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 予算委員会  子育て世代の税負担について

2005年03月10日 


○鈴木寛

 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日は、引き続き、この所得税及び個人住民税の定率減税の縮小、廃止問題と。端的に申し上げますと、先ほどの財務大臣のお話でも分かりましたけれども、政府は、十七年度から二か年かけて実質的には三・三兆円の家計への直接負担増につながる増税案、増税案を与党は今回、今国会に提出をされていらっしゃるわけでございます。この措置が、特に子供、一生懸命お子さんを育てておられる一千三百万のこの世帯に大変に重い負担を課すことになる。ひいては、この国を、次の世代を担っていただかなければならない子供たちにとって大変な悪影響があるということにつきまして、小泉総理大臣及び関係閣僚の皆様方と御議論をさせていただきたいというふうに思います。

 私は、二〇〇一年の参議院選挙におきまして、皆様方の税金をコンクリートから人づくりへと、人づくりに使いましょうと、こういうことで当選をさせていただきまして、以来、一貫して教育政策をやらせていただいております。今日は、総理に是非御理解をいただきたいいろいろな実態あるいは数字ございます。お願いを申し上げます。この社会の宝、国の宝ということで、子供を育成をしていただいているこの家庭というのが今どれぐらいになっているかということなんです。厚生労働省の国民生活基礎調査によりますと、昭和六十一年、これは私が社会に出た年でございますが、十八歳以下の児童のいる世帯が全世帯の四六・二%だったわけですね。ですから、大体世の中の半分ぐらいの世帯では子供がいた、子供を一生懸命育てていたと。それが、平成十五年になりますと、全世帯の二八・三%、大都市でありますと二四・二%にまで低下しているんです。ということは、四分の一の世帯にしか子供がいないと。逆に言いますと、この四分の一の世帯が本当に苦労して、この我々の次の世代を担ってくれる子供を一生懸命育てていると、こういうことでございます。この生活調査を見ますと非常に面白いことが分かるんですが、高齢者の世帯、これは平均年収が約三百五万円でございます。これは大変に少ない金額だと思いますし、この部分の手当て、十分やっていかなきゃいけないと思います。

 しかし、この高齢者世帯の方々の、生活が苦しいと思っておられますかという問いに対しては、四七・六%が苦しい、ここももちろん大問題であります。しかし、この児童、子育て、教育をやっている世帯は二四・二%ですね、大都市でいうと四分の一。名目上の平均年収は七百二万円、これは一見多いなと、そこそこだなという印象を受けられるかもしれませんが、実はこの子育て、教育世帯家庭の六二・八%が生活が苦しいとおっしゃっておられるんです。この統計には出てこない、あるいは紋切り型のこの所得階層水準政策からは見えてこないこの六二・八%の悲鳴に我々は、我々政治はもっと耳を傾けなければならないのではないかということを申し上げたいと思います。従来から与党の政策というのは、この名目の低所得者には一定の配慮をしてまいりましたけれども、本当に悲鳴を上げているこの世代に十分耳を傾けてこなかったと。今回の例えばこの定率減税の縮小案でも、この七百万の世帯に対しましては縮減額が四・一万円です。そして、谷垣大臣がおっしゃるように、これ全廃しますと八・二万円の直接負担増になるんです。実は、配偶者控除関係でもこれ税制改正していますからこれが五・八万円。そうすると、今回の措置だけで九・九万円、要するに十万円の負担増がこの子育て世帯に直撃をすると、こういう実態なんですね。それを、先ほどから峰崎委員と私とで是非御理解をくださいと、この実態を踏まえて経済財政政策をやりましょうということを申し上げているわけでありますが、私たち民主党は人づくり、子供第一主義で今回の予算案を制定させていただきました。今まで二の次にされてきましたこの教育、そして子育て世代、ここに頑張っている世代に対する負担を軽減をするという観点に経済財政政策の立案の基本方針を私は転換をすべきだというふうに思いますが、この点、谷垣大臣、お答えをいただきたいと思います。

