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 憲法調査会  参議院のありかたについて

2005年3月9日


○鈴木寛

 私から申し上げたいことは、今回議論となっております参議院の在り方、更に申し上げますと参議院改革を議論するその目的は何だろうかということを改めて申し上げたいと思います。
 私は、正にこの国民主権の徹底と、そのために参議院を含むこの国の統治機構というものをどのように整備あるいは改革をしていったらいいのかという観点が今回の二院制小委員会の基調にあったと思いますし、そのことによって実り多き議論だったということを皆様方にも御紹介をしたいと思いますし、また、この憲法調査会におきましても、そうした観点から更にこの議論が発展することを強く望むものでございます。
 具体的に申し上げますと、戦後六十年がたちますけれども、我が国の政治あるいは政策の状況を見ますと、今なお官僚主権と言ってもいいほどの官僚中心的な運営がなされているということは指摘せざるを得ないというふうに思います。 二院制小委員会の中でも議論になりましたけれども、その結果、国会での議論というものが、他の先進諸国でございましたならば、国会の審議を通じて提案をされた法案あるいは政策というものが深化をしていく、そして議論をする中でより良い議案に成長して、そしてそれが国の政策として決定をされ、そしてそれが実現をされると、こういうプロセスを経ているわけでありますし、議会というのは、正に政策を温め育てるというインキュベーションとしての機能を果たしているわけでございます。

 しかしながら、我が国のこの国会の議論あるいは行政府との国会との関係を見ますに、憲法調査会での議論を始めとして、本来、特に参議院はそうでありますけれども、議員同士の意見交換あるいは議論の質というものは高いということがこの憲法調査会の議論などでも証明をされたと思いますけれども、そうした自由濶達な議論の素地はありながらも、通常の法案の審議というのは、この会期内に内閣より提出されたいわゆる閣法をどれだけの通過率といいますか、法案提出者の側からすれば無事に会期内に通すかと、このことをめぐって与野党が日程をめぐる攻防に終始するといったのがこの六十年間の国会になってしまっているのではないか。特に、昨今そうした傾向というものがより助長をされるということは、極めて残念なことだろうというふうに思っております。 こうした状態を改革をして、具体的にこの国会の議論によって政策が深化をする、議案が発展をしていくと、そのために十分な熟議を尽くすと、こういう観点から、い-かに参議院を中心とする国会改革を果たしていくかという視点が極めて重要だというふうに思います。 その中で、議案の修正というものに対してもう少し柔軟にといいますか、あるいはおおらかにといいますか、というような文化、風土あるいはそれを担保する制度というものについて更なる検討が必要だというふうに思いますし、更に申し上げますならば、現在は内閣より提出されました閣法というものが、議論をする、そのための日程あるいはそのための議事運営というものが優先をされているわけでございますけれども、それと並んで、我が国憲法は議員の議員立法権というものを認めているわけでございます。現に、例えば、参議院の調査会が超党派的な活動で極めて質の高い重要な議員立法を行って、そして世の中に大変な公益を与えているという事例もございます。そうした観点から、この議員立法の議事の促進ということ、あるいはそれを生み出していくための調査会の充実、更に申し上げますならば、超党派の有志による議員が議員立法にまで事実上こぎ着ける、そのために政党との関係、いわゆる党議拘束あるいは政党による議員立法活動への縛りを抑制的に行うと。これについても、正にそうした文化、制度というものがこれからは必要になってくるというふうに思います。

 それから、国民主権の徹底という観点から申し上げますと、やはり、既に小委員会報告でも触れられましたけれども、いかに多様な民意を反映をした国会をつくるかということが今までに増して、国民各層の価値観の多様化の進展と相まって、より重要になっているというふうに思います。そうした観点から、衆議院がいわゆる地域代表、それぞれの小選挙区に住む市民の皆様方の代表者を送る院であるということであるならば、参議院におきましてはそれとは違った、小選挙区制とは違った選挙方法によって、しかも地域的利害ということよりも、むしろコミュニティー・オブ・インタレスト、あるいはテーマコミュニティーといった、正に関心を共有するネーションワイドないわゆる中間集団的なコミュニティーの代表者を国会に送り込むと。そのことによって、地域に密接不可分な関係を持つ利害と、それからそうした地理的束縛を超えた利害あるいは関心というものの二つがこの国会の場に持ち込まれる、意思として持ち込まれるということが可能になるというふうに思っております。そういった意味で、この選挙制度あるいは議員の選出方法といったものが極めて重要な意味を持つと思いますし、この点についての精力的な議論の進展というものが強く望まれているということを私からも申し上げたいというふうに思っております。 直接選挙制につきましても、正に国民主権を徹底をしていくんだという観点からしますと、より多くの国民の皆様方の意思が反映をされるという機会というものを縦横無尽により分厚い、そうした制度設計が必要だという観点から、直接選挙制の維持というものは当然の結論であるということも申し添えたいと思います。

 最後に、正に官僚主権・独走を抑制するための行政監視あるいは政策評価といったことが国民主権の観点から極めて重要だと、それを担うのが参議院であるということを申し添えて、私からの発言とさせていただきたいと思います。 ありがとうございました。

 以上です。




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