お断り:このページは、旧サイトのデザインになっており、ナビゲーションメニュー等が一部異なることをご了承ください。
 
 法務委員会 質疑 〜株式会社の監査に関する商法改正案などについて〜

2003年07月17日 


○鈴木 寛
 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 ただいま御提案のございました商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案について、質疑をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、今回の商法改正案の提出者の概要について御答弁をいただきたいと思いますが、どういう方が提出をされていらっしゃるか。今回は与党の議員の方々による提出者というふうに理解をしておりますが、そのことに相違ありませんか。

○衆議院議員(塩崎恭久君)
 提案は、我々与党三党の提案でございます。

○鈴木 寛
 議院内閣制の下で与党の議員の方々が閣法ではなくて議員立法をするということは、どういう意味があるというふうに考えておられるか、御答弁をいただきたいと思います。

○衆議院議員(太田誠一君)
 この今回提案の法律、いわゆる自社株の取得にかかわる法律というのは、平成九年から一貫して議員立法でこれは提案をし改正を重ねておりまして、たしかこれで三回目だと思います。
 これは、時々刻々経済情勢が変化をする、あるいは新たな必要性が生じた場合に我々議員のイニシアチブで法律を作るというのは当然のことでございまして、むしろ立法権は国会議員の方にあるわけでありまして、政府は、これは国会、内閣法で提案できるように、国会の意思でしたということでありますので、これは我々が提案するのはむしろ正常であるというふうに思っております。

○鈴木 寛
 私も、議員の大変重要な仕事であり、権利が、立法を提出するという権利であるということについては全く同感でございます。
 しかし、今日あえてなぜこういう質問をさせていただいているかといいますと、もちろん超党派で議員立法がなされるという、これは非常に望ましいことでありますし、そういう必要性は十分にあって、この必要性と重要性について私は何も否定するわけでございませんし、それから野党議員が正に国会で重要な法案を議論していただくために議員立法を提出するということ、これはもう大変重要なことだと思います。
 しかし、与党議員の場合、二つ方法があるわけですね。今回のように与党の議員の方々が提出者となって法案を提出すると。それから、正に内閣を構成をされていらっしゃるわけでありますから、正に議院内閣制というのはそういうことでございますから、閣法という形で法案を提出すると。
 この二つがあるわけでありますけれども、この二つをどういう基準で、あるいはどういう考え方で使い分けていくというか対応されていらっしゃるといいますか、現内閣を構成されておられる現与党の皆様方はどういう判断でやっておられるのかなということが私の質問の趣旨でございます。

○衆議院議員(太田誠一君)
 この法案の、今回の改正案の提出につきましては、過去の、平成九年以来、最初に自社株取得を緩和をいたしました法案は議員立法、私が提案者代表だったんですけれども、からスタートしておりますので、これはその都度、やるんであれば我々責任があるというふうに思っております。
 ただ、これまで議員立法、様々な形で行われておりますけれども、その都度、今回のこのことでいえば、法制審議会の、それまでは三年以上掛からなければ結論が出なかったと。事態は刻々と進んでおって、エクイティーファイナンスで調達したいわゆる準備金が三十兆とか四十兆とかの巨額に上っておって、それを有効に使わなくちゃいかぬということがあったので急いだわけであります。
 例えば、今、行革の基本法のような特殊法人等整理合理化計画のような場合は、政府を国会が縛る、行革をさせるために政府を縛る、内閣を縛るという意味で与党から提案をしたというようなことがあります。その都度、ケース・バイ・ケースだと思います。

○鈴木 寛
 この法案について、従来も責任を持ってやっておられたチームが引き続きやるんだと、こういう御答弁でございました。
 私もつい最近まではそうかなというふうに思っておったんでございますが、七月一日に、私、我が党の同僚であります大塚耕平参議院議員が、参議院の財政金融委員会にある資料を提出をさせていただいております。この資料と申しますのは、金融庁高木局長と、当時ですね、東京海上森副社長の会談記録でございまして、これは竹中金融担当大臣にもごらんをいただいて、そしてその中身が基本的には存在をしたというような質疑があったことは提案者の方も御存じかというふうに思います。
 この会談記録はお読みになられましたでしょうか、お四方の方は。いかがでございましょうか。

