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  共生社会に関する調査会 

2002年04月10日 

○鈴木 寛
 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 本日の議題は児童虐待防止に関する件ということでございますが、直近の役所から教えていただきました統計によりますと、平成十二年度で児童虐待の相談件数は何と一万七千七百二十五件ということでございます。ただいま後藤委員からもお話がございましたが、正に私もこの児童虐待のお話、いろんな方々から伺います。そして、その惨状を報道も含めて耳にするたびに、その光景を思い浮かべるだけで本当に胸が締め付けられる思いがいたします。
 事この問題は、人間の生命とか尊厳とかいう問題でございますし、また、政治の仕事というのは正にこうしたことをきちっと正面から取り組んでいくということがその任であろうということを信じて、私もこの世界に入りました。特にこの児童虐待の問題というのは、子どもの話でございますから、私は、GDPを上げていくということ、その政策も重要でありますが、その政策以上にこの児童虐待の問題をゼロにしていくということの方がはるかに重要な、国会あるいは人間としての仕事ではないかということを思っております。
 本日は、そういう観点から、私自身もこの調査会に所属をさせていただいていることに大変に誇りを感じておりますし、また同時に、責任の重さを痛感しているということを冒頭にお話を申し上げて、議論を始めさせていただきたいと思います。
 この児童虐待の問題については、第百四十七の通常国会で、平成十二年でございましたが、児童虐待防止法案、全会一致で可決成立をいたしたところであることは皆様方もよく御承知のことだと思います。この法律ができたことによりまして、児童虐待への対処のプロセスというものが社会的に、法的に明らかになりまして、そのことについて、児童虐待が大変な社会問題なんであるということが社会的にも認知がされ、そして、この法律の中で通報義務が規定をされたということなどから、先ほども御紹介をさせていただきましたが、平成十二年には児童虐待相談処理件数一万七千七百二十五件、こういうことになっているわけであります。
 このことは、今まで児童相談所が知り得なかった事例がこの法律の制定によって表面化をしてきたということだと思いますけれども、まず御質問を申し上げたいことは、もう先ほどの後藤委員の質疑で同法の各施策についての概要はかなり明らかになりました。
 そこで、もう一回この法律に立ち返りまして、法律が平成十二年にできたわけであります。そして、皆様方は正にこの法律を行政の執行者として日々担当されていらっしゃるわけでありますけれども、その児童虐待の現状というものが今、その平成十二年から比べてどういうふうになっているのかと。それから、この法律ができて様々な施策を皆様方は一生懸命推進をしていただいているわけでございますけれども、その施策についてどのように評価されているのか。
 もちろん非常に頑張っておられるところもあるし、それから、自らやっておられてこの辺がちょっと不十分だなとか、こういうところをもうちょっと何とかしたいなといういろんな思いをお持ちの中で日々行政に当たられていると思いますが、今申し上げました児童虐待の現状と、法律の施行に関する政策の評価についてお聞かせをいただきたいというふうに思います。

○政府参考人(岩田喜美枝君)
 児童虐待防止法のまず最大の効果は、虐待としつけは違うんだと、何が児童虐待かということについてその定義が法律で明らかになったということで、国民や関係の行政機関や関係者の理解が大変進んだということがあるというふうに思います。また、通告の義務についても法律で明らかに規定されましたので、国民の義務として通告をしなければいけないということも相当浸透したということであろうかというふうに思います。
 厚生労働省といたしまして一番力を入れたことは、ちょっと時間の制約もありますからごく簡単に言いますと、二つございまして、一つは、この児童虐待防止法の施行のやはり中核的機関となる児童相談所、この体制を質量とも、特に専門性の向上という質の問題でしょうか、それをどういう形で強化するかということ。そして、その児童虐待の問題というのは児童福祉の関係機関だけではもうとても予防も解決もできませんので、それと医療や保健の関係、教育の関係、警察や司法の関係、そういう様々な関係者といろんなレベルでネットワークを作る。それも、単に情報をシェアをするというネットワークではなくて、個々具体的な事例の解決のために援助行動型と言うんでしょうか、そのためのネットワークを作るというようなことをやってまいりまして、それが今できつつあるというふうに思っております。
 総括いたしますと、問題をなるべく早く発見をして、必要であればちゅうちょなく早期介入する、ここのところは関係者は随分経験を積んで行政的にも進んだというふうに思いますが、予防の段階、そして問題が起こった後の子どものケアや親に対するカウンセリング、こういうところは本当に難しい問題がたくさんございまして、まだまだこれから拡充しないといけない大きな課題であるというふうに思っております。

