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 法務委員会 質疑 〜裁判官の報酬等に関する法律の改正案などについて〜

2003年10月09日 


○鈴木 寛
 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 本日は、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案並びに先日の野沢法務大臣の所信に対しまして質問をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、裁判官の報酬に関する、減額に関する法律案でございますが、この問題は、先ほど松村委員と法務大臣との御質疑の中でも憲法上の問題が御議論をされました。法務省の見解というのは先ほどの御質疑の中で触れられましたので、ここであえてそれを繰り返してお聞きすることは省略をさせていただきたいと思いますが、今日は最高裁がお見えだと思います。
 今回のこの法律案の提出に当たって、裁判官会議でこのことについて、今回の提出に関して御議論がなされたのかどうか、それからこれは、現在の経済情勢をかんがみますと、この裁判官報酬に関する法律というのは今後も提出をされる可能性というのはこれあるわけでありまして、そのことも含めて、裁判官会議での御議論の模様についてお教えをいただきたいと思います。

○最高裁判所長官代理者(山崎敏充君)
 本年も、人事院勧告につきまして最高裁判所裁判官会議に報告いたしましたが、その際、裁判官の報酬の取扱いにつきまして議論がされました。
 その結果でございますが、昨年同様、人事院勧告に沿って国家公務員の給与全体が引き下げられるような場合に、裁判官の報酬を同様の内容で引き下げても司法の独立を侵すものではないことから憲法に違反しない旨、改めて確認されております。

