八〇年代以降、九〇年以降、非常に債務者にとって過大な負担になっている制度だというふうに理解をしております。
 そして、現行の民法は、きちっと根抵当権というものをどのように整理をするか、確定をしていくのか、あるいはその処理をしていくのかということで、そういうこともあって、恐らく債務者と債権者、この場合は金融機関と債務者に十分な協議を尽くして、そして債権譲渡をする場合にも現行の民法上の手当てがなされているんだというふうに私は理解をしております。
 そして、このいわゆる今日議題となっております譲渡円滑化法というのは、しかし日本の金融システムが大変だからということで、金融機関に限って特別の措置として、特例の措置として、こういう法律を当時、平成十年のときに作ったというふうに理解をしております。
 でありますから、やはり今もなお毎日のように私のところに、債務者、ビジネスをやっておられる方々から、この根抵当権が抜けないので大変なんだと、こういう声は非常に寄せられておりますし、それからこれはどうも政府・与党の言っておられる不良債権の処理といったときに、いわゆる不良債権のオフバランス化をしたら、これは処理だというふうに聞こえてならないわけであります、私は。
 私あるいは民主党が考える不良債権の処理というのは、結局、債務者の債務返済能力をこれ増強して、そしてきちっとその債務を返済していくということが筋であります。であれば、特に中小企業を中心としてきちっと事業を更に整理を、整理というのは、前向きに再編をして、そして債務返済能力を付けて、そしてきちっと借りたものを返していくというふうな社会インフラを整えるということ、その視点が私は不良債権処理の中で非常に重要だと思います。
 そういう中で、債務者がビジネスをもう一回再構築していこうといったときに、金融機関はこの根抵当権を盾に、とにかくオフバランス化することばかりに終始をするわけですね。そうしますと、実は最近は例えばコミュニティービジネスとかあるいはヒューマンサービスとか、いろいろな新規産業の芽はあります。ありますけれども、そうした金融機関の態度の中で、中小企業の皆様方あるいは新しいビジネスを起こそうという皆様方は新しい新規設備投資意欲を本当にそがれているというのが私は経済の実態だというふうに思います。
 そういう中で、もちろんこれは債権譲渡の円滑化の観点から大変に重要な法律であるということは認識をしておりますけれども、本当にそうした民法の特例として、しかも金融機関と、しかも金融機関がRCCなどに譲渡するというケースに限ってこの特例を延長していくという前提には、やはりそうしたことをきちっと法改正のたびに見直して、本当に単純延長でいいのか、あるいはそうした債務者の新しい新規事業をやっていこうという意欲に対して本当に今の金融システムが、あるいはその法的なシステムがうまくワークしているのかということを検証した上で、その法律をもう一回この国会で審議をしていくということが私は必要だということで、先ほどからるる御説明を、御質疑をさせていただいているわけであります。
 これは、要するに債務者の知らない間にその債権が、金融機関から借りていたと思っていた債権がこれ、RCCなどに譲渡されると、突然RCCに行っちゃったと、こういうことを認めましょうという法律なわけですね。
 で、私は、これ根抵当権を設定する、要するにこれは私は良くないことだと思います。なぜかといいますと、いわゆる銀行とその事業をやっておられる方というのはいろんな信頼関係の下で、いろんな理由があって、そして基本メーンバンクだということですから、そういう信頼関係の下でその貸し借りといいますか、金銭の貸借というものが発生したわけです。それで、そこには法律に書けること、契約に書けること、それから実態として申し上げれば、契約外の、しかし付随的な了解といいますか相互の了解という中で、そして銀行の支店も支店長の引継ぎでそういうことをるるちゃんと引き継いで、ここはこういう経過があってこういうことになっているんだと、よって根抵当を設定していただいているんだと。その裏には、これメーンバンク制があって、借りる側は最後は銀行の言うことを聞かなきゃしようがないですから、銀行の支店長から根抵当権付けてくれと言われれば分かりましたと言わざるを得ないですよ。そういうことものみ込んで貸し借りが発生しているわけですね。
 しかし、今多くの企業の方、事業をやっておられる方の不満は、そうした昔の約束、昔の事情、昔の信頼関係はどこかに行っちゃって、いわゆる法律関係だけが切り取られて、そして今まで顔も見たことないようなRCCというところに行ってしまうと、突然RCCからいろいろ言われてと、このことについて大変な不安を持っておられるわけです。
 そういう意味で、これはやはり金融というのは、もちろん法律も重要でありますけれども、やっぱり現場のことを分かっている、信頼関係のできている当事者で何とか処理をしてくる、まあそのことは今も前提だということはお話をいただきましたけれども、しかし法律というのはこれぎりぎりのところのせめぎ合いがやっぱり決定していくのが法律ですから、そういう意味では法律というのは私は大変大事だというふうに思っておりますけれども。
 そういう観点で、実態からより乖離した、しかも銀行はその貸し手のあるいは借り手の事業の育成ということも事業目的の一つであります。もちろん、その当事者の金融機関の健全性ということもこの目的の一つでありますが、二つの目的を追い掛けているわけですね。しかし、RCCというのは単にいわゆる不良債権の処理ということを目的とした機関でありますから、当然それによって行動も違ってくるわけであります。
 そういう意味で、私は本当に単純にそうした議論を留意せずに二年間延長するということについては、我々はきちっともう一回問題意識を持つべきではないかというふうに思っておりまして、そうした私の議論を踏まえて、再度この法律を単純に延長する、そしてそのことが本当に債務者の利益という観点から大丈夫なのかどうかということについてお答えをいただきたいと思います。