○副大臣(岸田文雄君)
 
文部科学省の取組でありますが、児童虐待防止に関する法律、これがスタートしたことを受けまして、文部科学省としましては、この趣旨を学校教育関係者あるいは社会教育関係者、こうした関係者に周知すると。これを徹底するというのが、まずこの法律のスタートを受けまして取り組んだ具体的な施策であります。早期発見、早期対応に努めること、あるいは児童相談所等への通告をすること等々を関係者にしっかりと周知するということにまず努めたわけであります。
 また、文部科学省の児童虐待問題に対する役割でありますが、特に文部科学省の役割としましては、この児童虐待の予防の部分で果たす役割が大変重要だというふうに感じております。そして、そうした見地から、取組としまして、家庭、地域あるいは学校、それぞれの関係者がこの役割分担の中でしっかりとその役割を果たしていかなければいけないというふうに認識しておりまして、社会教育法の改正等で様々な連携を図っていくとか、あるいは子育てサポーターを配置するとか、あるいは子育て学習の全国展開ですとか、こうした様々な施策を積み重ねているところであります。
 こうしたものがお互いに連携し合いながら、児童虐待の予防の部分で成果が上がるようこれからも努めていきたいと考えております。

○鈴木 寛
 どうもありがとうございました。
 私は、この児童虐待防止という大変重要な施策を進めていく上で大事なことは、やっぱり国民各位、各層、各界の意識の向上というのは大変重要なんじゃないかというふうに思いました、思っております。先ほど岩田局長も、しつけと虐待は違うんだということが理解されたと、それも一つだと思いますけれども、私はやっぱりこの問題は、児童虐待というのは子どもの権利に対する重大な侵害なんであるということを、国民全体がその意識を共有することが非常に重要だと思いますし、そのことがまず第一歩ではないかというふうに思っております。
 子どもの権利の重要性について規定した国際条約に子どもの権利条約という条約がございます。私は、この条約、大変重要な条約で、国際人権規約と相互補完的に正に人権の国際的保障の中核を成すものだというふうに思っておりますけれども、児童虐待の防止の原点である本条約について少し議論をさせていただきたいと思います。
 この条約でございますが、人類は、子どもに対して最善のものを与える義務を負っているという名文句で有名な一九五九年の国連における子どもの権利宣言がこの下敷きにあるわけでありまして、その権利宣言の原則九で、子どもはあらゆる形態の放任、虐待及び搾取から保護をされなければならないというふうになっておりまして、それが一九八九年、ちょうどこの宣言から三十年たって、一九八九年の第四十四回の国連総会で条約としてこの成立を見たというふうに私は理解をいたしております。
 この条約制定とともに、ユニセフなんかは静かな緊急事態というふうにも呼んでおりまして、正にユニセフのグラント事務局長が、この条約は世界じゅうの人々が何よりも子どもを最優先するんだという、そういう原則をみんなが重視をしていく、そういう世界的な決意の表れであると、各国はこの条約に照らして、それぞれの社会の在り方をもう一回ちゃんとチェックをし、評価をし、そして条約を守るということがそれぞれの国の重要な関心事項であり、かつそれを守ることがその国の誇りであると、そういうふうにしていかなければならないということを訴えておられまして、私も全くそのとおりだなと思います。この条約でも、十九条、三十四条を始めとして子ども虐待について明記がされております。我が国は、若干後ればせでございますが、一九九四年に世界で百五十八番目にこの条約を批准しております。
 こうした条約を受けて、日本でもこうした意識を草の根で一生懸命普及をしていこうと頑張っておられる方々が大勢いらっしゃいます。例えば、子どもの権利条約ネットワークというNPOがございますが、そのためのシンポジウムを本当に長年地道に続けておられますし、また私の地元でもございます東京・生活者ネットワークという団体では、東京都が三十三の市や区に対して、子どもの権利条約の精神を反映した条例というものをそれぞれの市や区で作っていこうという運動を熱心に展開をされていらっしゃるわけでございます。
 しかし、そうした実態をお伺いをいたしますと、そうした条約の趣旨に賛同して、そしてそれを十分理解して条例を制定している市というのは、全国で見ても川崎市とかあるいは兵庫県の川西とかあるいは北海道の奈井江町など非常に数少ない、一けた、片手ぐらいしかそういう条例化に至っている市区町村はないというふうに聞いております。川崎なんかは、この子どもの権利条約の精神を生かして、そうした虐待防止をも含む条例の制定というものがされたというふうに伺っておりますし、それによって、虐待というものは事後的な対応だけではなくて世の中全体をきちっと変えていくんだと、そういうふうな雰囲気といいますか、理解というものが市役所の中にも広まったし、市役所のいろいろな関連の団体、組織に、あるいはその関係者に非常に広まって、自治体を挙げた、あるいは地域も含んだ取組というものが行われているというふうに伺っております。
 それで、私が御質問を申し上げたいのは、この子どもの権利条約でございますが、条約批准の折に国内法、要するに国レベルの法律の整備は必要なしということで国内法の手当てというのは今のところなされていないわけでございますが、例えば先ほど申し上げましたように、私は三千三百の市町村でそうした条例化の動きが最終的には目途、目標としては行われていく、それを通じて国民全体が子どもの権利というものが本当に重要なんだということを理解をしていく、その上で非常に重要なことだと思いますが、そういうことをやっていくためにも、国レベルできちっとこの子どもの権利条約を見据えた法制化、例えばそうした子どもの権利に対する基本法みたいなですね、というものの法制化というものをしてはいかがかという意見を私自身は持っております。
 この質問をあしたさせてくださいと昨日いろいろ御相談申し上げたんですが、どこの担当なのかというのが分からないというお返事を受けまして、もしもお答えいただけるところがあればお答えいただきたいのでありますが、私は別に、であれば、この調査会で正に国会がイニシアチブを取ってそうした国内法制化、基本法でありますから、そういったメッセージを出すということも含めて検討をしていったらいいのではないかなということは個人的に思っておりますが、もちろん法制化についてのお答えをいただけるならそれは大変有り難いですが、それが難しいのであれば、そうした、今私がるる申し上げました、子どもの権利というものが非常に重要なんだと、その国民的理解を深めていくということの観点に立って、各省庁どういった施策をされているのかという現状の取組と、そのことについての各省庁の問題意識をお聞かせをいただきたいと。
 そのことで、取りあえず今日のところはよしということにしたいと思います。それはあとは、会長に後の議論を盛り上げていくところはお願いをするということにしたいと。