○鈴木 寛
 私は、先ほど、今の御答弁を拝聴していても思うわけでありますけれども、憲法で裁判官の報酬を在任中、これを減額をすることはできないという規定というのはやっぱり相当に重いことだというふうに思っております。
 そもそも、憲法が司法、行政、立法の三権分立、これは、近代国民国家においては正に基本中の基本であるというふうに理解をいたしておりまして、とりわけこの司法権の独立、その中で裁判官の独立というものを担う極めて重要な条項、重要な精神だというふうに思っておるわけでございますけれども、昨日も法務省あるいは最高裁の事務方といろいろ御議論をさせていただきましたので、私の主張をここできちっと申し上げておきたいと思いますけれども、私はそもそも、もちろん、報酬が、裁判官の報酬が引き下げられること、これは、現下の社会情勢をかんがみまするに、国民の皆様方がこれだけ経済的な痛みを伴われている中で裁判官とてその例外に置くことはできないということで、内容についての妥当性の議論、これはもちろん今ここでさせていただいているわけでありますが、その前段といいますか、フレームについて私はかなりの違和感を持っております。その違和感の最たるものは、この法律がそもそも法務省から提出をされているという点でございます。
 これは、現在の日本国憲法下の統治機構は最高裁判所による法案提出権というのが制度上認められていない。これはもちろん、国会法などをきちっと検討する中で憲法を改正しなけりゃできないのか、あるいは現行憲法下でも努力の余地があるのか、その議論もありますけれども、私は今日は立法論も含めて申し上げているわけでありますが、現在、憲法調査会も開かれておりまして、このたび私たちの先輩となりました平野委員もそのことに大変に御努力をされているわけでありますが、筋論といいますか、今後の立法論も含めて申し上げますと、やはりこうした問題は、大きく言うと方法論は二つあって、我々議員自らが正に裁判官の報酬の問題についてきちっと議案を提出するという方向に行くのか、あるいは最高裁が正に国会と直接にいろいろな話合いをして、そしてこうした問題について国会に議論を提起するのか、これが恐らく筋だというふうに思います。それを、内閣総理大臣ならまだしも、私は個人的に法務大臣がというわけじゃありませんが、法務省が三権分立の極めて重要な司法、しかもその裁判官の身分に関することについて正に法案を提出をする、あるいはそのドラフトを作って、そしてここに、この場に持ち出されるということは、やはり私の三権分立についての理解がおかしいのか、それとも、やはりここは重要な立法論の論点としてあるのかといえば、私は後者だろうというふうに思っております。
 これは極めて重要な、かつ難しい論点でありますから、今日直ちにお答えをいただくということはできないということは承知をいたしておりますが、是非お願いを申し上げたいのは、最高裁におかれましても、そもそもこの法律が法務省の起案によって、そして閣法で国会に提出をされるということの問題についてもきちっと御議論をいただきたいということをお願いを申し上げますとともに、法務省におかれましても、この問題は三権分立上どうなのかということについて内閣全体で御議論を深めていただきたいというふうに思います。加えまして、私たちも、民主党、憲法をきちっと議論をし、そして新しい憲法を作っていくということをこのたびのマニフェストの中でも、議論の中でも位置付けております。
 私たちも、統治機構の問題というのは極めて重要な問題だと思っておりまして、その中の議論の一つにこの問題、司法権の独立という問題の中で検討をしていきたいと思いますので、法務省におかれましては、特に諸外国の事例など、いろいろやっぱり私たちも協力をしていただいて勉強をしていきたいと思っておりますので、法務省そして最高裁の皆様方にその点についての御協力をしていただきたいということをお願いを申し上げまして、協力をできないという場合であれば御答弁をいただき、そうでない場合であれば次の質問に行きたいと思いますが、これは御協力をいただけるということで、法務省そして最高裁、よろしゅうございますね。
 それでは、次の論点に移らさせていただきたいと思います。
 今、これも内閣の主導で司法制度改革推進本部というのが今大変な御努力をされながら、国会に極めて重要な司法の根幹に関する議題の提起あるいは法案の提出というものが行われております。
 その中で、裁判員制度そして行政訴訟の問題について今日は御議論をさせていただきたいと思いますが、これは、いよいよ司法制度改革も佳境に入ってきたなという感を私、いたしております。正に戦後の正に裁判そのものが、いわゆる裁判員という、通常の一般の市民の皆様方がこの法廷の場に参画をしていただいて、そして裁判というものが一般の国民の皆さんの健全な社会常識の下にさらされて、そしてさらに、そうした一般の国民の皆様の常識というものが裁判過程に反映をされると。
 そのことは、裁判結果がより公正で適切なものになるということと同時に、やはり市民の皆様方も国民の皆様方も、正に裁判というのは国家の基本的な機能の一つでありますが、そういった司法に我々も参画をしていくんだということで、市民社会の一員としての理解あるいはそうしたものをきちっと支えていこうという意味で、正にこの国の形をより良くしていくために極めて重要な意味を持っているのがこの裁判員制度だというふうに思っておりますが、現在、この司法制度改革の御議論の中で裁判員制度の検討会が議論が煮詰まりつつあると、煮詰まっていると。煮詰まっているというのは止まっているという意味じゃなくて、深まっているというふうに理解しておりますが、この裁判員制度の検討会の検討状況、そして方向性がどういうタイミングで出てくるのか。そして、恐らくは次期通常国会で御議論がなされるんだと思います。その骨子が今極めて重要な佳境に来ていると思いますが、そのスケジュールあるいは今残されている問題点、検討状況を含めて、現在の状況についての御説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(山崎潮君)
 ただいま御指摘の点について、若干長くなるかもしれませんが、お答えを申し上げます。
 私どもの裁判員制度・刑事検討会でこの議論を煮詰めているわけでございますけれども、この検討会では三つのテーマを対象としておりまして、一つが今申し上げました裁判員制度の問題でございます。それから、刑事裁判の充実、迅速化という問題、それから検察審査会の在り方と、この三つが対象になっているわけでございます。これまでに二十七回の会合を開催しておりまして、裁判員制度につきましては、このうち十二回を使っているということでございます。
 議論は大きく今のところ二つの山に分かれておりまして、昨年の十二月の十日の第十回会合までの間に一応第一ラウンドを、三つのテーマについて第一ラウンドを終わったという状況でございまして、本年の一月二十八日からの会合は、事務局の方からその議論を整理をしたたたき台、これをお示しをいたしまして、このたたき台を中心に、より細かな論点を含めた議論を煮詰めていっているという状況でございまして、この九月の二十五日にそのたたき台に関する第二巡の議論を一応終えたと、こういう状況でございます。これからいよいよ第三ラウンドに入っていくと、こういうところでございます。
 具体的なテーマにつきましては、この制度に関しますありとあらゆる論点を議論をしているということになるわけでございますが、重立ったものといたしましては、やっぱり裁判官と裁判員の人数、あるいは対象となる事件の範囲、裁判員の選任方法、裁判員制度における審理、評決の在り方、公正な裁判の保障、裁判員の保護のための措置、国民の負担を無理のないものとするための措置等と、こういうような大きな項目でございます。
 今後でございますけれども、事務局におきまして検討会を鋭意進めていくわけでございますけれども、それ以外にやっぱり各方面からのいろいろ御議論がございます。そういうような意見を参考にしながら、新たな制度に関する骨格案を作成をするなどいたしまして作業を進めるということでございます。
 いずれにしましても、来年の通常国会には成案を得て、御審議をいただくということを予定をして作業を進めているという状況でございます。

