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  内閣委員会 

2002年12月05日  

○鈴木 寛
 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 構造改革特別区域法案に関して御質問をさせていただきたいと思います。
 まず、確認から少しさせていただきたいと思いますけれども、現在、いわゆる規制特例についての第二次募集をされている関係で、法律の制定、あるいはそれに引き続く地方公共団体の特区計画の認定申請のことと、この二次募集のことが若干こんがらかって自治体に理解をされている、誤解をされている向きがあると思いますので、まずそのことについて確認をしたいわけでありますが。
 今回、今正に法案審議がされまして、その中で、基本方針を内閣がお作りになると、こういうことになっております。今の基本方針は、まず第一次募集の御提案を基に恐らく基本方針が作られるんだというふうに思いますが、これで基本方針ができてこれからきます。その中でいろいろ、まだ作成中、まだ検討中、まずは審議中でございますが、いろんなメニュー案が大分明らかになってきておりまして、もちろん、その中にはなかなかこれいいメニューがある。地方自治体の方々も、これは使えるなという動きがいろいろなところで出てきております。
 御質問ですけれども、これは基本方針がまずきちっといつ出るのか、そして、これが出て法律が仮に成立をした場合に、第一次募集に手を挙げていなかったけれども、その基本方針を見てこれはうちの自治体でもやりたいというふうに思った自治体が、法律に基づき認定計画を作り、認定申請を行った場合には、これはきちっとその基本方針に照らして問題なければ逐次認定をされるということでよろしいのかどうか、御確認をさせていただきたいというふうに思います。

○政府参考人(中城吉郎君)
 お答え申し上げます。
 この法案通りました場合には、今後のスケジュールといたしまして、まず、法案に基づく構造改革特別区域基本方針というものを閣議決定することを考えておりますが、その中では、構造改革の推進等の意義、目標、それから、定期的な特区に関する提案募集など政府が実施すべき施策の基本的方針、それから内閣総理大臣が計画を認定する際の基準、それから、政省令、告示、通達等も含む特区において講じられる規制の特例措置と関係行政機関の同意の要件、こういったものが閣議決定されるわけでございます。
 地方公共団体は、この基本方針に基づいて構造改革特別区域計画というものを作成して、平成十五年四月一日以降に申請受付されることになりますが、先生御指摘のように、ここには、八月末までに提案を出さなかった自治体であっても、この基本方針に載っている規制改革項目について自分たちの地域計画というものを出すことができるということでございます。
 もう一つの流れといたしまして、一方、一月十五日を締切りで第二次提案というものをやっているわけでございますが、第二次提案は、受け付け次第早急に関係省庁に検討を要請しまして、結論を得られたものについては速やかに基本方針に定める規制の特例措置のリストに追加するというようなことでその二次募集に対する対応というものを考えていきたいというふうに考えておりますが、先生御指摘のように、一次募集といいますか、八月末で締め切ったものにつきましては、これまで提案をしていなかったところも四月一日以降の申請ができるということでございます。

○鈴木 寛
 私は、特に教育分野についてのこの法律の適用に大いに関心を持って注目をしているわけでありますが、特に教育の場合は四月一日から始まりますから、恐らく二〇〇三年の四月一日を逃せば、恐らく二〇〇四年の四月から、あるいは二〇〇五年の四月から、それから、二〇〇三年から先行的に始まったほかの地域を見て、これはなかなかいいぞということになれば、そういう後続地方自治体も続々と手を挙げてくるということになると思いますが。
 今の内閣からのお話、御答弁ございましたけれども、随時、地方自治体がきちっと作ってくればどんどんとやりますよと、こういうことでありますが、文部科学省、今の内閣官房の御答弁に付け加えることがありますでしょうか、どうでしょうか。そういうことで、同じ理解かどうかだけ確認させていただきたいと思います。

○政府参考人(玉井日出夫君)
 今回の構造改革特区、正しく各自治体の様々な提案、しかもそれぞれが地域に基づいた特色ある御提案、これをできるだけやはりその趣旨に沿って実現するというのが政府の基本的な方針でございますので、そういう政府の方針の中で、文部科学省としてもできるだけその趣旨に沿った実現ができるように努力をしてまいりたい、かように思っております。

○鈴木 寛
 それから、第二次提案募集を行っておられるわけでありますが、いわゆる基本方針の改定はどういう見通しになるのか。
 もう一度、その時期的な、一次の計画と、要するに地方自治体は一次のところで準備を進めた方がいいのか、第二次まで見た方がいいのか、その辺りを今迷っておられるといいますか、よく見ておられますので、第二次提案募集を受けた基本方針改定について、これはあれですか、要するにバージョンアップといいますか、ということになるんだと思いますが、その辺の時期も含めた見通しを再度お答えをいただきたいと思います。

○政府参考人(中城吉郎君)
 二次募集でございますが、先ほど申し上げましたように一月十五日を締切りにしておりますが、提案を受け付け次第、早急に関係省庁と検討を始めて、結論を得ましたものから速やかに基本方針に定める規制の特例措置のリストというものを追加していくというようなことで、特区において講じることができる規制の特例事項というものを決めていきたいというふうに考えております。
 第二次募集でどのような提案ができるか、出されるかということについてはまだ予見できませんけれども、法律の特例措置を講じる必要がある場合には、次期通常国会というようなことで改正案を提出することも視野に入れて本法案に追加するための改正案というようなものを検討していきたいというふうに考えております。

○鈴木 寛
 それでは、少し個別の問題についてお伺いしたいんですが、今回、構造改革特区研究開発学校制度というものが検討されていると、基本方針にもそうしたことが打ち出されるというふうに聞いております。
 基本的に私は、今の非常に硬直したスクールガバナンス、いわゆる学校の運営を、こうした研究開発制度が導入されることによっていわゆる教育現場の創意と工夫というものを引き出すという観点で評価をしているわけでありますが、改めて、この構造改革特区研究開発制度の趣旨、ねらいについて御説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(矢野重典君)
 学校の教育課程につきましては、これは全国的に一定の教育水準を確保いたしますとともに、教育の機会均等を実質的に保障する、そういう観点から、国におきまして、それぞれの学校が教育課程を編成する際の基準として学習指導要領というものを定めているわけでございます。
 今回、構造改革特区制度に関して設けることといたしております構造改革特区研究開発学校制度、これは仮称でございますけれども、この研究開発学校制度は、これは地域の特性に応じまして、国の定める教育課程の基準によらない教育課程を編成、実施することを可能といたしますために、学校教育法施行規則の特例の規定に基づきまして、現行の研究開発学校制度とは別に新たなタイプのそういう特例制度として設けたいと、そういう趣旨のものでございます。