○衆議院議員(山本幸三君)
 私は、先生のおっしゃったこと、全く同感であります。これを当初立法いたしましたのは、平成十年に私どもの金融再生トータルプランというのを作りました。そのときに、不良債権処理を金融機関からもやらなきゃいけない、しかしそれは同時に借りている人のためにもなるような形でやるべきだという基本的な考えでスタートしております。したがって、そのときに一緒にやったのがサービサー法とかあるいは競売の手続の簡素化、あるいはちょっと一年遅れましたけれども特定調停法、そしてこの債権譲渡法案ということで、そういうパッケージの中の一つなんですね。
 で、基本的な私の考えは、銀行だって責任があるんだから債権放棄しろと、そして再生できる企業はそういう債権放棄をするということにおいて立ち直れるようにやっていくべきじゃないかと、そういうことを念頭に置いていろんなやつを作ったわけでありますが、その一環として、ただ銀行は、私どもいろいろけしからぬというような話を随分したんですが、彼らから見れば簡単に債権放棄すると責任問題になるとか、あるいは大量にあるんで一挙になかなか出すと利益にも影響するとか、そういうことがありまして、そう簡単にうまくいきませんでした。ただ、こういう手当てをしておいてそれじゃもう銀行からとにかく外して、そういう債権放棄だと、交渉に乗りやすいところでやった方が早いんじゃないかと。
 私どもは、RCCが一つありましたけれども、その後サービサーというのを作って、実際にいろいろ聞いてみますと、サービサーに行ったら話早いんですね。じゃ、もう幾ら払うからあとはチャラにしましょうというようなことが相当スムーズに進むようになっています。
 RCCは、これは個人的なあれで申し訳ないんですけれども、まだがちがちでちょっと問題あるということは十分に私も承知しておりますから、それも随分厳しく言いまして、だんだん今RCCも再生、回収だけじゃなくて債権放棄もある程度応じると。そして、再生に図るというようなことも努力していますので、そういう全体のパッケージで考え方は基本的には私は同じだという気持ちでやっておりますので。
 それで、これはまたその当時もおっしゃった根抵当権の問題もあるし、元々民法の原則のところがこんな不良債権出て、こんなふうに債権を譲渡するというようなことが想定してなかった時代の法律ですので、これはやっぱり本体の方で変えていくのが筋だということで、実は今回の民法改正法案にもこれはもう本体を変えるということで、いずれこれは吸収されるという形になっておりますので、それまでのつなぎということで是非御理解を賜りたいと思います。

○鈴木 寛
 終わります。
 


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