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 法務委員会 質疑 〜法科大学院教員派遣法に関して〜

2003年04月22日 

○鈴木 寛
 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。法科大学院教員派遣法について御質問をさせていただきたいと思います。
 昨年秋の臨時国会で、いわゆるこの法科大学院関連法が通りまして、今ロースクール、法科大学院の開設に向けて行政の方々も、そしてロースクールに携わる、法科大学院の設立に携わる現場の方々も大変に御努力をされていらっしゃることに敬意を表したいと思いますが、今日はまず最初に臨時国会、前回の臨時国会でこの法務委員会で附帯決議が幾つかなされてございます。その附帯決議がきちっとその取組がされているかどうかといった辺りから質問をさせていただきたいというふうに思いますけれども、再三にわたり、私ないし同僚の委員からも御質問をさせていただいております。
 附帯決議でもございます資力の乏しい者にも公平に就学の機会を確保するとともに、法科大学院在学中に充実した教育が受けられるよう、法科大学院の学生に対して、奨学金制度の拡充や民間資金を活用するなど新たな公的財政支援策の創設に努めることということが附帯決議でも決まっているわけでございます。
 それで、やはりこの学費の問題というのは何度強調し過ぎてもし過ぎることはないという重要な問題だと思っています。日弁連がこの一月にアンケートをいたしておりまして、年間の授業料が百万円を超えると五割の志望者がもう法科大学院の進学を断念をすると、こういうアンケートが出ております。これは奨学金の貸与がない場合でありますけれども。
 で、さらに、そのときの質疑でも、大体平均が二百万円台になるという、こういうお話でございましたが、法科大学院の学費ですね。年間授業料二百万円と仮定すると、年間百万円の奨学資金を貸与しても、これ大体今これぐらいはもらえることになっているわけでありますが、百万円の奨学金を貸与しても約八割が進学を断念、まあ要するに返さなきゃいけないですから、断念すると。年間二百万円を貸与しても、要するに丸々奨学金が借りれるとしても、なお三分の一の方々が進学を断念をせざるを得ないと。これは現下の不況でなかなか学費支援者、いわゆる親御さんを中心とする学費支援者の経済状況というのが悪化していると。しかも、法科大学院の場合は若くて二十二歳から大体二十五歳と、そこ、いろいろ浪人とか留年とかあればそれが二十六、二十七と、こう上がってくるわけでありますから、そういう年齢の問題も両方相まって、こうした大変に学生あるいはそれを目指す学生の皆さんにとっては極めて経済的問題というのが重くのし掛かっているということを表しているというふうに思います。
 で、私の質問は、正にこの法科大学院で学ぶ学生の経済的負担の問題についてお伺いをしたいわけでありますが、方法論は二つあると思います。授業料を安くするということと、それから学生に対する奨学金をより手厚くする、こういうことでありますが、これを一つ一つ分けて御質問させていただきたいと思いますが、まずは授業料、いわゆる学費自体の抑制を行うために、現在、法科大学院向けあるいは専門職大学院向けの助成金あるいは交付金をどのようにより充実をさせていくのかと。この点は大学関係者からも強い強い要望が出ているところでございますが、この検討状況についてお話をいただきたいと思います。文部科学省。

○政府参考人(清水潔君)
 お答え申し上げます。
 今、ただいま委員御指摘のように、法科大学院における進学機会の確保という観点から、学費の問題は非常に重要な問題であるということは私ども認識しておるところでございます。
 ただ、今現段階におきましては法科大学院はこの六月の末が設置認可の申請を、そして十一月の末に設置認可をというふうな状況でございまして、各構想されている法科大学院がどのような学費の設定をお考えになっているかということは私どもは把握しているわけではまだございません。
 しかしながら、法科大学院は御案内のように正に法曹養成に特化した教育を行うものとして、とりわけ少人数の教育等々、様々な観点から通常の大学院に比べて教員組織その他の充実が求められているところでありますし、また、そういう意味では大学側の負担というのも大きいわけでございます。仮に、これが受益者負担というようなことで、そのまま授業料に転嫁されるという場合には授業料の高額化を招き、また進学の機会にも大きな影響を与えることになるであろうと、こういうふうに思っております。
 ということでございますけれども、法科大学院に対する私学助成の在り方ということにつきましては、実はこの法科大学院の設置が先ほど申し上げたようなスケジュールという中で、各方面での様々な御意見あるいは各大学の検討状況というものを十分に踏まえさせていただきまして、この夏の概算要求に向けていろいろ具体的に今検討させていただいているというふうな状況でございます。

○鈴木 寛
 六月にならないと概要が分からないというお話でございましたが、正に今、審議官おっしゃったように、この夏の概算要求が本当に正念場だというふうに思います。次行われます国会は恐らく秋になると思いますから、本国会でやっぱり国会の意思としてきちっとその問題について来年度の予算要求に反映をさせていただきたいということを強くお願いを申し上げます。
 それでは、次に、この奨学金の方、正に学生に対してどういう支援を行っていくかと。この中心が奨学金制度だというふうに思っておりますが、これについて少し細かく伺ってまいりたいと思います。
 現在、日本育英会、これは学生支援機構に変わるんだと思いますが、日本育英会の貸与の上限度額というのは月額の十三万円だというふうに理解をいたしておりますが、先ほども申し上げましたが、二百万円貸与してもまだ三分の一ということでありますが、ですから最低限二百万円、年間、この貸与を受けるということは、これは必要最小限のことだというふうに思います。そういう観点で、私は月額十三万円を少なくも二十万円程度には引き上げるべきではないかというふうに思いますが、まずはこの貸与上限額の引上げ、もちろんその枠の中でどれだけ使うかは学生の判断でありますが、制度論としては上限枠を引き上げておくべきだと、こういうふうな問題意識を持っているわけでありますけれども、まず貸与上限額についての検討状況をお聞かせをいただきたいと思います。