○鈴木 寛
 この正に研究開発学校制度についても、先ほどの御答弁であれば、これはもっと積極的に活用していこうという地方自治体がこれからどんどん出てくれば全国各地で行われるということについては先ほどの答弁で御確認をいただきましたが、これはあれですか、計画策定は地方自治体でございますので、その自治体内の学校であれば随時どこでもできると、こういう理解でよろしいのかどうか、確認をさせていただきたいと思います。

○政府参考人(矢野重典君)
 具体的なイメージといたしまして、その計画の中に具体的な学校というものも当然のことながら特定をして、そういうものを盛り込んだ形で計画として申請をいただけるものと、そういうふうに理解をいたしております。

○鈴木 寛
 これは、活用の方法によっては非常に期待される制度なんでありますが、残念ながら、これは法律自体がそういうことなのである程度はやむを得ないと思いますが、五年後にいわゆるこの構造改革特区制度が見直しと、こういうことになっております。せっかく各自治体で工夫して非常にその地域に合った、あるいは地域の子供たち、児童たちに合った教育が行われるということで始まったけれども、五年後になっちゃうとまた元の学習指導要領に戻しなさいと。
 こういうことになりますと、大変によろしくないといいますか、残念な結果になるわけでありまして、これは是非この制度は五年で切るということじゃなくて、未来永劫きちっといいものはどんどんどんどん取り入れていくということが必要だというふうに思いますが、いかがでございましょうか。

○政府参考人(矢野重典君)
 委員先ほど御指摘がございましたように、五年後の取扱いにつきましては、特区法案の附則の二条におきまして、法施行後五年以内に本法の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとされているところでございまして、文部科学省といたしましては、この規定に基づいて実施される政府全体としての検討を踏まえまして、個々の学校の取組の状況を十分勘案の上、適切に対応をいたすことになろうかと思うわけでございますが、この特区に係ります研究開発学校制度の在り方につきましては、その取組の期間も含めまして、今後、制度の在り方という観点で検討してまいりたいと思っております。

○鈴木 寛
 今回は構造改革特区研究開発制度と、こういうことになっているわけでありますが、元々、研究開発学校制度というのはございますですね。この研究開発学校制度の目的というのは、実験的にいろいろな新しい試みをやってみて、そこでいいものが出てくれば学習指導要領本体に反映をさせるということがこの研究開発学校制度の趣旨だというふうに思っております。
 その制度の枠の中で、今回構造改革特区についてこの制度が更に援用をされているわけでありますが、私は、これはどんどんいいものが出てくれば、五年間見るわけじゃなくて、随時、学習指導要領を弾力的に改訂をしていったらいいのではないかというふうに思っておりますが、その点についてはいかがでございましょうか。

○政府参考人(矢野重典君)
 まず、構造改革特区の研究開発制度の成果の活用の仕方でございますが、これにつきましては、各地域における取組の成果、課題についての評価を十分行いまして、その上で全国的な教育課程の基準でございます学習指導要領の改善に反映させることが適当と考えられる、そういう内容につきましては、学習指導要領の改善の検討のための実証的な資料としてこれを生かしてまいりたいと思っております。
 それが一つでございますし、それから、学習指導要領の改訂の仕方についての御指摘がございましたが、これにつきましては、この学習指導要領は、これまでは大体おおむね十年程度を一つの期間といたしまして改訂を行ってまいったところでございますけれども、今後は学校教育に対する社会的な要請等を踏まえながら、不断にその改善に向けた検討を行うことが必要であるというふうに私ども考えておりまして、文部科学省といたしましては、そのために中央教育審議会という私どもの審議会があるわけでございますが、その中に常設の機関として教育課程部会、これは学習指導要領を検討するということを主たる目的とするものでございますが、教育課程部会を設置をいたしますとともに、継続的に全国的な学力調査を実施するなどいたしまして、教育課程の基準について不断に見直す体制を整備をいたしているところでございます。
 そういう観点で、そういうふうな考え方で今後教育課程の基準についての改善に取り組んでまいりたいと思ってございますが、その中におきましては、先ほど申し上げましたように、この特区の研究開発学校制度の成果も必要なものについては活用をしてまいりたいと考えているところでございます。

○鈴木 寛
 今、御答弁の中で不断にやるということでございます。これは本当に不断にやっていただきたいと思います。
 と申しますのも、今、局長の御答弁にありましたけれども、学習指導要領というのは十年に一回しか変わらないわけですね。これだけ世の中の変化が激しい、特に今までの近代産業社会における人材像と新しい情報社会、あるいは文化多元主義、あるいは国際化という中で、教育制度のみならず、その中で何を教えていくかという、育てるべき人材イメージというのはどんどんどんどん変わってきております。
 ある意味、試行錯誤だと思いますけれども、だからこそ、こういう構造改革特区でいろいろな試みをしながらそれをどんどんどんどんフィードバックさせていくということでありますから、確かに戦後は十年間に一回の学習指導要領、私もこの二〇〇二年から始まっております情報教育の導入についてはその協力者会議にも私、参加をしておりました、学者として。でありますが、やっぱりそのプロセスを見ていますと、非常にこれ慎重過ぎるという感じもございますので、そうした中で、不断にどんどん柔軟に変えていくという御答弁、是非実行していただきたいと思います。
 加えまして、我々民主党がかねてから申し上げておりますけれども、そもそも学習指導要領の内容が非常に細か過ぎる。詳細なことまできちっと決めて、正にトップダウンで文部科学省から三万八千の末端の現場の小中高に下ろしているということ自体、もう少しきちっと地方分権を踏まえて、現場でいろいろなことを自由に、そして私はきちっと、児童生徒の顔が見える人たちがその人たちの学習内容をきちっと決めていける制度ということが最終的に必要だと思っております。
 そういう観点から、学習指導要領の大綱化ということを、中身自体は不断に見直していただけるということでありましたが、併せて、もう少し大ぐくりにして、現場でいろいろなことを特区の指定を受けずともできるような学習指導要領にしていくべきだというふうに思いますが、この大綱化についてはいかがでしょうか。