○国務大臣(谷垣禎一君)
 鈴木委員は、コンクリートから子供へとおっしゃったんですか。

○鈴木寛
 人づくり。人づくり。

○国務大臣(谷垣禎一君)
 人づくりへと。いや、なかなかいいスローガンじゃないかなと思います。それは私どもも、これはコンクリートとおっしゃるのは公共事業を主として指しておられるんだろうと思いますが、私どもも小泉内閣になりましてから、細かな数字は別としまして、公共予算は一〇%、三%、三%、三%、今年は三・六%でございますが縮減をしてまいりました。これもいろいろ評価はもちろんあるだろうと思いますし、日本みたいな災害の多い国にはどの程度の水準かというようなこともこれは議論が必要な面だと思いますが、そうやってまいりました。それで、子育てにつきまして、今後重点化を置いていくのは私は必要なことだと思っておりまして、今配偶者特別控除の縮減のお話もされましたけれども、これはむしろ、子育て世代に直撃をするというような表現でされましたけれども、むしろ今の子供を育てている家庭の実態を見た場合でも、むしろ奥さんも共稼ぎの家庭の方が圧倒的に多くなってきているわけですから、そういう構造を踏まえると、今までの配偶者特別控除の上乗せ部分みたいなものは、本当にこれ良かったのかという御批判にこたえるためにやりましたもので、それの一部は私どもも児童手当等々の少子化対策に充てようということでやらしていただいているわけでございます。で、今おっしゃったような思想転換が必要だという点に関しましては、昨年末、子ども・子育て応援プランというのを作りまして、まずはそれを着実に実施していくことが必要だろうというふうに思っております。それで、今まで私どもも財政苦しい苦しいといつも悲鳴を上げているわけですが、その財政が厳しくなっている原因の一つは、やはり社会保障経費、高齢化に伴って社会保障経費がどうしても増えていくと。ここも簡単にばっさばっさとぶった切ればいいというものではないことはもう委員も御承知のとおりでございますが、子ども・子育て応援プランの中でも、今後の課題として、社会保障給付について大きな比重を占める高齢者関係給付を見直して、これを支える若い世代及び将来世代の負担増を抑えるとともに、社会保障の枠にとらわれることなく次世代育成の支援を図ると、こういうふうになっておりまして、社会保障改革ももちろん一体的に議論をしなければならないと思っておりますが、やはり今委員のおっしゃったような視野も私どもも見据えてやっていきたいと思っております。