○副大臣(岸田文雄君)
 児童の権利に関する条約ですが、基本的人権の尊重を掲げる憲法ですとかあるいは教育基本法ですとか、さらに国際人権規約ですとか、こうした様々なものと照らしましても軌を一にするものでありますので、その教育あるいは指導におきましても十分配慮したものが行われなければいけないというふうに認識しております。
 そういったことから、文部科学省においては、まず、この条約の発効を契機としまして、各都道府県の教育委員会等に対しましてこの主要な点につきまして通知を行いました。そして、各種の広報誌ですとかあるいは研修会ですとか、そうした場をとらえましてこの周知に努めているというのが現状であります。また、教科指導におきましても、現代社会ですとかあるいは政治経済ですとかあるいは家庭一般、こうした教科におきまして、教科書においてこの条約について具体的に取り上げているというのが現状であります。
 こうした、その様々な取組においてこの条約を周知していくと、努めているというのが文部科学省の現状でございます。

○副大臣(横内正明君)
 法務省は人権擁護行政ということをやっている立場でございますが、そういう立場で子どもの人権擁護について大変に大事な課題として取り組んでおります。
 今、委員からこの子どもの人権の問題について国民に対する啓発というのをどういうふうにやっているのかというお話がございましたが、毎年十二月の四日から一週間、人権週間というものを設けているわけでございますが、その人権週間の強調事項の一つに、子どもの人権を守るというのを重要事項として取り上げまして、各種の広報活動を実施をしております。
 同時に、子どもの人権を専門に扱う子どもの人権専門委員という制度を平成六年から発足をいたしまして、全国五百六十八名の人権擁護委員さんに子どもの人権専門委員さんになっていただいて、子どものための、子どもが相談する専用電話として子どもの人権一一〇番というようなものも設けまして子どもさんからの相談に応じているという施策を進めております。
 また、言うまでもないことでありますが、いじめだとか体罰というようないわゆる人権侵犯事件につきましては、これを調査をし、児童の保護、加害者に対する勧告、説示などの適切な処理を図っているということでございます。
 そこで、委員から基本法の制定というお尋ねもございましたけれども、子どもの権利ということに限った基本法ということではありませんが、法務省としましては、今国会に人権擁護法案という法案を提出をいたしまして、人権擁護に関する施策の充実を図っていきたいということで、人権委員会を中心とする人権救済制度を確立をしたいと考えております。その中では当然子どもの人権の問題も大変に大きな柱として取り扱っていきたいというふうに考えております。