○政府参考人(矢野重典君)
 学習指導要領は、各学校が、先ほど申し上げておりますように、教育課程を編成する際の基準であるわけでございまして、それぞれの学校がこれに基づいて地域や学校あるいは子供の実態等に応じて創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開することが重要であるわけでございます。
 我が省といたしましては、先ほど御指摘がございましたように、これまでも学習指導要領の大綱化、弾力化を図ってまいってきているわけでございます。こういう例えで適切かどうか分かりませんけれども、戦後すぐに学習指導要領の試案としてできた当初、それは大変大部なものでございまして、何百ページといったような形のものでございましたが、現在は大綱化、弾力化を進めてまいりまして、例えば小学校の学習指導要領、小学校全教科の教育内容を規定したものでございますが、それでも百ページ足らずといったような、極めて小冊子にまとめられるぐらいに大綱化、弾力化をしてまいっているところでございます。
 本年四月から実施されております新しい学習指導要領におきましては、例えば国がその内容を定めるのではなくて、地域や学校あるいは子供の実態に応じて学校が教育内容を定める、全面的に学校が教育内容を定める、そういうものとして総合的な学習の時間というものをカリキュラムの中に新設をいたしたり、あるいは子供たちが興味、関心に応じて学習できるように選択学習の幅を大幅に拡充するなどの一層の大綱化、弾力化を進めてまいってきているところでございます。
 そういう意味で、今後とも私ども、御指摘の趣旨は私どももそのとおりというふうに考えているところでございまして、それぞれの学校が地域や学校の特色を生かした教育を一層展開できますように、新しい学習指導要領の下での優れた取組を全国に普及するなどのそういう措置を講じながら、そうした学校の努力について支援をしてまいりたいと考えております。

○鈴木 寛
 大綱化するのかしないのか若干不透明な答弁だったわけでありますが、ちょっと前段のところ、局長があえてそういう御答弁をされましたので付言しておきますと、元々、局長もおっしゃったように試案だったわけですね。試案のころは、確かにこれは試案ですから、それを参考に各現場が決めていいということがあります。しかし、これはもう釈迦に説法でありますけれども、これは国会の審議でありますからきちっと申し上げさせていただきますが、学習指導要領のいわゆる法的拘束力というのが高まってきたと、そういうことがその背景にあるということはきちっと押さえた上でそうした御答弁をしていただきたいと思います。
 そうした法的拘束力を強める、それを私はもっともっと弱くしていかなきゃいけない。そのことがもちろん最終目的でありますけれども、その中で現状の法的拘束力を維持するのであれば、やはりその中ではきちっと大綱化ということについて、現場主権の教育制度改革ということをやる上では大綱化を真剣に取り組んでいくべきではないかと、こういうことでございますので、いや、戦後からずっと大綱化しています、簡素化していますということではないんだということはきちっと踏まえた上で、きちっと再度この大綱化についての御検討をお願いを申し上げておきたいと思います。
 それで、その話も実はもっとしたいわけでありますが、今日一番申し上げたい議論に移りたいと思います。株式会社制度の導入の問題についてであります。
 いろいろ報道されておりますけれども、まず大臣にお伺いをしたいと思いますが、いわゆる株式会社制度の導入について医療と教育についてはゼロ回答ということがいろいろなところで報じられておりますが、大臣、医療と教育について株式会社制度が全くもう頭から駄目だと、こういうことになっている現状あるいはこの問題について、大臣としてどういうふうな方針で、考え方で臨まれようとしているのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(鴻池祥肇君)
 先ほどから委員の質問、また答えておられる文部省の答弁を聞かしていただきまして、一歩進んだなという気がいたしました。
 私はやはり、委員御指摘の医療、教育の分野に株式会社が参入するということに関しては、極めて前向きにとらえていかなければならないという立場で絶えずそういう発言をさせていただいておるところでございます。
 これが進んでいく過程におきましても担当大臣と意見の交換もいたしました。そこにはいろいろな歴史的なもの、あるいは周りにいる関係諸団体の御意見等々、相当乗り越えなければならない分厚いものがあるということは各大臣のお話で承知もいたしております。しかし、やはり先ほど局長の御答弁にもありましたけれども、一定の教育水準、これは大事です。一定の教育水準を保つ役所の姿勢というのは非常に大事でありますけれども、一定の教育水準、これをかたくなにそれだけを考えておるということは私は今の御時世に合わないのではないかと思います。
 一つの目標に向かって、鉄を作らなければならぬ、あるいは船を造るんだと、とにかく日本はそういうことでやっていくんだという時代が当然ありました。これは、すごいやはり役所の指導力に、文部省の指導力によってそういう教育が、同じ服を着て同じ給食を食って同じ日に運動会をやって同じようにやる、しかし一定の教育水準だから競争心を余りあおってはならない、運動会でも一等二等を付けない、こういう教育も実は戦後の日本教育の社会であったわけです。
 果たしてそれが今の我々が考えている現代社会に合うのかということを考えた場合には、私はすべて、間違っているとは言いませんけれども、すべて合っているとは思いません。やはり、多様なニーズの中で教育も考えられるべきである、医療も考えられるべきであると。そういう中で私は、やはり供給者側よりも国民側、教育を受ける側、あるいは受けさす父兄の側の立場に立って多種多様の教育というものがあってしかるべきであると。そこに株式会社の参入ということは私は大変結構なことであるし、全国で株式会社の教育というものを私はやる必要があるとは言っておりませんけれども、やはり先行して一か所二か所、その地域のニーズ、そういうものがあれば認めていくべきだ、このように考えております。

○鈴木 寛
 内閣官房にお尋ねをしたいわけでありますけれども、今は文部科学省と相当この問題について御議論をされていると思います。
 内閣の方としては、株式会社制度を導入することの意義といいますかメリットということ、大枠、コンセプト、理念については今大臣から明確に御答弁をいただきました。本当にありがとうございました。もう少し具体的にといいますかプラクティカルに、私は、どういう御説明といいますかどういう御説得というかされているのかと。いわゆる株式会社制度導入の意義とメリットについて、まず内閣はどのように御理解をされているのかということをお尋ねをさせていただきたいと思います。