○鈴木 寛
 来年の通常国会ということでございますので、相当ドラフト案を作る今重要な時期にあろうかと思います。
 そういう中で、日本弁護士連合会が非常に分かりやすいパンフレットを作っていただいておりまして、「司法が変わる。日本が変わる。 あなたも裁判員に」ということで、裁判員制度についてのパンフレットを作っていただいております。これは私たちも見させていただいて、あるいは日弁連の方々と御議論をさせていただいて、非常にごもっともな提案が幾つかあるなというふうに思っております。
 例えば、今、事務局長からも御紹介がございました人数の問題、このパンフレットでは「裁判員は九人から十一人、裁判官は一人か二人。」と。裁判員が多ければ多いほど分かりやすい裁判になるし、いろんな人の社会常識が反映されて妥当な結論が得るということとともに、やはり今回、裁判員に一般の市民の方がなっていく、任命をされてなっていくと。
 その場に行くと、プロフェッショナルの裁判官の方とそして裁判員と、こういう合議体が形成をされるわけでありますが、いわゆる一般の、特に法曹の専門家でない方々がそういう場に行ったときに、こちらはベテランのプロフェッショナルの裁判官がいて、そして市民から選ばれた裁判員と。本当に自由な議論ができるかということをかんがみたときに、この裁判員の数、それと裁判官と裁判員の比率ですね。要するに、裁判官の、まあ日弁連なんかは三倍以上と、こういうことを言っているわけでありますが、そういう人数の構成というのは、この裁判員制度を導入をする趣旨というものを単に裁判員制度を日本が入れたということに終わるのか、それとも本当に裁判員制度を導入し、そして実質的に裁判員制度が目指していた、市民の参加によって、先ほども私が申し上げたような、あるいは検討会でも御議論をされているような裁判員制度導入の意義を実質あらしめるためには、この人数の問題というのが極めて重要だというふうに思います。
 それから、例えばこのパンフレットの中には「取調室を録画しましょう。」とか「前もって、すべての証拠をあきらかに」というような、こうした提案もございます。これも、今までどうしてもブラックボックスでありました捜査、あるいはそれに続く裁判というものをより市民に身近なものにしていくためにも極めて重要な提案だというふうに思いますが、今、私からも、これは私たちの民主党の意見としてもこうしたことはきちっとやるべきだというふうに考えておりますが、この点についての推進本部での検討状況あるいは事務局長のお考えについてお述べをいただければと思います。

○政府参考人(山崎潮君)
 この段階で事務局の意見というのはちょっと早いかなというふうに思われますので、その点は差し控えさせていただきますけれども、検討会の検討状況について申し上げたいというふうに思います。
 裁判官のまず人数の問題が御指摘がございました。これに関しまして、検討会では、裁判官は三人とすべきであるという意見と、二人とすべきである、あるいは一人又は二人にすべきであると、こういうふうに分かれるわけでございます。
 裁判官を三人とすべきという意見でございますけれども、これは次に申し上げるような理由によるわけでございます。
 裁判員制度は現在の裁判官による合議体に国民が加わるという制度であるので、裁判員が加わったからといって裁判官の人数を減らす理由にはならないという意見でございます。それから、裁判員制度の対象となる事件よりも法定刑の軽い事件について、裁判官三人による裁判が行われているということになるわけでございますが、それとの均衡はいいのかということ。
 それから、裁判官を二人とすると、法律解釈や訴訟手続上の判断、これにつきましては裁判官の専権ということで今議論が進んでおりますけれども、そうなりますと裁判官の意見が異なった場合に、分かれちゃった場合にどのように決めていくのかと、判断に窮することになるんではないかと、こういうような意見でございます。
 それから、裁判官は一人あるいは二人とすべきという意見でございますけれども、この理由は、新たな発想で制度設計をするんではないかと、それならば裁判員制度における裁判官の役割はプロとしての知識、経験を提供することにあるんだから、一人のベテランの裁判官で十分果たし得るんではないかと、こういうような理由。それから、裁判官を二人とした場合に、裁判官の判断が分かれたとしても一定のルールを定めておけば対応できるのではないか、こういうような理由によるわけでございます。
 それから、大事な点のもう一つは裁判員の数の、人数の問題でございますけれども、これに関しましては意見が三つほどに分かれております。裁判官三人に対して三人あるいは同程度の人数という意見。それから、裁判員の数は九ないし十一、あるいは十ないし十二という、多数いた方がいいという考え方。それから、裁判員の数が五人あるいは六人とすべきであると、こういうような意見に分かれているわけでございます。
 三人程度とすべきという意見でございますけれども、これは実質的な評議を行うためには合議体の人数を余り多くすべきではないという理由。それから、裁判員となる国民の負担等を考えると、人数を余り多くするというのはいかがなものか、こういう理由でございます。それから、多数の九ないし十一にすべきであるという意見でございますけれども、これは国民の感覚を裁判に反映させるためにはより多くの裁判員が関与すべきであるという理由。それから、裁判官と裁判員の実質的な対等を図るためには裁判員の人数を多くする必要があると、こういうような理由によるわけでございます。
 いずれにしましても、これから第三ラウンドの議論を煮詰めまして、最終的な方向を定めていきたいというふうに思っております。

