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2-2 地域医療システム再編


I 医療の集約化による安全性の向上、地域のシステム構築

 

医療の集約化とは

 医師不足を深刻にしている大きな原因として、日本は病院が多すぎることが挙げられます。

 

各国の医師数と病床数 ( 病床数は、医療施設の数の目安となる )

出典: (2004 年、 1000 人当たり ) 世界の統計 2007

 

 

 医療施設が多すぎると聞くと、良いことのように思えますが、実際は決してそうではありません。ただでさえ少ない医師が各医療施設に薄く広く点在するため、一人一人の医師の負担は増し、チームを組んだ高度な医療が提供できず、代替要員がいないため産休も取れず、医療機器の導入に莫大なコストがかかるのです。

 わかりやすい例として、毎日当直を置く診療科を考えてみてください。もし在籍する医師が週一回の当直を行うとすれば、最低でも 7 人の医師が必要となります。現在の医師散在の状況下ではその数が確保できないため、週に 2 ~ 3 回もの当直を強いられ、当直明けの 30 時間以上連続勤務といった状況が起こっているのです。

 地域の病院を統廃合し、医師を集中させることで、専門的な医療を 24 時間提供することが可能となり、労働環境の改善、安全性の向上が可能となります。

 ここでいう「医療の集約」とは、以下の 2 つのことを指します。

 

1 医師を集約する

→チームを組んだ専門的な医療を可能にし、医師のモチベーションとパフォーマンスを向上させる。

→シフト制を敷き、医師の労働環境を改善し、医療の安全性を向上させる。

 

 2 医療設備を集約する

 

集約すべき医療と生活圏に点在すべき医療

 ここで留意すべきは、「集約すべき」医療のみを集約し、生活圏に「点在すべき」医療はしっかりと維持・支援するということです。集約すべき医療は、がんや心臓などの大手術、 3 次救急医療、周産期医療など、一時的に多くのマンパワーと高度な設備を必要とする医療です。こういった医療は、先ほどの当直の例からわかるように、人材と設備が散在していては高いパフォーマンスを確保できません。人材と設備を集約し、その集約化された医療施設へのアクセシビリティを高めることが鍵となります。

 

具体的方法―医師の集約化と医師派遣

 繰り返しますが、医療再編のポイントは、「集約すべき」医療については、多すぎる医療施設に散在する医師を集約し医療の専門性や安全性を高め、そのうえでアクセシビリティを高めること、また、生活圏に「点在すべき」医療については、医師を派遣し、支援することです。

 以下、具体的に説明します。

 

(1) 都市部の生活圏の医療―勤務医と開業医の循環による医療連携の強化

 都市部には、若~中年の開業医が多くいらっしゃいます。この中には、一旦開業した後、先進的な病院でもう一度腕を磨きたくなったけれど、開業時の多額の投資を回収するために開業医を続けざるを得ないという方がおられます。一方、都市部の若~中年の勤務医の中には、開業したいけれど多額の設備投資はできないという方も多くいらっしゃいます。 そこで、勤務医へ戻りたい開業医のために、設備を買い上げることを提案します。買い上げた設備を、集約化して地域の診療所が自由に検査に使用できるようにするほか、民間の企業に払い下げることで医療設備のリース事業も活性化します。そうすれば、開業医は一旦勤務医に戻ることができますし、開業したい勤務医は、多額の資金がなくても開業できるようになります。(国が医療機器を税金で買い上げるのではありません。買い上げを行う民間企業に対して、金融措置や税制上の優遇を行います) このように、診療所の設備を循環させるような事業、制度を推進することで、開業医への参入・脱退障壁が低くなります。すなわち、「開業するためには莫大な資金がかかり、一旦開業してしまうとやめることができない」といった状況が改善されるのです。これにより、勤務医から開業医へという従来の一方通行的な流れではなく、勤務医と開業医が循環するような環境が生まれます。医療人材の循環によって、紹介・逆紹介といった病院と診療所の連携も容易になります。また、日本の医師不足の原因の一つとして、「開業してしまった医師は勤務医に戻らないため勤務医が減っていく」というものがありますが、これが是正されるのです。

 

(2) 都市部の時間外診療(夜間診療)の充実

 都市部にニーズの多い夜間等の時間外診療については、集約化されシフト制となった病院から、勤務時間外の医師を派遣することで充実させます。若く体力のある医師に、適切な報酬を払い、各病院に派遣すれば、医療の様々な側面を経験することもできます。こうして、夜間診療、時間外診療を保障します。

現在、大学病院や公的病院に所属する勤務医は兼業規定や公務員専業規定が存在するため、他施設での勤務が制約されています。また、現状の医師不足の状況を考慮した場合、大学病院や基幹病院からの、院長や教授同士の個人的関係に依存した医師派遣だけに頼るのでは限界があります。そこで、公務員専業規定の解禁、派遣業の解禁による民間企業の参入も視野に入れた、医師派遣の環境を整備する必要があるでしょう。

 