○政府参考人(中城吉郎君)
 私どもは内閣官房といたしましては、地方から出てきた提案というものの中に株式会社も入れてほしいというようなものが十件近くございまして、それにつきまして、その要望に沿いましてできるだけ地方のニーズを生かすためにはどうすればいいかということで、地方のニーズをできるだけ受け入れられる形でできないかという形で折衝しているということでございます。
 それにつきましては、株式会社の参入につきまして、できるだけ民間の活力を最大限に引き出すということが構造改革特区の一つの有効な手段でございますので、そういう意味で是非そういうものを検討してほしいということでございます。
 理念的なことについての御質問でございますけれども、株式会社というものが万能というわけではございませんけれども、株式会社が参入すれば、例えば資金調達が円滑化するだろうとか、あるいは経営の近代化、効率化というのが図られるだろうと、それでまた投資家からのチェック体制もできるだろうというようなことで、より効率的で質の高いサービスを供給できるというそういうメリットがあるんだと、そういうことで地方公共団体から出てきているんだろうということで折衝しているところでございます。

○鈴木 寛
 大臣、今日は私この問題で、相当何といいますかメンツ争いみたいな、やや不毛な議論でちょっと議論が硬直している、それは非常に残念なことなわけでありまして、もう少し建設的な議論を深めていただきたい、それの一助となるような議論を私は展開させていただきたいと思うんですが。
 確かに、民間の活力の導入という観点で今回のことが行われていると、そういう中で株式会社制度を導入していくということ、もうこれはいろいろなところでいろんな議論がなされておりますので今日はあえて私は繰り返すつもりはございません。しかし、それ以外にもいろいろな観点からの論点があるんです。それを私は今日は幾つか御提案をし御指摘をさせていただいて、今後の内閣の中での、あるいは内閣官房とそれから文部科学省との議論に反映をさせていただきたいという意味で文部科学省と質疑をさせていただきたいと思いますので、是非それをちょっとお聞きいただいて、一番最後にまた御見解をお伺いしますので、よろしくお願いをしたいと思います。
 それで、特に内閣官房と文部科学省の本件をめぐるやり取りを私も少し勉強をさせていただきました。
 文部科学省さんは、学校教育は公の性質を持ち極めて公共性が高いものであるため、営利を目的とする株式会社とは相入れないでありますとか、あるいは学校経営を永続的に行えるだけの安定性、継続性を学校の設置者に求めているということで、公共性、安定性、継続性というものが学校運営に求められている、よって株式会社は駄目だと、こういうロジックが展開をされております。
 さらに、十一月二十八日のこの内閣委員会での同僚の松井議員からの河村副大臣に対する御質疑に対する副大臣からの御答弁も、副大臣からは、やっぱり教育の公益性の高さといいますか、そういうことを考えたときに、やっぱり株式会社が持っておる利潤の追求といいますか、そういうものとが整合するかどうかという点に私どもは非常に懸念を抱いたものでございますという答弁がありました。さらに、現実には株式会社も学校法人という形態を持って多く大学等を運営されておると。そういうことを私はもっとやるべきで、企業は投資をするということであれば、もっと学校法人に投資をしていただくというやり方があるんではないかという御答弁をいただいているわけなんでありますが。
 まず、これをもう少しやっぱりきちっと論理的に私は今日深めていきたいと思いますが、まず後段の、今、企業は学校法人に投資をしているというふうにお答えになっておりますけれども、企業は今投資できませんよね、学校法人には。寄附はできます。そして、寄附した場合の寄附の税額控除という恩典は受けられますけれども、投資というのはその出資、投資に対してリターンがあるものが投資というわけでありまして、そういう意味では寄附免税しかない。正に、これは企業は寄附しているケースは多いかもしれないけれども、投資はできないわけでありますから、投資という形態が今なお行われているという実態については、これは事実誤認ではないかというふうにまず思います。
 それから、教育の公共性、安定性、継続性が必要だと、私はここについては全く賛成であります。しかし、だから株式会社の参入は一律に駄目だというところには論理の飛躍があるんではないかということを申し上げたいわけであります。
 私、いろいろな御議論を聞いていますと、まず現行の私立学校法に基づく学校法人のガバナンスの実態ということについての文部科学省ないしは内閣委員会での御理解というものをもう少し深めていただきたい。是非、大臣もそのことを更に深めていただきたいと思いますが、株式会社イコール金もうけの組織だという非常に印象論といいますか、教条主義的な思い込みで議論がなされていることに私は大変な懸念を覚えます。
 私は、もう一度株式会社制度ということを昨日専門書を引っ張りまして確認をいたしましたが、そもそも株式会社というのは人材とか資金とか知識を結集して事業を行うための非常にある意味一六〇〇年以来人類が進化させてきた器なわけでありますね。その器あるいはその知恵というものを、この公共性、安定性、継続性が求められる教育の事業に導入することの是非というものをやっぱりもう一回きちっと考えていかなければならないというふうに思います。
 特に、日本における株式会社というのは百二十万社あります。しかし、上場企業は三千五百しかないわけですね。そうすると、百十九万数千の会社というのは非公開の株式会社でありまして、更に申し上げると、様々な公的な目的を持った公企業というものも株式会社形態で運営をされているわけでありまして、そもそも株式会社というのは営利性と社団性と法人性と、この三つの要素を持った団体である、社団であるということであります。
 もちろん、この一番最初の営利性というところが難しいわけでありますが、この営利性というのは、済みません、少しちょっと細か過ぎる議論になりますが、しかし、こういう正確な議論の下に議論がされないと深まらないものですから少しお許しをいただきたいわけでありますが、商法あるいは関連法でこの営利性は恐らく私は三つに分類できる。一つ目は収支適合性ということであります。二つ目は利潤獲得性ということであって、三つ目は利益配分性、いわゆる配当がされるかどうかと、こういう話であります。
 一点目の収支適合性は、これは何も学校法人であってもちゃんと収支が適合して赤字を出さないということはこれは重要でありますから、別にこの意味での営利性というのは何ら問題がないわけでありまして、そして三つ目の利益の配分性ということは、先ほど内閣官房からも御答弁がありましたけれども、このことによって資金調達が円滑になるということでありますから、学校法人の経営という観点で何ら問題がないわけであります。
 よく言われておりますけれども、いわゆる今現在も学校法人は銀行から借入金をしているわけでありまして、それに対する利子というものと株式会社の配当と別に実質は違わないではないかという議論には、私は非常に説得性があるというふうに思っております。
 残るは利潤獲得性、こういう問題なわけでありますけれども、そこは松井議員も前回御指摘をさせていただきましたように、様々な行為規制でもってきちっと手当てをしていくと。もちろん、利潤獲得性を全面的に否定するわけではありませんが、それよりもいわゆる学校教育活動の再投資というものにきちっと向けられる、あるいは経営の安定性というものに対して向けられるという議論が私は必要だというふうに思っております。
 ちなみに、こうしたいろんな知恵は他省庁の所掌する政策の中ではもう幾つも取り上げられておりまして、典型的なものは、日本銀行というのはこれは株式会社であります。それで、日銀法の第五条できちっとこれは公共性についての規定がありますし、じゃ、日銀が利益第一主義でやっているのかというと決してそうではなくて、通貨の安定と金融システムの、金融秩序の維持という観点から日本銀行というのは運営されているわけでありますから、日銀が株式会社で営利だけに走っているから日本経済がおかしくなったというロジックではないというふうに思いますし、さらに銀行、いわゆる一般の銀行とか保険というのも、これもちゃんと銀行法とか保険業法の第一条に公共性というものが担保されていて、それに伴ういろいろな認可制、許可制、あるいはそれに基づく行為規制というものまでいろいろ掛かっているわけでございまして、頭から株式会社は営利目的だ、だから駄目だというのは、若干これは正確性を欠く論理ではないかなというふうに思いますが、改めて文部科学省に株式会社制度導入についての見解を伺いたいと思います。