○政府参考人(清水潔君)
 奨学金についてのお尋ねでございます。
 先生御案内のように、大学院修士課程については無利子貸与奨学金と有利子貸与奨学金というのがございます。
 無利子貸与奨学金については、十五年度におきましては貸与年額を二万四千円増額し、また貸与人員を一千人の増員を図りました。有利子貸与については、御指摘のように現在五万、八万、十万、十三万から選択し、十三万の場合ですと年額百五十六万というような状況になっているわけでございます。
 なお、修士課程の学生について申し上げさせていただきますと、貸与率自体は学生数の四割というふうな状況でございますが、全体として貸与基準を満たす者については希望者はほぼ全員が貸与されているというふうな現況にございます。
 法科大学院の奨学金、ただいま上限額ということについての御指摘でございますけれども、いずれにいたしましても、経済的な理由によって学ぶ機会が失われることがないという観点に立って、先生御指摘の事柄も含めまして、私どもいろいろな方策についても今現在、今度の概算要求に向けて鋭意検討しておると、こういうふうな状況を御理解賜ればというふうに思います。

○鈴木 寛
 無利子の話は次伺おうと思ったんですが。
 私も、まず有利子について、少なくとも大学院についてはこの二年間、私も何度も何度も文教科学委員会で申し上げさせていただきまして、その御意向を受けて希望者全員奨学金制度について、大学院についてはかなりの程度、実効が上がっていることについては大変評価をいたしております。
 しかしながら、先ほどの趣旨は、有利子についてまずきちっと上限を引き上げていきましょうということです。それから、やはり無利子か有利子かというのも、これ非常に学生にとっては大事なポイントでございまして、今のところまだ無利子貸与の枠といいますか、あるいは要件というものがもう一段緩和をされると大変に効果的であるということの問題意識の下に、今御答弁ありましたので、無利子の貸与枠の拡大、貸与者数の拡大、それからその要件の緩和ということについては、これまた特段の御配慮といいますか御検討をお願いを申し上げたいと思います。
 その際に、いわゆるいろんな基準を作る上で、せっかく学校教育法まで変えて、いわゆる専門職大学院制度という制度をわざわざ作ったわけですね。それまでも実態上は、社会人向けの大学院というのはいろんな大学で、それぞれの大学の御努力によってできていた。しかし、わざわざなぜ専門職大学院という法律の枠組みを作るんですかということが、昨年の臨時国会の学校教育法の議論のポイントの一つだったと思いますが、やっぱりそういった意義を生かすためにも、この要件基準を緩和する中で、特に社会人、社会人が学ぶ可能性といいますか、要するに自立した学習者が学ぶ可能性の高い専門職大学院においては、こうした法改正の意義をより生かしていくように御努力をいただきたいというふうに思っております。
 それから、あわせまして、現在、日本育英会が学生支援機構に変わろうとしています。その中で、学生支援機構の中でいわゆる債務保証という仕事が位置付けられているということは私も一定の評価をさせていただいているわけでございますけれども、育英会からの奨学金、いわゆる公的奨学金のほかに、民間からのいわゆる教育ローンというものをどのように活用をしていくのかということも非常に重要なポイントになろうかと思います。
 その際に、民間金融機関が、まだいわゆる返済資力が十分でない、特に本人が教育ローンを借りるといった場合には、現行の非常に厳しい金融庁監督下の中では民間金融機関もなかなか、まだ海のものとも山のものとも分からない、しかし志はあって勉学の意欲はある若い人にお金を貸すというところにいかない。これは日本社会全体のいろんな問題がここにも一つ露呈しているんだと思いますが、そういう中で、せっかく改編、改組されて更に機能充実をさせていこうとされている学生支援機構の措置として、法的な措置はある程度担保できましたが、具体的にそれをいわゆる政府保証ローンという形で御検討もいただきたいと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。

○政府参考人(清水潔君)
 御指摘のように、奨学金と似たものでございますけれども、今、教育ローンということで、例えば国民生活金融公庫や銀行、労働金庫等によって、学生を持つ親を対象とした一時的資金融資として教育ローンが幅広く実施されているところでございます。
 今御指摘の教育ローンに対する政府保証制度につきましては、先国会でも御議論がございましたように、その先例としてのアメリカでの状況でございますとか、あるいは官民の役割分担でありますとか、受益者負担の観点、そのほかには、厳しい財政状況での新たな財政支出の可能性等も勘案しながら、どういうことが可能か、平成十六年度概算要求までに財政当局始め関係省庁とも十分相談してまいりたいというふうに考えております。

○鈴木 寛
 今日は財務省はお見えですね。
 今、民間ローンに対する政府保証の話を文部科学省からいただきましたが、なかなか民間金融機関も、厳しい金融庁の監督の下で、こうした創造的な融資制度を拡張するという方向にはなかなかエネルギーが行っていないことも事実でございます。そういうときこそ正に、今、審議官から御答弁の中にもございましたけれども、国民生活金融公庫の教育ローンというのは、制度が拡充をされていく、この数年間で文部科学省、財務省の議論の中でどんどんしていかなければいけないと思いますが、しかしもう入学する人がいるわけでありまして、そういう人にとってみれば、まずは国民生活金融公庫のローンというものは非常に重要な支援策の一つになるというふうに思います。
 現状は、これは国民金融公庫の貸出し上限は二百万円ということになっておりますし、それから実態上は、貸出しの相手は本人ではなくて九九%が親でございます。この点は私はやはり速やかに改善をすべきではないかというふうに思っておりまして、具体的に申し上げますと、貸出し上限を二百万円から例えば五百万円ぐらいに引き上げるとか、あるいは貸出しは親ではなくて本人が貸出し先になるように、こうした質、量ともの、あるいはその保証人などを緩和するとか、いわゆる国金の教育ローンについても、今回のロースクールあるいは法科大学院、専門職大学院制度の発足に合わせて、一層の拡充を御検討をお願いを申し上げたいと思いますが、財務省の御答弁をいただきたいと思います。

