2-1 臨床医療崩壊の実態
Ⅰ 医師が足りない
日本は、先進国の中で際立って医師の少ない国です。人口 1000 人当たりの医師数は、 OECD 加盟国 30 カ国中 27 位。高齢化率・人口ともに日本と似たドイツと同じ医師の割合 ( 人口当たり ) にするには、約 17 万人もの医師が必要です。高齢化率が低いため、人口当たり医師割合が日本より低くなっている 3 カ国 ( トルコ、メキシコ、韓国 ) ですら、日本をはるかに上回るスピードで医師を増やしています。今後さらに高齢化が進み、これまで以上に医療の重要性が高まります。現在の医師数で、高齢社会に対応する医療の質と量は確保できるのでしょうか。
医師不足は、過疎地だけの問題と思われがちですが、人口当たり医師数ワースト3は、埼玉・茨城・千葉の3県です。へき地だろうが都市部だろうが、日本全国どこでも医師が不足しているのです。
厚生労働省の見解では、「医師不足の原因は医師の偏在にあり、絶対数は充足している」とあります。
ですが、都道府県別の人口当たり医師割合をみると、 OECD 平均に達している県はひとつもありません。
人口 10 万人当たり医師数の伸びと高齢者比率 ( 世界の統計 2007 より )
Ⅱ 臨床医師の過酷な労働環境・労働条件
以上のように、適切な医師数を確保できないことが一因となって、現場で働く医師に大きな負担がかかっています。臨床医師の労働時間は労働基準法で定められた 40 時間をはるかに超えています。そのうえ、病院にいる時間の他にも、担当の患者の容体が変化したときにはすぐに病院に行かなければならないなど、臨床医師は 24 時間働いている状態であるとも言えます。
このような劣悪な労働環境を嫌い、病院勤務医を辞めて開業医になる医師が増えています。それにより、病院勤務医が更に減り、現場に残った医師にさらなる負担がかかる…という悪循環が起こっています。この流れは早急に断ち切る必要があります。
特に、出産・育児と仕事を両立したい女性医師の労働条件は全く満足なものとは言えません。人員不足から育児休暇を出せない、産休の代替要員を立てられないといった病院が増えています。残業を当然として勤務を組んでいるため、女性医師が育児をする余裕がとれないのです。この状況下では、女性医師は出産、育児と仕事を両立できるはずもありません。産科・小児科は女性医師の多い分野ですが、女性医師が結婚・出産を機に辞めてしまうことが医師不足の現状をさらに悪化させています。
劣悪な労働環境・労働条件
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◆労働条件 ( 小児科学会調査 ) |
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妊娠時の深夜勤務、当直免除がない |
3 割 |
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産休の代替要員がいない |
5 割 |
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産休中の身分保障がない |
2 割 |
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育児休業制度がない |
3 割 |
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30 代後半から 40 歳代にかけて女性医師の半分が病院を辞める |
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このような劣悪な労働環境で、医師が働かされていることは、医療ミスの増加につながります。医労連の調査によると、当直の翌朝も勤務する医師は医師全体の 7 割にのぼり、ミスが増えるのは明白です。このような劣悪な環境で働いているのにもかかわらず、結局医療ミスによって訴追されるのでは現場のモチベーションも上がるはずがありません。
Ⅲ すずきかんは、こう解決する
医師を増やすには、莫大な予算と長い時間がかかります。そのために、現在の医師数で、それぞれの医師が最大限のパフォーマンスを発揮できるような医療システムを構築しながら、長期的に医師を増やしていく必要があります。