○政府参考人(玉井日出夫君)
 お答え申し上げます。
 委員も先ほど来の御質問の中で、教育が多様であるべきであり、そして民間活力が生かされるべきであるという正に御指摘があったわけでございますが、日本の学校システムはまさしく公共性と同時に多様性を求めようということで、国、地方公共団体と、今国立、公立だけではなくて私立学校という形で民間活力を大いに生かしてきているわけでございまして、これは委員御案内のとおり、諸外国と比べてもこんなに私立学校が大きな役割を果たしている国はちょっとほかにないぐらいでございます。
 その際、民間活力を生かすに当たって、やっぱり教育の公共性だとか継続性、安定性の観点から特別な形態で学校法人という形を作り、そこに様々な活力が生かされることによって教育全体が多様化していくことを願っているわけでございます。
 そして、それは先ほど来申し上げていますように、やはり公共性、継続性、安定性からいうとやはりそれにふさわしいシステムではないか。株式会社そのものがどうこうと申し上げているのではなくて、よりふさわしいのは何だろうかという観点から申し上げているわけでございまして、したがって、先ほど利益追求ということについての講学的な御説明がございましたけれども、要はやはり学校とそれから民間の株式会社でありますと、そこで利益追求あるいは私的配分、こういうものを前提とした活動と、そしてやはりそれは中の教育研究活動に再投資するんだというシステムと、ここがやはり基本的に違うんではなかろうか。あるいは、場合によっては投機的な事業だって自由にできる企業と、それから安定性、継続性を求めている学校のシステムと同じにやはり議論をできるであろうかと、かように思っているわけでございまして、これは委員御質問の中で既に御指摘いただきましたように、企業が正しく学校に寄附、正確に言えば寄附でございます、という形で事実上設立をしていくと。自分たちが学校法人という姿を取って大学等を設立するという例はたくさんございますし、近年では、これも委員御案内のとおり、地方公共団体と学校法人が協力して、いわゆる公設民営という形での新しいユニークな学校も今出つつございます。そういったものを是非私どもとしては促進をさせていただきたいと思っております。
 ただ、時代の変遷から見ますと、学校法人の設立要件が、今見ますと安定性、継続性を求める余り大変厳しいというところも、これも事実でございます。したがって、その設立要件についてやはりその緩和を図っていく、見直していくということは必要だろうと思っております。
 今回、構造改革特区におきましては、先ほど冒頭でお答えいたしましたとおり、せっかくの自治体の御提案でございます。直接株式会社が設置するということについてやはりいかがであろうか、適切とは言い難いわけですけれども、その御提案の趣旨というものをどう生かしていくかということについて真摯に検討し、様々な検討をして、この構造改革特区におきましては自治体の提案に実質的にこたえて、企業が学校教育に参入するのと同様になるように専門職大学院やあるいは不登校の児童生徒を対象とした学校など特定の種類の学校の設立につきましては学校法人の設立要件というものを大幅に緩和する、そのことによってその趣旨を実現しようとしているところでございますので、そこはひとつ御理解を賜れば有り難いと思っております。