○鈴木 寛
 議論の状況はよく分かりました。
 ただ、法務大臣もこの本部の副本部長ということであられると思いますので、国会では、やはり裁判官と裁判員が実質的な対等性を確保するというのは特に日本においては難しい。そのためにも裁判員を、要するに今のお話でいいますと、多数にするということが我々民主党の強い意見であったということも少し念頭に置いて本部での御議論に反映をさせていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 次に、行政訴訟改革の問題についてお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。
 これも、冒頭申し上げました内閣総理大臣を本部とする司法制度改革本部が行政訴訟改革をやるというのは若干の違和感があるわけでありますが、しかしやらないよりはいいわけでありまして、かつまた内部改革というのも極めて重要でありますから、行政自らが今までの行政裁判を振り返って、こうしたところが問題であったということを率直に問題を提起され、そして自発的にそうしたことを解決されるということ自体は私は歓迎をしたいというふうに思いますが、そのことを更に何といいますか、より実のある議論にするためにも、国会がこの行政訴訟改革については特にリーダーシップを発揮しなければいけない課題の一つだというふうに考えております。
 そういう中で、行政訴訟というのは、もちろん個別の行政行為、行政処分によってその当事者が権利救済をされるという点がこの行政訴訟の極めて重要な目的であるということは、これは議論がない、衆目が一致するところだと思いますが、加えて正に有権者である、主権者である国民の皆様方がこの行政という行為総体をチェックをするという機能をこの行政訴訟が担っている。特に日本の場合は、裁判所が立法行為あるいは行政行為について裁判の場で行政をチェックする、司法が行政をチェックするという場は正にこの行政訴訟の場しかないわけであります。
 そういう意味で、違法な行政から国民を守るという目的とともに、行政の違法な、あるいは不当な行政というものを事前、事後にきちっと是正をしていくんだという観点から、行政訴訟制度というものをもう一度きちっととらえ直して議論をしていただきたいというふうに思っております。これについても次期通常国会ということがささやかれておりますけれども、現在どういうふうな検討状況にあり、今、何が検討の論点になっているのかについて御紹介をいただければと思います。

○政府参考人(山崎潮君)
 ただいま御指摘ございましたけれども、ちょっと委員の言葉の中で、司法制度改革につきまして、今、行政事件訴訟の関係を検討しておりますけれども、これ行政改革ではなくて、やはり司法の面から見た改革というふうに我々は位置付けておりますので、そういう点で、私はそういう意味では違和感はそれほどないというふうに、ちょっと考え方違うかもしれませんけれども、そういうことで結果としてそれが行政について影響を与えるということはあり得るかもしれません。
 現在行っている状況でございますけれども、これを申し上げますけれども、私ども、昨年からずっとその検討を進めてまいりまして、本年の七月に検討会における論点整理をいたしまして、行政訴訟検討会における主な検討事項というものを作成いたしました。これを基に行政官庁等から、全行政官庁からヒアリングを行いました。それ以外に事務局の方で国民からの意見募集を行うということをしたわけでございます。これにつきまして、中身は、今まで議論をしてきたものの論点を取りまとめておりまして、検討会の意見がおおむね一致しているものもございますけれども、そうでないものも幅広く今、検討事項として取り上げているわけでございます。
 今後でございますけれども、こういうような意見募集あるいは行政庁のヒアリング、こういうものの結果を踏まえまして更に検討を深めたいということでございます。今後の検討会では、来年の通常国会へ法案の提出に向けまして、問題点や考え方を更に整理して煮詰めていきたいということを考えている状況でございます。