○政府参考人(岩田喜美枝君)
 私どもは児童福祉法に基づいて行政を展開いたしておりますけれども、この法律の理念は、児童は心身ともに健やかに育成されるべきこと、児童は生活を保障され愛護されるべきことという、こういう理念に基づいて様々な施策を展開いたしておりまして、何が子どもにとって最善かということを常に最優先に念頭に置いた行政の展開でなければならないというふうに思っております。
 平成六年に児童の権利条約が批准されました際に、私どもの行政の分野では既にその条約の趣旨は確保されていたというふうに整理をされましたけれども、その後、平成九年に児童福祉法の改正の機会がございましたので、そのときにもう一度、児童の権利条約の趣旨に照らして、更に何が前向きにできるかということを検討いたしました。
 その結果、例えば児童養護施設などに入所を決めるときに、それまでは子どもの意見というのは必ずしも聞くということが制度上の要件とされておりませんでしたけれども、必ず子どもの、子ども自身の意見を聞くということですとか、あるいは都道府県に児童福祉審議会がありますけれども、その児童福祉審議会という第三者的な審議会の意見も聞いて行政が判断するという、そういう仕組みを作るための法律の改正なども行ったところでございます。
 今後とも、児童の権利条約の趣旨を常に念頭に置きながら児童福祉行政というのは展開しないといけないというふうにも、今日の先生の御質問を聞いてまた更にその気持ちを強くいたしました。

○政府参考人(黒澤正和君)
 警察でございますけれども、まず、児童虐待につきましては、前々から申し上げておりますけれども、人格形成期にある児童の心身に深刻な影響を及ぼす重大な問題と認識をいたしておりまして、また、児童の生命、身体を守るという観点も併せまして、児童の精神的な立ち直りを支援することによって問題行動等に走ることを防止するという観点から、少年保護対策の最重要問題の一つとして位置付けまして、関係機関と連携し対応してまいったところでございます。
 児童の権利条約の趣旨を踏まえまして、児童の最善の利益を考えまして今後とも更なる努力をしてまいりたいと存じますが、私ども、子どもは、委員御指摘の観点とちょっと離れるかもしれませんが、やはり犯罪弱者という立場もございます。それから、非行の問題から犯罪を犯す、あるいは犯罪の被害者になってしまう、そういった少年、子どもの問題がございまして、私ども、平成十一年のことでございますけれども、女性と一緒でございますけれども、女性と子どもを守るための対策というものを体系的に取りまとめまして、全国的に、全国警察に指導、指示をいたしまして、子どものそういった権利の保護という観点も踏まえまして、子どもを守るべく総合的な力を発揮をいたしまして取り組んできておるところでございます。
 委員御指摘の権利条約、このことを十分踏まえまして、今後とも適切な対応に努めてまいりたいと存じます。

○政府参考人(石川正君)
 内閣府で青少年担当をいたしております審議官の石川でございます。
 今日は松下副大臣が御出席いただいておりますけれども、内閣府の関係について簡単にお話を申し上げたいと思います。
 今、内閣府では課題を持っておりまして、青少年をいかに育成するかというバイブルである青少年プラン、これがありませんし、委員から御指摘がありましたように、青少年の健全育成に関する法律もございません。この四月に官房長官の下に有識者懇談会を立ち上げまして、青少年をどのように育成支援していくか、そういう観点から、できれば本年度中を目途にして御提案をいただくような審議会を発足することにいたしております。
 これを踏まえて青少年プランを策定し、更にそれを踏まえながら青少年の健全育成をどのようにしていくかという基本法的なものを策定したいというふうに考えております。もちろん、関係省庁いろいろ御議論いただきながら、有識者の方、それから青少年自身の意見等も踏まえながら、そういった形で、今後の課題として策定を目指して努力してまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。