○衆議院議員(塩崎恭久君)
 読ませていただきました。

○鈴木 寛
 この中で、あれっと思ったことはいろいろあったかと思いますが、余り何かなぞ掛けのようなことを申し上げても恐縮なんで申し上げます。
 この会議記録の中で、当時、高木局長のお話の中に、生保の予定利率引下げ法案を議員立法でやってはどうかとも考えたと。東京海上とA生命保険とのいろいろなやり取りの中で高木局長が、実は私もいろいろ考えてきた、ほとほと嫌になっていると、そして先ほどの予定利率引下げは議員立法でやってはどうかとも考えたと。
 これは、私もこうしたメモが出てくるまでは、太田先生がおっしゃるように、責任ある議員の方々が従来の内閣のいろいろな政策形成過程の中で、機動性を要する、あるいは特に商法といった大きな問題を変えるときに、法制審にゆだねていたんではなかなかストックオプションとかいろんなことが、何といいますか、いろんな人の評価ですから言い方が難しいわけでありますが、傾向として非常に時間が掛かる傾向にあったと。そういう中で本当に政治家がイニシアチブを取って必要な改正はやっていくということで、私は、ある意味でこういう方法を適宜適切に使っていくということは、政治の極めてリーダーシップの表れとしていいことだというふうには思っていたわけでありますが、こういうメモが出てきますと、先ほどのお話に戻りますが、現在内閣を構成しておられる与党の中で議員立法と閣法との整理というのは、今、塩崎先生、太田先生がおっしゃったものともう一つ別の何かルールといいますか、運用基準といいますか、あるのかなということが心配になってしまうわけでございまして、こうした高木当時局長の認識、要するに、問題法案といいますかは議員立法で、難しいのは議員に押し付けてという趣旨ですね、これずっと読んでいただいておられるからよく分かると思いますが。これはやはり甚だ政と官との関係、特に、正に立法という極めて重要なことに関することでございますから私は極めて遺憾なことだと思いますが、その点について。

○衆議院議員(太田誠一君)
 議員立法は、かつてからも一年に二本か三本ぐらいは出ていたと思います。かつて、私も当選した最初のころに聞いていたのは、これは議員立法でやってもらいましょうというようなことを政府側、官界の方々が言っておられるのを聞いたことがありまして、これは随分侮辱した話だなというふうに思っておりました、だれがどうだとは言いませんけれども。
 そこで、やはり議員立法でわざわざやるというんではなくて、要は一つの課題についてどっちがイニシアチブを取ってきたかということであって、どうしても政府側がリラクタントであれば、じゃもう議員立法でやるということでもって、そこで踏み切るということになるわけであります。
 だから、この場合も、今も法務省の方々おられますけれども、リラクタントであったことは確かでございますから、じゃ我々の方でやるよということで進めたと。だから、外から見ると、最後は渋々同意している場合もあるわけでありますから、それはどっちが出したか、どっちがイニシアを取ったか分からない。しかし、この法案については、間違いなく議員のイニシアチブによる議員立法でございます。

○鈴木 寛
 今のことを確認させていただいて中身の議論に入りたいと思いますし、また、やっぱり今後、高木当時局長のような、現長官のような考え方による議員立法というのは私はあってはならないと思いますので、その点だけは御答弁をいただいてから中身に入りたいと思いますが、その点はいかがでしょうか。

○衆議院議員(塩崎恭久君)
 私もあれ読ませていただいて、えっと思いました。おっしゃるとおりでありまして、いろんな考え方があると思いますが、内閣法制局を通らないからとか、いろんな、言ってみれば司法が機能をしていないからというようなこともあって今のようなことが言われるんでしょうが、本来そういうことはやっぱりあってはいけないことだと思っております。