○政府参考人(村瀬吉彦君)
 お答えいたします。
 国民生活金融公庫の教育ローンということでございますけれども、先生も御案内のとおり、最近の行革論議の中で、一昨年の十二月に策定されました特殊法人等整理合理化計画というのがございまして、これを踏まえて厳しく見直すというようなことでございまして、実は貸付規模を縮小しております。こういう状況でございますと、やはり貸付限度額の引上げにつきましては、やはりそういった政策金融機関の改革あるいは官民の役割分担といった観点を踏まえた上で検討しなければならない課題ではないかなというふうに考えております。
 それからもう一つ、貸出し条件の緩和ということで、今、先生、学生本人に対する貸付けについてお触れになりましたが、国民生活金融公庫といいますのは、民業補完の金融機関といたしまして、財政投融資資金からの借入れ等を原資といたしまして学生等が必要な資金を貸し付けるものでございまして、仮に返済がなされない場合には国民負担によってその損失を補てんするということになってしまうわけでございます。したがいまして、学生本人に対する貸付けにつきましても、現在におきましても学生本人であることをもって貸付けを拒否するという扱いにはなっておりませんけれども、いざ、その貸付けを実施する際になりますと、やはり先ほど申しましたような返済の確実性を確保する観点から、借入人の申込み時点における返済能力というものをやはり考慮せざるを得ないというものであろうと思っております。
 ただ、いずれにいたしましても、財務省といたしましては本院の決議等を重く受け止めておりまして、法曹志望者が経済的理由からその道を断念することのないようにするというその必要性は十分認識しておりまして、国としてどのような関与を行う必要があるのか、あるいは官民の役割分担や受益者負担の観点も踏まえながら、今後具体化されます法科大学院の実情を見ながら、関係機関とよく相談しながら所要の措置を検討してまいりたいと思っております。

○鈴木 寛
 なかなか財務省さんは固いんですよ、委員の先生方、今お聞きいただいて。
 それはいろんな事情があってやむを得ない部分もあるのかもしれませんけれども、全体、今、行政改革の中でいろいろなことが縮小の中にある中で、しかしやっぱり二十一世紀の基盤となる教育とか、あるいは正に今回は司法改革の非常に重要な要素の一つとして法曹人材の育成の在り方と、こういうことで我々議論をしてきているわけであります。そういう意味で、文部科学省さんは先ほどの奨学金の議論などで中心的に頑張っていただいて、大蔵省、財務省も一定の御理解をいただいて前向きの答弁をいただいたというふうに理解いたしておりますけれども、これは是非、文部科学省、財務省、国家的観点から取り組んでいただきたいと思います。
 あわせまして、今日は正に司法制度改革の責任をやっておられます森山法務大臣、副本部長ということでもあろうかと思いますが、司法制度改革本部もこの問題を文部省任せにすることなく、正に国全体、内閣全体の問題として、是非、財務大臣にも督促をし、財務省にも督促をし、この問題、非常に重要な課題でありますので、内閣全体としてきちっとお取り組みをいただきたいということをお願いを申し上げたいと思いますが、司法改革本部、何か御意見、御答弁があれば伺っておきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(森山眞弓君)
 司法制度改革は内閣挙げての仕事の一つでございまして、非常に、これからの進捗状況、みんなが努力してやっていかなければいけないと考えておりますが、御指摘のような問題も、各省庁にまたがります、例えば奨学金や学生、教育のローンなど、学生に対する各種の支援制度を充実させるということが必要であるということはみんな共通した認識でございまして、このような趣旨にかんがみまして、司法制度改革推進本部を中心として現下の情勢の中でいろいろな措置を可能な限り考えていきたいというふうに思っています。