○鈴木 寛
 私が違和感だと申し上げた趣旨が事務局長に十二分に御理解いただけなかったと思いますが、日本の行政訴訟の問題点あるいは市民感情の中にある問題意識は、行政訴訟というのは行政庁対いわゆる国民という構造が行政訴訟であります。
 そういう中で、どうも日本の、これは国民感情の中にということでありまして、実際の議論は通常国会に是非二時間でも三時間でもやらしていただきたいと思いますが、要は、どうも行政訴訟は行政に極めて有利なフレームワークになっているし、それから行政訴訟の判決結果も、もちろん司法権の独立でありますから中立公正にやられているとは思いますが、実態としてはどうも行政庁に有利なように裁判がなっているなと、あるいはその傾向が最近強くなっているなという感情があるという中で、行政訴訟を直していこうという問題が国民の側からあるいは裁判所の側から提起をされるんであれば、それは、それこそ公正な場で議論がなされるなと思うわけでありますが、行政訴訟の問題を行政の側から直していこうというところに、私は、違和感といいますか、そこに一定の限界があるんだろうというふうに思います。
 でありますから、正に国民の側から行政訴訟の在り方を更にいいものにしていこうといった場合には、やはりこの国会がきちっとこの行政訴訟の在り方についてはよりきちっと議論をしていかなければいけない、それが法務委員会だと私は思っているということでございまして、この問題は行政の側から、そして国会の側から、裁判所の側から、この三者からきちっと議論をしていくべきではないかということを申し上げているわけでありまして、この続きは是非通常国会でやりたいと思います。
 それで、いわゆる市民感情の中に、それから個別の事案を見ても私もそう思いますが、やはり日本の行政訴訟法というのは極めて厳格な原告適格、あるいは訴訟に代表される原告適格と被告適格と両方の議論がありますが、訴訟要件が極めて厳格に過ぎるという問題点、それからいわゆる処分性、我々も大学のときに原告適格と処分性ということをたたき込まれましたけれども、この処分性の議論というものを、これまた極めて厳格に過ぎるのではないかと。
 その処分性の議論の中で、いわゆる門前払いになっている、処分性がないということで行政訴訟の俎上にのれない、のしてもらえないという事案がやはり多いのではないかというふうに思います。それから、仮に俎上に上っても、いわゆる訴訟類型あるいは判決類型というものが極めてその取消し訴訟というところにこれまた厳格にされているがために、実質的に行政の行為に対して何らかの是正を求めたいという人たちの思いというのがなかなかこの行政訴訟によって解決をされていないという問題があるという認識を持っております。もちろん、このことは検討会でも論点に上がっているということも承知しておりますが、そういう観点で、この行政訴訟改革の本旨に立ち返って、是非広範な議論を更に詰めていただきたいということをお願いをするに今日はとどめておきたいと思います。
 それでは、ちょっと次の質問に移りたいと思いますが、野沢法務大臣は今国会の所信の中でも少年非行の問題について極めて重要な問題であるということをお話しになり、問題提起をされました。私たちも全くこの問題意識については同じでございます。これは本当に国会を挙げて、与野党を超えて取り組んでいかなければいけない問題だと思っておりますが、所信の中でお触れになりました少年非行についてもう少し詳しく、現状の動向、あるいは犯罪ケースの内容、そして、所信の中では少年非行対策のための検討会を具体的に引かれまして、対策を講ずると、こう言っておりますが、それ以外にもいろいろ検討すべき対策はおありになるんだと思います。
 そして、検討会の検討を待っていたのでは遅い問題もあろうかと思います。この問題についての現状認識、そして、どういったことから、どんなことを取り組んでいかれようとされているのか、この点についてお話をいただければと思います。

○国務大臣(野沢太三君)
 少年犯罪につきましては、委員御指摘のとおり、私の就任のときにもこの点につきましては職員に訴え、そしてまた記者会見でも意見を申し上げたところでございまして、明日の日本を担う子供たちの在り方について大変実は心を痛めて、また、これからもしっかり取り組むつもりで臨んでおるところでございます。
 そこで、今御指摘のように、少し具体的にこれを申し上げて、今後の御議論をいただきたいわけでございますが、少年犯罪につきましては、検察当局におきまして必要な捜査を遂げまして、事案に応じた適正な処理に努めると。このほか、法務省としては、保護処分を受けた少年について矯正保護の過程で必要な指導を行い、少年を改善、更生させるという大変重要な任務を担っておることは御承知のとおりでございます。
 少年犯罪に適切に対応し、将来の非行を防止するには、このような役割をまずきちんと果たすことが最も基本的で重要な対策であり、これらの機能を一層充実させる必要があると考えております。
 また、少年非行につきましては様々な要因が指摘されており、政府を挙げた取組が重要ですので、今後とも関係省庁と連携しつつ必要な対応を図ってまいりたいと考えております。
 具体的に申し上げますと、検察当局においては、これまでの役割に加えて、改正少年法により少年審判の事実認定手続への関与、協力という新たな役割が与えられたところでありますので、適正な法の運用に資するよう法務省としても体制強化などに努めてまいりたいと考えております。
 また、少年院においては、一日平均の収容人員がこの五年間で約一・四倍に増加をいたしまして、約三割の少年院で収容率一〇〇%を超える過剰収容状態にございます。そして、問題性が根深く、教育の必要上長期間の在院を要する少年も急増しておる中で、今後とも引き続き必要な予算、要員の確保のほか、必要な施設整備や職員の資質向上に努めてまいりたいと考えております。
 そして、保護観察においては、少年の保護観察事件あるいは環境調整事件が平成七年以降増加を続けておりまして、平成十四年はわずかに減少したものの、高い水準にまだございます。質的にも凶悪粗暴事犯者、低年齢化、罪の意識に乏しく内省が深まらないことなど、処遇に困難を伴う事案が増加しておりまして、家庭、学校、地域の犯罪抑止力が低下したことが一つございますが、監護能力にも問題がありまして、特段の助言、支援を要する保護者の増加といった問題を抱えておりまして、今後とも必要な予算、人員の確保、保護司適任者の発掘、研修の充実などに努めてまいりたいと考えておる次第でございます。
 子供の問題は、私は、家庭、学校、社会含め、大人の問題としてしっかり取り組むべきだということを記者会見にも申し上げた次第でございまして、今後とも委員のまた御指導をちょうだいしながら、しっかり働いてまいるつもりでございます。