○鈴木 寛
 それでは、この中身の話をさせていただきたいと思います。
 本件、今回の改正案の中身は、今、提案理由の御説明にもございましたように、自己株式の取得の方法と、それから中間配当限度額の計算をより実態に合わせていくということだと思います。私も、本日の議論は、その一点目のことについて特に議論をさせていただきたいと思っております。二点目のことについては、いろいろな実態から来る要請ということもありますし、いろいろなお話を伺ってみると、当事者、関係者の方々はいろいろ御苦労をされているということは私も十分に承知をしております。
 自己所有、自己株式の取得の緩和の歴史といいますものは、正に平成六年あるいは平成九年のストックオプション制度の導入辺りから極めて重要な課題の一つということで、私もその経過を横目で、あるいは日本のベンチャーを育成をしていく、あるいは頑張っておられる方にストックオプションというような制度を導入してインセンティブを付けていくとか、あるいは日本のコーポレートガバナンスというものをもう一度見直していくという意味で非常に重要な課題に、先ほど塩崎先生、太田先生からお話がありましたように、いい意味での政治の側の主導でもって問題提起をしてきたということで、ある意味で一定の評価は個人的にはさせていただいているつもりでございます。
 とりわけ、十三年の商法改正でもって、今までは原則行わないということから基本的には容認をするという方向になりました。もちろん、当時、民主党は、インサイダー取引の防止策とか相場操縦の防止策とかというものが不十分ということをもちまして反対ということに回ったわけでございますが、このことが、例えば持ち合いの解消とかあるいは機動的な企業再編という選択肢の可能性というものを広げたということについては、あるいはそうしたダイナミックな経営というものを広げたという意味では、いろいろな効果というものがあったということは私も否定をしないわけでございますけれども、十三年にかなり大幅な改正が行われまして、そして二年後の今国会において再び改正が行われる、こういうことなわけでありますが、まず平成十三年の、要するに自己株式取得についての基本方針の大転換、そして二年たったわけでございますけれども、この評価、平成十三年改正の評価というものをどういうふうにされていらっしゃいますでしょうか。

○衆議院議員(金子善次郎君)
 お答えさせていただきます。
 基本的には、金庫株の解禁でございますけれども、積極的に評価できるものというふうに考えております。
 その中身、利点と申しますか、申し上げますと、基本的には機動的な組織再編ということになるわけでございますが、合併、株式交換、会社分割などの組織再編の際に、新株の発行に代えまして会社保有の自己株式の割当てを可能にするなど、要は自己株式の活用というものをより柔軟にいたしまして、そして、新株発行に伴う会社の配当負担の増加の問題あるいは株式価値の希薄化、こういうものを防いでいくというようなことで機動的な組織再編が行われるという点が第一点でございます。
 第二点でございますが、企業財務の観点から見まして、金庫株の解禁でございますが、企業が財務政策を選択していく上で自由度を広げる、自らの成長力に応じまして財務構成を機動的に変更することを可能にしたわけでございます。こうした観点から申しまして、資本の有効活用等を通じまして株式投資の魅力を高めまして、ひいては株式市場の活性化につながる、こういう利点があったものと評価をしているところでございます。
 総括して申し上げますと、株式市場における、結果としてでございますが、需給バランスの改善につながってきている、このように考えているところでございます。

○鈴木 寛
 十三年改正はそういうことで評価されていることはよく分かりましたが、それを受けて、今回改めて先ほど御説明のありました改正を行う。特に、第一の項目ですね、自己株式取得方法についての改正。一言で言うと定時株主総会の決議が要らないというところが特徴的だと思いますが、この改正にあえて踏み切る目的というのは何でしょうか。

○衆議院議員(塩崎恭久君)
 今、金子議員の方からも御説明申し上げましたように、やっぱり機動的に対応しなければいけない事態というものが期中に起きるということで、総会でもちろん、定款授権ですから、定款を変えるのは総会で変えるわけですけれども、実際にいつやるかということは取締役会で決めるというときに、今までの総会で決めるということになると、枠を多めに決めるということになると、まず第一に、使わないで残ってしまう枠をたくさん残すということにもなる。なかなか株主の理解がその次の総会で得られないというようなこともありますし、また一方で、言わば、やるぞやるぞと言っていてやらない、風説の流布か、こういうようなことも、誤解を招きかねないようなことが想定される。こんなこともあって、機動的に対応できるようにということで、定款で授権した上で取締役会に決議をしていただこうという形を取ったらどうだろうかという提案でございます。