○鈴木 寛
 どうもありがとうございます。
 本当に、法科大学院制度の問題は、実は高校生も含めて大変関心を持っています、あるいはその親御さんも含めまして。そういう意味で大変にこのところ重要だと思いますので、今は法務大臣で、かつ副本部長でもあると思いますけれども、内閣を代表して前向きな答弁をいただきました。是非、来年度予算に向けて一層のお取り組みをお願いを申し上げたいと思います。
 それでは、その附帯決議の次のポイントに移りたいと思いますが、附帯決議では「法曹実務家が法科大学院の教員として安定的かつ継続的に参画することを可能にするため、所要の措置を講ずる」と、こういう附帯決議がございます。
 今回、議題となっておりますいわゆる法科大学院教員派遣法というのは、正にそれについての法案だというふうに理解をいたしておりますが、今回、法案を見ますと、裁判官はパートタイムでしか、パートタイムでロースクールに行くと、こういうことになっております。検察官は両方の、パートタイムとフルタイムと、この両方の道ができていると、こういうことで、一見するとこれはアンバランスなことになっているわけであります。これはいいとか悪いとかということじゃなくて、まず事実としてアンバランスになっておりますが、これはどうしてこういうことになっているのかを御説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(山崎潮君)
 ただいま委員御指摘のとおり、検察官それから一般公務員につきましてはパートタイム型とフルタイム型がございます。裁判官につきましてはパートタイム型だけと、こういうことでございます。
 裁判官につきましては、裁判を行う、いわゆる開廷日と言われておりますけれども、これが曜日によって固定をされているということでございまして、そういうような特殊な勤務形態があるということから、本来の裁判官の職務を行いながら法科大学院で教育を行うことができると、そういうことが可能であるという態様であるということでございます。
 それが一点であるということと、もう一点は、裁判官につきましては報酬の減額禁止などが憲法上定められているわけでございまして、そういうような身分保障の関係から、フルタイム型の構成を取るということになりますと給与を一切支給しないという形を取らざるを得ないということになりまして、裁判官の身分保障との関係でそういう対応が果たしていいのかどうかと、相当ではないんではないかということも配慮にあったわけでございます。そういうことからパートタイム型のみの採用ということになったわけでございます。
 御案内のとおり、この法案でも、その関係で給与は裁判官に全額を支給をいたしますけれども、本来、法科大学院から報酬を受け取るべき金額、これにつきましては、受け取らずに国庫に納入をしていただくというバランスを取っているということでございます。

○鈴木 寛
 いろいろな憲法上の問題などがあるということは分かりました。
 ただ、週の間で開廷日とそれ以外があれなのでパートタイムで十分だということの消極的なことではなくて、恐らく附帯決議が予想、願っておりましたことは、法曹実務家がやはり学生さんに直接触れて、そして教育が行われるということが、新しい法曹を、法曹人材をつくるという観点で望ましいので、そういう意味で、裁判官がということじゃなくて裁判実務をたけている方が、ここは今の言い方をあえて変えたのはこの後の議論のポイントになりますので今正確に申し上げたんですけれども、少なくとも裁判実務に大変に通じておられる方がロースクールに行く、このこと自体は私は大変望ましいことだと思っておりますし、附帯決議もそういう趣旨で附帯決議をしたんだと思います。
 そういう観点で、裁判実務に通暁された方が、それは多くは裁判官経験者、あるいは裁判官、現職裁判官と、こういうことになると思うんですが、その方が法科大学院に事実上、検察官と同じような程度でといいますか、頻度でといいますか、あるいはコミットメントで行くということは、法律論は法律論として、それ以外に何かこういうふうな方法があるんだという、その身分論はよく分かりましたので、実態としてつい直近まで裁判官をやっていた人がロースクールにどういうふうに、きちっと人材教育ができる少なくともフレームワークは、スキームは用意すべきだと思いますので、その点について何か御答弁があれば、あるいはそのいろいろな知恵といいますか、方策があればお教えをいただきたいと思います。

○政府参考人(山崎潮君)
 ただいま御指摘の点、大変重要な点でございますけれども、仮に考えられる方法といたしまして、複数の裁判官をもってフルタイム型の要請にこたえるという方法もあろうかと思いますし、また場合によっては現役を十分に体験をしたOBの、裁判官OBの弁護士さんにお願いするとか、そういう方法で大部分の場合は満たされるんではないかというふうに今考えております。

