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 憲法調査会  憲法前文について

2004年04月21日 


○鈴木 寛

 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 今日、前文についての議論、自由討議をしているわけでありますが、私は個人的にはやはり新しい時代認識というものをきちっと踏まえた前文の策定をやっていきたいというふうに思っております。
 それでは、新しい時代における価値というのは何かということで、これは極めて難しい問題なわけでありますが、実は平成十二年に日本学術会議というところが脱物質・エネルギー志向の価値観というものを提起をいたしております。私は、正に今あるどの国の憲法も、物質・エネルギー志向の社会、正にモダンソサエティー、産業社会における憲法というものだったんだと思います。
 私が思いますに、我が国がこの時期に新しい憲法を議論するといったときに、是非このポストモダン、要するに脱工業化社会における憲法を作るんだという意識をもう少し強く持ってもいいのではないかなというふうに思っております。
 私は情報論というのを少し勉強してまいりましたが、情報の定義、いろいろありますけれども、物質・エネルギー以外の価値あるすべてのものを情報というという定義があります。そういう観点に立ちますと、私はそのポストモダンソサエティーの本質は情報文化社会というふうに言っていいのではないかと。日本は是非、世界に先駆けてポストモダン、情報文化社会、脱物質・エネルギー志向の時代における憲法というものについて世界に先鞭を着けていきたいというふうに思うわけであります。
 そうしたときに、近代産業社会においては、大量生産、大量消費というのは極めて重要なアクティビティーでありました。そのために近代国民国家システムあるいは富国強兵政策というのが取られたわけでありますが、情報文化社会においては大量生産、大量消費に代わって、今日の参考人からも少しお話がありましたが、やはりコミュニケーションというものが極めて重要な人間のアクティビティーになるんだろうと。
 憲法は、前文及び、あるいは憲法全体を通して、それぞれの人々のコミュニケーションというものをきちっと保障をする、あるいは支援をしていくということが重要でありまして、そのためには、情報の入手、そして情報の理解、そして編集、再構成、情報の創造、そして情報の発信と。今でも情報のアクセス権、知る権利、あるいは学習権、表現の自由というのはありますが、コミュニケーションという観点で再構成はできるのではないかと。
 そうした豊かなコミュニケーションがきちっと行われている状態、これを実現されている状態が文化度が高いというふうに私は定義をしているわけでありますが、そういう意味で、文化権あるいはコミュニケーション権、あるいは情報編集能力を獲得するための、コミュニケーション能力を獲得するための学習権というものが次なる憲法の骨格に据えられてしかるべきだというふうに思います。
 それから、本日、日本のアイデンティティーとは何かという議論がございました。私は、日本のアイデンティティーは正に価値多元主義、言い方を換えれば、やはり多神教というものをこの国がずっと社会の基盤に据えてきたということは見逃せないというふうに思います。
 多様な価値の存在をまず認める。路傍の石にも神が宿っているんだということは正にそういうことだと思いますが、すべての存在を認めた上で、その存在感の共生と。正に聖徳太子の時代から、和をもって尊しとなすというのが我が国の極めて重要な伝統の一つであろうかと思いますが、そうした様々な存在の間を取っていって共生をしてそしてハーモナイズしていくという、そうしたメディエーターとして我が国が世界の中で重要な役割を私は果たしていきたいと思いますし、この国は正にそうしたコミュニケーション、ハーモナイゼーションあるいはコラボレーションといった価値を実現していく社会なんであるということを次なる時代に是非とも表明、宣言をしていくと、そういう観点から憲法の前文というものについての議論をしていきたいなと思います。
 最後に、私は、こうした議論というのは、やはり政治家あるいは国民一人一人が行わなければならないというふうに思います。
 何が申し上げたいかといいますと、いわゆる、これはそういう方には大変失礼なんですが、憲法を専門に研究をしている方というのは従来の憲法についての専門家かもしれません。しかし、我々は、次なる憲法、次なる時代というものにおいては専門家も一般もないと思います。すべての人たちがそれに参画をする資格と責任があって、すべての人たちの意見と行動というものがひとしく重要であり、そうしたすべての方々の発言、行動、イニシアチブというものが正にハーモナイズすることによって新しい時代の憲法を作っていくんだということを申し上げたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。


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