○鈴木 寛
 ちなみに申し上げておきますが、大臣も御理解をいただきたいんですが、私は決して経済界側の人間ではございませんで、むしろ教育現場サイドの人間だというふうに思っております。私自身も高等学校の教壇にも立っておりましたし、今なお大学の教壇には立っております。加えまして、私の研究テーマの一つが、新しい社会におけるスクールガバナンスの在り方ということについて、ここ二、三年、いろいろな観点から検討を行っていた者でございます。そういう者がどう考えているかという意味で大臣にもお聞きをいただきたいというふうに思いますが、私は、いわゆる教育分野における市場万能論ではないんです、私はないです。
 と申しますのも、教育というのは確かに非常に情報の非対称性というものがある分野でありますから、そうすると、情報の非対称性がある程度ありますと、これはなかなか市場というものがワークしない、いわゆる市場の失敗というものが起こってしまう可能性というのが非常に高い。特に、初等教育というのは、小学校のときに教育したサービスの結果が出るのが、これは一生出るわけでありまして、そういう意味でのサービスを提供した時期とその効用あるいは効果というものが現れる時期にも非対称性があるという問題もあります。そういう意味でありますし、それからサービスというのは、同じことを教えていてもAという生徒には非常に教育効果があるけれどもBという生徒には全然ないとか、そういう意味で、何でもかんでも市場にあるいは民間に任せていればいいということではないということは私も十分に理解をいたしております。
 そういう意味でのまず情報の非対称性、それからある情報を判断する判断の非対称、あるいは能力の非対称という意味があることはよく分かっておりますし、特に教育というのはこれは不可逆なものでありますから、十五の春は二度と来ない、十八の春は二度と来ないということでありますから、そういうことは十分よく分かった上で、私は、じゃ、いわゆる教育自由論者ではなくて、どういう論者かと言いますと、私は教育現場論者なんですね。要するに、そこで学ぶ学習者の顔が見えている人たちが、大人たちが、あるいは高校とか中学であれば本人たちが、生徒たちが入ってもいいと思いますけれども、きちっと自分たちが何を学んだらいいかということを現場でどんどんどんどん決めていこう、そして不断に現場からより良い教育というものが行われる、そういうふうな自発的な創意工夫というものがわき出てくる、そしてそれがどんどんどんどん実行に移される、そしてどんどんどんどん進化していくと、こういうふうな教育現場主義というものをこの教育、日本教育サービスの中で展開をしていきたいなというふうな観点に立っております。
 でありますから、単に私は市場取引に、あるいは価格だけで物を決めていくというところに教育をさらすということについては、やはりそれはある程度慎重にしていかなければいけないと思いますけれども、そういう中で現場でより良いものを選んでいくという意味で、やっぱり選択肢というのは多様にあった方がいいだろう、そしてその選択肢を選ぶその選択の機会、判断の機会というのはやっぱり一杯あった方がいいだろうと。しかも、ピリオド、インターバルというんですかね、その間隔というのはやっぱりもっともっと、いつでもより良いものを選べる、あるいは更に言うと、より良い判断を教育サービス者にフィードバックをしていくと、こういう進化のメカニズムを私は教育に導入したいというふうに思っておりますけれども、そういう観点からも、私は現状の日本において株式会社制度というものはやはりもうちょっときちっと検討をすべきではないかというふうに思っております。
 それは、正に今教育の現場というものは、先ほど設立に当たってのもろもろの御答弁はありました。そこの自由度あるいはそこに創意工夫を入れていくということについての取組をされているということは、私はその部分はきちっと評価をしたいと思います。本当にこの数年間でかなり劇的に変わってきているなというふうに思いますし、この国会でも学校教育法の改正が行われました。しかし、より大事なことは、できた後、要するに走りながらどんどんどんどん良くしていくと、そういうふうなガバナンスを学校に導入するということがやっぱり一番重要なわけでありまして、そういう意味で、先ほど来ずっと申し上げておりますような情報の非対称性というものをきちっと措置をしていく。
 結局、最近のガバナンスというのは情報の開示、あるいは情報のシェア、共有、それと関係者からの、いわゆるすべての関係者、ステークホルダーからの正当な評価という仕組みをどういうふうに作っていくかということに尽きるんだと思います。そして、正に情報の入手、ステークホルダーから言えば情報の入手と、その入手したものに基づいて正しいフィードバックをするんだということをそれぞれのステークホルダーがきちっとモチベートされながらやっていく、そしてきちっと、要するに正当な監視、正当な評価のフィードバックというものを怠ったならば自分も不利益になってしまう。更に言えば、もっとポジティブに言えば、きちっと情報を入手して、そして評価をフィードバックしていけば良くなるんだと、そういうふうなインセンティブ、それは両方必要だと思いますが、そういったことが制度上きちっと担保されているということが必要でありまして、そのような正に情報公開と評価と、それからだれからでもステークホルダーがきちっとチェックできて、更にいろいろなインボルブメントがなされてガバナンスにインボルブされていくというようなことのための行為規制とか事業規制とか、そういうことをむしろきちっとすべきではないかと思います。それを一律に設置主体によって学校法人ならオーケーで株式会社ならそれができないという議論はややこれは乱暴ではないかというふうに思いますが、いかがでございましょう。

○政府参考人(玉井日出夫君)
 学校の在り方についてのかなり御意見をいただきました。
 学校の設置認可の弾力化、言わば世の中全体が事前規制から言わば事後チェック型に世の中の仕組み自体が動きつつある、こういう中での学校の在り方でございますので、設置認可の弾力と事後のきちんとしたチェック、それからその間の言わば第三者評価をきちんと入れるということは、委員も正にこの国会での御審議を賜りましたけれども、今国会で法律を成立をさせていただきました。
 あわせて、やはり大切なことは、今設置者である学校法人についての御意見であったわけでございますけれども、そもそも今の学校法人という仕組み自体をよくごらんいただきますと、この法律によりまして、理事会では同族支配を禁止するとか、あるいは評議員会を必置にすることによって教学とのバランスを取っていくとか、あるいは監事制度がございまして内部監査機能がある、しかもこの監事というのが問題があれば直接所轄庁、大学でいえば文部科学大臣に直接報告ができるというような仕組みが実は整えられているわけでございます。
 ただ、いろいろ御議論がございまして、果たして制度はあるが監事機能が本当に十分に機能していると言えるであろうか、あるいは財務情報の公開が、実はもう八五%ぐらいの大学がそれなりの取組をされておりますけれども、果たしてそれでもう十分と言えるであろうかという御議論があることは重々承知をしているわけでございまして、そういう意味でのいわゆるガバナンス機能について更に強化を図るべきではないかという御意見があると承知をしているわけでございます。
 このため、実は現在、大学設置・学校法人審議会の学校法人分科会におきまして、学校法人の内部監査機能の強化や、あるいは財務の透明性の確保のための具体的な方策はいかにあるべきかについての検討を既に開始をしているわけでございまして、その検討結果を踏まえながら必要な施策を講じてまいりたい、かように考えているわけでございます。