○鈴木寛
 実は、民主党は、この私のコンクリートから人づくりへということを平成十七年度の予算編成の中で党の方針として明確に、ホームページをごらんいただければ書いてございますが、公的投資の重点をコンクリートから人づくりへとの基本方針を明示をさせていただいております。そして、ちょっとこのパネルをごらんいただきたいわけでございますが。(資料提示)私たちは一貫して従来もこの住宅ローン減税、あるいは教育ローン減税の主張をしてまいりました。これは一部政府におきましても取り入れていただいておりますが、このたび民主党では、この十五歳までの児童に対しまして、一人当たり月一万六千円、年間で申し上げますと十九万二千円、二人であれば三十八万四千円の子供手当を創設をいたしました。
 そして、先ほど谷垣大臣もおっしゃりましたように、配偶者控除の在り方については、これは働き方の多様化に応じてこれは実質的にもっと見ていかなければいけないということで、そこは同趣旨のこの調整をさせていただきましたが、これごらんいただくと明らかなんでありますが、政府予算案は、子供を育てる世帯の家計収入に対して六万二千円の減額なんです。
 我々は、子供一人であれば十一万六千円、子供二人であれば二十七・〇万円と。そうすると、民主党予算と政府予算とで実質十七・八万円、子供二人の場合は三十三・二万円の実質家計の差がある、これが正に私はこれ政策だと、これを議論するのが政策だというふうに思っておるわけでございます。このことは、九五年以来、竹中大臣とはいろんなこの個人消費をどうするかという議論をしてまいりました。これはもうすべてのエコノミストのその共通の認識でございますが、この国の消費を支えているのは、最初は六十歳以上の高齢者、最近は二十代の若者と。三十代、四十代は一貫して低迷しているんですね。ここをどういうふうに浮揚するかというのが、これはもう日本のすべてのエコノミストの共通認識なんです。でありますから、我々はなぜ三十代、四十代が駄目なのかといえば、これは子供の養育費、教育費です、あるいは住宅ローンですということでありますから、そこにフォーカスを当てて税制なりあるいは予算なりを考えていくと。正に政治というのはいろいろ大事な、これ総理がいつもおっしゃっていますが、大事な課題があります。もちろん公共事業も大事です。しかし、そこをあえて順番、優先順位を付けていくという大変に苦渋の作業だというふうに理解をしております。でありますから、私たちは、先ほど谷垣大臣がおっしゃった以上に、公共事業に対してはこれは切らざるを得ない。これもう苦渋の中でこの新潟で二日合宿をしまして、大議論の末にこうしたことを決めさせていただいたわけで、そして子供第一主義でやろうと、こういう予算に踏み切らせていただいたということでございます。この背景がいろいろございます。なぜ我々が子供第一主義でいこうと覚悟を決めたかという辺りを中山文部科学大臣とも御議論をしたいわけでありますが、目下、今、日本の子供の学力だけじゃありません。生きる力すべてが低下をしていると、これは大問題になっています。この背景に、子供を抱える育児教育世帯の家計の状況と、その子供の生きる力の低下に物すごく密接不可分な関係がある、相関関係があるということなんです。文部科学大臣にお尋ねをいたしますが、OECDのPISA調査、これも有名な調査になりましたが、二〇〇〇年と二〇〇三年で読解力が十四番になったと。もうここだけが独り歩きしていますが、この学力低下の、あるいは生きる力低下の原因、どのように分析されておられますか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(中山成彬君)
 昨年末に公表されましたOECDのPISA調査、前回二〇〇〇年と比べますと、鈴木委員がおっしゃいましたように、読解力の順位が八位から十四位に低下していると、それから数学的リテラシー、応用力ですね、これが一位から六位に低下していると、それから科学的リテラシー、これは前回同様二位であるということで、特に読解力が低下しているということについては深刻に受け止める必要があると、このように考えているわけでございまして、なぜこうなったんだろうかということで文科省で分析しているわけでございますが、例えば読解力の得点の経年比較をいたしますと、中位層が下位層にシフトしていると、あるいは自由記述形式の出題において無回答が多いと、もう初めからもうお手上げというのが多いということですね。それから、子供たちの勉強時間が非常に少なくなっていると、あるいは学ぶ意欲とか学習習慣が十分身に付いていないと、こういったことが明らかになってきているわけでございまして、なぜこういう結果になったんだろうかということにつきましては、学校教育の問題あるいは家庭の問題、今言われましたけれども、家庭の問題、さらに地域の問題、いろいろあると考えられますけれども、社会が、日本の社会が急激に変化する中で、現在の教育が子供たちに学ぶ意欲を持たせ、あるいは学習習慣を身に付けさせることになっているんだろうかと。あるいはまた学習指導要領における教育内容とか、あるいは授業時数が十分なんだろうかとか、あるいは先生方の資質、能力の問題、これは向上が図られているんだろうかとか、こういったことがいろいろ検討をされなきゃいかぬということでございまして、今文部科学省挙げて、今スクールミーティングというのをやりまして、全国三百か所の小中学校に、現場に行きまして、先生方とかあるいは父兄、保護者がどう考えているか、子供たちの実態がどうなっているんだろうかということを分析した上で、それこそすべて、学習指導要領すべて見直して、教員の資質の向上含めて検討していきたいと、このように考えているところでございます。