○鈴木 寛
 是非よろしくお願いをいたしたいと思います。
 もう一つ、私が御質問を申し上げたいのは、特にこの少年事件に関しまして、少年事件の犯罪などの被害者になられた方々、あるいは被害者の御家族の本当に大変に言葉では言い尽くせないような状況の中で、我々国会、立法府にある者が本当に真剣に取り組んでいかなければいけない極めて悲惨な痛ましい状況というものが、我々もその被害者の、あるいは被害者の御家族、あるいはその支援をされている関係者の方々から我々にも寄せられておりますし、またそうしたことを様々な仲間からも聞いております。
 ただ、正に少年をめぐるいわゆる犯罪、あるいは非行を行った少年とその更生、あるいはその人権の問題、そして犯罪の被害となった犠牲者、あるいは犠牲者の御家族との、何ていいますか、両方の法益というものを考量しながら、そして新しい制度というものを不断に見直していく、あるいは深化をさせていくということは極めて重要な課題であると思いますし、特に昨今、犯罪の被害、犯罪の実態というものが深刻化をしているという中で、被害に遭われた方あるいはその家族の方々の特に対応というものを現行の制度のままで、あるいは現状の実態のままでいいのかどうかということは、やはり犯罪の深刻化ということに照らしてもう一回見詰め直していかなければいけない、考え直していかなければいけない問題だというふうに私は理解をいたしております。
 そこで、よく言われております、犯罪がどのような状況でどのように行われて、そして犯罪に及んだ少年がどういうふうな更生の状況にあるか、あるいはその前提としての自戒、反省をしておられるかということが、なかなか犯罪の被害者あるいはその御家族が知ることが難しいと。こういう中で被害者並びに御家族の御心痛というものは特に強まっているというお話を伺っているわけでありますが、こうした少年の審判あるいは更生について被害者並びに被害者の御家族がどのように参画をしていくのか。
 あるいは現在、少年審判は傍聴が認められておりません。これは、少年審判が一般者に対しての傍聴を認めないというその制度の目的について私も十二分に理解をしているつもりでありますが、一般の傍聴者と、あるいは犯罪の被害者が審判の状況あるいは更生の状況を知るということは、これは本質的に意味が違うことだというふうに思っております。
 こうした極めて難しい論点を様々に含んでいる問題でございますが、この点について今どのような検討を今法務省内でされているのかということについてお答えをいただきたいと思いますし、犯罪被害者への情報の告知という観点で、現状の制度がどのように改善をされているのかということも含めてお答えをいただきたいと思います。