○鈴木 寛
 その点、是非、裁判実務の経験者が、少なくとも制度論としてはあるいはスキームとしては法科大学院により多く派遣する道だけはきちっと付けていただきたいというふうに思います。
 それで、今日の主たる議題であります、正にこの裁判官、検察官の派遣の問題について、少し、実務経験者が専門職教育、正にこの法科大学院のような場で活躍をしていただくことの意味ということを少し掘り下げて考えてみたいんだと思います。もちろん、そのことは院、委員会含めて、附帯決議で決議をしたように、あるいは今回の法律を出してこられたように、関係者の皆様方は意義深いことだということで推進をしていこうと、こういうことなんだと思いますが、どうもその目的とか意義というところが少し若干きちっと押さえておかなきゃいけないのかなということを思いますので、以下の議論をさせていただきます。
 優秀な法曹を養成をするために実務家が関与するということなんですが、その優秀な法曹の意味ですね。私は、きちっともう一回とらえ直したいと思います。優秀な法曹というのは、単に実務がきちんとこなせるということだけではないんだと思うんです。それはもう当然のことでありまして、むしろ優秀な法曹というのは、午前中も正に名古屋刑務所の問題が議論をされました。要するに、どんな政策分野でもどんな実務分野でもそうでありますが、百点ということはないわけであります。必ず現場にはいい点と悪い点があって、そして現状の実務あるいはその根っこになっている制度、その問題点がどこにあるのかということをやっぱりきちっと把握をしてそれを不断に改善をする、あるいは改革をすると、こういう人材を私は優秀な人材だと言うわけでありますし、正に司法の現場で現在の司法の実務あるいはそれを支える制度、そこに、どこに不備があるんだろうか、どこにまだ改善点があるんだろうかということを事前事前に自発的に見付け出して、そしてそれを改革をしていこうと、こういう人材を私はこれは養成をしなければいけないというふうに思っております。
 そういうことからいいますと、もちろん実務がよくできるということも重要なわけでありますけれども、一番ベーシックになるには、やっぱり法曹人としてのリーガルマインドということを私たちもう、学生時代もうしつこく言われました。そのやっぱりリーガルマインドということをきちっとできているのかと。それから、やっぱり基礎とか基本とか、そのベーシックにある、あるいはバックにある思想とか体系とか、そういったものを裏付けがきちっとできてこそ、そうした創造的な法曹というんでしょうか、イノベーティブなローヤーというのが私はできるんだというふうに思っておりますから、法律の世界というのはイノベーションのないというふうに世間に思われているかもしれません、とんでもなくて、一番私はイノベーティブであるべきであると。特に、司法制度改革を行っていくというのは、正に今、法曹の世界にこそ、この司法の世界にこそ、イノベーションあるいはイノベーティブな人材が求められているんだろうというふうに思っております。
 そういう意味では、やっぱりそういう人材を養成する教員というのは、教員自体が正にリーガルマインドを持ち、そして基礎、基本ができて、そしてそれをきちっと制度論に打ち立てられて、そして制度論の不備を見付けて新しい制度論を提案し、そしてそれをさらに実務に具現化していく、こういった人材でなければそういう人材を育てることはできないわけでありまして、私は、検察官、裁判官といえども、やっぱりアカデミックなバックグラウンドというものが必要だと思いますし、アカデミズムというのは、正に批判的精神と科学的な実証あるいは検証に基づく分析ということがやっぱりアカデミズムの基本にあるんだと思います。
 そういう意味で、検察官、裁判官の皆様方の、個人として見れば非常にイノベーティブで、そして自分のやっているお仕事にも非常にそうした科学的な分析的な批判的な目を持ちながら取り組んでおられる方が一杯いらっしゃることは私も承知をしておりますし、大変に敬意を払っておりますけれども、果たして今回のいわゆる派遣のスキームというものが、そうした個々人の裁判官、検察官も含めてですよ、そうした個人のそうしたアカデミックな素養とか、あるいはリーガルマインド、あるいは正義を本当に愛するといいますか大事だと思うそうしたマインドが本当に存分に引き出せる、あるいは、そのことが大学で学ぶ、大学院で学ぶ学生に伝わるフレームワークになっているのかどうかなというところを少し危惧をするわけでございます。
 もちろん、そういう意味で、更に申し上げますと、この裁判官あるいは警察官の方々も、非常に純粋な学生の前に立って、今まで自分たちがやってきた実務というものをもう一回検証し直し、整理し直し、そして体系化し直し、ということは、更にもう一回現場に復帰されたときに、より良い司法現場を実現するという意味で、恐らく御本人にとっても物すごくいいことだというふうに思うわけであります。
 それで、問題は、やっぱり派遣のされ方、繰り返しになりますけれども、それで、特に私は何を問題視しているかといいますと、今回の法案では、検察官の場合も裁判官の場合も、いずれも身分を保有したまま派遣をされるわけですね。更に申し上げますと、裁判官の場合はお給料も全額、その親元という表現がいいのかどうか分かりませんけれども、派遣元が見るわけであります。それから、検察官の場合も足らない分は親元が出すと、こういうことでありますので、身分も派遣元に残っている。そして、更に申し上げると、給料の負担も全額ないし一部、派遣元が支給をされながら派遣をされると、こういうことになっているわけであります。
 幾つかの身分上、身分保障上、憲法上、裁判官の場合は憲法上、それから検察官の場合も実態的に給与が下がってしまうと。そういう中で、なかなか本人の同意を取って派遣をするということが厳しい現状の中で、やむを得ない制度設計になっているということはよく分かるんではありますけれども、実は、このことを私は大変危惧いたしますのは、私自身、行政官でありました。
 ちょうど十年前辺りから総合政策学部という正にポリシースクールというものができ上がってまいりました。ポリシースクールでも正に実務、政策形成経験のある人材を欲しいということで、いわゆる一般公務員の大学現場、経済学部とか法学部とかあるいは行政を教える学部などへの派遣というものはどんどんこの十年間進んでいたんだというふうに思いますが、そういうふうないわゆる役所がコントロールをする人事と、それから、私の場合はちょっと特殊でございまして、私自身、行政官をやりながら学会にも所属をいたしておりまして、個人の立場で様々な共同研究を行ってまいりました。
 そういう中で、お付き合いのありました中央大学の総合政策学部にまずはパートタイムで行くことになりました。私が所属しておりました通商産業省というのは非常に人事に寛容でございますので、行きたいと言ったら、ちゃんと国家公務員法百四条の許可を取ってくれまして行かせてもらいました。両方からお給料を、数万円でありますけれども、いただきました。