○鈴木寛
 私どもはほぼ分析を終わりました。どういうことかと申しますと、レベル一から五まであるんですね、このPISAの調査は。五が、レベル五が一番高得点なんです。前回の調査でレベル三以上、逆に言いますとレベル二以下が前回、二〇〇〇年には二五%だったんです、日本の。二〇〇三年、三年後になりますと四〇%になっているんです。要するに、この平均以下のレベル二とレベル一が昔は二五だった。そこで、日本の教育はすばらしいと言われていたのが、三年間で一五%増えちゃったということなんです。このここの部分が正に問題でありましてね。で、私は先日、東京の小金井市、これは、東京都教育委員会が実施をいたしました学力調査があるんですけれども、全科目、都内のすべての市区町村でナンバーワンになったところなんで、そこを見てきました。で、その秘訣、よく分かりました。この議論は火曜日に文教科学委員会でやりますが。ここで、同じ調査を見てみますと、同じ区内で、二十三区でも、平均点で十ポイントとか二十ポイント、この差がある区があるんですね。これ東京都内、まあ東京というのはやっぱり日本の縮図だなと思うんですけれども、東京都内の学力、ばらつきというのがこれ大問題でございまして、これを見てみますと、こういう数字があります。修学援助、これ例えば、学校の給食費とか修学旅行代とか、こうした援助を受けている児童の生徒さんが東京都内で四割を超える区があるんですよ。三割、四割を超える区というのは幾つもあるんですね、東京都内で。一方で、五%とかあるいは一けたの区もあると。正にこの学力のばらつきとそうした御家庭の経済力は極めて正の相関関係がある。こうした市や区において本当に関係者は頑張っておられます。私も、議員になる前から、竹中先生のゼミ生も連れてそういうところに、私のゼミ生も連れてそういうところを一生懸命応援に行かせていただきました。それで今、着々といろんないい芽が出ておりますから、それは是非、政府を挙げて国を挙げて支援をしていきたいと思いますし、本当にそういう方の御努力には頭が下がりますが、この努力をやはり政治が全面的に支援をすると、ここはやらなきゃいけないと思います。私が断固申し上げたいことは、どんな地域、どんな家庭に生まれたお子さんでも生きる力を最大限に伸ばすための教育の機会と場が与えられなければならない、それこそ政治の最大の使命だと思いますが、小泉総理、御意見をお聞かせください。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 日本の最も重視してきた教育について、鈴木議員が今まで調査した結果、また自ら信念を吐露されましたけれども、日本政府としても教育を重視していこうということには変わりありません。特に、収入の多寡にかかわらず、教育を受けたいという人にはすべて教育の機会を与える、チャンスを与えるということは一番大事なことでありますし、これは今でもそういう方向で進んでおります。 また、学力の問題につきましても、生徒によっては能力差もあります、また先生の良しあしといいますか、子供に意欲を与えることができる先生と、逆に傷付ける先生と両方あると思いますけれども、そういう教育者の資質の問題もあると思います。
 また同時に、環境、いわゆる支援も含めてですね、教育を受けやすいような環境、制度ありますが、そういう点を、よく今の御指摘の点も含めて、今後とも、日本というのは最も大事なのは人間力、人材だと、この人間の教育、生きる意欲、自らの能力を向上させていこうというこの意欲を高めるような措置というのは、今後とも、政府が各省挙げて総合的に考えていかなければならない大事な問題だと認識しております。