(3)  過疎地の生活圏の医療―過疎地と集約化した医療機関との医師循環

 地域の医療、とくに過疎地の医療を支えている診療所では、裕に 70 歳を超えた医師の方々が一人ですべて診察しているというところもあります。その経験や地域に密着した医療の実績は何にも代えがたいものですが、そういった方々の後継者がいないことが問題となることがあります。彼らは経済的なメリットから開業を辞められない訳でなく、地域の医療を支えるという使命感から、高齢でありながらも医療活動を続けておられます。

 その解決のため、「医師の派遣」と「診療所の賃貸」を提案します。

 後継の医師は、他の医療機関 ( たとえば、集約化された病院など ) から派遣するのです。へき地を敬遠する医師が多いとはいえ、一年~数か月単位の派遣ならば可能な地域も多いでしょう。また、派遣されている期間中、医療の進歩から取り残されないよう、インターネットなどで勉強できる環境を整えます。たとえば、自治医科大学には古くから過疎地へ医師を派遣してきたノウハウがあり、過疎地の医師を支援する充実したホームページを持っていますので、そこへのアクセス権を取得します。

 引退を希望する医師のもつ医療施設を賃借し、派遣された医師が診療所の管理者となれるよう、医療法の運用を改善します。これにより、引退した医師は家賃収入として毎月一定の収入が保証され、引退後の収入の心配がなくなります。 

 引退した方々は、その経験と地域住民からの人望を生かし、医療に関する相談役や、新しい診療所と派遣されてくる医師の推薦役・地域とのパイプ役となっていただきます。これによって、より合理的かつ、これまで培われた経験・ノウハウが共存する地域の医療システムが完成します。

 

(4) 過疎地の救急搬送体制―救急車に加えた救急ヘリの整備

 集約化すると救急患者の搬送先が遠くなる、という問題は、救急ヘリや救急車の整備によって対処します。

 医師が少ないため専門的な医療ができない、医師が少ないため 24 時間張りつめて疲弊した医師しかいないような救急医療の施設をいくつも設けるよりも、専門的な医療も 24 時間提供できる拠点をひとつ設け、そこへの搬送のインフラを整えた方がはるかに安心な医療が受けられます。

 救急ヘリは、道路が整備されておらず、救急車の到着に時間がかかるような地域に住む患者の搬送に、大きな効果があります。

 

 

以上、まとめると以下のようになります。 

 

 

II 医師のシフト制   

 「医療崩壊の現状」の項で述べたように、担当医制、すなわち担当の患者の容体が急変したときは、自宅にいるときでもすぐに病院に駆けつけなければならないというシステムが、医師を事実上 24 時間拘束しています。シフト制を導入し、はっきりと「オン」と「オフ」を分けることで臨床医の労働環境は飛躍的に改善されます。

 シフト制ならば、同じ労働時間を確保しながら各人の生活にあった形でシフトを組むことができます。男性医師も、女性医師も、仕事を続けながら子育てや介護や、仕事以外のことに向かう時間を作ることができますし、診療所への医師派遣も、シフト制によってオフの時間が明確になることによって成り立ちます。

 このシフト制は、病院内にシフトを組めるだけの人員が確保されていてはじめて実現できます。シフト制の実現のためには、医師と医療設備の集約化が必要であり、一方で、医師派遣によって医療システムを再建するためにもシフト制が必要です。シフト制と地域医療システム再建は表裏一体の関係にあります。

 

 

III 医師の労働環境公開

 そして、そういった施策の進行状況、またそれに伴い労働状況がどう改善したかを調査し、公開します。その情報をもとに患者は病院を選ぶことができます。

 開示する情報とは、例えば具体的に以下のようなものです。

 

・当直翌日に手術する医師の割合

・当直翌日に病棟勤務する医師の割合

・当直翌日に外来勤務する医師の割合

・勤務時間外に病院からの電話で夜間に起こされた回数

・勤務時間外に病院へ行った回数

 

 これらの労働環境に関する情報を、医療法第 69 条の広告規制のポジティブリストに追加し、公然と「私の病院は優秀な医師を良い環境で働かせ、安全な医療を提供しています」という広告が行えるようにすることでも同じような効果が得られます。

 

 

すずきかんは、医師不足や現場の過酷な労働環境をこう改善します。

1 地域の中心となる病院に医師と設備を集約化し、専門的な医療を行えるようにします。

2 その病院から、過疎地や都市部の時間外診療に医師を派遣します。

3 救急ヘリを整備し、地域拠点病院に迅速に患者を搬送できるようにします。

4 医師のシフト制を導入し、医師を24時間の拘束から解放し、医療の安全性を高め、過疎地や都市部の時間外への医師派遣を可能にします。

5 医師の労働状況を公開し、患者が安全性の高い病院を選択できるようにします。

 

 

 救急ヘリを導入するための費用を考えます。

 機体一機の価格を拡張装備含め 10 億円とし、維持費を 1 年に 1 億 5,000 万円とします。 ( 長崎県大村市、埼玉県で導入されている救急ヘリをもとに算定 )

 これを各都道府県で平均3台ずつ導入するとします。すると、機体購入に 1410 億円、維持費に 211.5 億円かかります。

 

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