○鈴木 寛
 機動的にというキーワードが三回か四回出てまいりましたが、機動的にやりたいというニーズは私も分からないわけではございません。
 しかし、元々、商法が正にこの自己株式の取得というものに対しての制限を加えていたやっぱり理由というのはあるわけですよね。そこの理由と機動性というものを本当にはかりに掛けながらきちっと議論をして慎重にやっていかなきゃいけない、こういう極めて大事な話だというふうに思います。
 恐らく平成十三年のときもそうしたすごく慎重な議論をした結果、平成十三年改正をしたわけでございますが、私は、率直に申し上げて、今回の改正はやや機動性を、重きを置き過ぎている改正ではないかなという思いがしております。
 これは恐らく、経済界の強い要請、こういう話が大きなインセンティブになっているんだということも私は承知をしているつもりでございますけれども、これを、私ないし民主党が反対の立場を取らざるを得ないのは、平成十三年のときと同じようにインサイダーあるいは株価操作、その対応策が十分でない、これは少しこの後も御議論させていただきたいわけでありますが。
 やはり加えて、今、コーポレートガバナンスということをずっと言ってきたわけであります。そうした商法改正がずっと行われてきました。きちっとやっぱり株主から経営陣というものがチェックをされる、あるいは評価をされる、いいものはいい、悪いものは悪いと。そのためのトランスペアレンシーというのが確保されて、そして、取締役会ももっと機能するように、こういういろいろなことがやられている中で、私は、確かに経団連を中心とする現在経営の地位にある方々はこうした制度を強く望んでいる、これは当然だと思います。ある意味で当然だと思います。
 しかし、日本の経済停滞の理由、いろいろあるかと思います。もちろん政治の責任もあろうかと思いますけれども、私は、現在の経済界、特に現在の低迷している日本の会社の経営陣の経営責任というのは、私は否定できないと思っております。日本の企業が再生をしていくという意味で、もちろんいろいろ様々な施策が考えられますけれども、最も重要なことの一つに、やはり経営陣の交代という項目を私は抜かすわけにはいかないんだというふうに思います。
 確かに、今までの右上がりの成長型の経済の中で非常に的確な経営をやり、あるいはそうした方々の後継者として成長型の経営にはたけておられた方かもしれませんけれども、これから非常に不透明、不確実性の中で、二十世紀と二十一世紀の特に日本における経営の質というものが変わったときに、私は経営責任ということを、余り過去のことを追及し過ぎるというのは好きではありませんけれども、しかし違うタイプの経営者がやはり必要だということは同意をしていただけるというふうに思います。
 別に日産自動車の例を取るまでもなく、経営陣が交代をし、そのことによって、今でもどの企業でも技術陣、あるいはそれを実際に造ったり、あるいは売ったりしておられる現場の方々、そうした優秀な現場の方々、そうした正に経済資源といいますか、経営資源が息を吹き返して、そしてV字カーブで反転攻勢をしている企業のあるのを見るにつけ、私が申し上げているこの経営陣の交代というものは極めて重要な課題だなというふうに思っております。
 そうしたことを考えてみたときに、経済界からの要請だと恐らくおっしゃるんだと思いますけれども、それは本当に日本経済界全体の要請だろうかというのが私の問題提起でございまして、確かに経済界の一部の、特に今経営をされている方々の強い意向であるということは分かりますが、しかし国会としては、あるいは日本経済をV字反転、回復させるためにも、果たして、機動性というキーワードは正に悪いキーワードではないわけでありますが、しかしこのことによって経営陣の交代あるいは経営責任の追及といいますか、その問題が株価に反映されて、そしてそのことによってダイナミックな経営陣の交代が行われるというダイナミズムをそぐ可能性について私は大変危惧し、そのことを大変に心配をしているわけでありますが、いかがでございますか。

○衆議院議員(太田誠一君)
 今の提起されました問題は、人材の交代とか再配分とか、そういうことであろうかと思います。
 それはコーポレートガバナンスの観点からすれば大事なことだと思いますが、今のこの自社株の取得についてはどういう観点から見るかというと、ここでかつてエクイティーファイナンスが華やかであったバブルのピークのときに時価発行などをして調達したお金が、さっき言いましたように、四十兆円とか三十何兆円とかあったと。それをそのままにしておくんではなくて、それを、自分の会社の株を市場から引き揚げて市場に返すと。すると、市場はそれを受け取って、今度は同じ株式市場で運用するならば新しいビジネスチャンスの方の株を取得をして、そこで資金の再配分が行われると。
 それで、効率的なあるいは成長のためのファンドが生ずるわけでありますから、今、委員がおっしゃる人の入替えということと同時に、いわゆる資金がこの成長分野の方に、停滞分野から成長分野の方に移転をするということが一つのねらいなわけであります。