 しかし、そのときに痛感したのは、私は、たまたま、経済産業省、昔の通産省でありますが、すんなりとこれを認めてくれたわけでありますが、そのときに、やや細かくなって恐縮でありますが、中央大学総合政策学部はいろんな省庁の人に来てほしいというようなオファーを、かつ個人を指名をして、それは要するに共同研究会のメンバーのより多くの、複数のメンバーに来てほしいと、こういう要請があって、そして人事当局に諮りました。私以外の省庁に所属している若いメンバーもそのことを諮りましたけれども、結局、制度的にすんなりと認められたのは通商産業省だけだったわけですね、であります。
 それから、ちょっと話が長くなって恐縮でございますが、そこで若い研究者と、それから若い行政官と集まりまして、「中央省庁の政策形成過程」というプロジェクトをやりました。そして本をまとめました。これは今、行政学の教科書にもなっておる本で、いい仕事をできたと思っているんですけれども、そのときに、その共同研究に参画をすること、あるいは中央大学に出入りすることを差し止められたといいますか、やめさせられた省庁が何人か、何省庁かございます。これは要するに、同じ霞が関の中でも一番通産省がルーズというか寛容というか、なわけでありますけれども、あえてここでは名前は申し上げませんけれども、ここに来ておられる役所の中でもそういうところに出入りしてはいかぬという御指導を受けて、これは中央省庁の政策過程の第一巻に出ていない省庁というふうに御理解をいただいたらいいと思いますが、続編が出まして、その省庁は今、名誉復活されていますが、しかし当時は全省庁に声を掛けて、あそこに出ていない省庁というのはそうしたことに対して非常に消極的だった省庁であります。
 そういうことからかんがみますと、結局、身分を残して、当時であれば関係省庁の、当然これ、学問的研究でありますから、各省庁の政策形成過程の問題点を指摘せざるを得ないわけであります。そして、ここに、当然、通産省もこういうところに問題があると、大蔵省もこういうところに問題があると、しかしこういうふうな改善点があるんだと、こういうことを本でまとめたわけでありますけれども、そういうことができなかったわけですね。
 こういうことを私は痛感をしたものでありますから、やはり身分を残したままの出向は難しいなということで、その次は今度はフルタイムで慶応大学へ行ったわけでありますけれども、その実績に、あるいはその経験にかんがみますと、今回の検察官、裁判官というのは、大学にとって、ロースクールにとっては正に生殺与奪の権能を持つ、もう本当に雲の上の人といいますか、大変に怖い人なわけですね。そういう人から派遣をしてもらうと、しかもその身分を残したまま検察官あるいは裁判官が来るといったときに、本当に正常ないわゆる研究とかあるいは正常な教育というものが、どことは言いませんけれども、一般の省庁ですらああだったと。まして、検察庁ですから、本当にまず派遣された教官の学問と教育の自由というものが果たしてきちっと確保されるんだろうかどうかと。
 それから、これは二つ論点があると思いますが、法科大学院、私たちのグループのように、まず勝手に大学と話を付けてきて人事課とか秘書課に言うというのはやっぱりレアケースでありまして、現在、行政庁から各、特に国立大学の派遣の状況を見てみますと、ある意味では固定ポスト化しています。例えば、経済産業省が何とか大学経済学部に固定的に人事ローテーションの一環で人を送り出していると。何か、出張所というか島があるわけですね。何とか省が東大にポストを作ったから、うちもよこせとかといって介入をしてきたりという話も現に起こっております。
 これは、決して私は検察庁の出先機関、教育機関をロースクールに作るということではあってはいけないんだろうというふうに思っておりまして、今長々と私の実体験に基づく今回の法律の懸念を御紹介あるいは御質疑をさせていただいているわけでありますけれども、そういう意味で、法科大学院といわゆる派遣先の法務省あるいは裁判所、あるいはそれを仲立ちするといいますか文部科学省、この関係者が、条文の書き方は、派遣の要請に対し相当と認められるときは法科大学設置者との取決め内容を裁判官ないしは検察官に明示して、同意を得られたら、期間を決めてそして派遣できると、このように書かざるを得ないということは分かります。分かりますけれども、実態上として、これは十二分に、十分に、普通にやっていたら、向こうは萎縮していますから、ロースクール側は、これは検察官を受け入れて何か、検察官にもいろんな方がいます、教育のお上手な方、そうでない方。
 それから、こういうこともあります。行政庁からある大学に派遣をされていた方で、最近は大学は教員の評価というのをやります。教員の評価をやりますと、しかもそれがある程度公表されます。人気のゼミとかそうでないゼミとかというのはホームページ見れば一目瞭然とか、こういうことになるわけですね。ある省庁から派遣された先生が、もうこれは私は教育のあるべき姿だと思いますが、どういう理由かよく分かりませんが、学生からの評価が非常に悪かった。それが怒ってしまって、もうおれは帰るとかという、こういう出来事もあったりして、いろんなことがこれ起こるんだと思います。それから、いろんな理由で、派遣されてきた検察官あるいは裁判官を任期途中でありますが、いろんな事情でやっぱり取り替えてほしい、替えてほしいというようなことも、これやってみないとよく分からないところもありまして、恐らく両方が手探りだというふうに思います。
 そういう意味で、私が申し上げたいのは、大学側のそういう教員派遣についての、まず派遣の前段階における事前の選択権というものがどれだけ確保されているんだろうかどうかと。この方はどうも、どうもといって、ちゃんと、よりこういう方を派遣していただけないでしょうかということを大学側がちゃんと言えるのかどうかですね、そういう選択権。あるいは、今までは送っていただいたんだけれども、内部でそういう検察関係あるいは裁判官関係の人がかなり人員の手当てができたので、もう結構ですと、あるいは取りあえずちょっと検察庁からの派遣はお休みをさせてくださいというような、拒否権と言ったらおかしいんですけれども、そういうことが、あるいは途中変更の申出とか、こういうことは相当役所側が注意をして、留意をして聞いてあげないといけないんだというふうに思います。
 そういう意味で、関係省庁と法科大学院当事者とのコミュニケーションの在り方と、これはどういうふうに今現状なっていて、かつ今のような懸念というものがどの程度あって、あるいはそういう懸念がないようにどういうふうな具体的な手当てが行われているのかということについてお答えをいただきたいと思います。