○国務大臣(野沢太三君)
 先日もNHKスペシャル、治安は回復できるかと、この番組の中で少年犯罪に対する特集がございまして、私もビデオを撮って拝聴したわけであります。問題の深刻さと、特にただいま委員御指摘の、被害者に対する情報公開の問題等についても触れられて、深刻な問題として受け止めたところでございます。
 そういう中で、被害者への対応としては、まず問題とされるのが適切な情報提供と、これであろうかと思いますが、第一に、この点については、平成十二年の少年法改正によりまして、少年審判手続の段階で被害者に対し非行事実に関する事件記録の閲覧、コピー、意見陳述、審判結果の通知などの規定が整備され、順調に運用されているものと聞いております。それから二つ目は運用上の措置でございますが、少年院に収容された加害少年の社会復帰、出院、仮退院ということが付いて回りますが、これに関する情報を被害者に提供するための制度を整備する方向で、現在、関係部局の間で検討を進めているところでございます。
 出てきたけれども、謝りにも見舞いにも来なかったという話が先ほどの特集の中でも指摘があったところでございますが、なお少年院での加害少年の状況に関する情報につきましては、少年のプライバシー保護の観点から開示しないことが原則になりますけれども、特に必要と認められる場合などには、少年院の職員が被害者等に対して処遇状況を説明するケースもあるものと聞いておるところでございます。
 そして、重要な点は被害者側に対する謝罪の問題でありますが、この点については、第一に、家庭裁判所の調査、審判過程においては、従来からその過程で少年への保護的措置が行われており、これに加え、平成十二年の少年法改正により保護者に対しても責任を自覚させるための訓戒、指導等の措置を行い得ることが明文化されたところであります。第二に、少年院におきましては、従来から非行を振り返らせ罪の意識を覚せいさせる教育を重視していますが、あわせて、老人ホーム等での社会奉仕活動や育児、教育など、さらに、最近では犯罪被害者による講演会の実施などにも力を入れており、実際に謝罪の手紙を出すなど具体化した事例もあると伺っております。その実施に当たりましては、被害者の御意向や少年の環境などの個別の事情も慎重に踏まえておるところでございます。
 さらに、出所後、保護観察の段階に入りましても、本人の施設収容中から被害者等に対する調査の充実を図り、加害少年やその家族に対して必要な指導、助言を行っているほかに、保護観察の処遇に入って特別遵守事項としては、慰謝、慰霊の措置を設定しまして実行を促しておるところでございます。その前段階といたしまして、自らの行動を内省させるとともに被害者の心情等を考えさせたりするなど、贖罪意識の涵養を図るような働き掛けを行ったりいたしております。
 これらの施策を一層充実させていきたいと考えておりますが、先日も保護司の皆様に、代表お集まりいただきまして、法律の世界だけでなく保護司の皆様の長い経験、人格、人徳に基づく御指導を改めてお願いをしたような次第でございます。

○鈴木 寛
 是非そうした検討を更に深めていただければと思います。
 時間がございませんので、質問を三つまとめてさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 今のことにも絡むわけでありますが、やはり法教育といいますか、小学校、中学校、高等学校の段階から、やはり法治社会あるいは法というものをきちっと教育をするということは、私はこれは極めて重要なことだと思います。これは裁判員制度のことにも絡むというふうに思っております。
 そういった意味で、法教育をこれから更に充実させていただきたいと思っておりますが、その点についての文部省のお考えをお伺いをしたいと思いますのが一点。
 それから二つ目は、来年四月からいよいよ法科大学院が開始をいたします。この問題はこの法務委員会でも、特に法科大学院で学ぶ学生が学費と生活費と、特にこの場合は社会人がもう一回入学をしていくという場合もあるわけでありまして、この法科大学院で学ぶ学生の経済的な財政的な支援というものは、これは極めて重要だという問題提起をさせていただきましたが、来年度の予算要求あるいはその査定が始まっていると思いますけれども、この点については、この宿題をどういうふうに文部省は今取り組んでおられるのかをお答えをいただきたいということであります。
 それから三つ目は、これも法科大学院に絡む統一適性試験の問題であります。
 これはもう新聞紙上でよく御存じだと思いますが、八月に実施されて、また十一月に行うと、こういうことになっております。もちろん、再三行うことはいいわけでありますが、八月に受けた人は十一月に受けれないと。この不公正、不公平さが今問題になっております。すなわち、前から準備をきちっとして、その方はほとんど八月で受けている。全く受験生と関係ない、入試センター側の告知が遅れたと、そのことについて救済をするという意味で十一月に行うということは私は良かったと思っているわけでありますけれども、なぜ二回受けれないのかと。
 ちなみに、アメリカのLSATでは何回か、複数回受験をしてという制度になっているわけであります。これはだれも困らないわけですね。要するに、学生の側も、その学生の能力というものを複数回受けることによってより適正にその評価をしてもらえる、そのときの体調とかいうことと関係なくアベレージできちっと見ることができる。法科大学院、正に入学選考をする側も、その学生の平均的な、安定した実力というものを評価する上で複数回の受験というのは困らない。さらに、これは蛇足でありますが、このLSAT、適性試験を主催をする主催者も受験料収入が増えるわけでありますから、だれも困らないわけでありまして、なぜこの複数回受験というものができないのか、私はこのことについてもう一歩踏み込んだ措置を取っていただきたいということをお願いを申し上げたいと思っております。
 以上、三点についてお答えをいただければと。