○鈴木 寛
 今の点は私も否定しないわけではないんです。しかし、それは平成十三年改正でかなりできるんではないかというのが私の意見であります。
 今回、政府は、五月十四日に証券市場活性化関係閣僚会議などで、それ以外でもいろいろ発言をされておりますが、要するに株価対策の一つとして企業による自社株取得のことをやっぱり触れられているんですよね。衆議院でのいろいろな今日のお四方、あ、保岡先生もおられましたか、五方の答弁を丁寧に読むと、いわゆる自社株取得による株価維持というのは、これは結果論といいますか、それは目的ではないんだということは非常に慎重に御答弁をされていらっしゃいます。であるから、その四人に聞いてもしようがないじゃないかと言われてしまえばしようがないんですけれども、しかし、今回の法律改正が関係閣僚においてすらいわゆる自社株購入によって株価急落というものが抑えられる。
 資本市場ですから、やはり経営陣の交代を一番促すのは株価という警鐘によって、株価が、まずい経営であれば株価が下がる、いい経営であれば株価が上がる。そこがきちっとマーケットによって的確に反応が返ってきて、リアルタイムで反応が返ってきて、いい経営に向かっていればそれがきちっと株価に反映されて、経営陣が悪くなれば反応する。自社株取得が入ることによってそこの何といいますか、相関関係の感度というものが、緩衝材が入るわけですね。そうすると、結局株価と経営というもの、株価を見ていればいい経営か悪い経営かというマーケットメカニズムを活用しながら、そしてそれをコーポレートガバナンスに反映させながらいい経営を目指していこうという、正にこの間、与野党含めて取り組んできたそのコーポレートガバナンスを上げていこうと。
 やっぱり、資本主義ですから、資本市場ですから、何といったって株価なんですね、経営者が一番気にしておられるのは、あるいは株主が一番気にしておられるのは。そこのシステムというものをもっと大事にしたいなというのが私の意義でありまして、それはきちっと定時総会である程度の合理性を持って企業再編をやっていく。それから、今、太田議員がおっしゃったように資金もきちっと入れ替えていくと。
 ですから、冒頭申し上げましたように、あるいは金子議員から御説明がございましたように、企業再編とかあるいはその持ち合いの解消とか財務の体質の健全化とか、この意義は否定をしていないんです。
 しかし、その取締役会にこのような極めて重要なことを私はやっぱりゆだね過ぎている。そして、アメリカのように取締役会が社外取締役がいて監査役がいて、そして監査法人がきちっと監査をして、その取締役会のガバナンスというんですかね、要するに経営者が緊張感を持ってきちっと経営をやれていると。そのことは目指しています、日本も。そして、そういう経営をやっておられる会社も出てきました。それは大変いいことだと思います。そして、そういうところは株価が上がっています。
 しかし、そうでないふうに悪用をされる。本当は下がるべき企業の株が下がらないというのはやっぱり問題でありまして、何でもかんでも株価が上がればいいという問題でもないんだと思うんですね。全体の株価水準の問題は、これは経済政策等いろいろあろうかと思いますが、そういう意味で、やはり私は今回の改正は少し取締役会に権限を付与し過ぎているというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○衆議院議員(塩崎恭久君)
 鈴木議員のお話、御懸念の点はよく分かるわけでございますし、また衆議院でのこの議論もやっぱり株価対策じゃないかと、これは。それで取締役が責任逃れをするんじゃないかと、こういうことだろうと思うんですが。
 また、今御指摘のとおり、政府の方も株価対策のようなところでこれを取り上げているということでありますが、私も正直言ってあれを見てあれれと思いました。それから、与党の緊急金融対策とかいうのを、私も入っておりましたが、その中にもこれが入っておりました。私は、全く、何でこんなものを入れるのかなと思いまして、私はこれをずっと商法小委員長として自民党の中でもやってまいりましたが、こんなもので株価が本当に変わるわけがない。
 ですから、鈴木議員は少し、これによって株価が自由に動くんではないかと、こういう御懸念を、印象をお持ちかも分かりませんが、株価は一体何で決まるんだということを考えてみると、せいぜい中間配当限度額までしか買えないやり方でちょろちょろ買ってみたところで株価なんというのは変わるわけが私はないと思っております。
 むしろ、将来の期待収益はどうなんだと。それを割り引いてみてどういうふうに株価は決まるんんだということを考えてみれば、取締役あるいは会社経営者そのものが市場でどういう評価を、彼の経営が、あるいは彼女の経営が評価されるのかというところで決まるわけであって、結果として、これでもし自社株買いをして株が少し上がるのかも分からないけれども、それは短期的な話であって、私は株価というのはそんな短期の需給で決まったりするものじゃないと思っていますから、これがそのような形で株価対策としてのみ何か使われるんだというようなことは、結果としてこれは株価に多少影響が一時的に与えられたとしても、それで経営責任が逃れられるほどのことがあるとは私は思っていません。
 むしろ、ですから、株価を本当に上げたいと経営者が思うならば、ビジネスモデルを今お話あったように変え、そして将来この企業もうかるぞとだれでも思うような経営をやって見せて初めて、あるいはそういう商品を出して初めて株というのは上がっていくわけでありますから、必ずしも今御懸念のようなことが目的のためにこれをやっているわけでは決してないというふうに私は思っております。