○鈴木寛
 火曜日の予告をさせていただきますと、私は、日本の教育を何とか持ち上げるのは相撲部屋と寺子屋と鎮守の森だと、この三つだと思っているんです。今、この小泉内閣は、市場競争原理優先主義、言っておられます。しかし、それには大きな前提があります、必要です。相撲部屋というのはどんな若者でも入れます。相撲部屋へ入ったらちゃんこ食べ放題です。それからけいこ場も使い放題です。そして兄弟子の、それはもちろん、その期間は厳しいです。しかし、お金の心配はなく、要するに強くなりたい、いい力士になりたいと、そこのところの、正にその修行の期間は、これは全面的にきちっとその社会が、この相撲界というものが面倒を見る、その上で、土俵に上がったら体重の二百キロの人も百キロの力士もこれは自由にやると。そういう意味で、私は今、日本の教育界あるいは日本の、こういうところで議論を、大変心配していますのは、教育における受益者負担主義が蔓延をし過ぎていると思うんです。特に義務教育については受益者負担主義は良くない、そこのところは是非お願いを申し上げたいというふうに思います。それで文部科学大臣、お願いをしたいんでありますけれども、こうした子供の世帯の経済環境と生きる力の関係、これは幾つか調査をやっておられますけれども、更に詳細にこの相関関係、あるいは原因がどこにあるのか、まずこれ実態調査からですから、これきちっと調べていただきたいと思います。これも私のゼミ生が見付けてきてくれたんですけれども、総務省の家計調査に
よりますと、子供を抱えるモデル世帯、これを収入別に五段階に分けて、一番低い階層と一番高い階層、この収入の格差は大体二・二倍ぐらいですね、モデルの取り方にもよりますけれども。しかし、教育支出の格差になりますと四・九倍になるんです。さらに、塾とか家庭教師といった、これは補助教育費というふうに言っていますが、補助教育費に至っては実に十四倍の格差があるんですよ。この十四倍の格差を、あるいは四・九倍の格差を教育については二倍以下、限りなく一に近づけるということが、私は是非、総理に御理解をいただいて、そして内閣全体として、国全体としてやっていきたいというふうにお願いを申し上げたいというふうに思います。そして、ちょっと次に高等教育の話もついでにさせていただきたいと思います。パネルをごらんいただきたいと思います。(資料提示)
 本当にこれ、大学生を抱える御家庭は大変でございます。大体、自宅生で二百万、下宿生だと二百五十万、一年掛かるんですね。四年間で一千万ですよ。私はこれ当選以来、これ民主党のマニフェストでも書いてありますが、希望者全員奨学金制度、希望者全員奨学金制度、これを党を挙げてやるんだというメッセージ、これには前河村文部大臣にも大変に御努力をいただいて、文部省の中では何とか今年から百万人の貸与、実現をしていただきました。しかし、まだまだ足りません。それから額が足りません。それから、日本は結局は返さなきゃいけないんです。奨学金というのは給付をするのが本来の奨学金であります。そこで、これごらんいただきたいわけでありますが、高等教育の家計の負担の割合です。お手元に総理、行っていると思いますが、日本はOECD諸国、韓国に次いで五六・九%家計が負担しているんです。アメリカですら、これは寄附税制なんかがしっかりしていますから、自分で負担しているのは三分の一です。そして、私はIT政策を専門にしておりましたが、IT先進国、フィンランド、デンマーク、スウェーデン、ドイツも含めてですね、これ一けたですよ。これをやるということが正に次の世代を育てるということだと思います。で、何でこんなことになってしまったかと。いろいろな理由がございます。いろいろな理由がございますが、その一つに、これも総理に御理解いただきたいことが一つございまして、国際人権規約Aの第十三条の二項(c)という条文、御存じでしょうか。これは高等教育無償化条項という条項でございます。この条項では、高等教育は、すべての適当な方法により、特に無償教育の漸進的な導入、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じすべての者に対して均等に機会が与えられるものとすることという条文があります。百五十一の国がこの人権規約Aを批准をしているわけです。日本は批准もしています。しかし、日本はこの十三条の二項を留保しているんですね。留保しているんです。で、留保している国が三つあります、百五十一の国の中で。逆に言うと、百四十八は留保なしで認めています。三つはどこかと。これ御質問しようと思いましたが、もう私から時間がないので申し上げます。ルワンダとマダガスカルと日本です。ここは総理、何とかしていただきたい。一九八四年に参議院の文教科学委員会が附帯決議出しています。しかし二十年間、二十年間何も変わってない。しかも、漸進的にと書いてあるわけですから。ほかのこういう国はその条約を守っている。もちろんゼロにはできない、スウェーデンはやりましたけれども。しかし、毎年、毎年々、それこそどの国でも厳しい経済情勢、厳しい財政情勢の中で、しかしやっぱり人づくりだということで積み重ねてきた三十年、四十年の結果がこの家計費の表に端的に表れているわけですね。総理に伺います。このまず留保、高等教育無償条項の留保、これ日本、外していただきたい。これこそ総理のリーダーシップです。お願いを申し上げます。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 私は、なぜ留保されたのか、よく事情は承知しておりませんが、憲法八十九条、これは公の支配に属さない部分に、教育についてとか慈善事業について公金を支出してはならないというんですよね。これ、素直に読めばこれ憲法に違反するんじゃないかとだれだって思いますよ。しかし、いろんな解釈で憲法違反にならないような措置を講じております。まあこういう点から憲法にも問題があるんですが、今の問題につきまして、私は、日本におきまして教育を受けたいという人は収入がなくても受けるような制度になっています、奨学金においても。現在そうしております。意欲のある人についてはすべて教育を受ける機会を与えております。この点もよく御理解いただきたいと思います。