○鈴木 寛
 その検討がやっぱりちょっと遅かったなと思いますね。
 今、私立学校法で、例えば評議員会制度、評議員制度のお話がございました。しかし、そうした現行の私立学校法が想定しているチェック機能というものがはっきり申し上げてほとんどワークしていないんですよ、大臣。
 例えば、その評議員というのはどういう人たちで構成されるかと申し上げますと、私立学校法の四十四条で、これは法律で規定されているんですけれども、まず学校法人の職員から選ぶという話になっているんです。それから二つ目は卒業生から選ぶと、こういうことになっているんです。あとは学識経験者。そうすると、要するにその学校の職員さんですから、あるいはその卒業生ですから、それに対してある意味できちっと批判的精神を持って、本当にこの学校経営というのはうまくいっているかどうかということをチェックする人がそもそも評議員に入っていないわけですよ。
 だから、私は公共性の意味というものをもう一回きちっととらえ直すべきだと思います。私の考える公共性というのは、その学校運営に携わるすべてのステークホルダーがきちっと入って、そのすべての関係者の関与によって適正な運営が行われるということ自体が私は公共性の追求だと思う。
 だけれども、現行の私立学校法はどうなっているかといいますと、正にだからOB、こういうことになっているから、私立学校の経営というのはOBが発言権を持つわけです。OBに対して、何といいますか受けのいい執行部が、ですからOBの顔色をうかがい、そしてあとは内部ですから、それからあとは、めくら判をとは言いませんけれども、別にそのことに、学校経営がうまくいこうがいくまいが別にそんなに痛みを感じない学識経験者と、こういうことになっているわけです。
 もちろん、何かあれば所轄省に言ってくればちゃんと発動できますよと、こういうお話です。しかし、現実問題、数百とある私立学校法人を現行の文部科学省、もちろん一部都道府県にも下りておりますけれども、じゃ、そういうふうな所轄省が逐次チェックをできるのかと。それから、そもそも今の規制改革あるいは構造改革、日本全体の構造改革の趣旨というのは、一番最初に大臣がおっしゃられたように、何でもかんでも役所がチェックするということではなくて、きちっと現場で当事者がそうしたチェッカー、チェックをしながら、あるいはより良いフィードバックをしながらセルフガバナンスを確保しながらやっていきましょうということが趣旨でありますから、そうすると、現行の私立学校法に基づくガバナンスというのは私は破綻していると思う。だからこそ、帝京大学の問題とか酒田短大の問題とか起こっているわけなんです。
 私は、なぜ世論がここまでいろいろな厳しい声があるかということをもう一回考え直してみますと、現行の学校法人というのがうまくいっていないじゃないですかと、そこに対して何かのやっぱり是正措置というものを取られなければいけないという声なんだと思うんですね。私は、そういうガバナンスの観点から、株式会社制度というものをもう一度きちっと見直していく必要があるというふうに思います。
 日本の株式会社制度というのは、ここ数年、劇的に変わっております。商法あるいは会社法の改正というのは急速に進んでいるわけですね。正にコーポレートガバナンスということに向けて商法の改正が非常によく行われております。例えば、十三年から十四年の一年間だけでも四回の商法改正が行われております。そして、コーポレートのガバナンスあるいはステークホルダーの関与、更に言えば、きちっと電子化というものも取り入れながら迅速な経営判断をやっていく制度ということも取り入れられております。
 例えば、監査役の独立性あるいは監査役の監査機能の強化ということも私は現行の私立学校法の監事に比べればよっぽど株式会社の監査役の方がワークしていると思いますし、そういうふうな制度に私はなっているというふうに思います。
 それから、最近は執行役員という言葉が広まっておりますけれども、これはいわゆる委員会等設置会社制度の創設というものが行われて、きちっと取締役会が監視をして、そしてその執行役が実質業務を行うという取締役会自体が、今までもちろん監査役というものが見ていくという道と、それから取締役が監査機能をきちっと強化していくと、こういう新しい方法を見いだして、そして業務執行をきちっと監督をしていくということができております。
 それから、それぞれのいわゆる株主の監督是正権というものもかなり付与されておりまして、これはいずれも単独でできるわけでありますが、違法行為の差止め請求権もありますし、代表訴訟提起権もあるわけであります。更に申し上げますと、解任請求訴権というものも現行の株式会社制度は認められております。
 このように、いろいろなステークホルダーが何か経営がおかしくなったときにチェックをできるということが株式会社制度では導入をされているわけでありますが、るる申し上げませんけれども、時間がなくなってきましたので。しかし、現行の私立学校法というのは、精神論は公共性、自主性と書いてある。私はそこを否定するわけじゃない。しかし、その担保が本当に現行の私立学校法下の学校法人でできているかというと、これ詳細に制度を見ていくと、あるいはその実態を見ていくと、明らかに株式会社の方がいわゆるコーポレートガバナンスあるいはスクールガバナンスという観点では優れていると言わざるを得ないという意味でも、私は株式会社制度というものを頭ごなしに否定するというのはおかしいんじゃないかというふうに考えております。
 そういう中で、改めて今の議論に対して文部省の見解をいただきたいと思います。

○政府参考人(玉井日出夫君)
 お答え申し上げます。
 先ほどは現行の仕組みのことを若干重立ったところを申し上げたつもりでございますが、要は株式会社、正に事業そのものをどう最も効率的に行うかというところと、やっぱり学校教育とその運営とのバランスをどう取っていくかということを同列になかなかそれは論じ難いところがあるんではなかろうか。
 先ほどの、言わば株主の、株主が最終的にはその出資の比率に応じて議決権を持つ株式会社と果たして学校というものが同じなのかどうか、これはやはりいろいろ議論が分かれるところではないかと率直に思います。したがって、一概に、先ほど委員がおっしゃったとおりとは、それはなかなか言いにくいんではなかろうか。ただ、議論としてあるのは、そういう仕組みはあるけれども、本当に機能しているのかどうか、実態はいかがであろうかといったところについては、先ほどお答えしたやっぱり点もあろうかと思っておりますので、その点は検討していきたい。
 それから、かなり運用で考えねばならないところがあると思っております。それは、例えばより機動的に学校を運営していくというときに、今は少数ではございますけれども、学校の中には担当理事制を導入しているところもございます。
 これはまだまだ少数でございますけれども、そういったいろんな工夫を学校法人自身が新しい時代に向けて今は行っているところでございますので、そういう私どもはそれぞれの工夫あるいは努力というものが促進されるように支援はしていきたい、かように思っております。