○鈴木 寛
 であれば、やっぱりこういう位置付けをされると誤解を招きますので、是非、与党内あるいは内閣の中で、塩崎先生、もっと大きな声できちっとこうしたものにも目を光らせて……

○衆議院議員(塩崎恭久君)
 政府の方に……。

○鈴木 寛
 いえ、政府に、与党ですから言っていただくということはやっぱり大事だと思うんですね、これはやっぱり誤解されて伝わりますから。そこにお座りの先生方がいかにきちっとやられても、やっぱりこれは政府がこうやって出されたり、それからいろんなところで報道されて、当初の趣旨と全然違うところでいろんなことがなされる。そうなると、私も信じやすいタイプですけれども、しかしやっぱり心配もせざるを得ないということでございまして。
 ただ、先ほど塩崎先生おっしゃった話で、確かに株価というのはそうしたことで簡単に決まるわけじゃないと。ただ、私はやっぱり再度強調させていただきたいのは、現行経営陣をリプレースしていくというのはこれはもう大変な作業でありますし、しかしこれはやっぱりやらなきゃいけないですね、日本の経済、どう考えても。そこのところにやはり、この取締役会に権限を付与し過ぎるというのは私はやっぱり逆行すると思います。
 恐らく、いや、これはちゃんと報告するからとかっておっしゃりたいんだと思うんですが、これは報告して総会が否決した場合、これどうなるんでしょうか。

○衆議院議員(塩崎恭久君)
 今、否決とおっしゃいましたが、これは事後報告でありますからこれ自体でやったことが覆されるというようなことはないわけであって、むしろそういう判断をした経営者が問われる、取締役が、取締役会が全体として問われるということで、次の期の取締役として選ばれるのかどうかということが大事な判断になってくるんだろうと思うんですね。ですから、やったことが消されるということはないということです。

○鈴木 寛
 ですから、やっぱりそこがちょっと弱いのかなと思うんですよね、私は。でありますので、本当であれば、二百歩譲って、機動性を確保するということにされるんであれば、報告ということではなくてもう少し違う仕組み方があるんではないかというのが私のカウンタープロポーザルであります。
 それで、これ定款時に授権と、こういうことになっていますが、定款ではどれぐらいのことを書くんでしょうかね、イメージとして。

○委員長(魚住裕一郎君)
 どなたが答弁されますか。

○衆議院議員(塩崎恭久君)
 先ほど申し上げましたように、これは限度は中間配当限度額ということで決まっておりまして、やるということを書くということでございます。当然、特別決議で定款の変更をするということです。