○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君)
 裁判所の立場でございますので政策的な問題ではないわけでございますが、ただいま委員が御指摘あったような、正に子どもの利益を図るためにはどうすればいいかといったことについては、常に私どもとしてはいろんな角度から留意しているところでございます。
 家庭裁判所におきましては、家事事件の場面において、例えば離婚後の子どもの親権者をどうするかとか養育料をどうするかとか、こういった場面がありますし、先ほど来御議論の虐待の問題はその典型的な場面だろうと思いますし、他方で、少年事件において少年の健全育成を図るための各種の方策を考えているところでございます。
 そのような中にありまして、今度の権利条約についての周知も十分図っているわけでございますけれども、昨今の子どもをめぐる悲惨な問題状況についての認識を深めながら、具体的な施策を更に講じていって、適切な、妥当な事件処理ができるように努めてまいりたいと考えている次第でございます。

○鈴木 寛
 ありがとうございました。是非、今、皆様方の御努力を更に深めていただければと思います。
 それで、児童虐待法の私なりの評価なんでございますが、先ほど岩田局長からもお話がございましたように、児童虐待防止ということで言いますと、発生予防、早期発見、早期対応、保護、指導、そしてアフターケア、こういう段階があろうかと思います。それで、局長も御指摘されていましたけれども、私も先ほど御紹介をしました東京・生活者ネットワークの皆さんとか、ほか関係者の方々の御意見を伺いますと、やっぱり発生予防とアフターケアのところがもう一段の工夫といいますか、改善というものが必要なんではないかなというようなお話を伺いまして、そういう意味では認識が一致しているのかなというふうに思いました。
 そういう中で、私はもちろん、冒頭申し上げましたように、この政策というのは大変重要な政策でありますから、予算も人もすべてのリソースをまずここにトッププライオリティーで付けるべきだというふうには思っております。しかし、それは有限な資源でありますから、我々思うに任せないところがあると。
 そうした中で、私が申し上げたいのは、やはり地域コミュニティーあるいはNPO、もちろん行政は最大限責任を果たすというのはこれは当然中の当然であります。しかも、それは国、都道府県、市町村、この三者がそれぞれのその責務を全うするということはこれはもう言うまでもないことでありますが、しかし問題の大きさ、あるいは問題をこれはもう一刻も早く解決をしなければならないということになった場合には、やはり地域コミュニティーあるいはNPO、そうしたパブリックの力といいますか、そういうことをやっぱり最大限活用していくための知恵というものは出していくということが今私たちに採り得る最善の方策の一つではないかなというふうに思っております。
 そうした中で、もう時間がなくなりましたので、先ほど後藤委員も御紹介をされていましたが、前回の調査会で汐見先生から育児支援士という構想が出されておりました。
 これは、正に草の根にいらっしゃる大変に意欲ある、こうした問題にボランタリーに貢献をしていこうと思っておられる方々、一杯いらっしゃると思いますので、そういう方々を今申し上げた三位一体、しかも官とパブリックとのコラボレーション、こうした動き、一連の国民運動的なことを私は起こしていくべきだと思っておりますが、そういったところに参画をしていただくための一つのいい提案ではないかなと思いますので、是非この点については各省庁あるいはこの調査会でも御検討いただければというふうに思います。
 それから、もう時間がありませんから最後に提案といいますか、問題提起で終わらせていただきたいと思いますが、いろいろな方に伺ったり、あるいは一連のここでの、調査会での御発言、前回は小宮山委員もいろいろな指摘をさせていただきましたが、やっぱりまだ縦割りなんですね。省庁内の、要するに中央省庁内の縦割りということ。それからもう一つ言いますと、国と地方、しかも都道府県と市町村の、この三段階あるわけでありますが、ここの連携というのは、地方自治というのはよく分かるんですけれども、どうしてもぽてんヒットになってしまうところがあるということ。この問題は、やっぱりある意味でオーバーラップしながら、しかも、先ほど申し上げましたように、いわゆるコミュニティーといいますか、民の力といいますか、そういうところも入っていっていただきながら、共同という、コラボレーションという言葉がありますが、それをやっていくということが本当に必要だと思います。
 そういう意味で、私は、現在、この問題は、いろんな関係省庁連絡会議などはありますけれども、是非、例えば子ども支援対策総合推進国民会議のようなものをきちっと設定をして、官だけではなくて国民全体の運動体を引っ張っていくような、そうしたことも含めた対応が緊急な課題であって、しかも極めて重要な政治課題であるということを申し上げて、私の持ち時間を終えたいと思います。
 是非、今後、皆様方のより一層の御協力と御指導をお願い申し上げます。どうもありがとうございました。


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