○鈴木寛
 私学助成の件は関係ありません。総理が後半におっしゃった奨学金の問題です。しかし、日本は一〇%ですよ、授業料の。あるいは更に言うと、生活費入れたらその比率はもっと下がる。だから、そういう意味でこの数字になっているんです。そこは御理解ください。フランス、ドイツは授業料無料で、加えて生活費もきちっとその所得に応じて面倒見るということになっているんだということで、ここはいろんな知恵がありますので、是非また聞いていただく機会をつくっていただきたいと思います。
 もう一つごらんいただきたいパネルがございます。やはり、私学助成金の問題は全く関係ないということがこれで分かります。対GDP比の公教育財政支出の表です。日本は高等教育段階、流し方はいろいろありますよ、流し方はいろいろありますが、〇・五%しか確保していない。あるいは義務教育でも二・七%なんです。ここを
変えていこうじゃないかと。これがコンクリートから人づくりへという正に政策なんです。私は、せめてアメリカやフランス並みに、五・六%です、あるいはフランスは五・七%です、アメリカは一・五%です。進学率は、日本をこれ上げていく、高等教育みんなが受けれるようにしていきたい、そのためにこの予算をきちっとこうしたことに充てていく。どうですか、アメリカ並みに五・六、五・七にしようじゃないかと、この大号令を小泉総理、掛けていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。フィンランド、アメリカ、こうしたところは高等進学率、大学進学率、日本より二〇%、三〇%高いんです。これが知的立国日本の競争力に直結するということも含めて、御答弁お願いいたします。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 これはどういう統計の取り方かというのは私は詳しく存じませんが、教育の重要性は日本政府としてもこれからも続けていかなきゃならない課題だと思っております。と同時に、大学に行ける人、また行きたいと思う人は、できるだけそのような措置を講じていかなきゃならない。また、公教育におきましても、学校へ行かないで自らの特色を生かしたいという人については、また別の教育も必要だと思います。言わば自分の持ち味といいますか、能力を発揮できる選択肢を増やしていかなきゃならない。いずれにしても、教育を受けたいという人については、もうすべて機会均等、機会を提供するという措置を講じていく必要があると思います。これから教育の内容等含めまして、文科省、これからの教育の在り方につきまして、小中はもちろん高等教育にも、日本の発展を考えますと、人づくりこそコンクリートづくりよりためになるんだという鈴木議員の提唱には私も同感でありますしバランスの取れた対策を取っていかなきゃならないと思っております。

○委員長(中曽根弘文君)
 時間でございますので、おまとめを願います。

○鈴木寛
 民主党の提案は、専門学校なんかの人たちに対しても奨学金を出していこうじゃないかと、これ充実していこうじゃないかということになっていますか
ら、そこはおっしゃるとおりのことができます。是非、総理、今のお話ありがとうございます。

○委員長(中曽根弘文君)
 時間です。

○鈴木寛
 本当に子育てに困る一千三百万人、そして学ぶ意欲を持って一生懸命頑張っている三千万人の若者のために皆さんの貴重な税金を使っていきたい、人づくりのために使っていきたい。そのことを百年河清を待つんではなくて、そのための政権をつくり上げることが不可欠だということを申し上げまして、私の質問を終わらさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

 
 以上です。
 


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