○鈴木 寛
 何度も繰り返しになりますけれども、日本というのは、取締役会あるいは総会、その制度上、システム上は確かに問題のある取締役は次の総会で解任をすればいいんだと、こういうことだとは思います。しかし、これはもう皆様方がよく御高承のように、日本の取締役会というのは、六月二十七日とか二十八日とか、大体その辺のときに一斉に行われて、そしてそれが何時間にもわたると。というのは、最近そうでない会社も出てきていますが、しかし、本来、経営陣が替わってほしいと思っている会社の取締役会はやはりまだ十分とか二十分とかで終わっている。替わってほしくないというところはちゃんと議論をやっているわけで、しかし、問題なのはやっぱりそういうところなわけですね。
 そうすると、なかなか、今、塩崎先生おっしゃるように、いや、そこで替わりゃいいんだと、こういうことになるかどうかという、これはもちろんこの法案だけの議論ではなくて、日本のそうした株主民主主義といいますかね、きちっといろいろなステークホルダーがノーと言っていく、イエスもですけれども。
 そうした、そこも含んだ健全な株式市場というものをどういうふうに構築していくかと、こういう話になりますが、その健全な株式市場を構築していくという中で、これは平成十三年から私たちが一貫して主張をさせていただいております、そして今回も懸念をされておりますいわゆるインサイダーあるいは株価操作といった問題でございますが、インサイダー取引は、これは最近特に、何といいますか、巧妙、悪質化しております。これは専らメールとかITの進歩によりまして、なかなかこれは取締り当局が証拠を押さえるというのは極めて難しくなっている中でインサイダー取引が私は相当横行しているということの実態は否定し得ないというふうに思っております。
 もちろん、日本はアメリカに比べて、SEC、SECが不十分であるという御議論、このことについては今日の提出者の方々も以前からこの問題に取り組んでいただいておりますし、この問題については本当に超党派でどのように取り組んでいくかと、こういうことになるわけでありますけれども、アメリカの場合は、そうしたSECを物すごく強力にして、そして加えて、仮にインサイダーをやったときには極めて重いサンクションを科すことによってインサイダー取引の発生というものを極力抑制をしていくと、こういう体制になっているわけでありますが、日本の場合は、そういう意味での抑止力というんですかね、取り締まる力も、あるいはそれを摘発するパフォーマンスも、そして場合によれば重いサンクションを科すというところも私はこれは不十分だと思うんですが、今回、いろんな意味で特に機動的と、こういう話になってきますから、インサイダー取引の可能性というのはやっぱり否定し得ないんだと思います。
 そこに対する備えといいますかは、今回どういうふうなことに対応策として考えておられるんでしょうか。

○衆議院議員(石井啓一君)
 今の委員御指摘がございましたとおり、監視のための実行体制といいますかね、人員も含めての体制の強化というのはこれは今後の課題でございますし、これは引き続きやっていかなければいけないと思いますけれども、制度的に、自己株取得に伴う不公正取引につきましては、私どもは前回の改正で相当程度これは実施してきていると。インサイダーにつきましては、自己株の取得及び処分を重要事実に含めまして、その重要事実を公表した後でなければ自己株の取得、処分ができないということにさせていただきましたし、今回の改正もそれが及ぶものでございます。
 また、相場操縦の点でも、いわゆる米国のセーフ・ハーバー・ルール等を参考にいたしまして、自己株の取引の公正を担保するような内閣府令、例えば証券会社数を一日に一社のみの証券会社を通じて買うとか、あるいは買い付けの期間、取引終了時刻の直前三十分以外の時間に買取りをするとか、そういったルールも定めさせていただきました。
 また、前回の金庫株の解禁の時点で、ディスクロージャーといたしまして自己株券買付状況報告書、これを従来三か月ごとの提出でございましたのを一か月ごとに提出するということにさせていただきまして、今回の改正でも同様の規制を及ぼすということでございますので、私どもは、前回、金庫株導入時で導入いたしました証券取引の公正のための所要の措置、これを更に今回も進めるということで考えているところでございます。

○鈴木 寛
 冒頭、政治がやらなきゃいけないときは、役所がリラクタントのときは議員立法でやるんだというお話がございましたので、是非SECも政治のリーダーシップで議員立法を出していただきたいということを、これは超党派で出していこうではないかということも併せ御提案を申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

◆委員会冒頭での改正案提出者からの、趣旨説明はこちら >>>


←BACK ↑TOP