すずかんMAGAZINE NO.21 「イラク武力行使を巡って」
2003.02.17 


こんにちは、スズカンです。ブッシュさんのイラク攻撃をめぐって、事態がかなり緊迫しています。ご存知のように、英国は、米国支持ですが、フランス、ドイツ、ロシア、中国は反対です。私も、2月15日は、イラク武力行使回避のための集会に出席してまいりました。国連では、査察報告を巡って、米仏のそれぞれの外相が論陣を張り、とりあえず査察継続となりました。もちろん、イラクが何年にもわたって国連決議に違反していることが大問題であることは当然だし、断固そのイラクに対し、強く猛省を促すことも当然です。武力行使以外のあらゆる方策をとるべきことも当然です。

しかし、ブッシュ政権のように、イラクの国連決議違反に対する制裁措置が武力行使だというのは性急すぎるのではないか? もう少し、査察をきちんと強化するとか、ほかに取り得る方法があるんじゃないかという趣旨で、仏独露中は反対しています。私も、民主党も、仏独の見解に賛成です。国際政治を勉強し、世界がこれまで国際紛争解決のための培ってきた知恵や国際法秩序について、幾分かの洞察と教養がある人間であれば、当然の見解です。だから、軍事について十分な知識と深い良識と教養を有する、そして、何よりも実際の軍事経験がある米国退役軍人たちも今回のことに関しては、ブッシュ政権に反対を表明しているのです。

小泉政権は、態度を明らかにしないまま、ずるずる来ています。「米軍の街」横須賀出身で、戦前生まれの小泉さんが、対米追従となるのはある意味やむを得ません。しかし、私は、千載一隅のチャンスを逃したと思っています。即ち、今まで国際政治に何の発言もできなかった弱気な日本ですが、戦後初めて、アメリカを諌める絶好のチャンスを逸しました。日本単独で米国を諌めるのは、さすがに難しい。今回は、フランス・ドイツ・ロシア・中国と一緒です。しかも、今回は、明確な確固たる大義があります。今回の武力行使は、どうみても自衛戦争とはいえません。こうした状況ですから、今回は、明確にアメリカにノーと言えます。しかも、アメリカにノーと言うのではなく、ブッシュ政権の今回の方針に限りノーと言うのですから。米国の良識派だって理解してくれます。今回、きちんとノーと言っておけば、ああ、なるほど、日本も独自の意見を主張するべきときは主張するんだということを、世界中の人々に、そして、世界史にきちんと刻み込むことができます。少なくとも、少なくとも、フランス及びシラク大統領は、株を上げました。フランスは、ちなみに、経済力も軍事力も日本より規模的には劣っています。しかし、フランスは、これから最低でも10年間、国際社会及びEUにおいて、一等国としての名誉ある地位を確保し続けるでしょう。フランスは、虎視眈々と、それを狙っていた節もありますが、一昨日のフランス外相の一回の国連発言で、そのことに見事に成し遂げました。これが外交力です。これが政治力です。

今回の武力行使反対に大義があるのはなぜか? 今回のイラク攻撃は、1648年以来、国際社会が培ってきた自衛戦争しか容認しないという国際法秩序の大原則をくつがえそうとしているからです。法学部の国際法の一番最初の時間に学生に講義する内容に、ブッシュ政権は反しているのです。今までも、実態としては、自衛といいつつ侵略している例も多いですが、屁理屈といえども何とか理屈をこじつける努力を各国は行なってきました。でも、今回のブッシュさんは、そんな面倒くさいことは省略して「先制攻撃だ!」と言い放っている! 無茶苦茶乱暴な話しです。だからこそ、米国の退役軍人の会ですら反対しているのです。10年前の湾岸戦争は自衛の戦争でした。つまり、イラクがクウェートにまず侵攻しました。そのイラク軍を排除するためですから、まさに、自衛のための戦争でしたが、今回は、全く性格を異にします。

さらに、第2次世界大戦後は、自衛権の行使であることを国際連合で確認したうえで、武力行使をしようというルールが成り立っていますが、ブッシュさんは、そのルールすら反故にする可能性があります。今、ブッシュさんに冷静になってもらうために、世界中のいろんな方がいろんな努力をした結果、この1ヶ月で、世論の情勢は、かなり変わってきています。世界中が、熟慮、賢働している。いろんな情報を持ち寄って、いろんな人々が意見を表明し、知恵を持ち寄って、フセイン政権を擁護するのではなく、武力行使以外に出来うる限りの知恵・方策を探るためにがんばっています。次第に世論は変化してきました。情報力が勝つのか、武力が勝つのか? 富と武が勝つのか、智と徳が勝つのか? マッチョで豪腕なカウボーイが勝つのか、色白だけど知恵と勇気とハリーポッターが勝つのか? 情報社会づくりをめざす、コミュニケーション外交、ソフトパワーの政治をめざすスズカンとしても頑張りどころです。

私が主宰するインターネットテレビ「SUZUKAN.TV」でも、イラク特集を毎週組んで、いろんな現場を知っている関係者を招いていろんな情報をお伝えしています。スコット・リッター元国連査察官の記者会見全貌もアップしています。米国退役軍人会とのコラボレーションを行ってきた山田和尚さんとのトークもアップしています。さらに、私は、平成14年度前期は、東大教養学部でも現代政治学のゼミも開き、平和創造というものがいかに微妙で、複雑なものであるのか? その難問に懸命に取り組んできた先人の功績を振り返り、この難問に、あきらめることなく、知恵を振り絞りつづけることが現役世代の責務であること若者に説きつづけてきた、現場現実尊重の学究政治家の努めとして、いろんな方々に、平和創造に取り組んできた人類の歴史と知恵を説いて、理論的・精神的擁護をして廻っています。

こうした中で、日本政府だけ、その姿が見えないのは、残念です。対米追従の自民党政権に、何の期待もできません。だからこそ、政権交代が必要なのです。ドイツを見て下さい。なぜ、今回、ブッシュ政権に反対できるか? それは、政権が交代しているからです。さらに言うと、日本が対米盲従外交を脱するには、日本の首脳たちの世代交代も必要です。戦前・戦中・占領期に生まれた世代と、私のように、日本が少なくとも経済的には完全独立を遂げた後との世代では、対米観が決定的に相違します。自民党世代から民主党世代に政権が交代することも、外交政策上は意味あることだと思います。

民主党の主流は、この問題について、ドイツやフランスの現政権と同じようなセンスをもって、現状認識をし、政策判断を行っています。民主党を中心とする政権に交代するということは、まさに、このような事態に対して、仏・独と同じ歩調をとるということです。もしも、こうした状況下で、もしも、日本が仏独に加担したならば、国際世論の動向は、武力行使回避に向けて決定的なものになります。対米盲従なのか? 対米是々非々なのか? 皆さんの一票が国際政治に大きな影響を与えるのです。世界の平和のために、多くの皆さんの知恵と勇気をお貸しいただきますようにお願いします。