○政府参考人(清水潔君)
 お答え申し上げます。
 まず第一点についてでございますけれども、法教育の必要性に関してでございます。
 正に、様々な日常生活における場面でございますとか、あるいは司法制度は国民全体が支えるべきものという司法制度改革の理念等を踏まえまして、そういう意味で、国民各層が様々な学習機会を通じて法律に関する基礎的な素養でありますとか理解とか態度を身に付けることは重要であるということはよく認識しておるところでございます。
 もう、これは先生御案内のところでございますけれども、例えば今おっしゃられました小中高等学校段階では、現行の学習指導要領の下で、それぞれの発達段階あるいは教科特性を踏まえながらではございますけれども、教科あるいは特別活動など、教育活動全体の場面で法や決まりの意義でありますとか、そういうあるいは仕組み、あるいはそれらを自らの生活に生かす、あるいは社会の成員としての自らの生き方、あるいはそのかかわり方ということについては、そういう態度を身に付けさせようということで指導を行うということにしておるところでございます。
 私どもそういう意味で、様々な場面を通じまして、生涯学習の場面もそうでございますけれども、例えばこのことにつきまして、様々な場面を通じてその充実などに力を尽くしていきたいというふうに考えておりますのが第一点目ということでございます。
 それから、第二点目でございます。
 これもかねてから司法制度改革ということで法科大学院の整備にはコストを要するということ、あるいは三権の一翼を担うということで、私どもといたしましては、進学の機会の確保と同時に法曹養成の中核的な機関としての法科大学院の水準をどう確保するか、そのための言わば学生個人に対する支援と大学院自体に対する支援とを適切に組み合わせながら、公平で競争的な仕組みとしたいと、こういうふうに考えておるところでございます。
 具体的に概算要求におきましては、奨学金につきましては、希望する学生のすべてに貸与するということを目指して、貸与率八〇%という形で設定いたしまして、一か月当たり貸与額の上限を現行の十三万円から、先生にもかねて御指摘いただきましたように、現行二十万円まで引き上げて年間二百四十万円、無利子との併用貸与を合わせれば最高三百四十四万円まで貸与することができるよう八十五億円の要求を行っております。これは、無利子二十五億円、有利子六十億円、計四千八百人についての人員での要求でございます。
 第二点目として、私学に対しまして、私立の法科大学院の授業料抑制あるいは教育の充実という観点から、私学助成に法科大学院のための枠として五十億円を要求いたしております。
 さらに、法科大学院については、何せ私ども新しい仕組みでございまして、これからその充実のために様々な意味での創意工夫あるいはトライアル、そしてその評価を含めた資源配分ということが重要になるわけでございまして、国公私を通じた競争的環境を構築するという観点から、法科大学院における教育の内容、方法の充実、あるいは特色あるプロジェクトに対して支援を行う経費として七十八億円ということでございまして、現在、法科大学院関連予算の総額としては、財政投融資分の有利子奨学金六十五億円を除きますと百五十三億円ということで計上させていただいているところでございます。これは要求段階でございますので、私どもとしては関係省庁との連携を図りながら予算確保に全力を挙げている。(「答弁簡潔に」と呼ぶ者あり)はい、恐縮でございます。
 それから、適性試験の問題、三点目の適性試験でございます。
 これは本年度限りの特例措置として、必ずしも最初の時点で十分な情報が得られなかったであろうということで、大学入試センターの方で実施することとしたものでございます。本年度限りの特例措置ということでの救済措置でございまして、現在のところ八千人が受験するというふうなことで願書を出しているところでございます。
 適性試験についてでございますけれども……

○委員長(山本保君)
 簡潔にお願いします。

○政府参考人(清水潔君)
 はい。なかなかこの適性試験の性格上、いわゆる回数、あるいは練習効果というものは必ずしもないのではないかというふうなことで、これはアメリカ等でも言われているところでございますし、私どもはそういう意味では必ずしもこれは本年度限りの特例措置として御理解を得たいというふうに思っておりますし、また実際上、大学の使われ方を見ますと、入試センターのみならず法務財団の適性試験を併せて検討するという大学も半数以上になっているわけでございまして、その適性試験の活用の仕方も実は様々というふうな状況でございまして、また、いろんな意味で私どももこれをモニタリングして、いわゆる試行テスト、あるいは今回の本試験、あるいは追試験というものがどの程度、例えば私どもが申し上げましたようなそういうことがあり得るのかどうか、いずれ全体として、アメリカのLSATのような形については今後の検討課題ということで、今のところは私ども御理解を賜れればということでございます。

○鈴木 寛
 終わります。

 


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