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 憲法調査会  「新しい人権・社会権」について

2004年11月17日 


○鈴木寛

 私たち民主党も、正に産業社会から情報文化社会に今移行しつつある、そうした歴史的な認識を持って憲法をつくるべきだというふうに思っております。そうしますと、産業社会において重要視されておりましたこの知る権利というものも、その重要性は情報文化社会においてはより重要になってくると思っておりますし、更に申し上げますと、市民から知民へというようなことも言われますが、正に人々のより質の高い豊かなコミュニケーション主体としての尊厳というものは、憲法の中心的な人権の一つに据えられなければいけないというふうに思っております。すなわち、人々が自己の思想、意見を形成し、かつその意見、思想が自由な流通プロセスによって保障されるということが重要だというふうに思っております。
 現行の憲法議論における知る権利というのは、正に自由権的構成をされているわけでございますが、私どもは、正に実質的な豊かなコミュニケーションの機会と能力をきちっと確保する、すべての国民、市民、知民に確保するという意味で、消極的自由権的構成ではなくて、積極的な請求権をも含む権利として再構成をしていくべきではないかというふうに思っております。したがいまして、狭義の知る権利を、言わばコミュニケーション権あるいは文化権という意味に発展、拡大、深化をさせていくということが必要だと思います。
 そのコミュニケーションの内容でございますが、まず第一段階としては、情報収集あるいは受領の権利、これは狭義の知る権利に該当すると思いますが、その次の段階として、情報編集あるいは情報創造というステージがございます。これに関しましては、正に学問の自由、それから山下委員や簗瀬委員からお話がございました正に学習権という形で、私は実は憲法二十六条の改正案も出版をさせていただいておりますが、こうした議論を更に深めていく必要があると思います。
 さらに、そこで創造した情報をやはり発信をしていくということもきちっと確保、積極的に確保されていかなければならないというふうに思います。
 そうした中で、対政府に対する知る権利というものはかなりの議論が重ねられておりますが、私が簗瀬委員の意見に追加して申し上げたいのは、経済活動の公正な活動については独占禁止法というものがございます。しかし、現在の情報文化社会の実態を見ますと、知る権利の対象はもちろん政府が極めて重要な対象であることは間違いないわけでありますが、それ以外にも、例えば企業とかあるいは病院とか、あるいは大学とか学校とか、あるいは更に申し上げると報道機関、そうした公的性格を帯びた重要な組織、団体というものに対しても、いわゆる市民側からの積極的な情報収集権というものについて議論を深める必要があるというふうに思っております。
 それから、情報編集創造能力についても、更に踏み込んで、正に人々が自己の思想、意見を形成するため、実質的に一定程度以上の文化度の高い意見を形成するための能力というものを学習する機会というものを更に社会は保障をしていかなければならないというふうに思いますし、それから情報発信の場も、事実上、情報発信をできる人とそうでない人というものの差というものも、強者弱者の問題というものも実は深刻でございます。例えば、反論権という議論がございますが、こうしたものについても更に議論を深めていかなければならないというふうに思っております。
 これも簗瀬委員と同趣旨でございますが、知的活動あるいは知的なあるいは文化的なコミュニケーション活動を促進をするという目的のために、単にその成果物であります知的な情報に対して財産権を付与するという社会的な制度設計というのは、実はこれはもろ刃のやいばといいますか剣でございまして、実はデジタル革命の本質はより低コストでより多くの人たちが情報を共有できるというところにございます。そこにいわゆる二十世紀的な排他的処分性を付与する財産権というものを単に付与しますと、もちろんそのことは大事なわけでありますが、付与しますと、せっかくデジタル革命によって人類が得た便益を損なうという側面があるということでございます。
 もちろん、知的創造活動に対するインセンティブをどのように付与するかということは極めて重要な問題で、従来はそれに財産権というものを付与していたわけでありますが、しかし、ここは財産権の付与という以外にも様々な新たな社会制度設計のありようというものがございますので、いずれにいたしましても、コミュニケーション活動あるいは知的文化的創造活動を促進し、そのことがすべての人々によって行われ、そしてその便益が享受されるという社会のために、従来の人権の構成というものをも再度その観点から見直し、再構成をする。単に、いわゆる基本的人権と社会、その自由権と社会権という構成ではなくて、情報活動という意味で、自由権、社会権と二分できない、実は一体の、今申し上げた一連の諸活動をすべてのステージでもう一度見直していくという作業あるいは検討というものが必要だということを申し上げさせていただきたいと思います。
 以上です。

(他発言者の後)

○会長(関谷勝嗣君) 
他にありますか。鈴木君。


○鈴木寛
 もう一点申し上げたいのは、結社の自由でございます。
 正に今までの憲法というのは国家と個人ということを規定しておりましたが、もう既に、いわゆる先ほども申し上げましたように、様々な結社、団体というものがこの社会の重要な構成要素になっていることは間違いないと思います。
 手短に申し上げますと、日本国憲法では結社の自由が守られている、認められているにもかかわらず、我が国は、例えば私立学校の設置などで事実上の結社の自由が相当制限されている例がある、これは民法三十四条などの問題でもそうだと思います。例えば私立学校なんかの場合は、先ほど申し上げました学習の自由とかあるいは教育の自由というようなことについてのその一定の制限ですから、こうした問題を、実質的に結社の自由を保障するということは極めて重要だと思います。
 その一方で、結社の責務と結社の義務という、例えば企業とか団体とかそういったものについて、従来は憲法といえば国と市民との関係を構成しておりましたが、結社の自由の実質的確保と、そしてそれによってできた結社の義務と責務ということについて問題提起も併せさせていただきたいと思います。
 以上です。



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