○政府参考人(寺田逸郎君)
 今、鈴木委員の方から、建前としてお話しになられましたこの制度の仕組みでございます。すなわち、法科大学院の方から具体的な要請がありまして、どういうタイプの教官に来ていただきたいかということをかなり詳細に、バックグラウンドも含めましていろいろニーズをお聞かせいただきます。そういうニーズにマッチした人を法務・検察としては選んで、これは今後の法曹社会をしょっていただく人の教育のために送り出したいと、こういうような気持ちでこの制度を運用していきたいと、このように考えているわけでございます。
 具体的には、法務・検察を通じまして、この法科大学院の支援のための協議会を設けておりまして、そこの事務局を今年の一月に既に準備的な意味合いでございますが発足させてございます。既に、法科大学院を設置したいという御意向をお持ちのそれぞれの大学から要望が、これまた準備的ではございますけれども寄せられております。そういったところの御要望を今後も十分にお聞きして、私どもとしては決して私どもの方での押し付けにならないような心構えでその窓口を通じてできるだけニーズに沿った応対をできるような、今後もそういう体制を続けていきたい、このように考えているわけでございます。

○鈴木 寛
 私もロースクールの関係者のいろいろなネットワークの中から何か個別の問題がございましたら、今の答弁を踏まえまして、していただきましたので、また個別にそういう問題点があったらお願いをしたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
 繰り返しになりますけれども、やっぱり決して警察庁の都合のいい、いわゆる警察──検察についてのですね、検察庁の都合のいい検察官養成のための教育であってはならないということ、やはり現状の検察行政について批判的な教育というものがやはり行われるということ、それからやっぱり検察官の身分を持ったまま検察官が教員に立たれる場合でも、それはあくまでその大学の教員でありますから、そういう意味での学問の自由と教育の自由というものはきちっと確保されているということを是非お願いをしたいと思いますし。
 とりわけ、午前中でも問題となりましたのは、やっぱり今本当に健全な、特に刑事関係の法曹をどう養成するかということは非常に重要な問題だったと思います。やっぱり何かどこかが欠けていた、足らなかったことによって午前中問題となりましたような問題が起こっているんだというふうに思いますから、特にロースクールで行われます、要するにその極めて健全な、特に刑事関係の法曹を養成するためのカリキュラムですね。正に、リーガルマインドを持って、そして正義と公正に満ちた日本社会を創造する人をつくるんだという観点で、やはりベーシックな刑事法というのは非常に極めて深遠な学問的体系と思想的体系を持っているわけであります。正に、近代社会についての、あるいは人権についての基礎的な理解ということが私はやっぱり十分行われていなかったと私は言わざるを得ない。そういう意味で、そこをもう一回きちっとやり直すということ。
 それから、やっぱり検察実務というものについてもう一回きちっと教えるということ。それから、それとともにやっぱり刑事裁判の実務ということを教えなきゃいけませんから、やっぱりそういう意味では刑事裁判の経験者がきちっと検察実務を教えるとともにそのことも教えていかなきゃいけない。更に申し上げますと、刑事弁護ということも、これはやはりきちっと教えていかなければいけないと。さらに、人権教育ということもちゃんとやっていかなきゃいけない。このバランスがやはり重要でありまして、決していわゆる検察実務だけができる人材ができないように、これはそういう観点で、結局はそのバランスが欠ければそのことは検察行政あるいは人権行政というところにはね返ってくるわけでありますから、そういう観点で是非ともより良い刑事関係の法曹を育てるという観点から、教育、学問の自由あるいはそのバランスある実態というものが保証されますように、森山大臣からもより一層の御指導とリーダーシップを発揮していただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

○国務大臣(森山眞弓君)
 先生が御自分の体験に基づいて非常に参考になるお話をしていただきまして、私も大変勉強できたと思っております。
 法科大学院は、度々お話もございましたように、大学側からの要請に基づきまして、そしてその大学が要請するような人を我が方で選んでごあっせんするというやり方でございますので、あくまでもその大学の自主性ということがまず第一にあるわけでございます。
 その大学の学問の自由とか建学の精神とか、いろいろあると思います。その教育方針に沿って自分の実務からの経験を若い人に分かち与えるという立場でございますので御心配のようなことは起こらないと私は信じておりますが、万一そのようなことになりましたら、そのときは大学とよく御相談をして、間違った配置であればそれを撤回するということも大いに可能でありますし、また別の人を選ぶということもできますし、大学の方からはもう検察あるいは裁判官は頼まないという方針もあり得るわけでございまして、どこまでも大学、法科大学院の側にイニシアチブがあるわけですので、御心配のようなものはないと私は考えておりますし、そういうことがないように心掛けていきたいと思います。