○鈴木 寛
 正にそういう意味できちっと議論をすべきだということだけは私一致させていただいたかと思いますが、ここでまたほかの法律の説明しませんけれども、そういういろいろなことをバランスする中で、いろんな知恵があるわけですから、そこを議論は深めていただきたいと思います。
 もう一つ私は指摘したいのは、同じくこれは平成九年辺りからでありますけれども、特に平成十一年の持ち株会社解禁などが行われまして、いわゆる会社分割とか企業結合とか企業連携とか、そういう組織間の非常にフレキシブルな連携強化ということがこの会社法の一連の改正の中で取り入れられております。
 この点も私は非常に重要なポイントだと思っておりまして、実は我々文教関係者の中で非常に懸念をされておりますのは、これからいわゆる学校法人の経営問題というものは少子化の中で非常に深刻化してくると思います。もう既に深刻化していると思います、実態は。これから正に右下がりの中で学校法人というものがいかに生き残っていくかということがこれはもう本当に文教政策の最重要課題なわけでありますね。
 そういう中で、むしろ座して死を待つのではなくて、座して死を待って、また私学助成金で公的資金導入で今までの二分の一制限を超えてどっと入れると、こういうことにならないようにするためにも、むしろ戦略的に今ならまだいろんな体力があります。いろんな体力がありますから、もう少し有機的な大学間の連携とか、場合によれば統合とか、あるいはいわゆる親子関係とか、いろいろな制度あるいは企業連携の在り方ということが私は必要だと思います。
 これも現行の私立学校法で見ますと、理事会三分の二、更に評議会三分の二の同意がないと、実態上はないと、これはなかなか合併とか、いろいろ解散というのはこれはできないと、こういうことであります。こうなると、またいわゆる卒業生が非常に有力な実権を握っている評議会制度のところで止まっちゃうわけですよ。そうすると、非常に好機をどんどんどんどん逸していくと、こういうことになります。更に申し上げると、こうした企業再編あるいは事業のリエンジニアリングということになってきますと、資金調達というものが非常に重要な課題になってきます。
 そういうような観点で、私は、やはり現行の私立学校法でもうこれでいいんだということを突っ張り続けるというのは私はこれはいかがなものかというふうに思いますし、それから、先ほど地方自治体が公設民営の方式を検討されているというお話がありました。確かに、いろいろ検討されています。しかし、なかなか取り得べき制度が学校法人法しかないものですから、例えばこれが株式会社であれば、例えば高知工科大学というのがあります。これは高知県が造った私立大学です。理事長は高知県知事がなっていますが、しかし理事のうちの一人なわけです。しかし、そのあれは高知県がほとんどお金を出しているわけです。であれば、高知県の御意向をもうちょっときちっと反映させるためにも、すっきりとその辺の出資と議決の関係を明らかにしようと思えば株式会社の制度というものも参考にし得るというふうに思いますから、現行の学校法人の在り方のままでいいということでもないというふうに思いますし。
 そういうふうな観点から、私はもちろん学校教育法あるいはその中で一発でその株式会社を学校設置者に入れていくと。これは私自身も非常に勇気の要る、それを頭から主張するにはね。しかし、今回の構造改革特区法というのは、正にそうしたいろいろ慎重にかつ大胆にやらなきゃいけない問題について、期間と区域を限定をして、そこでいろいろな実験、トライアルをしてみようと。そして、そこで正に部長がおっしゃったように、いろいろな実態を踏まえて、そしてそれをもう一回持ち帰って、いろいろな関係者で株式会社制度なんかも参考にしながら、私は、株式会社を導入するという方法もあるかもしれないし、あるいはきちっと学校法人の在り方をもう一回根底から議論をしていくということもあるのかもしれません。
 その議論は本当にいろいろこれからさせていただきたいと思いますが、その一つのきっかけ、あるいはそれを机の上だけで議論していても始まりませんから、そういう意味で、やっぱり実際いろいろ試験的にやってみるという意味で、正に構造改革特区でまずやってみるにふさわしい私は試みではないかというふうに思います。
 ほかにもいろいろ御議論をさせていただきたいことを一杯用意させていただいておるんでありますが、時間なので、今御議論をさせていただきましたが、鴻池大臣、今の議論についての感想と、こうした観点からも、要するにコーポレートガバナンスというもので相当法務省さん中心になられていろいろな知恵が出ております。この知恵を教育行政あるいは医療行政に導入をしていくという観点から株式会社制度導入問題ということを内閣官房としても、そうした観点からも、単に民間活力ということだけではなくて、現場の知恵を最大限に生かすんだと、そういう観点から再度見直し、議論を総括し、更にこれからの御議論に反映をさせていただきたいというふうに思いますが、それについての御答弁、御感想をいただきたいと思います。

○国務大臣(鴻池祥肇君)
 御論議を聞かせていただいておるというよりも、大変勉強させていただきました。
 私は明日、あさってからPRに九州や北海道や、もう既に大阪方面も行ってまいりましたけれども、教育だけの問題じゃなく、特区というものについて出前持ちをするという就任当初から申し上げていることを実行していっているところでございますが、ただいまの先生の御高説につきまして、大変勉強をさせていただきました。また、文部省側の御意見もすべてが反論ということではなく、私自身も極めて真摯に聞かせていただいたところでございます。
 ただ、私自身、二十九歳からちっぽけな運送会社、港湾運送事業でございますけれども、ちっぽけな会社の社長をいたしておりました。株式会社でございます。そういったところで、お役所の方から、どうも、厚生省、文部省の、株式会社どうも悪党だというふうな感じで聞こえるものですから、そうではないぞという感情的なものも実はございますけれども、ただいまの御議論で大体御理解もいただいていると、このように思いました。
 そこで、ただいまのお話のように、いわゆる監査制度とか、株式会社自身が相当法案が、対する法律が整備をされてきて、そして株式会社というのは公共性があるんだというような審査の制度、監査の制度というものが充実をしてきておりますので、こういったものを取り込んでしっかりいけば、悪口ではありませんが、帝京大学のあの正しからざる状況といったものに株式会社の学校ができても対応を、そういった他山の石を見ながら対応ができるのではないかというふうに思っております。
 正に私は、何度も申し上げておりますように、全国一律株式会社でやろうと、こういう構想ではありません。一点、株式会社で試みにやってみたらどうかと、これが特区の構想でございますので、文部省の方も御理解をいただいて、また私、文部大臣ともお話をいたしますけれども、次の一月十五日の締切りの第二次提案にも恐らく地方からこの教育の分野に株式会社参入というものが出てこようかと思います。これが出てまいりましたら、なお一層議論深めまして、一点これが実現できるように私自身も努力をしていきたいと、このように覚悟を新たにいたしております。


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