○鈴木 寛
 是非とも今、法務大臣のおっしゃったことがきちっと実現されますようにお願いを申し上げたいと思います。また、問題が生じましたときには委員会で御質問をさせていただきたいと思います。
 それから、これは要望、御検討をさせていただきたいということなんですけれども、先ほど私の事例をくどくど申し上げましたけれども、ああいう大学といわゆる行政官の健全な関係ができたというのは、やはり学会活動を、公務員のいわゆる個人の立場における学会活動をそれなりに許容していた、あるいは更に言うと奨励をしていた役所と、それからそのことを非常に抑制をしていた役所の差だということが一つは言えるかと思います。
 そういう意味で、現職の裁判官、検察官が個人の立場で学会活動をすることは、これは当然、憲法の保障されている権利だというふうに思っております。そのように理解しております。もちろん、それ以外の憲法上の制約は当然でありますけれども、しかし個人の立場で現職の裁判官、検察官が学会活動をすることは当然認められているわけです。特に、裁判官の方には大変に優秀な論文などを、あるいは発表などを学会で行っているという事例もありますし、そういう大変に優れた個人の裁判官がいることは現状でも私は非常に高く評価をしておりますが。
 裁判所あるいは検察庁としても、特にこれ、検察庁に申し上げたいと思いますけれども、個人の立場での検察官が、あるいは検察庁、法務省の職員が学会活動をするということについて、実質的にもこれはきちっと保障をしていただきたいということを現場のレベルにも是非意識共有をして──これは上司によって全然違うんですね。どんどんやってこいという上司のときはいいんですけれども、上司が替わってしまって、何でおまえそんなことをやっているんだというふうに行われる場合と非常に極端でありまして、共同プロジェクトを組んでいると、突然何かこう、いや出づらくなってねとかという話がございまして、これは正に検察庁内のいろんな意識の問題だと思いますし。
 そして、本当にそういう現場の法曹の方々がこういう共同研究あるいは共同のいろいろなゼミナールとかに参加するということは、物すごく意義があることでございます。その延長線でいろんな関係ができてロースクールにパートタイムないしフルタイムで派遣をされていくということは、私は非常に自然だし、あるべき姿だと思うんです。それで、その中で最終的にこの法律に基づいて円滑な派遣がなされるということになりますと、トライ・アンド・エラーとは言いつつもエラーの部分がかなり少なくなるということにもつながりますので、是非この点についてはよろしく御考慮をお願いを申し上げたいというふうに思っております。
 で、今申し上げたようなことがやはりこれ、適切に行われるかどうか。先ほどは森山法務大臣から明確な御答弁いただきましたけれども、もちろん役所自身が気を付けるということもこれあります。しかし、もう一つ大事なことは、私はやはり第三者評価機関が充実をしていくということだというふうに思っております。
 これも附帯決議、臨時国会のときの附帯決議で、大学の創意工夫が尊重されて、そして多様な人材を幅広く受け入れ、この中に今回の裁判官とか検察官も入るんだと思いますが、自由かつ柔軟で特色ある教育が行われるよう配慮するととともに、実質的に対等な条件で認証評価機関相互の公正競争が確保されるよう民間の認証評価機関についての財政支援等にも努めるということでありまして、いわゆる学位授与機構以外の正に様々な専門の民間評価機関が、このロースクールは先ほど申し上げましたような健全な刑事関係法制の人材育成という観点でちゃんとやっているかどうかというところもこうした第三者評価によってきちっと評価をされて、そしてソーシャルプレッシャーの中で改善をされていくということがこれまた望ましい在り方なんだと思います。
 そういう意味で、中立の第三者評価についての支援あるいはその助成ということがどういうふうになっているのかということについてお答えをいただきたいと思います。

○政府参考人(清水潔君)
 先生御指摘のように、法科大学院の評価については、複数の評価機関が多様な観点から評価活動を展開し、評価機関相互に切磋琢磨しつつ多元的な観点から評価が行われるということは重要なことであるというふうに思っております。
 先ほど御指摘がございましたような財政的な支援の問題でございますが、当院の附帯決議も踏まえまして、正に対等な条件で公正な競争ができるよう、財政状況も勘案しながらどのような支援が可能かということについて今後検討してまいりたいというふうに考えております。
 なお、付け加えさせていただきますれば、十五年度予算におきましても、第三者評価機関が適切な評価を実施するための準備、そのための調査研究について私ども、予算の措置を行っております。正に、認証評価機関として認証を受けるための準備を進めている機関に対しては、その調査研究について委託という形で多少支援を行っていきたいというふうに考えております。

○鈴木 寛 それから、同じく附帯決議で法科大学院の全国適正配置、これについても項目がございました。これについてはいかがでしょうか。ロースクールが全国に適正に配置されているかどうか、現在の検討状況と今後の取組についてお願いいたします。

○政府参考人(清水潔君)
 御指摘がございました正に附帯決議あるいは改革審意見書の適正な教育水準の確保を条件として、自発的創意を基本にしつつ全国的な適正配置をどう図っていくかというふうな観点でございます。
 私どもとしては、設置基準を満たしたものについては広く参入を認めるという方向で考えておりますが、先ほど御説明申し上げましたように、認可申請がまだなされていないという現段階でなかなか見通しを申し上げることは難しゅうございます。
 ただ、現在のところで私どもに相談が参っている状況で申し上げますと、国公私合わせまして七十八大学、これは一回でも相談に来られたということ、あるいは熟度から見ていささかどうかなというのも含まれておりますけれども、全体として、北は北海道から南は沖縄まで、いわゆる地域ブロックと言われるような単位で見ればすべてのブロックにおいて設立が構想されている、こういうふうに認識しております。
 私どもとしても、適正な教育水準の確保ということを前提にしつつ、我が国の三権の一翼を担う法曹を養成する大学であることを踏まえながら地域的な適正配置ということにも十分配慮してまいりたい、このように考えております。

○鈴木 寛
 ありがとうございました。
 法科大学院はかなり、始めてみないとよく分からないというところもございます。今日は特に、裁判所あるいは特に検察庁が法科大学院の自律的運営あるいは教育あるいは研究の在り方ということに対してみじんもいわゆる影響といいますか、その自立性を脅かすことがないようにということについてお話を申し上げさせていただきました。
 本来であれば、私は、やはり身分が残ってしまう、あるいは給与の負担がやはり派遣元であるということが懸念の要素として残るわけでありますが、ここはいろいろな現行の憲法上の問題あるいは様々な問題によってやむを得ないということは現状は理解をせざるを得ない部分もあるわけでありますけれども、これは是非、具体的にロースクールが始まりまして、そしてその状況も見ながらも、常にやっぱりこの問題意識を持ちながら、引き続き今回の制度を不断に我々国会あるいは内閣としてもそれこそ科学的に問題がないか検証し、チェックし、そして必要があればこの問題ももう一回洗い直していくという姿勢だけは引き続き重要だというふうに思っておりますし、そのことは是非とどめていただきまして、今回の、今後の司法制度改革に当たっていただきたいということをお願いを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

 


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